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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1848件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.328 6点 押絵と旅する美少年- 西尾維新 2016/10/03 07:57
 推理小説というより探偵クイズを文庫本1冊分に引き伸ばした感じだが、リアリティ重視では使えないトリックだし、この作者の些細なことを意味ありげに延々読ませるスキルは楽しめるし、このシリーズは“なんじゃそりゃ~”と笑って読めば良いのだろう。悪魔の毒舌がナイス。

No.327 5点 屋上の道化たち- 島田荘司 2016/09/30 11:48
 私は、風圧か電気による事故だと予想したんだけど……。 

 銀行強盗の夜の出来事だが、トイレのドアがこじ開けられる→外壁から屋上にダイヴ→サンタがジャンプし電線が切れる、という成り行きなのだから、“ドアを開けた瞬間に停電”ではない筈。秒単位の時間差であって同時だと認識しても現実としてはおかしくないが、小説の文章なのだから“瞬間”という言い方についてフォローすべきだと思う。

 過剰に俗物的な登場人物の会話は、たとえ作者の意図だとしても、私には笑えなかった。

No.326 4点 ゼロの激震- 安生正 2016/09/26 12:44
 政治家、技術者、学者etc.を演じている“だけ”のようなステレオタイプな登場人物ばかりでうんざり。批評的な演出? にしてもちょっと……。
 何故このPTSDを患う主人公に、相応のバックアップもせずここまで重い責任を負わせて無理をさせるのか。人道的にどうだという問題ではなく、単に失敗のリスクが増えるだけではないか。話のでかさの割りに、少数のキャラクターがちょろちょろ動いているだけという印象。
 時々挿入されるやたらメッセージ的だったり風刺的だったりする文章も邪魔で、作者が言いたがっていることに却って共感しにくい。そういうことは上手くストーリーを通じて感じさせて欲しい。(あっ、これ前作とほぼ同内容の感想だ。)

No.325 5点 朽ちる散る落ちる- 森博嗣 2016/09/16 16:59
 宇宙密室という非常に魅力的な謎と、そのあまりにも残念な真相。こんなオチでシチュエーションの無駄遣いをするな。
 一方で地下密室の方はなかなか奇抜なアイデアで思わず膝を打った。

No.324 6点 捩れ屋敷の利鈍- 森博嗣 2016/09/14 10:09
 再読したら全編に亘って叙述トリックが施されていることに気付いて仰天した(刊行順に読んで行くと初読時には判りようがない)。こっちのトリックが本命だったのでは。“密室本”という押し付けられたコンセプトを利用して、捨てても良いストーリーをシリーズ間の隙間を埋めるのに使った、という感じ。その発想は面白い。

 本書だけ読むと、西之園萌絵と国枝桃子がガールズラブみたい。

No.323 5点 六人の超音波科学者- 森博嗣 2016/09/09 10:04
 犯人は土井博士が今日死亡したことにするのが目的だった→ならば、死体を消しちゃ駄目じゃん。博士の死の証拠がなくなっちゃう。
 通常は7年間の所在不明で失踪宣告が出るが、“特別の危難にあったときは1年間”とのことで、作中のような“死体消失”のケースはこれに該当するのだろうか。しかしどうせ失踪宣告待ちなら自殺に見せる(橋のたもとに車椅子と遺書を置いとくとか)ほうが簡単そうだ。これには大きなメリットがあって、それは警察の介入度が低くなるということ。他殺設定で行くなら二人目の死者を犯人役にしなくちゃ。
 つまり、一編のミステリ小説に仕立てるにはどうも底の浅い計画であるように思う。

No.322 8点 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術- 泡坂妻夫 2016/09/05 12:06
 この本を参考にして何度か断食の行を試みていますが、毎回2~3日で挫折してしまうのです。

