皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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kanamoriさん |
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平均点: 5.89点 | 書評数: 2426件 |
No.26 | 5点 | 十四年目の復讐- 中町信 | 2018/03/17 17:30 |
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作者後期のレギュラーな探偵役である和南城夫妻と、「浅草殺人案内」の寿司屋の鬼ちゃん親子という、二組の探偵役が共演する豪華?版で、本作は講談社ノベルスで450ページを超える大作です。
複数の密室殺人と、ダイイングメッセージのダブルミーニングによるミスディレクションなどを織り交ぜつつ、バッタバッタと事件関係者が殺されていく例によって中町ミステリのテンプレートどおりの作品に仕上がっています。 ただ、二組の探偵役が別々に調査活動を行い、コンビの会話で事件の整理をしたり、推理を開陳するパートは、情報内容が重複しており、読者は二度同じ情報を読まされている感があります。二組の探偵役を登場させた設定を上手く活かせきれておらず、そのあたりはやはり冗長に感じられました。 |
No.25 | 6点 | 目撃者 死角と錯覚の谷間- 中町信 | 2016/03/20 00:14 |
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幼い子供2人を犠牲にした轢き逃げ事件の目撃者・香織が、白骨温泉で不審な状況で死亡する。義兄の和南城健は、事故現場から姿を消したもう一人の目撃者が事件の鍵を握るとみて、妻の千絵とともに関係者を訪ね廻るが、さらに第2、第3の殺人が--------。
夫は売れない翻訳家で、妻は時代小説作家という、和南城夫妻を素人探偵コンビに据えたシリーズの第1作。探偵活動と謎解き披露のお膳立てまでを主導するのは妻の千絵だが、最後に真相を言い当てるのは夫.......キャラクターを変えても、基本設定は氏家周一郎シリーズと同じですw 本作も意味深なプロローグに始まり、真相を知る人物がバッタバッタと殺され、密室あり、ダイイングメッセージありで、中町ミステリお約束のガジェットが一通り揃っています。 密室からの犯人消失トリックはやや拍子抜け(しかも過去作の二番煎じ)ですが、部屋のブレーカーを落として暗闇にするというダイイングメッセージの”ホワイ”がユニークで意表を突かれます。これは考えましたね。 連続殺人の構図をミスリードする手際も相変わらず巧く、この時期の作品のなかではまずまずの出来と言ってもいいのではないでしょうか。 |
No.24 | 5点 | 下北の殺人者- 中町信 | 2016/02/20 20:48 |
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中町信の再読マラソン、今年の1冊目。
専業作家になって最初の作品、しかも当時のミステリ出版の舞台としては花形といえるメジャー・レーベル・講談社ノベルズ初登場ということで、気合が入ったであろう力作だと思います。 宝くじのグループ買いで当てた大金が絡む”下北半島温泉バスツアー連続殺人事件”という、基本のプロット自体はこれまで書いてきたものとそう変わらず、中町ミステリのテンプレートどおりの展開。 容疑者候補の県人会メンバーがどんどん減っていくのに、簡単には読者に真犯人を絞り込ませないミスリードのテクニックが読みどころです。 ただ、今作では動機の面から真相に気付かせないよう作者が採った方法が、アンフェアとまでは言えないまでも、あまり好みのものではありませんでした。これだとスッキリと騙されたという感じを受けないので、採点は少し厳しめになりました。 ところで、文庫解説によると、推理作家の津村秀介氏が中町氏と教科書出版会社で同僚だったとのこと。 妄想ですが------- 津村「猪苗代湖、もらっていいかな?」 中町「どうぞどうぞ、こっちは温泉シリーズでいくから」 二人の間で、そんなやり取りがあったかもしれないw |
No.23 | 6点 | 推理作家殺人事件- 中町信 | 2015/04/30 18:28 |
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ミステリー小説界の長老で資産家の松山が旅先の男鹿温泉で崖から転落死し、つづいて、事件の裏事情を知るらしい編集者や推理作家が次々と殺害される。担当編集者の和泉百々子は、秋田に住む推理作家の増尾とともに、松山の旅程を辿り事件の真相を探るが--------。
