皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.22点 | 書評数: 1953件 |
No.913 | 8点 | 新本格魔法少女りすか 3- 西尾維新 | 2021/02/27 13:52 |
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ストーリーとしての動きは少なく前後の巻の橋渡しみたいだが、それでも尚ガンガンぶつかり合うエモーションに泣ける。ゲームの戦略の構成も巧みだと思う。水倉鍵のキャラクターは鬱陶しいけど結構アリ。 |
No.912 | 6点 | 炎の背景- 天藤真 | 2021/02/27 13:50 |
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面白い逃走劇。
しかし、第三章の末尾で新聞を見たおっぺは何に気付いたのか、何をどうするつもりで引き返したのか、それがどのようにつながって第四章の対決場面が成立するのか(罠に対して大物が直接動く保証など無いでしょ?)、さっぱり判らない。上手く大団円に持ち込めなかった作者がそれっぽい流れで誤魔化したような感が無きにしも非ず。 |
No.911 | 4点 | 城- フランツ・カフカ | 2021/02/27 13:49 |
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有栖川有栖作品で紹介されていたので手に取ってみた……のだが、これは読みにくい。いや~しんどかった。
地の文として人物の行動が描かれている部分は、そこに戯画的なおかしみを見出すことも出来る。問題は人が話している部分――これが“会話”と言うよりも交互に長台詞を述べ立てているだけで、その内容も空虚この上なく、恰も読者の忍耐力を試しているよう。これを延々と書き続けられる作者は病気だったんじゃないか。 しかし最終章でアッと驚く真相と言って言えなくもないかもしれないような見解が語られるので(そこだけミステリだ)、うっかり読み始めてしまったなら最後まで読まないと元が取れない。読んでいるうちに自分が何をしているのか曖昧になって行く感覚があり、そうだ、円城塔に似ている。 |
No.910 | 5点 | 心地よく秘密めいた場所- エラリイ・クイーン | 2021/02/27 13:48 |
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バージニアの日記の自意識過剰気味な書きっぷりは面白い。
余計なこと考えずに動機“キューイ・ボーノ”を追及すれば、警察はすんなり犯人に辿り着けたんじゃない? |
No.909 | 5点 | 涼宮ハルヒの溜息- 谷川流 | 2021/02/27 13:48 |
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映画撮影と言うネタはいまひとつ。
しかし、シリーズ化によって基本設定が“前提”になったことではっきり判ったけれど、世界に於けるハルヒのポジションはあまりにも哀しい。自覚を許されないまま箱庭に閉じ込められているのである。 お祭り騒ぎの狂騒的展開を目で追いつつも、私は胸が締め付けられるようだった。皮肉ではない。 |
No.908 | 8点 | 霊長類 南へ- 筒井康隆 | 2021/02/22 11:14 |
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パニック小説は非常時(コロナ禍)に読むと効くわ~。
もし自分がこういう状況に陥ったら、生き延びることを優先して、余計な行動はせずにどこかに隠れる。他人は見捨てるだろう。 と思いつつ読んだので、登場人物たちの或る意味で人情味豊かな言動は不思議で羨ましい。 |
No.907 | 8点 | 妻は忘れない- 矢樹純 | 2021/02/22 11:13 |
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ネタバレするけれど、気になった点。
表題作の終盤、Yが鑑定に応じる。しかし鑑定したらアウトなのである。どうせ負けるのにどういう思いで譲歩したのか。 実はYは、敗北必至だとは考えていなかったのでは? 三股をかけていたのでY自身にも父親が誰だか判らず、故に最初は突っぱねたが、相手側が譲らないので、幾ばくかの可能性に期待して鑑定に応じたのだ。つまり、不義の事実は、あったのでは? 読み返してみると、妊娠の件はともかく、“故人との不義”がYの出任せだったとはどこにも明記されていないのである。 短編集としての難点は、(「裂けた繭」のみ構成上の問題でソレを免れているが)語り手が同じ人物に思えてしまうこと。コレは、風景や空気感、心の揺らぎを繊細に描く筆力があるために却って嵌まってしまう罠? 似たような主人公ばかり書く作家は別に珍しくないから、単に“そういう作風”で片付けていいのだろうか。しかし私には、本書の諸作は、ミステリ〈で〉人物〈を〉描いているタイプに見える。従って、ストーリーや謎が別物でも、キャラクターが同系統だと二番煎じ三番煎じとの印象が残ってしまうのだ。 |
No.906 | 8点 | medium 霊媒探偵城塚翡翠- 相沢沙呼 | 2021/02/22 11:12 |
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この手の作品の場合、あれこれ気付いちゃうのは読み方としては“失敗”なのである。その点で、講談社の売り方は無神経と言うか読者のひねくれ具合を侮っている。『小説の神様』のおかげで“ミステリ作家”のイメージが薄れたのは寧ろ好機だったかも。そこそこ良く出来たキャラ萌え小説、くらいに思っておけば楽しめるのでは。
最後の種明かしの書き方が色々と上手い! M・Y氏の某作を想起した。エピローグの煮え切らなさに得も言われぬ心地。 |
No.905 | 7点 | ネフィリム 超吸血幻想譚- 小林泰三 | 2021/02/16 11:51 |
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なかなか死なない体なのをいいことにやりたい放題。残虐プレイと冷静かつ論理的な文体の組み合わせが笑いを誘う。つまりこの作者の基本的な芸風そのもの。SF的に展開した『ΑΩ』に対してこちらはホラー調だけど、そんなことは枝葉に過ぎないのだ。最初から最後まで血みどろな話で、読み終えて本を閉じたらページの間からドロリと溢れて来た。 |
No.904 | 6点 | 地球・精神分析記録 ――エルド・アナリュシス――- 山田正紀 | 2021/02/16 11:50 |
