皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.22点 | 書評数: 1953件 |
No.253 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖6- 三上延 | 2015/05/20 10:43 |
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謎の構造としては面白い。が、私には稀覯本を求めて右往左往したり刑事事件を起こしたりするキャラクターが愚者にしか思えない。割に合わないことしてるな~という感じ。
古書店は稀覯本に価値があるという価値観を率先して支えている筆頭なわけで、栞子さんも広義の共犯者というか、自縄自縛に陥り気味、といった印象である。 |
No.252 | 6点 | 化石少女- 麻耶雄嵩 | 2015/05/20 10:42 |
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私もこんな、生徒会役員がこぞって殺人を企てるような高校で青春を謳歌してみたかった。自分が被害者にならない限り。
エピローグでの語り手のショックは上手く伝わってきたので、作者の意図は成功していると思う。 難を言うなら、第六章で、隠滅されずに“痕が残っていた”のは恣意的なミスではないか。 |
No.251 | 8点 | 掟上今日子の推薦文- 西尾維新 | 2015/05/07 09:10 |
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登場人物が4人(うち2人は探偵と語り手)という、ミステリとしてはなかなか挑発的な構造で、しかもストーリー自体は結構単純で、紆余曲折で引っ張るわけではない、にもかかわらずこのサイズの長編に仕立て上げて面白く読めてしまうのだから作者の筆力恐るべし。
ところでこのシリーズで私の印象に最も残るのは、一見萌えキャラのような今日子さんの“忘却探偵”ゆえの深い孤独(前作の語り手・隠館くんが影も形も無い)。そしてそれを平然と飲み込んでいるっぽい彼女のメンタリティの不気味さ、である。 |
No.250 | 6点 | 地球儀のスライス- 森博嗣 | 2015/04/13 07:34 |
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ミステリ度の高いものは面白かったが、そうでないものはそうでもなかった。「僕に似た人」はなんだかさっぱり判らん。何か裏の意味があるの……? |
No.249 | 5点 | 恋と禁忌の述語論理- 井上真偽 | 2015/03/10 18:25 |
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ただややこしくしているだけ……という思いが半分。一方で、こういう味付けを加えることで、割と古典的なミステリのネタを上手く転がすのはそれはそれでアリかとも思う。
ただ、カヴァーイラストが『ビブリア古書堂の事件手帖』と同じ越島はぐ、というのはあざとい。これちょっと反則では? |
No.248 | 5点 | 天空の蜂- 東野圭吾 | 2015/03/10 18:25 |
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出入者管理表にシャープペンシルで書き込んだ名前を消して書き直したなら、元の名前の筆圧が残ってしまうから、注意深く調べれば解読出来るのでは。出来る出来ないはともかく、その可能性について全く言及されていないので、“間抜けどもめ!”と叫んでしまった。 |
No.247 | 6点 | 有限と微小のパン- 森博嗣 | 2015/03/10 18:23 |
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一連の“事件”に、“犯人役”は設定されていない(よね?)。ただ単に不可解な出来事が続くだけ。それって、萌絵を観客に想定したアトラクションとしては戦略ミスではないのか。全てフェイクだと見抜かないと勝てない知恵比べ、というのは企画としてアンフェアでは。きちんとしたトリックと犯人が存在して手掛かりを辿ればその謎を解ける、というほうが絶対に萌絵は喜ぶと思う。犀川先生が気付かなかったらどうやって幕を下ろすシナリオだったのか?
というか、先生の推理は作者のズルではないかと思うのだ。フェイクだと示す積極的な手掛かりは、見当たらない(ラヴちゃんが見たドラゴン?)。“どう考えても矛盾している、だから全てフェイク”というのは、あらゆる可能性のひとつたりとも見落としていない、という絶大な自信が無ければ出て来ない発想である。一方で先生は“現象が不可解に見えるのは観察の精度が低いからだ”といったことも言っているし、賢いひとほど自分が見落としをした可能性を排除しないと思う。例えば“窓から出入り可能なサイズのロボット複数を使った犯行”なんて仮説はどうか。あの推理がアリならば、世界中のへぼ探偵が自分の推理力の無さを棚に上げて“全て絵空事なのです”と喚き始めてしまう。 再読してみると真賀田四季の才というのはあまり納得出来る書かれ方してないなぁと思った。優秀な学者なのは判るけど、アンタ結構舌先三寸で凌いでないか? という感じだ。 ところで、犀川先生は“瀬戸千衣”と事が始まる前に対面しているが、顔を見て判らなかったのか。 整形した? |
No.246 | 6点 | 絶叫- 葉真中顕 | 2015/02/25 15:29 |
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話題になっている社会問題を幾つか上手に組み合わせただけ、という批判をもはや前提としてこういうものを書ける度胸も立派だと感じる最近の私である。
紋切型の表現が随所に見られるが、文体のオリジナリティとかは端から求めていないからまぁ良いのか。最後の捻りは、仰天という程ではないが上手くはまって納得出来た。二人称の不自然な語り口も、少々強引ながら種が明かされれば腑に落ちた。何より神代という、妙な魅力を持つ鬼畜キャラが最大の収穫。 |
No.245 | 5点 | しだれ桜恋心中- 松浦千恵美 | 2015/02/19 12:00 |
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文楽の世界の群像劇としてはまあ面白い。人形が喋ったり呪ったりが“現実”の領域に引っ張り込まれているのも、違和感は無かった。
