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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1848件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.48 7点 春から夏、やがて冬- 歌野晶午 2012/02/23 06:43
 つくづく、『葉桜』は歌野晶午にとって重い枷になってしまったなと思う。こういった、人生の悲喜こもごもを描く類の長編を読むと、ついついどんでん返ししかも叙述トリック系を期待してしまうけれど、そういうネタは予め期待している時点で効果半減なのである。
 本作も、先入観がなければ結末でもっと驚き、感動できたのに。ということで、いっそのことこれ系は別名で発表して下さい!!

No.47 6点 ハードラック- 薬丸岳 2012/02/23 06:40
 社会的テーマとミステリ的意外性を結び付ける手捌きが悪くはないが、しかし気になる部分もある。
 ネタバレ承知で書くが、
 1.「バーボン」「テキーラ」更には「ラム」も「サカイ」の関係であるなら、わざわざ仁の求人に応募して主導権をのっとるというまわりくどいことはせず、自ら求人すれば良い。仁が既に自分のプランを持っていた可能性もあった筈。
 2.「ラム」の「50万円取り分を多くして」という発言はメンバー間の不和や計画の破綻を招きかねないもので、「ラム」の立場を考えると不自然。
 3.真犯人が最後まで仁と行動を共にした理由があまりにとってつけたよう。メインの計画自体は概ね上手くいったわけで、さっさと逃げれば逃げ切れたように思うのだが。

No.46 5点 ゴーグル男の怪- 島田荘司 2012/02/23 06:38
 なんか変だ。ネタバレ承知で書くが、作詞家・実相寺と真犯人との関係を考慮すると、実相寺が最初の事件の通報者になったのは偶然過ぎないか。そのせいで実相寺と刑事との間に直通のラインが出来たわけだが、もしもそれがなければ駅前での突き飛ばし事件の際に登場してすぐ消えた真犯人の名前も不明だったかもしれず、そうなると容疑者圏内に入ってこなかった可能性もあるわけだから都合良過ぎでしょう。
 また、釣銭のネタは別の某作で言及されていたものの使い回しでがっかり。
 そして相変わらず文章が妙に硬いなぁと感じた。

No.45 6点 愛娘にさよならを- 秦建日子 2012/02/15 16:34
 おそらくこの作者にとって、ミステリとは忠誠を誓う対象ではなくて、あくまでエンタテインメントの為の技法のひとつ、なのだろう。“刑事の勘”とやらがが隠れた点と点をピンポイントに結んでゆく展開は褒められたものではないが、キャラクターものとしては面白い。
 しかし、シリーズのヒロインにこの仕打ちとは……。

No.44 4点 ロートケプシェン、こっちにおいで- 相沢沙呼 2012/01/19 10:19
 教室内派閥のあれこれだとか、高校生男子の恋情と性衝動のせめぎ合いだとか、どうも紋切り型でいまひとつ楽しめなかった。地の文でどもるのが非常にわざとらしい。叙述上のトリックも途中でなんとなく読めてしまったし。
 ところで、私は“酉乃”をついニシノと読んでしまうのが最後まで直らなかった。

No.43 8点 殺人鬼フジコの衝動- 真梨幸子 2012/01/04 15:53
大変面白くほぼ一気読みだった、けれど、近年話題になる類の殺伐とした話題を寄せ集めて料理しただけ、という印象もある。勿論これだけ読ませればそれで充分だが、心にガツンと来ること無く消費してしまったのは否めない。「とても楽しめた」けれど、それは必ずしも「高評価」とは違うんだなぁ。

No.42 4点 アンドロギュノスの裔(ちすじ)- 渡辺温 2011/12/10 10:13
 うーむ、時代的にミステリとしての構成や文体が未整理なことを差し引いても、“埋もれた秘宝”として騒がれる理由はよく判らないなぁ。あまり過大な評価は出来ません。

No.41 8点 モザイク事件帳- 小林泰三 2011/12/07 17:05
 『大きな森の小さな密室』と改題のうえ文庫化されたものを、同一内容だと気付かず図書館で予約してしまい、せっかくなので再読したところ話を全て忘れており、全編しっかり楽しめた私である。田村ニ吉か。
 随所で暴走する論理(屁理屈?)が面白い。

No.40 6点 火刑法廷- ジョン・ディクスン・カー 2011/11/30 16:10
 新訳版で読んだ。
 やや大仰でまわりくどい感じがあり、それは作風なのだろうが、トータルで見て謎の大きさに対して話が長過ぎてバランスが良くない印象ではあった。
 扉のトリックは弱い。つまり、鏡を利用したネタだという予想はすぐ付くけれど、文章では現場の細かい位置関係は把握しづらいので、説明されてもピンとこない。ああそういう設定なんですねという程度。
 “毒殺魔の写真と妻がそっくりな理由” には拍手。
 とはいえ全てを台無しにする(褒め言葉)ラストは面白い。

No.39 7点 人間の尊厳と八〇〇メートル- 深水黎一郎 2011/11/30 16:01
 収録短編はどれも読みやすいけれど軽薄ではなく、いい塩梅の読み応えだった。
 「北欧二題」の“ルビ以外の箇所ではカタカナを一切用いていない”試みには解説されるまで気付かなかったが、表意文字としての漢字の美しさは私も常々感じており拍手を送りたい。ただ“規則(ルール)”や“歌劇(オペラ)”などはルビ不要ではないかと思う。

No.38 7点 生霊の如き重るもの- 三津田信三 2011/11/25 10:03
 一話目の“四つ家”の構造について、“東西の廊下の中央を開けて出入りできるようにした”のに、何故そこを出入り口に使わず他人の室内を通る習慣が維持されているのかが謎。

