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kanamoriさん
平均点: 5.88点 書評数: 2475件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1415 8点 首無の如き祟るもの- 三津田信三 2011/01/25 17:22
怪異譚蒐集家・刀城言耶シリーズ(と断言していいか微妙ですが)の3作目。
今回文庫版で再読しましたが、指摘されていた時間軸の矛盾などの不備な点を改稿するとともに、媛首村の略地図や事件現場のお堂の見取図が挿入されていて作品世界をイメージし易いのが良。
首無しのメイン・トリックを成立させるために、秘守家の伝承・儀式・祟りなどのエピソードが必要な訳で、正に”ホラーと本格ミステリの融合”の惹句どおりの傑作でしょう。
以下はネタバレになりますが、

首無し死体=被害者の入れ替りは定番ですが、さらに、語り手、真犯人、探偵役までもが入れ替るという趣向が、作者が一番やりたかった事かな、と再読して感じました。

No.1414 6点 死角 オーバールック- マイクル・コナリー 2011/01/24 17:27
ロス市警のハリー・ボッシュ刑事シリーズ13作目。
エコー・パーク事件後、殺人事件特捜班に配属されての初仕事は、放射性物質強奪が絡む殺人事件。コナリー版「24 Twenty Four」とも言える(実際は半日で解決されるが)捜査過程が分刻みでスピーディに描かれています。
珍しく上下巻でない分量なので、やや物語に深みが感じられない点がありますが、大掛かりなミスディレクションと伏線の妙は相変わらず健在で、充分満足できる内容でした。

No.1413 5点 幻の蝶殺人事件- 梶龍雄 2011/01/23 13:40
”シラケ姫”こと女子大生・奈都子シリーズの第1作。
ある大学の学園祭のさなか、昆虫同好会部室での密室殺人を発端にした連続殺人を扱った本格編。
同じ学園ミステリでも、初期に書かれた旧制高校シリーズとは大いにテイストが異なる通俗風味の作品で、女子大生の会話口調が例によって酷いですが、その辺に目をつぶれば、連続殺人のホワイダニットに工夫があり、ミステリの仕掛けはそう悪いとは思わなかった。

No.1412 5点 ゆがめられた昨日- エド・レイシイ 2011/01/23 12:09
黒人の私立探偵トゥセント・モーアを主人公とした、1957年度MWA賞作品。
殺人の容疑を受けたモーアが、ニューヨークから逃亡し、人種的偏見あふれる南部の街で被害者の過去を探るというストーリーで、ハードボイルドの私立探偵小説というより、巻き込まれ型のサスペンスに近い作風です。
「さらばその歩むところに心せよ」がよかったので読んでみましたが、ミステリの趣向的には、真相の意外性はなくサスペンスもいまいちでした。テレビ界が背景で人種問題という社会性を取り入れたのが当時としては新鮮な題材だったことで、エドガー賞となったのでしょうか。

No.1411 6点 幻狼殺人事件- 梶龍雄 2011/01/22 16:27
群馬県の山村を舞台に、幻のニホンオオカミの調査で訪れた研究員が巻き込まれる殺人事件。
戦前に村で発生した婦女暴行&大量殺戮事件、鍾乳洞の迷路、最後に屋敷の炎上など、これは明らかに「八つ墓村」のオマージュといえる作品で、作者にとっては異色のミステリでした。
ちょっと色々な素材を詰め込み過ぎで、まとまりを欠いた感じも受けますが、こういった伝奇風ミステリは好みなので良とします。

No.1410 6点 ライノクス殺人事件- フィリップ・マクドナルド 2011/01/22 16:02
長らく幻の古典名作といわれ、”結末に始まり発端で終わる”構成の妙が取り上げられることの多い作品ですが、その構成自体は、逆に真相を分かり易くしていて、今では感心するほどのものではないでしょう。
むしろ、ライノクス社の社長ベネディックを始めとする登場人物が醸し出す牧歌的ユーモアや、後半のコンゲーム的展開が面白い。爽やかで後味のよいエンディングも◎です。

No.1409 7点 龍神池の小さな死体- 梶龍雄 2011/01/21 18:27
戦時中の学童疎開中に池で溺死したという弟の不審死を、23年後に母親の臨終のひと言によって、兄の大学教授が調査に乗り出すというストーリー。
いわゆる”スリーピング・マーダー”ものの現代ミステリで、青春ミステリ三部作と比べると叙情性に欠けるものの、そのぶん本格ミステリに拘った力作です。同じ原理の古典的トリックを4連発で盛り込むところが凄い。(とくに、吉爺に関する”それ”は秀逸)。
ラストは、ドンデンの狙いすぎであざとさを感じますが、それも作者の本格ミステリに対する情熱の表れでしょう。