ただ、ミステリとしてのカタルシスが足りない。結末で一連の出来事の裏側にあったアレコレが暴露されるけれど、成程そういうことだったのかと腑に落ちるものではない。不条理なりにもっと筋の通った理屈が欲しかった。そういうものを期待して読んじゃったのはアガサ・クリスティー賞受賞作だからで、つまりこれは余計な看板ではないか。 |
No.244 | 5点 | 「ご一緒にポテトはいかがですか」殺人事件- 堀内公太郎 | 2015/02/19 11:56 |
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こういう手軽な芸風を作者自身が志向しているなら、まぁいいのかなぁ。後に残るものではないが、読んでいる一瞬は確かに面白かった。
薬を食品に混ぜてリピーターを仕立てても、ファストフードの価格では採算が取れないと思う。 |
No.243 | 6点 | アールダーの方舟- 周木律 | 2015/02/19 11:54 |
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ミステリとしては定型的だし、“ありがちな変人キャラクター”ばかりだし、もう容疑者が残っていないじゃないかという意味で先が読めちゃったのだけれど、作者の“これを書くべきだ”という強い意志を感じられるところは良いと思った。
ウェスレー博士殺害時の謎解きで、ピッケルならレンズは身体の中に押し込まれるが針金なら抉り出されて落ちる、という理屈は苦しい気がする。何が違う? |
No.242 | 7点 | 姫君よ、殺戮の海を渡れ- 浦賀和宏 | 2015/02/02 12:12 |
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色々突っ込みどころはあるが、ラストには意外と納得させられてしまった。語り手が情緒不安定で下らないミスを繰り返すのがイライラする、のが楽しい。 |
No.241 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖5- 三上延 | 2015/01/29 20:24 |
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風雲急を告げた栞子さんと母と五浦の有様からは目が離せない。が、各話のミステリ要素が栞子さんストーリーの単なる賑やかしのように思えてしまうのは困った。“本を巡る謎”という縛りがパターン化を招く制約になっていないか。でもそれがないと栞子さんのキャラクターは成立しないかなぁ……。
ところで、直筆だからって作家の草稿をありがたがる気持が判らない。書道や絵画じゃないんだから。文章によるコンテンツはいくらコピーしても本質は変わらないじゃないか。 |
No.240 | 4点 | 幻肢- 島田荘司 | 2015/01/27 15:02 |
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精神状態が不安定なひとに対して周囲の者たちが口裏を合わせ一芝居打つ、という設定、島田荘司は4作目か(?)。割と何でもアリになっちゃう、ユメオチに準ずるもので、あまり褒められたものではないと思う。
前半は医学小説(?)。予想出来る後半のどんでん返しは幾つかあったが、その中で最も平和な結末に落ち着いた、という感じ。 ところで、大学生が同乗者を巻き込む事故を起こして、親が何の対応もしていない? “ドッペルゲンガー”ってちゃんと雅人の口から聞いていたじゃないか。 通俗的な恋愛模様もいただけない。結局、小暮さんはどういうポジション? |
No.239 | 4点 | クローバー・リーフをもう一杯- 円居挽 | 2015/01/22 20:32 |
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なんか流行のライトミステリの真似をしただけという感じ。登場人物の行動原理もピンと来ない。“ルヴォワール”シリーズの次の一手がコレ、というのは、せっかく確保したマニアックなファンを手放してしまう戦略ミスでは? |
No.238 | 5点 | 清らかな煉獄- 風森章羽 | 2015/01/19 12:07 |
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器用な作家が既製品を上手にサンプリングして組み合わせた感じ。器用で悪いかといえばそんなことはなく、良く出来た作品ではあるが、ツルツルと小奇麗で引っ掛かりが無い印象。 |
No.237 | 5点 | テミスの剣- 中山七里 | 2015/01/19 12:04 |
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前半の“冤罪の作り方~それが露見して大騒ぎ”という流れは、しっかり書かれてはいるものの、ことさら目新しい話ではなく、“何度も読んだ本をまた読み返した”ような気分。後半も取って付けたような“意外な展開”で、たいしたことはない。
四章。仮釈放された迫水の心情描写、及び渡瀬と白須の対話は面白かった。 |
No.236 | 5点 | 今出川ルヴォワール- 円居挽 | 2015/01/19 12:04 |
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シリーズ3作目でミステリ要素は後退し、というか第一章(前半3分の1)に押し込んで、これで義理は果たしたとばかりに残りはギャンブルによるバトルに突入。意外に楽しめた。あくまで“意外に”であって、なにより“鳳”という遊戯があまり面白そうに見えない。あと、撫子という名前が西尾維新“物語シリーズ”の千石撫子と混ざって困る。 |
No.235 | 4点 | 烏丸ルヴォワール- 円居挽 | 2015/01/13 10:52 |
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まわりくどい書き方。長さに比例する面白さが得られたとは言い難い。 |
No.234 | 5点 | 未来探偵アドのネジれた事件簿- 森川智喜 | 2015/01/13 10:51 |
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タイムパラドクスは苦手だ。こまごま説明されてもどこか納得しきれない部分が残る。その点、本作は割と大雑把に“そういうもんなのよ”というスタンスで片付けているので助かる(笑)。ドラえもんやのび太があまり後先考えずにタイムマシンをガンガン使っても話はなんとなく収まる、みたいな印象。新しい試みをしようという姿勢は買いだが、ミステリにもSFにもなりきれなかったきらいがある。そういう軽さが狙いだとしても、少し物足りなかった。 |