皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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kanamoriさん |
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| 平均点: 5.89点 | 書評数: 2460件 |
| No.1120 | 7点 | 五番目のコード- D・M・ディヴァイン | 2010/09/02 18:38 |
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| ディヴァインの6作目は、連続殺人の「ミッシングリンク」をテーマとした作品で、容疑者にもなる新聞記者を探偵役にした巻き込まれ型の本格ミステリです。
テーマの割に派手でスリリングな展開ではありませんが、主人公ジェレミーの屈折した造形など、いつもながらの丁寧な人物造形がさえていて、犯人特定のきっかけも、その人物の性格と行動の食い違いが関係しているところなどはさすがです。 当然ながら「ABC殺人事件」を意識させますが、むしろ犯人隠匿のテクニックはクリステイの別の作品を連想させました。 |
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| No.1119 | 5点 | 探偵術教えます- パーシヴァル・ワイルド | 2010/09/02 18:09 |
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| 通信教育探偵もののユーモア連作ミステリ。
探偵を目指すお抱え運転手モーランが、通信教育で学んだ探偵テクニックを実践する段階で起す騒動を、教育担当の主任警部との往復書簡の形式で描いています。 なかでは、「モーランと消えたダイヤモンド」が、過去の消失トリックを扱った探偵小説のパロディとモーランの暴走ぶりが楽しい。 |
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| No.1118 | 6点 | 大博奕- ロス・トーマス | 2010/09/01 23:39 |
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| ウー&デュラントのコンビが主役を張るクライム・ミステリの第1弾。原題は”Chinaman's Chance"=わずかなチャンス。
当シリーズは、その後3作目まで出ていますが、二人の出生の秘密やコンビのなれそめなど肝の部分が、本書でしか語られていないので、これが簡単に読めない現状は非常に不幸です。 プロットが凝り過ぎて複雑なうえ、会話もストレートでないので、初めはとっつきにくい印象がありますが、はまると癖になる面白さを秘めていると思います。 |
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| No.1117 | 5点 | モルグの女- ジョナサン・ラティマー | 2010/09/01 20:51 |
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| 私立探偵ビル・クレインが登場するシリーズ第3弾。
文体はハードボイルドですが、内容は集団探偵ものの本格ミステリです。 モルグから消えた美女の正体や、事件の真犯人も意外で、パズラーとして充分楽しめます。探偵役三人組のブラックなアメリカン・ユーモアに溢れた会話が一番の読みどころだと思いますが、訳文がいまいちで良さがうまく伝わってきません。出来れば新訳で再読したい作品です。 |
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| No.1116 | 5点 | 十日間の不思議- エラリイ・クイーン | 2010/09/01 20:28 |
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| 「ハイト家」「フォックス家」に続くライツヴィルを舞台にした第3弾。
この作品は、これ以降のクイーン作品を楽しめるかどうかの試金石となる作品だと思った。「ギリシャ棺」でも同様の趣向はあったが、それをより推し進めた感じです。 比較的長めの小説で、肝心の事件もなかなか発生しない。ハワードの記憶喪失と脅迫事件、ホーン家を巡る家族間の人間模様が描かれるが、出来が悪いとは思いませんが、なぜか物語に入り込めずに読み終えてしまいました。 なお、鮎川哲也氏の解説は重大なネタバレがあり、事前に読まない方が楽しめます。 |
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| No.1115 | 7点 | ザ・ポエット- マイクル・コナリー | 2010/09/01 17:44 |
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| ハリー・ボッシュ刑事が出てこない初のノン・シリーズ作品。
殺人課の刑事ばかりを狙い、現場にエドガー・アラン・ポーの詩の一節を残す連続殺人鬼「詩人」と、犯人を追う新聞記者マカヴォイの追及活動を描いたジェットコースター・サスペンス。 刑事である双子の兄が犠牲者のひとりであるにしても、新聞記者がFBIの捜査陣に加わるというご都合主義的な所もありますが、終盤の二転三転するプロット、どんでん返しは実に読み応えがありました。あざとさはジェフリー・ディーヴァーを髣髴とさせます。 なお、コナリーの単発作品は、後の作品でボッシュシリーズに合流するケースが多く、本作も同様で、一種のサーガを形成しているため、ノン・シリーズを含め全て発表順に読むことをお薦めします。 |