No.1408 7点 悪魔はすぐそこに- D・M・ディヴァイン 2011/01/21 17:59
大学の教授・講師らのドロドロとした人間関係を背景にして、過去の醜聞、現在の殺人と脅迫事件が錯綜したミステリ。
三人称多視点で語られるストーリーは、主要登場人物の内面描写を交えながら、巧妙なミスディレクションで真犯人を隠蔽しています。(読後にアンフェアな記述では?と思ったところも読み返してみると巧みに描写していることが分かります)
探偵役をはっきり設定したスタンダードなフーダニト・パズラーではないので、評価が分かれるかもしれませんが、個人的には結構ツボでした。

No.1407 5点 真夏の夜の黄金殺人- 梶龍雄 2011/01/21 17:23
副題が”推理早慶戦!”とある通り、海水浴場ちかくの黄金屋敷に用心棒のアルバイトに来た早大生4人組と、近くに合宿中の慶応美術部員たちによる推理合戦という趣向。
初期の青春ミステリの味わいはあまりありませんが、恋の鞘当あり、不可解な殺人事件に細かな伏線ありで、軽本格ミステリとしてそれなりに楽しめました。

No.1406 4点 図説 密室ミステリの迷宮- 事典・ガイド 2011/01/20 18:16
10年ぐらい前に「有栖川有栖の密室大図鑑」という似たコンセプトの企画本がありましたが、本書は40人以上の実作者・書評家などによるアンケートに基づき選定した40数作品の事件現場図付き読書ガイドが中心になっています。そのため、無難な作品が大勢を占め、密室ミステリの知られざる珍品のようなものは見当たらなかったのは個人的に物足りない。
あとがきに”密室のテーマパーク”とあるように、映像作品、ゲーム、漫画などを取り上げた総花的な構成も、嗜好に合わなかった。

ちなみに、歴代密室ミステリの個人的ベスト3は、
国内長編だと、「本陣」「刺青」「虚無への供物」、国内短編は、「赤い密室」「妖婦の宿」「高天原の犯罪」かな。
海外長編は、「黄色い部屋」「三つの棺」「ユダの窓」、海外短編が、「妖魔の森の家」「北イタリア物語」「有蓋橋の謎」といったところ。やはり、カーが多いな。

No.1405 5点 血塗られた映画祭- スチュアート・カミンスキー 2011/01/19 17:46
”旧ソ連の87分署”ロストニコフ主任捜査官シリーズの2作目。
モスクワ映画祭を狙った過激派グループのテロ計画がメインとなっているが、部下のカルポ、トカッチの捜査過程は若干サスペンスに欠け、フーダニット的興味がうすいこともあって、邦訳作品のなかでは一段落ちる出来だと思う。
ロストニコフ夫婦の”ある計画”とKGB大佐との駆け引きは、次作以降の伏線となっているが、残念ながら本シリーズも邦訳が本書で途切れています。

No.1404 7点 警官の紋章- 佐々木譲 2011/01/19 17:45
北海道警シリーズの3作目。
今回は、部署が異なる3人のメイン・キャラクターが影の捜査チームを組むのではなく、津久井、佐伯、小島百合それぞれが別々の案件に関わりながら、洞爺湖サミット警護団結式というクライマックスで収斂するという図式です。
結末がややあっけないですが、それまでのリアルで緊迫感のある展開は読み応え充分。キャラクターではなくプロット重視のため、マンネリを感じさせない。
なお、第1作のネタバレ満載のため、本書から先に読むのは避けるべきでしょう。

No.1403 6点 サイモン・アークの事件簿〈Ⅱ〉- エドワード・D・ホック 2011/01/18 18:26
オカルト探偵サイモン・アークの第2短編集。
目玉作品は、唯一の中編「真鍮の街」かな。意識したかどうかは判りませんが、地方都市が舞台で人間関係を錯綜させたプロットは、師匠クイーンのライツヴィルものを髣髴させます。メイン・トリックはいたって古典的ですが。
その他、犯人特定方法がロジカルな「百羽の鳥を飼う家」と、死体が一瞬にして老衰する謎「死を招く喇叭」がまずまずかと思いますが、枚数の関係で短編はいずれも解決があっけない。