立風書房ノベルズから1991年に出版されたノン・シリーズ長編。 マンネリに陥っていたこの時期の中町ミステリのなかでは、比較的良作の部類に入ると思われる作品です。 はじめに意味深なプロローグが配され、男女の素人探偵による温泉トラベル・ミステリの様相で展開し、真相を知る人物がバッタバッタと殺されていき、凝りすぎのダイイング・メッセージも出てきて......という、プロットは中町ミステリのテンプレート通りなのですが、ラストの二段階のどんでん返しに繋がる小説全体の仕掛けで読者を予想外の着地点に導きます。 動機のミスリードという中町ミステリの定番の手筋に、さらにひとヒネリ加えているところが巧妙で、最終章前に真犯人にたどり着ける読者は少ないのではないでしょうか。 |
No.22 | 6点 | 偽りの殺意- 中町信 | 2014/10/31 23:27 |
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光文社文庫オリジナルの本格ミステリ作品集、第2弾。前作とは趣が若干違って、アリバイ崩しがメイン、それも時刻表トリックを主軸にした最初期の中短編が3編収録されている。
どの作品も教科書出版会社がからむという設定が似ており、内容も地味ですが、しっかりと構築されたプロットが評価できる。 刑事たちが靴底をすり減らして聞き込み捜査を繰返す展開は、現在ではあまり人気がないのではと思いますが、作者が強く影響を受けたという鮎川哲也の鬼貫警部シリーズを髣髴とさせる作風が個人的には非常に好ましい。 収録作のなかでは、今回初めて書籍化となった中編の「愛と死の映像」が読み応えのある力作で、これが読めただけで満足。仮説とトライアル&エラーを何度も繰り返し、読者をとことん翻弄するアリバイ崩しの過程にはゾクゾクさせられた。 再読の「偽りの群像」と「急行しろやま」は、トリックが今では新味がないかもしれませんが、後者は鮎哲の某作を思い起こさせる誤導の趣向がうれしい。 |
No.21 | 5点 | 暗闇の殺意- 中町信 | 2014/02/26 18:45 |
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トリッキーな本格ミステリ7編収録の短編集。まさか光文社文庫から出るとは思わなかったが、創元推理文庫の「~の殺意」シリーズのプチ・ブームに便乗した企画なのか。
プロローグでの騙りによるミスリード、ダイイングメッセージ、密室状況の殺人など、短編にもかかわらず、どの作品も長編とまったく同じスタイルを貫いているのは好感が持てる。ただ、青樹社版短編集「Sの悲劇」の収録作との重複が7作中3作も含まれているのは残念なところ(よって、編成に1点減点)。 個別に見ていくと、既読の「裸の密室」「動く密室」を超えるものが見当たらなかったが、ラストに構図を反転させた安楽死テーマの「濁った殺意」と、小品ながら騙りがスマートなアリバイもの「手を振る女」がとくに印象に残った。 作者の短編はそう多くないが、もう1冊分ぐらいは残っているはず。ぜひ第2弾も出してもらいたい。 |
No.20 | 6点 | 追憶の殺意- 中町信 | 2013/07/26 19:06 |
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本書は昭和54年に作者通算3度目の江戸川乱歩賞最終候補作になった「教習所殺人事件」を改題しトクマノベルズから「自動車教習所殺人事件」と題して出版されたもので、来月創元推理文庫から「追憶の殺意」のタイトルで復刊される予定の作品。久々に再読してみました。
作者の代名詞である読者を誤誘導する叙述トリックは使われておらず、温泉バスツアーというお決まりのプロットも出てこない、密室+アリバイ崩しをメインにしたオーソドックスな、”ジス・イズ・ザ・昭和の本格ミステリ”といった内容です。 フーダニットを主軸とする通常の中町ミステリと違って、密室の謎が解けた後はアリバイ崩しが中心になっている点や、刑事が探偵役というところがこの作者にしては珍しく、作風としては鮎哲の鬼貫警部モノに似た味わいがありました。 二段構えのアリバイトリックのうち2つめが綱渡り的ですがユニークで、教習所を舞台にした意味が最後に浮かび上がってくるところが巧妙です。 |
No.19 | 5点 | 信州・小諸殺人行- 中町信 | 2013/01/08 22:15 |
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女性画家と幼児が神社の石段から転落死するという事件をきっかけに、小諸に住む老画家や周辺の人物がバッタバッタと殺されていくというB級本格ミステリ。
夫婦探偵ものですが、氏家周一郎&早苗夫婦は登場しないノンシリーズ長編です。 ミスリードのための意味深のプロローグや、過去の事件の真相に気付いた人物が次々と殺されていく展開など、お馴染みのプロットですが、旅館の離れの密室殺人と、室内の三毛猫からのロジック展開はまあ面白かった。しかし普通に考えて、あれだけの理由で何人も殺す必要性はないでしょう。 |
No.18 | 4点 | 社内殺人- 中町信 | 2012/10/22 18:20 |
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酔いどれ課長代理・深水文明が周辺で起った殺人事件の謎解きに乗り出すシリーズの第1作。