No.321 6点 法月綸太郎の功績- 法月綸太郎 2016/09/04 10:29
 「ABCD包囲網」は酷いな~! なんで犯人のほうからわざわざ警察に接触するんだ。犯人と本命の被害者との間に見かけ上の関係は無い→警察が“動機のある者”を探しても犯人には辿り着かないんだから、余計な工作せずに黙ってサッと殺しとけばいいじゃないか。短編集に再録しないで葬り去ったほうが良かったのでは。
 「イコールYの悲劇」のダイイング・メッセージだが、文字列に既に犯人のファースト・ネームがそのまま含まれているのだから、そこにマルでも付けるほうが早いだろう。ファースト・ネームに欠けている一文字を補う設定なら良かった。“本当の動機”には説得力を感じる。

No.320 3点 推理は一日二時間まで- 霧舎巧 2016/09/01 20:00
 謎が矢鱈強引に設定されているし、真相もたいしたことない。
 あと、本書に限らないが、小説にオタクが登場する時やけに丁寧に説明するのは、仲間内の共通言語で色々ショートカットするオタクの気質のまるで逆で、却って雰囲気を損なっていると思う。

No.319 6点 水車館の殺人- 綾辻行人 2016/08/31 20:25
 メタ的な視点で見ると、現在の家政婦・野沢が殺されるストーリー上の必然性は希薄だ。突発的犯行だし、それによって謎や手掛かりが増えたわけでもない。死体を直接描写した文章が皆無で、倉本と島田の台詞(及び犯人の一人称の文)で説明されるだけという扱い。気の毒に。

No.318 4点 恋恋蓮歩の演習- 森博嗣 2016/08/29 11:09
 最後の手紙が凄く引っ掛かった。
 “もしかしたら、/自分の子供を愛することだって、/できるかもしれない。”
 この程度の気持で養育権を勝ち取っちゃって大丈夫? この気持自体が各務に誘導された結果、ということだろうか?
 “水平の柱”はわざとらしい。梁くらい私だって判る。ミステリに於いて、犯人(というか何らかの悪意を持ったひと)のミスは相応の原因に基づくべきであって、単に手掛かりを提供する為のようなそれは好ましくない。
 また、各務がそれぞれ別のルートで接触した大笛と保呂草が既に知り合いだった、という偶然はかなり苦しい。

 他にもあちこち不自然な気がするし、そこに目を瞑れるほど面白いというわけではない。

No.317 6点 掟上今日子の家計簿- 西尾維新 2016/08/26 10:48
 叙述トリック講座のあとで実践編が示される親切設計。この話はコミカライズ出来るのか?
 今までの同シリーズに比べるとちょっと物足りなかったかな。

No.316 6点 女學生奇譚- 川瀬七緒 2016/08/18 11:10
 私は、何らかの組織が人海戦術で不可解な状況を演出する、という設定には落胆してしまう。それを認めたらなんだってアリだろ。本書はなかなか面白かったが、最後の部分が物足りない、と言うのが忌憚のない感想。

No.315 5点 今夜はパラシュート博物館へ- 森博嗣 2016/08/18 11:09
 うーむ、アナグラムか。続きを考えてみた。

 巨匠、窓見ろ(まどろみ消去)
 殿、死し、公家、問わん(幻惑の死と使途)
 名乗れ、プツリ、か(夏のレプリカ)
 芋は美味いな(今はもうない)
 相撲に来て死刑(数奇にして模型)
 優美、ショパンの桃源(有限と微小のパン)

 ……てな感じでどうかな。ところで『封印再度』には

 産医、不同意
 いい不動産
 インド風犀
 催淫豆腐

 ……といった手もある。あそこで苦しい作例を挙げたのはオチとしての演出?

