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虫暮部さん
平均点: 6.21点 書評数: 2040件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.280 6点 人間の顔は食べづらい- 白井智之 2015/11/27 09:32
 基本設定は凄いツボ。しかし、登場人物の動きが不自然に感じられる箇所は多々ある。
 因みに、“柴田和志(通称チャー坊)” というのは “村八分” のヴォーカリストの名前そのまま。同バンドのギタリストは “山口冨士夫”。タイトルは “ヒカシュー” の♪人間の顔は面白い~、という歌をもじったものか。

No.279 6点 その可能性はすでに考えた- 井上真偽 2015/11/17 12:34
 ひとつ違和感があるのは、ギロチンや閂について、少女は体力的に動かすのは無理、と断定していること。ちょっと基準がファジィではないか。もっと物理的な根拠を用意して欲しかった。

No.278 7点 記憶破断者- 小林泰三 2015/11/02 11:50
 前向性健忘症の田村二吉(!)が、特殊能力を持つ殺人鬼と対決する(!)という話。雲英(きら)というネーミングから察するに『デスノート』へのオマージュ? スピード感のあるストーリーの途中に結構込み入った論理が組み込まれていて引き止められてしまうのが難だが、作品の性質上仕方ないか(止まっちゃうのは私の理解力の問題だし)。
 気になった点。第2章で、コンビニでせいぜい2000円程度の品物のためにアレコレやっているが、それは効率が悪い。「能力」でいくらでも他人からカネを引き出せるのであれば、万引きをする必要は無いだろう。こういう能力の持ち主は、カネに頓着しない性格になるのでは?

No.277 7点 美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星- 西尾維新 2015/10/26 11:45
 西尾維新、なんか色々やりたい放題である。狙ってるなぁと思いつつ乗せられれば爽快。まぁ冷静に見れば一発ギャグみたいなコアのまわりにラノベ的な彩りをぐるぐる巻き付けて長編に仕立てたもの。ぶちこまれるオマケの要素は典型的ではあるが、巧みな文体によってラノベに対する批評にもなっている、とは愛読者の欲目か。〈物語〉シリーズがハーレムものだったのでバランスを取るために美少年山盛りのシリーズを立ち上げたのかと愚考します。

No.276 8点 愚物語- 西尾維新 2015/10/22 11:46
 まだ続く〈物語〉シリーズ、ファイナルシーズンのあとのオフシーズン第一弾だそうです。第一話「そだちフィアスコ」はハードボイルドの新参者ネタを青春小説風にソフトに書いたようなもの。第二話「するがボーンヘッド」は暗号ものなのでミステリと言えなくもない。あくまで西尾節であってミステリとしての面白さとは違うけれど。

No.275 5点 署長・田中健一の憂鬱- 川崎草志 2015/10/22 11:43
 これはまた思い切った新機軸。田舎のお飾りキャリア警察署長が活躍しないユーモア小説。ミステリ味は薄い。お約束的な部分は多々あるが、そこを上手く読ませるセンスは感じる。こういう路線を更に何冊も望むかと言われれば否だが……。

No.274 7点 美森まんじゃしろのサオリさん- 小川一水 2015/10/22 11:41
 イマドキの過疎地を舞台にした軽妙な連作。ミステリ的には地味だが登場人物が生き生きとしていて読ませる。過度に説明せず少々判りにくい書き方も、回りくどいと感じる手前で抑えており良い塩梅(“武者烟”のメカニズムはもうちょっと説明が欲しかった)。作品世界にずっと浸っていたくなる佳品。

No.273 6点 誰がカインを殺したか- 篠田真由美 2015/10/16 10:46
 ミステリ的にはさほどピンと来ないが、キャラクターの良さで読ませる。行動が不自然に感じられる部分もあるが、そもそもシチュエーションが不自然だから仕方ないか。「コックリさんと喫煙と十四歳の研究」が最も面白かった。
 将=すすむ、征=まさし、というネーミングは紛らわしい。“将”を“まさし”と読みそうになって“えーっと、そうじゃなくて読みは……”と何度も止まった。
 尚、巻末の謝辞でやや曖昧な説明になっているが、“三つの箱の選択問題”は“モンティ・ホール問題”と呼ばれアメリカのテレビ番組が元ネタとされる。

No.272 8点 掟上今日子の遺言書- 西尾維新 2015/10/11 11:14
 遺言少女の心情が、私には非常に腑に落ちるものであるのが良かった。
 表紙イラスト、読み終わって見返してみると結構な仄めかしになっている。

 気になった点。松葉杖は、一本だけであれば、怪我をした足(右足)と反対の側に突くのが本来の適切な使い方だが、今日子さんが「右半身に」寄り添ってきた、とある。ギプスに触りたいから(笑)?

