皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1121件 |
No.401 | 5点 | ミスター・メルセデス- スティーヴン・キング | 2017/01/03 15:51 |
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キング作品をそれほど読んでいるわけではないが、破壊力のあるホラーや、狂気を描いた作品のイメージが強いので、それに比べると本作品は、割と昨今ありがちな平板な話に思えてしまった。
翻訳ものにしては読み易く、特に下巻は疾走感もあって一気に読めてしまうのはいいが、サイコな犯罪者と退職刑事の戦いという設定にもあまり新鮮さは感じられず、この評価になった。 いかにも映画化がウケそうな話、と感じるのは私だけだろうか。 |
No.400 | 5点 | 孤狼の血- 柚月裕子 | 2017/01/02 16:02 |
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日岡秀一が初めての刑事勤務となり配属された捜査二課で、仕えることになった大上章吾は、広島弁のべらんめえ調で部下をどやしつけ、やくざからも「ガミさん」と一目置かれるこわもて刑事だった。金融会社の社員が失踪した事件を負うことになった2人だが、そこにはヤクザの裏事情が絡んでいる様子。捜査を進める中で、大上とヤクザのただならぬ関係が垣間見えるようになり、その公正とは言えない捜査手法に、日岡は大上への不信と反発を感じ始める。だが、大上の信念、どんな手を使ってでも目的を遂げようとする姿勢に、次第に見方が変わってくる・・・・
ヤクザ組織の相手をする暴対の刑事たちが、決してきれいごとだけではやっていけないという様を描き出しているストーリーは骨太で、非常に読みごたえがある。読者としても、始めは大上のやり方に反発を感じる部分はあるが、日岡との人間的なやりとりを見ているうちに、次第に魅かれていく部分も確かにある。最後の仕掛けは半ば予想通りで、それほど驚きはなかったものの、結末としては悪くない感じがした。 |
No.399 | 6点 | はなれわざ- クリスチアナ・ブランド | 2016/12/24 23:33 |
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御多分に漏れず、クリスチアナ・ブランドの代表作と名高いため、「まずはこれから」と読んだ。促音が大文字で表記されているようなポケミスで、歴史を感じた(笑)。
最終盤の展開直前には「え、結局そんな結末…」と思ってしまったのだが、その失望が最後に一気に裏切られてよかった。かなりスッとした。中盤では、島の当局の理不尽な捜査を阻もうと、各自が推理を披露したり独白をしたりするのだが、それが最後にあんなふうにひっくり返して生きてくるとは…結構素直に驚いた(面白かった)。 ただ、島や海岸の構造とか、舞台となったホテルの構造とかがいまひとつ頭に描きにくくて、一枚だけ図はあったが文章で読み進めていると具体がイメージしづらく苦労した。海外古典には往々にしてある婉曲的な登場人物の物言いも、すぐに理解できない所がよくあり、こちらも苦労した。 中盤がやや冗長な感じはあるが、全体的には満足感の方が高かった。 |
No.398 | 5点 | おやすみ人面瘡- 白井智之 | 2016/12/17 12:55 |
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氏の作品は初読。帯に「綾辻行人&道尾修介がいま最も注目する」とあり、「東京結合人間」も気になってはいたので、かなりの期待を込めて読んだ。期待を高め過ぎたのか、正直思ったほどではなかった。
物語中にちりばめられる各謎の筋道だった解明や、さりげない手がかりの置き方もうまいとは思う。が、いろいろなところに仕掛けすぎ、しかも人面瘤によって推理が二転三転するので(そこが売りでもあったらしいが)こんがらがってくる。大仰な舞台設定の割には、各過程で解き明かされるのがアリバイとか指紋とかいう通俗的な内容で、それぞれの推理に「なるほど」とは思うがそれ以上の感動はなかった。 ただ言い換えればこれだけ複雑な仕掛けをよくも考えてまとめあげたものだ、とも思った。 |
No.397 | 7点 | 誰も僕を裁けない- 早坂吝 | 2016/12/14 22:44 |