 総合的にはとても濃い短編集だと思います。

 タイトルの“重る”は上手い当て字ですね。

No.37 10点 不気味で素朴な囲われた世界- 西尾維新 2011/11/02 10:30
 ミステリ的小ネタをキャラクターで拡張した感じ、と書くと批判のように見えるが、同時にそのまま褒め言葉でもある。こういうニコニコした殺伐さはもしかすると近年よくある世界観なのかもしれないが、これだけ鋭いのはやはり見事。
 TAGROのイラストのせいで『変ゼミ』とイメージがかぶってしまうので困った。
 ところでシリーズを続けて読み返して初めて気付いたが、前作中で登場人物が解説していた後期クイーン問題を実践したのが本書なのである。2冊の刊行時期には4年の間がある。気の長い伏線である。

No.36 6点 詩的私的ジャック- 森博嗣 2011/09/14 16:27
 作中の歌詞と殺人事件が類似している、というのはあまりに恣意的すぎると思う。この程度で疑われるならヴィジュアル系やへヴィメタルのバンドマンはみんな容疑者である。
 動機も筋が通っていないように思う。“人を殺した相手をそのまま愛せるような人じゃない”からといって“綺麗にするため”に自分が人を殺すというのは首尾一貫していないだろう。それなら自分自身もリセットしなければならない。人殺しそのものではなくて、露見するか否かを問題にしているようで、それは作中で代弁されたような“汚れたものが嫌いで、純粋で、高尚で”という精神性とは思えない。むしろ、親しい者の犯行が露見することによって自分がさほど純粋でも高尚でもないということに直面するのに耐えられずに全て無かったことにしたかった、のではないかという気がする。

No.35 7点 叫びと祈り- 梓崎優 2011/09/07 16:01
 最終話が、くどい。1~4話目まででシリーズ短編集として充分なクオリティなのだが、ラストで連作長編にまとめようとしてしくじった、という印象である。
 叙述トリックについては途中で読めてしまったものもある。しかし、必ずしもそれがミステリとしての核ではないこともあり、別段マイナス要素とは感じなかった。(個人的には、トータルで面白ければトリックの使い回しはそれなりに大目に見て良いと思っている。)

No.34 7点 魔女は甦る- 中山七里 2011/08/24 15:36
 もう全く個人的なことなんだけど、本作の舞台とされている埼玉県所沢市に30年以上住んでいます。細かい地名や場所設定は架空のものですが、なんだか妙なリアリティというか、フィクションと自分の生活の境界線が曖昧になるような感覚を読みながら味わいました。“国道沿いの集落から一キロほど離れた沼地”って、ああ、あそこか……なんて自分の中で勝手に具体的に決め付けたり。こういう読書体験は初。
 しかし、“わしみたいな田舎の駐在は事件ちゅうても喧嘩か窃盗を相手にしとるだけで、都会の犯罪がどんなものなのか新聞やニュースでしかお目にかかれません”って、そこまで田舎じゃないよ所沢は(笑)。

No.33 6点 メルカトルかく語りき- 麻耶雄嵩 2011/08/10 18:34
 この作者はきっと“ミステリはなにゆえにミステリなのか”を熟考しながら執筆しているのだろう。それゆえ奇想の続出になるのは当然の成り行きなのだ。ただ、この短編集では作品そのものの面白さよりも作者のスタンスが勝っているきらいがある。というより“実験的本格シリーズ”と謳い文句にあるように、特にそういう傾向の短編を集めたのだろう。つまりこの本自体がまるごと、ミステリというジャンルに対する批評、である。それを受け入れる度量があるか、読者は問われているわけで、アンフェアだとか脱力系オチだとか言ってはいけないのである。

No.32 8点 おやすみラフマニノフ- 中山七里 2011/08/04 08:13
 これも広義でのネタバレか。
 性別誤認の叙述トリックかと疑ってしまった。つまり晶=女。初音が部屋に誘うとか、“ボク”というカタカナ表記がその伏線で。晶の(本当の)素性に関する伏線はミスディレクションである、と。見当外れな読みだったわけですが。

No.31 8点 燔祭の丘- 篠田真由美 2011/07/06 19:29
 このシリーズは、最初の方が端正な純ミステリだったのに、ラスト数作はそれを置き去りにしてまでも“善玉対悪玉”的な対決にこだわっている。必然性があるのは判るが、番外編の多さと相俟って、今振り返ると妙に歪な形のシリーズとして決着したという印象を覚える(それがマイナスだとは言わない)。
 あと、“暗示をかけて他人を思うままに操る”というワザが、なんかもう超能力か憑き物かというレヴェルで描かれているが、世界観の整合性という点でこれはちょっと行き過ぎな気もする。西尾維新じゃないんだから。
 とはいえ、とても面白かった。最後に綾乃さんがくっついたことだけは許せん(笑)。

No.30 6点 見えない復讐- 石持浅海 2011/06/22 15:16
「佇む人」の論理はいただけない。“付け忘れ”と“破損”とどちらを先に考えるかなんて個人的な差に過ぎないことを、一般論にして話を進めている。“避妊失敗の原因をピンポイントで決め付けているのが不自然”という疑い方ならまだ判るのだけれど。
 意外な方向へ進む論理展開が、重過ぎず軽過ぎずの文体とも相俟って、西澤保彦を読んでいるような錯覚を覚えた(珍姓が出て来ないこと以外は)。

No.29 6点 私たちが星座を盗んだ理由- 北山猛邦 2011/06/15 17:28
片山若子の表紙イラストのせいで、つい米澤穂信を読んでいるような錯覚に陥ってしまう。
 というのはそれなりに褒め言葉になるのだろうか?

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虫暮部さん
ひとこと
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泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
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