No.271 6点 あぶない叔父さん- 麻耶雄嵩 2015/10/07 10:50
 『化石少女』で味を占めたか……。

No.270 4点 教会堂の殺人〜Game Theory〜- 周木律 2015/09/24 10:31
 シリーズの一冊、大きな謎の一部、としては面白いのだが納得出来ない点も多い。
 ①82ページの図版を見ると良く判るが、天井のハッチの縁に手を掛けて懸垂の要領で身体を引き上げるだけの体力が無いと、これ以上先に進めないのでは。
 ②宮司司は、午前二時に脱出のチャンスが訪れることを発見しながら、何故その時に逃げなかったのか。
 ③数学者(&新聞記者)と警察関係者は、同じ“真実を探す”といってもその行動原理というか気の持ちようは違うはずで、後者(船生や毒島)の一匹狼的な追跡行はしっくりこない。

No.269 5点 ゼロの迎撃- 安生正 2015/09/08 11:55
 それなりに面白くはあったけれど、紋切り型の人物像や時々出て来る妙に大仰な文章には困った。ここまでの緊急事態に主人公がこんなに孤立した状態で対処するのもピンと来ない。

No.268 5点 怪盗グリフィン対ラトヴィッジ機関- 法月綸太郎 2015/09/07 09:29
 旭ハジメのイラストがナイスな素敵な本。
 やけに伝聞の多い構成が、量子論的な世界の曖昧さの表現に一役買っている。

 trotter =早足(トロット)の調教を受けた馬。ということは、P・K・トロッターというネーミングは、ディックが馬並みという洒落か。まあ下品。

No.267 5点 ドS刑事 桃栗三年柿八年殺人事件- 七尾与史 2015/09/03 08:51
 描写のリアリティの無さゆえに荒唐無稽なストーリーは却って(辛うじて)成立。発想は面白い。ラストの五点界のくだりにはもう少しページを費やして欲しかった。

No.266 8点 掟上今日子の挑戦状- 西尾維新 2015/08/24 10:37
 「アリバイ証言」がなんか変だ。登場人物の台詞通り、“そんな仕掛けは必要ない”のでは。お湯をちょろちょろ流しても、ドライヤーを直接湯船に浸けても、後始末する人間がいるなら最終的に公開される事件現場は同じでしょう?

No.265 8点 ヒトクイマジカル- 西尾維新 2015/08/19 10:33
 いの字がみいこさん相手に切れる場面が痛くて好き。剣玉の場面も微笑ましくて好き。
 少年漫画みたいな世界観ゆえにOKなトリックを持ち出すあたり、自分が何をやっているかはちゃんと判っていますよ、という感じで良い。

No.264 8点 サイコロジカル- 西尾維新 2015/08/07 09:37
 《堕落三昧》斜道卿壱郎博士の存在感が弱いというかそんな化け物のようには感じられないところが物足りない。博士への畏怖、忠誠、反動、といったものが登場人物の言動に大きく影を落としている割に、本人はこの程度の老人? 研究施設も例えば鴉の濡れ羽島のような異常な場という感じではないし、“特異性人間構造研究”もイメージしづらいので兎吊木垓輔や玖渚友が拘束されることの重さがピンと来ない。全体として、具体的な切迫感があまり感じられないのに、一部の人間だけが妙にテンパっているような印象。
 いーちゃんが犬を殺すシーンが好き。

No.263 5点 黒猫の三角- 森博嗣 2015/08/03 09:30
 読者から犯人を隠す叙述トリックは上手いが、犯人の行動そのものには説得力が感じられず評価半減。特に7月7日を6月6日に変えた件。

No.262 6点 命に三つの鐘が鳴る Wの悲劇’75- 古野まほろ 2015/07/28 11:38
 衒学趣味を排して、意外なほど骨太な警察小説。濃密な思いのぶつかり合いが描かれていて読み応えがある。ただ個人的には、結末で明かされる雄人と和歌子の関係にさほど抵抗は感じないので、ホワイダニットとしての衝撃には欠けた。あと東京ディズニーランド行での“差額精算”の手掛かりはわざとらしいというか、その場で未緒ちゃんが気付きそうなものだが。

No.261 8点 クビツリハイスクール- 西尾維新 2015/07/28 11:37
 いくら好きでもこれをミステリとして高く評価するのは難しいが、贔屓目に見るなら小うるさい約束事で自縄自縛になるミステリに対する批評として機能していると言えなくもない。面白いんだからいーじゃん。子荻ちゃんが好きです。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.21点   採点数: 2040件
採点の多い作家(TOP10)
山田正紀(111)
アガサ・クリスティー(80)
西尾維新(73)
有栖川有栖(52)
森博嗣(50)
エラリイ・クイーン(49)
泡坂妻夫(43)
歌野晶午(29)
小林泰三(29)
島田荘司(26)