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キワモノだった印象が強い本シリーズだったが、急にミステリ色が濃くなった印象。といっても、やはり正攻法からは離れているとは思うが…。
「〇る」の〇をなぜ隠したのか、本格ファンならすぐにわかるのに。それが分かればトリックはおのずと分かるので、その点では目新しさはない。2つのストーリーが並行して描かれる構成と、その結び付き方は意外ではあったが、人によっては姑息と感じるかもしれない。まぁ私としては悪くはなかった。 シリーズ読者として、心のどこかでらいちは絶対的存在であってほしいというのがきっとあって、その点でやや格落ちしてしまった感があるのはやや残念だった。小松凪のようなキャラに先を越されるのはちょっと…。 一見ありきたりに見えるタイトルの真意には、なかなかやるな、と感じた。サクッと読める分量にしてはよかったので、この点数。 |
No.396 | 8点 | 去就- 今野敏 | 2016/12/10 16:28 |
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今回のテーマはストーカー。被害に遭っていたという女性が当のストーカーに呼び出され、ボーイフレンドを同伴してその場に行ったら、そのボーイフレンドが殺害され、ストーカーと被害女性はそのまま行方不明に。早速大森署内に指揮本部が設置され、伊丹と共にその指揮にあたることになった竜崎だったが、事件は当初のとらえとは違う様相を見せるようになってくる。
徹底した合理主義で(しかも天然)、部下からも厚い信頼を寄せられている竜崎の強いリーダーシップ、痛快な組織での生き様がある意味主となる本シリーズだが、事件の真相を探るミステリとしても〇だった。たてこもりの一幕は、こちらもはじめから胡散臭いと思っていたが、事件の真犯人については意外だった。用いられた凶器の違和感、乗り捨てた車の停め方、携帯電話からの着信など、手がかりからの推察や、捜査員の感触を頼りにチームで真相にたどり着く過程は非常に読みごたえがあった。 マスコミに反応して、世間への面子やアピール目的で対策を講じ、その煽りを現場の捜査員が被る・・・という、作中で述べられていたことに強く共感する。ある業界に対して持ち上がった批判的な世論に対して、「その答えを作るために」目に見える活動を打ち上げるという上層部の発想が、下々にどれだけ無駄な労苦を生んでいるか、どれだけ無駄な金を使っているか、本当に考えるべきだと思う。 |
No.395 | 5点 | 真贋- 今野敏 | 2016/12/10 16:01 |
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目黒区で起きた窃盗事件。盗品以外は一切物色の跡がない現場の様子から、萩尾&秋穂コンビはすぐに窃盗常習犯「ダケ松」の仕業と見破る。しばらく後に、身柄を確保されたダケ松。だが、その様子に不審を感じた萩尾は、ダケ松が何かを隠していると感じる。同じころ、管内のデパートで陶磁器展が催され、その警備にあたることになった。そこでは、国宝・曜変天目が展示されるという。ダケ松の事案にあたるうちに、両者の隠されたつながりが明らかになっていく…
萩尾警部補&秋穂コンビのシリーズ2作目。前作「確証」が非常に良かったため、文庫になるのを待ちきれずに単行本で購入したが・・・あっという間に読めてしまった。リーダビリティが高いともいえるのだが、厚みがなかったとも・・・ 盗犯捜査のプロ・萩尾の鋭い洞察がこのシリーズの胆であり、魅力でもあるのだが、推理→確定までがあまりにも一足飛びのような気がしてしまった。(前作「確証」で萩尾の推理は間違いないと証明されたから、確証は要らなくなった?(笑))抑揚のない捜査過程をだらだら書いてほしいとは思わないが、特にダケ松がに弟子をかばっているという読みや、八ツ屋長治とのつながりなどは、トントン拍子すぎる感じがした。 真作と贋作の入れ替わりトリックは、そう難なく看破することができた。 |
No.394 | 8点 | 恩讐の鎮魂曲- 中山七里 | 2016/12/04 23:09 |
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少年院時代の御子柴の恩師、稲見教官を弁護するという話で、期待を裏切らない面白さだった。
