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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2426件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1086 5点 R.P.G.- 宮部みゆき 2010/08/27 17:41
宮部みゆき、まさかの新本格参入!?
まあ、既読感のある仕掛けに加えて、この記述方法はどうなんだろうという部分もありましたが、作者がこのタイプのミステリを書いたというだけで意外性充分。

No.1085 7点 聖女の救済- 東野圭吾 2010/08/26 18:56
毒物混入トリック一本に絞った倒叙形式のハウダニット・ミステリですが、正直これだと短編ネタだと思いました。
しかし、さすがと思ったのは、その非現実的でありえないトリックを、ありえるかもと思わせる作者のストーリーテリングの巧さ。
また、本書でも探偵役から出た「虚数解」という思わせぶりな言葉は、本格ミステリ読みを惹きつける。ツボを押さえた小説創りのうまさはやはり一級品ですね。

No.1084 4点 智天使の不思議- 二階堂黎人 2010/08/26 18:20
百のサークルに所属する大学生・水乃サトルを探偵役に据えた倒叙形式の本格ミステリ。
当シリーズは、1980年代後半を時代背景にしていますが、今回のメインの事件は、1953年(昭和28年)のもので既に時効が成立している殺人事件のアリバイ崩しに一生懸命勤しみます。
これは、紅白歌合戦の豆知識だけで思いついたようなアリバイ・ネタでした。

No.1083 6点 ペガサスと一角獣薬局- 柄刀一 2010/08/26 18:02
南美希風シリーズの本格ミステリ連作短編集。
いずれも、幻想的で奇想天外な謎を冒頭に提示し、最後はロジカルに解明するというパターンで、とくに力技系の「龍の淵」など島荘の作品と言われても違和感がないほどテイストがそっくりです。
収録作のなかでは、「光る棺の中の白骨」が物語の雰囲気創りと強固な不可能性で一番出来がいいと思った。

No.1082 6点 後悔と真実の色- 貫井徳郎 2010/08/26 17:45
連続殺人鬼”指蒐集家”を追う刑事群像を描いた警察小説風ながら本格ミステリ。
主人公格の西條を始め刑事たちの造形を、重層的に多視点で描いていて、ミッシングリンクものの本格ミステリ趣向がかすんでしまう程ですが、真相を知れば全て意味があったことが分かる。
しかし、探偵役の西條に対する後半の扱いは、いかにも「慟哭」の作者という感じでした。

No.1081 7点 文福茶釜- 黒川博行 2010/08/26 17:30
古美術・骨董品の贋作を巡る騙し合いを扱った連作ミステリ。
このような題材だと北森鴻の一連のシリーズが頭に浮かびますが、本書の著者も負けていない得意の分野。
プロ対プロの騙し合いが、関西弁も相まってリアルに描かれています。コンゲーム小説と同等の趣があり、どちらが最終的に騙される側かというスリルも味わえる。

No.1080 8点 容疑者Xの献身- 東野圭吾 2010/08/25 21:08
純愛ネタの文芸的テイストと、本格ミステリ的趣向を兼ね備えた小説で、読みやすく素直に楽しめた作品。
石神が採った究極の手段が文芸もののテイストと相容れないという意見はもっともですが、本格ミステリとして読んだので気にならなかった。探偵役の「幾何の問題と見せかけて、じつは関数の問題..」なんていう台詞はゾクゾクとさせるものがありました。
強いて注文をつけるとすれば、天才対天才という構図をもっと前面に出した方がよかったと思う。

No.1079 7点 どんなに上手に隠れても- 岡嶋二人 2010/08/25 20:45
タイトルからも「あした天気に..」と同系統のサスペンス小説を感じさせ、そのとおりの身代金奪取の仕掛けと誘拐の目的に意外性を持たせたなかなかの良作でした。
複数の登場人物に色々思惑を持たせた関係で、ごたごたした印象がありましたが、本書も誘拐ミステリの秀作だと思います。

No.1078 5点 深泥丘奇談- 綾辻行人 2010/08/25 20:13
幻想的怪奇譚の連作短編集。
京都を思わせる架空の街を背景に、小説家の「私」が遭遇する不可思議な事象の数々を、私小説風に淡々と描いています。
日常の謎ならぬ”日常の怪奇”という感じで、岡本綺堂などの昔の怪奇譚の趣があるといえば褒めすぎかもしれませんが、作者の別の一面を見せてくれている異色作だと思います。まさか奥さんの代作ではないでしょうね?

