皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.22点 | 書評数: 1953件 |
No.373 | 5点 | 上海殺人人形 - 獅子宮敏彦 | 2017/06/13 12:08 |
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馬鹿馬鹿しいトリックを大時代的な冒険活劇仕立てで有効に。という意図が前面に出過ぎちゃって大味な出来。面白いネタも多々あって悪くは無いが、もう少し筆力が欲しい。
と言いつつ、そのぎこちなさによる嘘っぽい雰囲気がそれなりにプラスに働いている気もする。紙芝居には紙芝居の良さがあるんだ、みたいな。(ところで初版、誤植が多い!) |
No.372 | 6点 | 悪魔のいる天国- 星新一 | 2017/06/01 13:51 |
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ショート・ショート作家は半ば必然的に作品数が多くなるわけで、その全部が名作とはやはり行かない。一編ずつ単独で読めばそれぞれ面白くてもこうしてまとまると玉石混交に見えるのは星新一に限った話ではない。
私の場合、本書では「ゆきとどいた生活」がベスト。或る種の叙述トリック? 一方で、誰かの掌の上で完結するタイプの話(おかしな何かがあるが、それは某がとある目的で作ったニセモノであった、とか)は物足りない。ネタは良くても結末が説明的だと気分が殺がれて勿体無い。あと、最後のセンテンスが三点リーダーで曖昧に終わるものもあまり好きでは……。 |
No.371 | 7点 | 掟上今日子の裏表紙- 西尾維新 | 2017/05/30 08:42 |
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実は真相の核だけ取り上げれば世界シリーズで使ったネタの焼き直し。勿論諸々の細部はきちんと詰めてあるし、今日子さんのキャラクターを生かした設定で面白く読める。何を書くかではなく如何に書くかが大事。
ではあるけれど、割と強気な純度の高いミステリとして始まった忘却探偵シリーズが、巻を重ねるに従いネタの見せ方のヴァリエーション重視にシフトしているのは正直不満。そっち系は美少年シリーズに任せて、こっちはもっとミステリ度強く真ん中にドン!と行ってくれないかな~。つまり“ミステリを読んだ!”という満腹感が希薄なのである。 |
No.370 | 6点 | 星読島に星は流れた- 久住四季 | 2017/05/25 12:07 |
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設定が工夫されていて、事件が起こるまでの前半部分もそれなりに楽しめた。語り手が無色透明で、彼の過去の出来事が取って付けたようなエピソードに感じられた。アレを運ぶのは女性には体力的に無理、とかソレにそのひとがひとりで気付けたとは思えない、というのは根拠薄弱だと思う。
孤島モノはそもそもこういうものだ、と割り切って、既視感があるとかパターン通りとかは極力考慮せずに読もうと思った。 |
No.369 | 8点 | 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件- 麻耶雄嵩 | 2017/05/24 14:45 |
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自爆覚悟のデビュー作って感じだ。とはいえ読み返してみると、記憶に残っている印象よりは随分スッキリしたミステリ。初読時よりロシア云々の知識が多少増えていたので結末は納得し易かった、か?
『隻眼の少女』はいわば本作のオルタナティヴ版なんですね。 |
No.368 | 6点 | ブラウン神父の童心- G・K・チェスタトン | 2017/05/22 10:07 |
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謎と逆説に奉仕する桃源郷。過剰に戯画的ながら、こういう変人ばかりの国も悪くは無い。
ただまぁ、このへんの古典作品の“ルール未整備”な雰囲気には、若干の距離を感じてしまうのも否めず。不親切な部分に対して意識的にこちらから歩み寄って読んでいる、と言う感覚が最後まで消えることは無かった。 早川文庫版で、作者名 Keith が“ケース”と表記されていて、“キースでしょう”と版元にメールしたところ、“ケースが一般的”との返信。そうなの? |
No.367 | 9点 | 禁じられたジュリエット- 古野まほろ | 2017/05/08 14:55 |
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自由と正義についての物語。これが予想外に感動させられてしまった。韜晦で著書を膨らませることも多い作者が言いたいことを直球で問いかけて来た。勿論返事は Oui。
作者は本作の“源流”として『闇の喇叭』(有栖川有栖)を挙げているがさもありなん。というかストレートに影響受け過ぎでしょ。 しかしこの手の虐待ネタのリーダビリティの高さと言ったら!相変わらずのくどい文体をものともせず一気読みした自分にびっくり。 |
No.366 | 5点 | いまさら翼といわれても- 米澤穂信 | 2017/05/08 14:53 |
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「わたしたちの伝説の一冊」冒頭のエピソードは不自然。雑誌の発売日が日曜日に重なったら1日ずれることぐらい、毎号発売日に買っているなら把握出来るだろう。
「走れメロス」の感想文が一番印象に残った。 全体として、ミステリ的には弱いが、文章力で読まされちゃった感じ。但し古典部の面々のキャラクターが少々鼻に付いた。 |
No.365 | 6点 | 狩人の悪夢- 有栖川有栖 | 2017/05/01 10:05 |
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手首切断の論理がゴチャゴチャしていて判りづらい。“カウダカウダ!”の手掛かりは都合良過ぎな気がする。合意の上でのゴーストライターが悪いとは思わない。
“柱をはさんで首を絞める”というアリスの案を火村先生は“ドタバタ喜劇”と評したが、被害者は抵抗しにくく加害者は力をかけやすく寧ろ有効な殺し方だと思う。 |