少年時代に殺人を犯した御子柴の人格を矯正し、今の道に導いた一番の恩人、稲見元教官が、入所していた介護施設で介護員を殺害したという。「衝動的な感情で人を殺めるような人ではない」…今こそ恩に報いようと、稲見の弁護に駆け付ける御子柴だが、当の稲見は「刑を免れようなどと思わない。きちんと私を罰してほしい」と望む。弁護の最大の障壁は依頼人自身という異質な状況の中、介護施設で何が起こったのか、御子柴は真実を暴きにかかる― 要介護老人と介護士の、感情的な諍いと思われていた事件には、誰もが驚く背景があった。その実情が法廷で明らかにされる場面での、裁判長、検事を含めた周囲の驚愕を想像しながら読むのは単純に楽しかった。被害者、入所者、稲見の隠された「つながり」は、あまりにも出来過ぎているという感はあるものの、それが本作品の核なのでまぁ自分はとやかくは言わない。 ただ、シリーズ当初の酷薄で薄情なイメージが次第に薄れ、むしろ情に厚くすら見えてくる御子柴の変容は、好ましくも感じるが、一方で寂しい感じもするのは私だけか。 |
No.393 | 5点 | アメリカ銃の秘密- エラリイ・クイーン | 2016/12/04 22:42 |
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国名シリーズの中でも小粒という世間の評価を耳にしていたため、読むのが後回しになっていて、ほとんど「シリーズ読破目的」で読んだ。そういう構えがいけなかったのだろう、読んでいてもイマイチ興が乗らず、えらく時間がかかってしまった。(古本で購入したのがかなり昔の版で、狭い行間でびっしり書いてある体裁だったのも手伝った)
犯人の意外性はなかなかのもので、悪くはなかった。が、それを看破するための手がかりの文章中のちりばめかたが、よく言えば巧妙、悪く言えば意地悪な紛れ込ませ方、と感じた。事件現場や捜査中の言動の描写を、そこまで注意してくまなく読んではいられない性分なので、解決編を読みながら前の部分を何度も繰り直した。 それに、時代のこともあるので一概にはわからないが、それにしても警察がきちんと捜査しているような案件で被害者の確認はこんなものなのだろうか?とも思った。一方で、銃弾の弾道痕の解析までする科学的な捜査がされているのに…。あまりにアンバランスな感じがどうしてもしてしまう。 |
No.392 | 7点 | ヒポクラテスの憂鬱- 中山七里 | 2016/11/26 20:08 |
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法医学会の権威、光崎教授の研究室に属する、栂野真琴を主人公とした短編シリ―ズの第2弾。
相変わらずの光崎教授の天才的な卓見と、誰に対しても歯に衣着せぬ物言いは痛快。今回は、全編を通して「コレクター」と名乗る、県警の掲示板に意味ありげな書き込みをする人物が登場する。各編でそれぞれに解決ある話を示しながら、一冊を通して「コレクター」に迫る、と構成で前作よりも味付けがされている。 ただ、その分一作ずつの質は前回の方がよかったような気もする。県警が事故や自殺でさっさと片付けようとする事案の、真相の意外性とその手際は、個人的には1作目ほどではなかった。 |
No.391 | 5点 | スリーピング・マーダー- アガサ・クリスティー | 2016/11/26 19:51 |
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記憶の奥にかすかに残る殺人。魅入られるように決めた新居が、実は自分が幼いころに住んだ家で、それがきっかけでその記憶が蘇る。殺人は本当にあったのか、であれば犯人は誰なのか―。
ミステリである以上、実際に殺人があったことは間違いない(まぁ、そうではなかったという解決もあり得ないことはないが、そんなことなくてよかった。これはネタバレにはならんでしょう) 過去に起こったことを暴くスト―リ―なので、周囲に真犯人はおり、素知らぬ顔で主人公に付き合っている人間の中にそれがいるのかと思うと…というスリルはあった。 ミステリとしては標準レベル、だと思う。翻訳ものとしては読み易いのは相変わらず。 |
No.390 | 5点 | 呪い殺しの村- 小島正樹 | 2016/10/09 21:40 |