会社内での大金盗難事件と並行して発生した女子社員の墜落事故の謎がメインかと思いきや、後半は作並温泉行き社内親睦ツアー連続殺人という展開で、重要証人の記憶喪失にダイイングメッセージも出てきて、シリーズが変わっても結局いつもながらの中町ミステリでした(笑)。そんなこんなで、ミスリードの手法が基本的に過去作と同じパターンなので真相は分かりやすかった。 (しかし、この工夫のないタイトル、なんとかならなかったのか・・・) |
No.17 | 4点 | 南紀周遊殺人旅行- 中町信 | 2012/09/26 22:04 |
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推理作家・氏家周一郎&早苗夫婦が参加したバスツアーで旅行メンバーが連続して殺されるシリーズの第5弾。
本書には、叙述の技巧で読者をミスリードする初期作品のような趣向はなく、ダイイング・メッセージの謎解きを中核としたごく平凡なフーダニット・ミステリでした。 殺人現場のサインペンのキャップという小道具からのロジック展開が読ませるぐらいで、真の動機を誤誘導するための偽の手掛かりなど、徒に事件を複雑にしているのは感心できません。 原稿の執筆が進まず、会社を辞め専業作家になったことを後悔する氏家というリアルな自虐ネタは面白いのですが。 |
No.16 | 4点 | 山陰路ツアー殺人事件- 中町信 | 2012/06/20 19:07 |
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推理作家・氏家周一郎&早苗夫婦が旅行先で連続殺人に巻き込まれるシリーズの4作目。
このシリーズは、トラベルミステリのスタイルを採りながらも、本質は”嵐の山荘もの”の本格ミステリに近い味わいがあります。ツアーメンバーが次々殺されてもバスツアーが続行されるというプロットが不自然なのも作者は承知の上なのでしょう。一年前の城之崎温泉事件の真相を暴くのであれば屋敷に関係者を集めれば済む話で旅行は必要ないのですが。 ただ、今作は登場人物の書き分けが以前にも増して出来ておらず、複雑な4組の夫婦・男女の組み合わせの整理で読むのに苦心し、仕掛けも不発気味でした。 |
No.15 | 5点 | 四国周遊殺人連鎖- 中町信 | 2012/06/13 22:28 |
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推理作家・氏家周一郎&早苗夫婦が旅行先で連続殺人事件に巻き込まれるシリーズの3作目。
恒例のいわくありげなプロローグこそないものの、事件の背景にある誘拐事件と轢き逃げ事件の関係者がなぜか全員ツアーに参加していたり、添乗員が殺されても「このまま、旅行スケジュールを消化してもらいたいものですな」という警察の不自然な対応など、ご都合主義全開でB級感漂ういつもながらの中町ミステリです。 とはいっても、犯行動機をミスリードする手際は今回も見事で、この騙しのテクニックだけは侮れません。 |
No.14 | 5点 | 阿寒湖殺人事件- 中町信 | 2012/06/09 18:10 |
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「~湖」シリーズの4作目、と言うよりは「佐渡金山殺人事件」につづく推理作家・氏家周一郎シリーズの第2弾。東北近辺の湖はネタ切れにつき北海道に取材旅行だというメタな設定です。
本人をモデルにした売れない推理作家の自虐ネタを入れつつ、読者を誤誘導するためだけのプロローグや、連続殺人が起きてもバス・ツアーは普通に続行するという、もはや開き直りの定番設定で、ある意味安心して読めます(笑)。 旅行メンバーの自己紹介で氏家の新刊の宣伝をしたり、大団円では夫を差し置き謎解き披露を主導したりで、今回、妻の早苗のしゃしゃりでるキャラが冴えてます。 |
No.13 | 5点 | 榛名湖殺人事件- 中町信 | 2012/04/21 17:46 |
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「~湖」シリーズの3作目。
過去の伊香保温泉でのホテル火災のさなかに発生した2件の不審死を追及することで、新たに連続殺人が起こるという、典型的な中町ミステリです。 言葉の取り違えによるミスリードや、記憶障害に特殊な病気の活用、集合写真に記されたダイイングメッセージなど、繰り出される多くの小ネタも毎度お馴染みですが、犯人の設定を二転三転させるプロットが楽しめる。 実は、記憶障害がある素人探偵の「私」という存在と、プロローグの病室のシーンを併せて深読みしてしまった。 |
No.12 | 4点 | 女性編集者殺人事件- 中町信 | 2012/04/19 18:10 |
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労働争議に揺れる医療関係の出版社で、会社に対して急先鋒の女性組合員が常務室で殺される。被害者が持つ集合写真には血で書いた「S」のダイイングメッセージが・・・・という粗筋です。