No.1077 6点 女王国の城- 有栖川有栖 2010/08/25 18:49
人気シリーズ久々の第4弾という事で、期待が大きすぎたのか、自分のミステリ嗜好が変わったのか、微妙な読後感でした。
不満点を列挙すると、新興宗教集団と超常現象という陳腐な設定、初期の瑞々しい青春ミステリ風味の減退、無駄に長く横道にそれる前半部の冗長なプロット、既読感のある(たぶん、梶龍雄作品)隠された構図などがその理由だと思います。
ただ、終盤の解決へのロジック(とくに、凶器の拳銃に関するもの)などは初期作を彷彿させ、さすがと思いましたが。

No.1076 6点 怪盗グリフィン、絶体絶命- 法月綸太郎 2010/08/25 18:11
ミステリー・ランド叢書の中には、これ本当に子供に読ませていいの?とトラウマを心配させる作品もあるように思いますが、本書はコンセプトどおり、大人も子供も楽しめる軽快な冒険スパイ小説でした。
正義の怪盗という主人公の造形や、テンポのいい二転三転するプロット、作者らしいロジカルな展開と、このタイプのミステリとしては過不足ない良作だと思います。

No.1075 7点 電氣人閒の虞- 詠坂雄二 2010/08/24 20:52
遠海市の都市伝説・電気人間を探る人々が次々と不審死するというお話。前作の「遠海事件」とは直接繋がりはないが、小説家・詠坂も再登場します。
本書は、ワン・アイデアに支えられた騙りのミステリで、前例のあるトリックながら、電気人間のある特性によって、読者が絶対に見抜けない仕掛けになっている所が作者のアイデア。終盤のアノひと言はなかなか衝撃的ではありましたが一般受けは難しそう。
読み終えると、タイトルが別の意味を持ってくるところも感心しました。

No.1074 6点 遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? - 詠坂雄二 2010/08/24 20:34
「佐藤誠はなぜ首を切断したのか?」という副題が付いているように、首切断理由の分析も入ったホワイダニットには違いないのですが、周到な騙りに満ちたミステリでした。
小説家・詠坂雄二が書いた犯罪実録小説の体裁をとりながら、タイトル、副題、そして大量殺人犯という佐藤の人物造形までをもミスディレクションに繋げ、小説が終ったあとのページにも仕掛けを施すという凝りようです。
一読地味な印象ですが、読めば読むほど味が出る感じがする逸品です。

No.1073 5点 リロ・グラ・シスタ- 詠坂雄二 2010/08/24 18:50
個人的に注目している作家ですが、デビュー作の本書は、色々と大掛かりなトリックを詰め込み過ぎの感じで、またアイデアは非常に面白いものの、いずれも前例があるものなので、手放しでは楽しめませんでした。
学園ものの本格ミステリながら、一人称ハードボイルドという特異なスタイルは、ある構図をミスリードするためとはいえ、どうもすっきりしません。また、各章毎に色つきのページを配する装丁には退いてしまいます。

No.1072 6点 新参者- 東野圭吾 2010/08/24 18:05
よく言われるように、まさに東野版の捕物帳の味わいがありました。わざわざ、主人公を人形町界隈を所管する署に異動させて舞台設定に怠りなしです。
連作ミステリとしては、日常の謎テイストでツイストを効かせた第1話が秀逸ですが、終盤の数作品は、全体を貫く本筋の事件をまとめ上げるための物語になり完成度が落ちているように思いました。
しかし、第1話の掲載から5年間かけて断続的に書いた作品にしては巧く仕上げていると思います。

No.1071 6点 タイム・リープ あしたはきのう- 高畑京一郎 2010/08/24 17:40
タイム・パラドックスを主題にした学園ものSFミステリ。
時間移動期間が1週間限定としている設定が、このタイプの小説の複雑さを回避していてるように思います。時間パズルの問題としてはライトノベルの水準を超えた質の高さでした。
読了後に、最初にもどりプロローグを読み返すと、読者をもタイム・リープさせる仕組みになっている所が面白い。

No.1070 7点 ラットマン- 道尾秀介 2010/08/23 20:49
凝った設定や特異な造形の人物が登場しない分、中盤までは物足りない感じを受けるかもしれませんが、終盤にあらわになる高度な騙しのテクニックは素晴らしいです。
とくに、サプライズとともにタイトルの意味が浮かびあがるラストが秀逸です。

No.1069 5点 ゴールデンスランバー- 伊坂幸太郎 2010/08/23 20:23
首相暗殺の濡れ衣を着せられた男の逃亡サスペンスですが、世評ほど出来がいいとは感じられませんでした。
主人公に肩入れするほどの魅力が感じられず、逃亡する男に次々と援助者が現れたり、ご都合主義的偶然を多用しているところは、スプラスティック・コメディならいざ知らず、逃亡サスペンスとしては緊迫感をそぐプロットだと思いました。
なによりも、内容の割に長すぎますね。

No.1068 4点 犬坊里美の冒険- 島田荘司 2010/08/23 20:00
女性の司法修習生を探偵役に据えた長編ミステリ。
冤罪とか裁判制度に対する問題提起をひとつの主題としながら、神社の離れからの死体消失という不可能トリックを扱っていますが、いつもながら、氏の描く若い女性キャラがどうも受け入れがたい。また、人を喰ったような死体消失トリックには脱力しました。
裁判制度という主題とバカミス系トリックがちょっとマッチしていないという印象です。

No.1067 7点 悪意- 東野圭吾 2010/08/23 17:39
序盤はフーダニットの興味もあるが、殺人動機の謎を中心に据えた良質のホワイダニット・ミステリでした。

手記を書いた人物が小説家である点がポイントではないかと思います。
かつての、コード型の本格ミステリを「人間が描けていない」と批判する論調に切り返すような、「人間が描けている」手記そのものをトリックにしているところに一番感心しました。
ただ、隠された動機は、タイトルによるヒントもあり、ある程度予測がつくものでしたが。

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