No.1402 4点 乾いた屍体は蛆も湧かない- 詠坂雄二 2011/01/17 17:53
ニート青年4人組が、ゾンビ映画のロケハン中に発見した死体を巡る変化球のミステリ。
うーむ。毎回、既存のアイデアを使いながら、捻くれた仕掛けで予想外の着地を見せてくれる作者ですが、本書はイマイチかな。
密室からの死体消失の謎や、探偵役が4人じゃなく何故一人なのか?など、いくつかの違和感が一発で解消されますが、あまりカタルシスを感じなかった。

No.1401 7点 さらばその歩むところに心せよ- エド・レイシイ 2011/01/16 15:45
老練の同僚刑事ドックと共謀して、誘拐事件の身代金を横取りした若手刑事・・・・。
都筑道夫氏の書評集で本書の存在を知り読んでみました。
物語は、ふたりの隠れ家にて、若手刑事・バッキーが過去を回想し、徐々に現在に至る状況が明らかになる構成になっています。
ジャンル的には、悪徳警官もののクライム小説ですが、なにか違和感のある描写が伏線になり、ラストのサプライズに繋がるというミステリでした。バッキーの幼い頃のエピソードがなかなか読ませ、最後にタイトルの意味が浮き彫りになるプロットが巧妙。

No.1400 5点 五島・福江行- 石沢英太郎 2011/01/16 13:15
ミステリ短編集。九州在住の作家らしく、その地を背景にした作品が多かった。土地勘があればもう少し楽しめたかもしれない。
表題作は各種アンソロジーに選ばれていて唯一の既読作品。叙情性あふれる好短編ですが、ミステリとしては弱いかな。
登山中に見知らぬ女性から同行を頼まれる「求菩提行」が、意表を突く内容で編中のベスト。ほかに、暗号ミステリ「0123」と「貨泉」が印象に残った。

No.1399 6点 スペード&アーチャー探偵事務所- ジョー・ゴアズ 2011/01/15 18:47
ダン・カーニー探偵事務所(DKA)シリーズで知られるジョー・ゴアズがつい先日亡くなった。
ゴアズは、探偵事務所勤務という同じ経歴を持つダシール・ハメットに傾倒し造詣も深かったらしく、ピンカートン探偵社を退職したハメットを主人公にしたハードボイルド小説も書いていますが、本書はそのハメット作「マルタの鷹」の前日譚です。
本家の「マルタの鷹」では早々に退場することになる相棒アーチャーとサム・スペードのなりそめを始め、二人の関係が連作形式で語られている。ラストがそのまま「マルタの鷹」の発端シーンにつながる構成にするところなど、しゃれていて心憎い仕上がりでした。
因縁めきますが、ゴアズが亡くなった1月10日は、奇しくもダシール・ハメットの50回目の命日だという。

No.1398 6点 疑惑- 大岡昇平 2011/01/15 15:30
昭和30年代の初めに書かれたミステリの作品集。
作者は、海外の犯罪実話や裁判記録に関心を持ち造詣が深いようで、それらを元ネタにした作品が多いように思う。清張を思わせる殺人実話風の物語が、真相を明示せずに唐突に終わるなど戸惑う内容のものもあった。
編中気に入ったのは「真昼の歩行者」。街を彷徨う記憶喪失者の話がラストに予想外の反転を見せる。
そのほか、複数の事件関係者が臨終の際に告白するごとに次々と真相が変転する「春の夜の出来事」と、歴史上の有名劇作家の正体を探る「シェイクスピア・ミステリ」が印象に残った。

No.1397 7点 川は静かに流れ- ジョン・ハート 2011/01/15 14:59
殺人犯の濡れ衣を着せられ、故郷と家族を捨てた主人公の「僕」アダム。旧友の求めに応じて5年ぶりに帰郷した川辺の町を舞台に再び殺人事件に巻き込まれるというストーリー。
いわゆる”帰郷もの”のミステリですが、文章は洗練されているものの、タイトルから受ける叙情性はあまり感じられなかった。作者自身が冒頭に書いているように、ミステリであると同時に家族を巡る物語ですが、この隠された血縁関係が(全くテイストが違うものの)横溝風なのはちょっとどうかと思う。
辛口の感想になったが、世評にたがわず他の作品も読んでみたく思わせる良作には違いない。

No.1396 4点 浅間山麓殺人推理- 梶龍雄 2011/01/14 18:06
タイトルからクローズド・サークルの”山荘もの”を想起させますが、これは本格ミステリとは言えないでしょう。
浅間山麓の平原に集まった男女5人が、何者かに狙撃され、その犯人を特定するために、次々と自らの過去の犯罪を語りだすという風変わりなプロットでした。
5人の推理合戦に力点が置かれているわけではなく、いまいち作者の狙いが分かりずらいクライム・ミステリ。

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