No.364 | 6点 | 人間じゃない- 綾辻行人 | 2017/04/28 12:09 |
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個々の作品自体は面白いけれど、“未収録作品集”という性質の為か、“○○シリーズの番外編”的なものばかり集まっているせいか、短編集としてはなんだか中途半端。各短編の間に斥力が働いているみたい。
「崩壊の前日」というタイトルは、カルメン・マキ&OZの曲名からの拝借? |
No.363 | 6点 | 朱色の研究- 有栖川有栖 | 2017/04/18 13:31 |
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大野夕雨子殺しの動機は共感出来る。本作の優れたポイント。
だが、作中でアリスも述べているが、崖の上から石をぶつけてひとを殺す、というのは確実性に乏しい気がする。共犯者に依頼する際に指定するような手段か疑問。加害者と被害者に距離がある殺し方じゃないと、実は既に死んでいた、とはならない。そうならないとの後の殺人の動機につながらない、という作者の都合?それはずるい。 また、マンションでの山内陽平殺しで犯人が講じた工作については、そんな賭けのような行動に出る心理的な裏打ちの説明が強引だと思う。余計なことしなければ容疑者圏外だったのでは。 |
No.362 | 6点 | オーブランの少女- 深緑野分 | 2017/04/14 10:19 |
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物語の骨格は古典的だが諸々の味付けが非常に巧み。と言う褒め言葉はそのまま批判でもある。この作者にとって、ミステリは目的ではなく手段なのだろう。その前提で読めばなかなか高水準の短編集だが、私はもう少しミステリ的な捻りの効いたものが好きなので……「片想い」のキャラクターは良かった。 |
No.361 | 9点 | 十角館の殺人- 綾辻行人 | 2017/04/03 14:19 |
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孤島もので時々見られる“このひとたち、どうしておとなしく殺されるまでグダグダしているの?”という感じが無いのは立派。
気になった点。犯人が“各人の部屋を調べようと云いだした時には、少しばかり焦った~まさか身体検査までは行うまい”と述懐しているが、これは見込みが甘くないか?自分の命が懸かっているのだから私だったら検査を強行するけどなぁ。 既に死者が出ている状況で、ミステリ研の人間が、コーヒーカップを洗わずに使う、というのは少々都合の良過ぎる不注意だと言えなくもない。 |
No.360 | 6点 | 螢- 麻耶雄嵩 | 2017/03/30 10:16 |
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イチャモンをつけるなら、これはあまり"螢”って感じじゃないな~。人物、館や楽団の名として繰り返し登場する語だが、作品世界を貫いて象徴するにはイメージがなんか違う。もっとぴったりはまったキーワードがあれば作品に凄みが出たのでは。 |
No.359 | 7点 | D坂の美少年- 西尾維新 | 2017/03/28 10:12 |
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もはやミステリ要素はどうでも良くなっちゃったけど、“応援演説”が凄い。いろんな意味で。まぁこのシリーズはこれでいいや。 |
No.358 | 6点 | 鳴風荘事件- 綾辻行人 | 2017/03/27 09:36 |
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青柳先生殺害時の(不完全)密室トリックについて。“裏の裏をかいた”という論理が出て来るが、それがアリなら“裏の裏の裏をかく”という考えも成立するわけで、結局どうでも良くなってしまう。この部分は好きじゃないな。
ところで、加害者と被害者を引き合わせたのは、つまり事件の遠因となってしまったのは深雪である。それを踏まえると、この後はライトなキャラクターを維持出来ない。シリーズの続きが書かれない理由のひとつはその点ではないかと邪推する私です。 |
No.357 | 6点 | 殺人方程式- 綾辻行人 | 2017/03/18 11:08 |
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共犯者に随分ハードルの高い行為を課している気がする。主犯と共通の目的意識を持つ者ならともかく、脅迫して動かしているだけの相手に首無し死体を扱わせるのは、私だったら不安。自分が同じことをした場合、びびって腰を抜かさない自信は無いな~。他にも、関係者が想定外の動きをしたら破綻しそうな箇所がチラホラあって、結構綱渡りな殺人計画である。 |
No.356 | 6点 | 富豪刑事- 筒井康隆 | 2017/03/06 09:43 |
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作者はもともと本職のミステリ作家ではないことを逆手にとってミステリの持つ形式主義に対する批評を行っている。これを読むと、所謂バカミスにはもっと批評的な作品があっても良い気がするが、私が知らないだけだろうか。
ところで「密室の富豪刑事」。部屋を炎上させるトリックはあるものの、被害者をその場に束縛する手立てが講じられていないのはおかしい。 |
No.355 | 9点 | アルファルファ作戦- 筒井康隆 | 2017/02/28 08:57 |
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「人口九千九百億」が一番好きです。
近年になって編集されたテーマ別アンソロジーよりも、こういうオリジナル短編集のほうが面白い。 |
No.354 | 3点 | ひとごろしのうた- 松浦千恵美 | 2017/02/24 10:29 |
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あまり共感出来なかった。リアリティは重視せずに、音楽シーンを良く知らない読者に向けて、そういう読者が“いかにもありそう”だとイメージしそうな(だけど実は現実的でない)業界エピソードを、優先的に並べたよう。違和感のある描写多数。 |