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| No.1114 | 6点 | 殺しにいたるメモ- ニコラス・ブレイク | 2010/08/31 21:20 |
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| 第二次大戦終戦直後の帰還兵の歓迎会での毒殺事件を扱った本格ミステリ。
衆人環視の毒殺トリックがメインで、ハウダニット興味充分ですが、意外と早めにその真相が明かされ、フーダニットの方に移ってしまうのはちょっともったいない感じがします。しかし、終盤のナイジェルのロジカルな推理はなかなか圧巻で、エラリイ・クイーンはだしです。 |
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| No.1113 | 7点 | 東方の黄金- ロバート・ファン・ヒューリック | 2010/08/31 21:08 |
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| 中国版「水戸黄門」+「大岡越前」、ディー判事シリーズ初期の傑作です。旧版「中国黄金殺人事件」で読みました。
知事としての最初の赴任地での事件を扱っていて、冒頭の見送りの場面から、赴任地の地理的要素まで重大な伏線になっていたりします。 例によって複数の事件がモジュラー形式で進展し、物語として読みどころが盛りだくさんで堪能しました。判事のささいな気付きで、大きな陰謀が暴かれる終盤が結構スリリングです。 |
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| No.1112 | 6点 | カナリヤ殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン | 2010/08/31 20:31 |
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| ファイロ・ヴァンスの蘊蓄もさほど気にならず、ポーカーによる心理的探偵法など華のある展開が気に入っていて、シリーズの中で比較的好きな作品です。
機械的な密室作りや、陳腐なアイテムによるアリバイ創りなどは、現在の基準で考えると見るべきものがないかもしれませんが、アリバイが崩れる劇的シーンなど強く印象に残っていて、初読当時は相当楽しめた覚えがあります。 しかし、心理的探偵法が本作限りになったのは、作者もその限界に気付いたのでしょうか(笑)。 |
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| No.1111 | 6点 | タラント氏の事件簿- C・デイリー・キング | 2010/08/31 20:09 |
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| ミステリ連作短編集。
超常現象的な不可解な謎・不可能トリックが多用されていて、そこそこ楽しめました。また、レギュラー・メンバーが固定されていて、作品ごとに人間模様が変化していく所も面白い。 収録作の中では、古写本の消失トリックもの「古写本の呪い」、マリー・セレスト号事件に挑戦したような「第四の拷問」が印象に残るパズラー作品。「最後の取引」は、賛否が分かれるかもしれませんが、それまでのホラー要素の作品があってこそで、連作を締めくくる手法としてアリだと思いました。 |
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| No.1110 | 6点 | 月が昇るとき- グラディス・ミッチェル | 2010/08/31 18:28 |
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| サーカスがやって来た町で発生する連続切裂き魔の事件を、13歳の少年の視点で描いています。
異常な事件にもかかわらず、ノスタルジーを誘うファンタジー風の物語になっていて、仁木悦子の子供を主人公としたミステリを髣髴とさせました。 シリーズ探偵の心理学者ミセス・ブラッドリーが登場しますが、あくまでも脇役に徹していて、本書に関しては作者がパズラーを志向していないことが分かります。 |
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| No.1109 | 6点 | 四人の女- パット・マガー | 2010/08/31 18:09 |
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| パット・マガーの第5作は、「被害者を捜せ!」「七人のおば」同様に”被害者当て”のミステリではありますが、明確な探偵役は置かずサスペンス風の物語になっています。
プロローグでクライマックスのバルコニーからの墜落死のシーンを見せておき、カットバック手法で、殺人を企てる人気コラムニストと”被害者候補”の4人の女性の関係が描かれていきます。 ミスディレクションが充分な効果をあげていないように思いますが、主人公ラリーの上昇志向で自己中心的な性格と心情の描写は卓越したものがあり、その点は満足できる内容でした。 |
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| No.1108 | 7点 | ある詩人への挽歌- マイケル・イネス | 2010/08/30 18:57 |
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| 雪深いスコットランドの片田舎に立つ古城を舞台に、城主の墜落死の謎をメインに据えた本格ミステリ。
