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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1620 7点 ビブリア古書堂の事件手帖- 三上延 2011/10/27 18:28
北鎌倉の駅近くにひっそりと営業する昔ながらの古書店。そこの極度に内気で美人の店主・栞子さんの安楽椅子探偵もの4作が収められたビブリオ・ミステリ。

語り手であるアルバイト店員「俺」の亡き祖母の秘密が、漱石全集の「それから」と綺麗にリンクする第一話。新潮文庫にあって他の文庫にない特徴から解かれる”日常の謎”の第二話など、古書にまつわる蘊蓄を絡めながら、秘めた恋、淡い恋、爽やかな夫婦愛など、男女のさまざまな人間模様を描き出していて、読み心地のいい連作短編集でした。
最終話の内容から続編は期待できなさそうなのが残念です。(と、思っていたら早くも続編が・・・笑)

No.1619 5点 書斎の死体- アガサ・クリスティー 2011/10/26 18:52
”書斎の死体=伝統的でオーソドックスな設定”の探偵小説ということで、クリスティの序文にあるように、”ありふれた設定”のミステリをいかに斬新なものにするかが本書の狙いのようですが、それほど斬新さは感じられません。確かに、見知らぬ女性の死体が発見される場所は「火曜クラブ」後半パートの舞台でもあるバントリー大佐邸の書斎ながら、お屋敷モノのミステリとはならず、村からも離れてホテルが舞台になる展開が意外と言えるかもしれませんが。

それよりも、本書は軽妙なユーモアぶりがいいです。発端のバントリー夫人がメイドから死体発見を知らされるシーンや、マープルにいつもの推理法(村の類似事件から連想する)をいきなり求めたりするシーンなど笑えます。さらには、9歳の子供の、「ぼく、セイヤーズやディクスン・カー、アガサ・クリスティのサインを持っている」なんてメタな台詞までも飛び出すしまつ。作者のお遊びが顕著な作品です。

No.1618 6点 名探偵に薔薇を- 城平京 2011/10/25 18:56
童話の見立て殺人を仕掛けに使った第一部「メルヘン小人地獄」も悪くありませんが、これはあくまでも第二部「毒杯パズル」への前振りです。
「毒杯パズル」における、真相が二転三転した末に明らかになる名探偵の存在意義というテーマは、”後期クイーン問題”に通じるものがあります。あの人物の特異な犯行動機については、確かにアイデアに前例があるものの、上述のテーマと絡めたところに新しさがあると思うので、この作品の瑕疵とは言えないと思う。

No.1617 6点 幸運な死体- クレイグ・ライス 2011/10/24 17:57
酔いどれ弁護士マローン&ジャスタス夫妻シリーズの8作目。
今作の主役(ヒロイン)は、暗黒街のボスの情婦アンナ・マリー。ボス殺しの疑いで逮捕されながら、死刑執行直前で冤罪とわかり釈放されたアンナの真犯人捜しにマローンが手助けするというストーリー。
死刑になったはずのアンナ・マリーがあちこちに現れて幽霊さわぎになるドタバタはライスならではの可笑しさです。ヘレンの暴走運転とか、フラナガン警部の転職話ネタという恒例の繰り返しギャグを織り込みながらも、中年弁護士マローンのアンナへの一途な恋心が本書の肝で、ユーモアとペーソスの配分が絶妙です。

No.1616 6点 名探偵なんか怖くない- 西村京太郎 2011/10/23 18:01
懐かしの「名探偵パロディ」シリーズ、4部作の1作目。30年以上前の作品なのに意外と書評がついていると思っていたら数年前に復刊されていたんですね。
今読むとパロディとしてはチープ感がちょっと痛いものの、意外な展開をみせるプロットは面白かった。
代表作のネタバレをしているのは気になりませんが、英仏米日を代表する4人の”実在する架空の名探偵”を無断借用して登場させているのには、素人なりに法的な問題がないのか当時から不思議でしたが・・・・西村氏にとっては「著作権なんか怖くない」ということでしょうか。