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タイトルといい、表紙といい、閉鎖的な村という舞台といい、「呪殺」といい…横溝正史、三津田信三を思わせる本格志向の作家というのはよく伝わってくる。その雰囲気は好きだし、東京の殺人のシ-ンなどはちょっとぞっとしたし、読み物として面白く読め、メインのトリックはなかなか面白かった。
しかしながら今一つ評価が伸び悩むのは、大仰な謎の提示の割には明かされるトリックが小粒というか、小手先な感じがするのと、トリックに必要な部分以外が「木の陰で目立たないようにやり過ごした」的な雑な感じがするからだ。ある意味同等に不可能だと思われる部分なのに、「なんとかした」みたいになってしまっているのが、一方では理詰めで追っているのに非常にアンバランスで、腑に落ちない。 数多くの謎を入れ込み、ある程度のところまではそれらを結び付けているのだが、最後の詰めが雑な感じがして、ある意味「風呂敷を広げ過ぎて、収集しきれていない」感じがする。 本格好きであれば好まれそうな作家なのだが、他作品でもたいてい5~6点あたりで軒並みとどまっているのは、そんなところに原因があるのではないかと思う。 |
No.389 | 9点 | 確証- 今野敏 | 2016/10/09 20:57 |
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捜査三課・盗犯担当のベテラン刑事、萩尾秀一と、相棒の新人・武田秋穂は、渋谷で起きた窃盗事件の捜査に乗り出す中、前日の同時刻に同じ渋谷で起きた強盗殺人事件との関連を疑う。しかし、強盗殺人事件を担当する捜査一課の菅井は、そんな萩尾たちをはなから見下し、自分たちの方針に従うよう高圧的な態度で要求する。盗犯捜査一筋、周りからも一目置かれるほどの実力者萩尾もただでは引かない。「窃盗事件は、前日の強盗殺人犯に対するメッセージだ」と考える萩尾たちの捜査は果たして…。
相変わらずキャラ設定がうまく、いぶし銀の捜査官・萩尾、分かりやすいほどの憎まれ役・菅井の対立が面白い。もちろんそうしたエンタメ要素だけでなく、2つの事件とその背景にある盗犯者たちの人間関係、真相へと近づく捜査過程も面白い。 読ませる作家、今野敏健在。そう思わせる快作だった。 |
No.388 | 7点 | 図書館の殺人- 青崎有吾 | 2016/09/24 21:03 |
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図書館が舞台ということで、必然的に本とかミステリとかいったことがチラチラ出てくるのがまず楽しい。山田風太郎の「人間臨終図巻」に早速興味がわき、それこそ行きつけの図書館で借りてしまった(笑:さすがに書庫からの取り出しでした)
ロジカルな仕組みには定評のある作者だが、基本的に「風ケ丘」メンバ―のキャラクタ―、ウィットに富んだテンポのいい展開が、リ―ダビリティを大きく高めていて、その中で披露されるロジックだから心地よいと感じる。 ただ、私としては意外にロジックに飛躍を感じる部分も結構ある。裏染天馬のあまりにもスマ-トで天才的な推理は、見ている分には気持ちがよいが、意外に他の選択肢を主観で切り捨てていたり、「それ以外は絶対ない、ってこともない」と思えたりすることもある。だから、天馬の不可思議な行動を、種明かしの前に看破できることはまずなく、結局「解答待ち」になってしまうのがちょっと悔しい。 ただ前2作よりは確実に面白かった気がする。なぜなんだろう。「やっぱり1作目がよかったよね」とならないことは嬉しいことなので、今後の作品にも期待したい。 |
No.387 | 5点 | 螺旋の底- 深木章子 | 2016/09/24 20:44 |
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村の名士のもとに嫁いだ女性。その住処である古い館には、大戦のころ、いわれのない罪を着せて処刑された村人たちの遺体が隠されているという。
現在は時を経て、平穏に見える村だが、夫も、妻も、何かしらの企みをもっているような不審な行動が続く。いったい村に何が起きているのか、妻のねらいは何なのか…。 外国を舞台にした話にしては、展開に平易なところがなく、面白く読み続けることができた。ただ、最後の真相が、ちょっと・・・フェアじゃないとまでは言わないけど、「え-・・・そう来る―?」という感があったので・・・この点数。 |