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最初期のプリミティヴな勢い溢れる幾つかの長編を経て、ゲーム性と虚構性による或る種の冷徹な面白さへと階梯を昇り始めた作品、なんだけどまだ過渡的な印象。後年、過剰になって紙幅を肥大させる神学・民俗学や精神医学からの引用だが、この時期はまだ抑制されていて、今読むと物足りないくらいだ。4章の“犯罪が企業化した社会”の設定は、連作長編の1エピソードで終わらせるには勿体無い。 |
No.903 | 7点 | 白い兎が逃げる- 有栖川有栖 | 2021/02/16 11:49 |
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謎解きに挑戦する楽しさではなく、上手く組み合わさったパズルの完成形を鑑賞するソレ(悪い意味ではない)。「地下室の処刑」の真相が凄いツボ。でもやはり、時刻表はちょっと苦手で……。 |
No.902 | 5点 | 最後の女- エラリイ・クイーン | 2021/02/16 11:47 |
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ジョニーがやけにおとなしそうなキャラクターだったり、元妻らの容疑がアッサリ晴れたりと、内容の成分に比べ妙に平坦な書き方で損をしている。もっと色とりどりに飾ってもいいのに。
某が夜中に錯乱する場面は短いながら印象的。前半の描写とのギャップが、作者の不手際ではなく、平穏な言動の裏に彼女もこんな気持を押し隠していたんだなぁと思えるところが立派。 |
No.901 | 6点 | 人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル- 竹田人造 | 2021/02/16 11:47 |
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阿呆みたいな題名だけどハヤカワ文庫なので手に取ってみた。ゲーム性を重視した近未来クライム・アクション。良く出来ているが、同系統の他の作品より物凄く面白いとまでは言えない。先日読んだばかりの山田正紀の某作と似た味わい。AI 関連の知識が豊富ならもっと楽しめただろうか。八雲さんをチョイ役で捨てるのは勿体無い。 |
No.900 | 5点 | 馬鹿と嘘の弓- 森博嗣 | 2021/02/10 13:43 |
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そういう人生観もアリかな~、と思わせておいて卓袱台返し、みたいな狙いは決まっている。文章力の勝利ではある。しかし現実の事件をそのまま髣髴させる書き方のせいで、非道な展開を無心に楽しめないのは大減点。戦略ミスだと思う。 |
No.899 | 5点 | 櫻子さんの足下には死体が埋まっている はじまりの音- 太田紫織 | 2021/02/10 13:42 |
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ネタが地味だけど、それでもこの程度には仕上がるのだから立派なキャラクター造形だ。今更ながら、語り手の性格の固さと文体が良くも悪くもリンクしているな~と思った。ショート・ストーリー「北方の三賢人」が一番良かった。 |
No.898 | 5点 | ロボット (R.U.R.)- カレル・チャペック | 2021/02/10 13:42 |
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“最初のロボット”がこんなホムンクルスみたいなイメージだったのは意外。最初から“人類に反旗を翻す存在”として構想されたのは――考えてみれば当然か。便利にこき使われてきた存在が心を持てば……。
つまらないとは言わないが、今となってはありきたりに感じる部分も多い。序幕、ヘレナが無知なまま“ロボットの解放”を求めるあたりは批評的で面白い。ロボットは皆同じ顔なんだよね。これどう上演したの? |
No.897 | 8点 | ふしぎの国の犯罪者たち- 山田正紀 | 2021/02/03 12:02 |
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冷水を浴びせるようなラストは、決して嫌いなタイプではないのに、本作に限ってはあまりにショッキングで悲痛。それだけ登場人物達に愛着を感じていたのはニックネームの効用か? どの作戦も綱渡りの連続なのに、夢の中でステップを踏むような遊戯性をうっすらと滲ませた筆致でなんとなく納得させられてしまう。特に、あさっての方から急襲するような3話目のアイデアに感服。 |
No.896 | 8点 | 人獣細工- 小林泰三 | 2021/02/03 12:01 |
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表題作は、厳しく見れば「玩具修理者」の焼き直し。読み比べると「玩具修理者」はほぼ骨格だけなんだな~。私は肉を纏った「人獣細工」の方が好き。
「吸血狩り」。この作者にしてはとてもストレート。 「本」。言語によるソフトウェアが脳にインストールされちゃうことはよくあるよね。これは決して奇天烈なフィクションではないと思う。 |
No.895 | 7点 | 壁- 安部公房 | 2021/02/03 12:00 |
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「第一部 S・カルマ氏の犯罪」は裁判ネタ。フランツ・カフカ『審判』よりはかなり読み易くストレートに楽しめる。
第一部と言っても本書は長編ではなく中短編のアンソロジーに近く、中でも「洪水」が面白い。全体を纏めるものとして『壁』と掲げたのは、読者にとっては親切な道標でも、作者にしてみれば割り切りを強いられたようなものだったのでは。ピンク・フロイドの壁は“分断”だけれど、こちらは“固定”。輪郭が消えてしまうと何処までが自分だか判らなくなっちゃうんだよね。 |
No.894 | 7点 | 文学少女対数学少女- 陸秋槎 | 2021/02/03 11:55 |
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作中作の粗探しによるミステリ論。いいねいいね親近感を覚えちゃうね。うだうだ悩む語り手も正しい青春て感じ。人名から性別が全くイメージ出来ないのが難点(作品に責任は一切無い)。
2話目、ドアの錠が“人を監禁出来る”設定だけどいいのか……? |