複数の人物の手記によって事件が語られていき、語り手が変わるごとに事件の様相が次々と変転していくという、重層的で多重解決もどきのプロットが面白い。 作者の他の作品と比べても、ゴシック・ミステリ的な雰囲気は異色で、好みのテイストですが、序盤の読みずらい文章は読者を選ぶかもしれません。 |
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| No.1107 | 5点 | 死体置場は花ざかり- カーター・ブラウン | 2010/08/30 18:42 |
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| アル・ウィラー警部シリーズの軽ハードボイルド。
適度なお色気と軽快なテンポのプロットで、60年代には日本でも人気を博したと聞くシリーズで、結城昌治や都筑道夫などが影響を受けた作品を書いています。 本書が一応の代表作でしょうか。モルグからの死体消失、男女死体の入れ替りの謎などのパズラー趣向もあり、会話も洒落ていてそれなりに楽しめました。 |
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| No.1106 | 5点 | 毒殺は公開録画で- サイモン・ブレット | 2010/08/30 18:22 |
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| 売れない俳優チャールズ・パリスを探偵役に据えたシリーズもの。角川文庫の絶版本4冊のうちの1冊で、他は初期の作品ですが、本書のみ中期のものです。
テレビの”職業当て”クイズ番組のパリスへの出演依頼理由が、「顔を知られていない俳優だから職業当てに最適」という自虐ネタで笑わせます。 毒殺犯人を罠にかけるという解決方法はいまいちですが、のほほんとしたパリスの造形はくせになる魅力があります。 |
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| No.1105 | 5点 | 生れながらの犠牲者- ヒラリー・ウォー | 2010/08/30 18:01 |
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| フェローズ署長シリーズの第5作。
13歳の少女の失踪事件を追う捜査小説で、当初の構図は「失踪当時の服装は」と似た様相です。 例によって仮説を組みたてながらの地味で緻密な聞き込み捜査の果て、見出した真相は痛ましすぎる内容でした。被害者の母子家庭という環境などのシリアスさは重すぎるので、読後感はちょっと複雑なものがありました。 |
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| No.1104 | 6点 | ジミー・ザ・キッド- ドナルド・E・ウェストレイク | 2010/08/30 17:37 |
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| 世界一不運な泥棒ドートマンダーシリーズの第3弾。
相棒で疫病神のケルプが持ってきた仕事は、リチャード・スタークという作家の犯罪小説を元ネタに誘拐を企てるというもので、いきなりのセルフ・パロディで笑わせます。元々ドートマンダーシリーズは悪党パーカーの没ネタをドタバタ・コメディに転用したようなものだから、楽屋落ち的なユーモアが洒落ていて楽しい。 |
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| No.1103 | 8点 | 学寮祭の夜- ドロシー・L・セイヤーズ | 2010/08/29 17:10 |
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| これはセイヤーズ畢生の傑作でしょう。
女流探偵作家ハリエットとピーター卿のロマンス模様が縦糸にあり、ハリエットの母校を騒がす悪意の手紙事件を描いただけの物語ですが、それでこれだけリーダビリティの高い小説に仕上げる手腕は脱帽ものです。 シリーズ物はだいたい順番に読むようにしていますが、セイヤーズはアト・ランダムで、肝心の「毒を食らわば」も未読ながら本書は充分楽しめた。浅羽莢子さんの翻訳も素晴らしい。 |
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| No.1102 | 6点 | 死のバースデイ- ラング・ルイス | 2010/08/29 16:39 |
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| 女性脚本家の自宅で映画プロデューサーの夫が毒死した事件を描いたミステリで、多重解決風のプロットがなかなか面白かった。
小説場面はほぼ主人公である女性脚本家の自宅のみ、登場人物も数人に限られる。入れ替り立ち替わり登場する人物が実に活き活きと描かれていて、まるで舞台劇をみるようだ。 小品ながら良質の、まさに”推理小説”という逸品。 |
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| No.1101 | 6点 | トレント乗り出す- E・C・ベントリー | 2010/08/29 16:16 |
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| 「トレント最後の事件」で有名な作者の、素人探偵トレントもの12編を収めた連作短編集。
収録作数編の作品はアンソロジーなどで既読でしたが、こうしてまとめて読むと、人間味のある探偵役の造形がはっきり浮き彫りになり意義がある作品集だと思いました。 時代を感じさせる点は否めないですが、トリック、伏線、ミスディレクションなど、「最後の事件」よりもミステリ趣向は上等だと感じました。 |
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