No.386 | 8点 | 鬼畜の家- 深木章子 | 2016/09/24 20:31 |
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面白い。
事故死した家族の保険金が降りるよう、調査を依頼された探偵。探偵の調査相手の話をつないでいく形の中で、次々に分かってくるのが「異常な」家族の物語。調査を進めるにつれ、事件や事故で依頼者以外の全ての家族を失った、ことの真相が明らかにされていく。 真相が明らかにされるにつれて何度もひっくり返される前提。細かいことを挙げれば突っ込みどころはあるかもしれないが、気にせずにこの仕掛けを楽しんだほうがいい。 深木氏の作品は、総じてクオリティが高い。好きな作家の一人になった。 |
No.385 | 2点 | 綺想宮殺人事件- 芦辺拓 | 2016/09/03 20:39 |
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まぁきっと私が頭が悪いのだろう。
読後の正直な思いは「時間の無駄だった」。読み始めた以上は読了しなければという意地と、「それでも最後まで読めば何かしら面白さがあるのでは…」という期待感とで頑張ったが、結局報われなかった。今となっては事件の内容すらあまり頭に残っていない。 クイーンがちりばめる薀蓄や、ファイロ・ヴァンスが披瀝する薀蓄はそれほど苦ではない私だけど、それでもこれは苦痛だった。後半は「早く読了して次の本を読みたい」それだけだった。 ゴメンナサイ。 |
No.384 | 6点 | 憂いなき街- 佐々木譲 | 2016/09/03 20:27 |
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道警シリーズ第7弾。
津久井は、当番明けの夜に立ち寄ったバー「ブラック・バード」でジャズピアニストの安西奈津美と出会う。彼女は「サッポロ・シティ・ジャズ」のバンドメンバーに参加するため札幌に来ていたのだが、そんな2人は惹かれ合う仲に。 しかしそんな中、女性死体が見つかる殺人事件が起き、奈津美に嫌疑がかかる。奈津美の無実を信じて捜査を進める津久井だったが… 道警シリーズもシリーズとして進み、登場人物に愛着もあるので、私としては無条件に楽しめる。今回もまた「津久井チーム」と、別の事件を追う「佐伯チーム」との「2本線で話は進められる。ただ、今回は明らかに物語の主は「津久井チーム」であり、2本の線が交わる感じはなかった。 作者の北海道やジャズへの愛着が強く感じられ、何となくそれも好ましく感じるため、読後感もとてもよかった。 |
No.383 | 6点 | 犬の掟- 佐々木譲 | 2016/09/03 19:52 |
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所轄の違う2つの路線で話が進められていくのは、「道警シリーズ」で氏がよく使う手で、今回もそのパターン。慣れない人には読みづらいかもしれない(私は慣れているので大丈夫だった)
余計な虚飾のないストーリー展開はやはり読み易い。かといって味気ないわけではなく、人間要素も描かれているのが氏のうまさ。何を読んでも平均以下ということはなく、安心して手がつけられる。 真相は意外性は確かにあるが、一方で「もしや…」という怪しさもあった。ある意味フェア。後味は人によって悪い人もいるかもしれない。 最後に、タイトルの趣旨がよく分からなかった。 |
No.382 | 6点 | クララ殺し- 小林泰三 | 2016/08/27 13:38 |
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前回に引き続くパラレル・ワールドの設定で、地球と同時進行の別世界とを行き来する構成も前回と変わらず。カタカナ名の登場人物が多く出てきて、地球の世界との重なりを考えながら読まなければならないややこしさはあるが、蜥蜴のビルをはじめとしてそれぞれのキャラが立っていて、ユーモアも十分にあり、楽しんで読める。
今回はポイントが「誰が誰なのか?」だけにとどまらず、新たな要素も入ってきているので、その点では二番煎じ止まりにはなっていないとは感じたが、そのことによって複雑さもやや増した感じもあった。 最後の推理と真相には、それなりに満足した。 |