No.314 7点 ヨギ ガンジーの妖術- 泡坂妻夫 2016/08/09 18:01
 「隼の贄」は、カーター・ディクスン『読者よ欺かるるなかれ』に対するオマージュだよね。

No.313 5点 魔剣天翔- 森博嗣 2016/08/05 18:52
 西崎勇輝を後ろから撃ったら、死体を引き出したって座席の入れ替わりはどうせばれるでしょう。寧ろ適切な位置に移して飛行機ごと燃やしちゃうべき。もしくは2番機に拳銃発射装置のダミーを設置しておくとか。そもそも飛行機の中で殺す必然性があるのか。なんか犯人の考えに筋が通っていないような。
 “パイロットの間では隠せなかったはず”のことをなぜ倉田は黙っていたのか。
 父殺しに協力した弟は許すのか。
 斯様に、森博嗣はミステリのこと良く判っていないんじゃないの、と思わされるポカは多いが、“ダイイング・メッセージは下らない駄洒落である”という伝統は正しく注いで、じゃなくて継いでいるようだ。

No.312 7点 占星術殺人事件- 島田荘司 2016/07/29 11:16
 島田荘司には長文の偽書をトリックに使う作品が複数あるけれど、私はどうも好きになれない。それをやったら何でもアリになってしまうじゃないか。本作で“接着剤”としてアゾート幻想が必要なのは判るし、アンフェアとは言わないが、舌先ならぬ筆先三寸で丸め込まれた印象。
 この謎が“ブームになって議論百出、出版物がどしどし世に出るも、40年以上解かれなかった”と言う設定は強気に過ぎると思う。文次郎手記の内容(死体を配るのは他者にやらせる、精液を残すだけなら女でも出来る)を想像することは可能だから、手記は推理に必須ではない。登場人物が少ないし、順番に疑って行けば真犯人もすぐ俎上に上がる。つまり“解けなかった”とは“決め手に欠ける”ということではないか。では御手洗の場合の決め手は何かといえば、トリックの解明よりも“予想される土地に犯人が居た”ことであり、犯人の後半生を鑑みるにそれは僥倖である。犯人が店を構える以前に謎を解いて嵯峨野をウロウロしていた早過ぎる名探偵がいたかもね。
 中盤の推理合戦で、“血縁者に対して害をなすか?”について、場合によって肯定的だったり否定的だったり、ダブルスタンダードなのが気になった。
 ということで、初めて読んだ時(30年位前!)にはとにかくメイン・トリックに驚愕&興奮したものだが、読み返したらやや冷静な評価に落ち着いた。

 サイコロって吉田拓郎「落陽」へのオマージュ?それは流石にこじつけ過ぎか。

No.311 5点 クララ殺し- 小林泰三 2016/07/26 18:24
 悪くはないが、二匹目のドジョウを狙ったという感がなくもないし、そうまでするほどの物凄いストーリーかは疑問。世界設定のせいで論理が錯綜し過ぎて、驚くべきポイントで的確に驚けないきらいがある。蜥蜴のビルのキャラクターは好き。

No.310 5点 真実の10メートル手前- 米澤穂信 2016/07/21 11:07
 必要以上に後味の悪い結末をいちいち用意するあたりには好感が持てる。
 しかし実のところ、米澤穂信の作風には慣れてしまった。主題に異物を突っ込む手際がどれも似通っているように思う。ストーリー展開には確かに驚くのだが、それがお約束というか、驚いたこと自体に驚けなくなった。短編だと特に顕著。勿論それはこの作者が好きで作品をあらかた読んだ結果の弊害ではあるのだが。

No.309 6点 トリプルプレイ助悪郎- 西尾維新 2016/07/14 11:06
 リュパンや二十面相で育った身にしてみれば、大泥棒はひとを殺さないものだと相場が決まっているのである。従って“一回の盗みにつき三人殺す”という設定は掟破り、いやむしろコロンブスの卵?であるが、しかしそれはなかなかぞくりとさせられる妖しさを放っている。叙述トリックそのものはともかく、それを結構無茶な設定と絡ませるところがいかにも西尾維新そしていかにもJDCトリビュート。文体も含めて気持悪さが快い。

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虫暮部さん
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