創意のある仕掛けが施された初期作品群の中にあって、本書はイマイチの出来。 アリバイ・トリックは長編を支えるには小粒ですし、ダイイングメッセージは(被害者が出版社の編集員という点でなるほどとは思わせますが)、当初からイニシャルとは考えられないので意外性に欠けるように思います。 |
No.11 | 6点 | 十和田湖殺人事件- 中町信 | 2012/04/17 18:41 |
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「~湖」シリーズの2作目。
定番の意味深なプロローグから始まり、十和田湖畔の不審死、”犯人”が乗る旅客機の墜落事故、推理小説の盗作疑惑などが絡むかなり複雑で錯綜したプロットです。 真相を知る人物が告発寸前に次々殺されていく展開は、もはやお約束の様なものですが、〇〇を誤認させるテクニックが「田沢湖」同様に巧妙で、最後まで犯人を絞り込めなかった。 医療関係の出版社勤務という作者の職歴から仕入れたと思われるメインのアイデアは特殊知識ものですが、伏線が丁寧に張られているのでアンフェアという感じは受けない。 |
No.10 | 6点 | 悪魔のような女- 中町信 | 2012/04/03 18:31 |
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巨額の遺産相続をめぐるフーダニット・ミステリ。
5件の連続殺人のほとんどが総合病院内で起きるところや、刑事が探偵役である点で、これまで読んできたものとやや趣が違うのですが、随所に”らしさ”も覗えます。 相続が不可能な余命数カ月の人物がなぜ殺されるのかという謎も面白いのですが、別の被害者が残した「タンシンフニン」という言葉の真相と、それによって人物関係の構図を逆転させる仕掛けがなかなか巧妙です。 今回のプロローグは「裏の裏」狙いだと思いますが、あまりミスリードの効果はないのでは。 |
No.9 | 7点 | 田沢湖殺人事件- 中町信 | 2012/03/30 18:10 |
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脳神経科の権威・堂上の妻で推理作家の美保が、中学の同窓会に出席したあと田沢湖で変死する。妻が15年前のある事件について調査していたのを知る堂上は、関係者に会い妻が殺害されたと確信する、というのが粗筋です。
これは中町信の会心作でしょう。15年前の中学の密室事件のトリックはユニークだけど冷静に見ればバカミスとも言えますし、2本のアリバイ・トリックのうち時刻表トリックは土地勘がないとピンとこないもので、個々のトリックは大したことはないです。しかしながら、美保の残した手紙の断片が挿入される構成の妙と、プロット全体に施された〇〇を誤認させる工夫が秀逸です。プロローグも、作者の他作品と比べ露骨な叙述トリックになっていないのも好感が持てる。 |
No.8 | 6点 | Sの悲劇- 中町信 | 2012/03/19 18:58 |
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現在のところ作者唯一の短編集。ユーモアで味付けするとか個性的なキャラクターの探偵役を登場させるなどの余分な一般受けの要素が全くない、愚直なまでにトリックにこだわった本格パズラーが7編収録されています。
表題作「Sの悲劇」は、無理のないダイイングメッセージはいいが、伏線があからさまで犯人当てとしては安易。 「死の時刻表」は、容疑者3人の中から真犯人を特定する手掛かりがユニークな良作。 「裸の密室」は、作者の長編で多用するようなプロローグが巧妙なミスリードになっている上に、密室トリックが暴かれるキッカケも面白い。これが個人的ベスト。 「カブトムシは殺される」これも密室状況を解明する手掛かりが秀逸。「サンチョパンサは笑う」の写真による偽アリバイは平凡。「312号室の女」のアリバイ工作はある長編の原型らしいが、内容を憶えてないので楽しめた。「動く密室」は、自動車教習所ならではのアリバイ工作と錯誤による密室。両トリックともよく考えられており、これが準ベスト。 |
No.7 | 5点 | 草津・冬景色の女客- 中町信 | 2012/02/15 18:06 |
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推理作家・氏家周一郎シリーズ。
妻の早苗が所属するヨガ教室の合宿バス・ツアー途上、草津温泉で所属員が次々殺されていくというお馴染みのストーリー展開。殺人事件が連続して起こっても今回もツアーは中止にならず普通に継続しますし、被害者の一人が謎めいたダイイング・メッセージを残すのもいつもどおりです(笑)。 プロローグの死体発見シーンの叙述が絶妙のミスリードになっているのですが、ある人物の内面描写が真相と矛盾しており、そこはアンフェアじゃないかな。 |