No.1615 6点 サイロの死体- ロナルド・A・ノックス 2011/10/22 17:16
マイルズ・ブリードン夫妻が登場するシリーズの3作目。
探偵役が保険会社の調査員というのは(当時としては)新しいと思いますが、ミステリのスタイルとしてはお屋敷もののガチガチのクラシック・ミステリです。
邸内に建つサイロ(牛などの食糧を収納する塔型貯蔵庫)内で死体で発見された招待客の事件は、途中の展開がやや平板で中だるみ感がありますが、手掛かり索引まで用意された終盤のブリードンの解法は意外とロジカルで、皮肉が効いた真相も面白い。「陸橋殺人事件」を読んだ時の悪印象が若干緩和されました(笑)。

No.1614 6点 名探偵は密航中- 若竹七海 2011/10/21 19:14
時代は昭和5年、舞台は横浜から英国に向かう豪華客船上。ノスタルジー漂うホンワカした雰囲気の中で次々と事件が起こるオムニバス形式の連作ミステリです。
作品ごとに主人公が入れ替り、男爵家ご令嬢、英国夫人の飼猫、いたずら小僧など魅力的なキャラクターが小気味いいストーリーを盛りたてています。作者持ち味の毒気も控えめなので後味も悪くない。
生化学博士が幽霊談義に合理的な説明を付けようとする「幽霊船出現」が編中の異色作で面白かった。

No.1613 5点 ハネムーンの死体- リチャード・シャタック 2011/10/20 18:50
結婚式を挙げたホテルの部屋で発見された死体を巡って、新婚カップルと友人たちがテンヤワンヤの騒動を繰り広げるドタバタ・ミステリ。いちおう謎解き本格ミステリの要素があるのですが、やはり死体移動のトラブルを笑って楽しむのがメインになってしまいます。

作者と同年代に人気を博した同じく米国女流作家であるクレイグ・ライスを想起させる作風ですが、ライスと比べると主人公たちにそれほど印象に残る個性は無く、ドタバタ劇が中心なので、すぐに内容を忘れてしまいそう。

No.1612 5点 浮気妻は名探偵- 梶龍雄 2011/10/19 18:58
ミステリー好きの人妻エリ子と愛人の警部補が謎解きをしていく連作短編集。「女はベットで推理する」につづくシリーズの第2弾です。
この設定どこかで読んだようなと考えていたら、嵯峨島昭(宇能鴻一郎)の美食探偵コンビにそっくりだと気がついた。
当時の出版社の意向でしょうが、各編ともお色気満点の描写が挿入され、通俗ぶりと女性の変な言い回しのセリフに腰が引けるのですが、その分ちょっとしたトリックがあると妙に嬉しくなりました(笑)。第1話の「多すぎる凶器」など”読者への挑戦”付きの消去法推理で、作者はやはり本格推理にこだわっています。

No.1611 6点 図書館の死体- ジェフ・アボット 2011/10/18 18:46
テキサス州の田舎町ミラボーの若い図書館長、「ぼく」ことジョーディ・ポティートを探偵役に据えた本格ミステリ。
アルツハイマーの母親の看護のため都会での仕事を捨てて故郷に帰ってきた主人公という設定ですが、そういったシリアスな側面は抑え気味で、ユーモアや皮肉を交えたジョーディの語り口はライトで読みやすいです。
被害者の残した”容疑者リスト”に基づく素人探偵の調査過程で一旦情報を整理してくれているなど、読者に対する配慮も怠りないのですが、その人物を犯人と特定するには材料が乏しいように思います。
レギュラーとなる登場人物はなかなか魅力的ですし、感動的なラストもよかったので、2作目以降に期待しよう。

No.1610 5点 はやく名探偵になりたい- 東川篤哉 2011/10/17 20:19
烏賊川市シリーズの探偵・助手コンビによる初の短編集。
比較的長めの3編は、ハズシ気味のギャグのなかにさりげなく伏線をばらまくという長編同様のわりと正攻法のパズラーで、「七つのビールケースの問題」がまずまずですが、他はイマイチの出来。
残る短めの2編は変化球で、そのうちの「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」を髣髴とさせる倒叙形式の密室もの「藤枝邸の完全なる密室」のオチがよかった。
「宝石泥棒と母の悲しみ」は仕掛け自体は面白いものの、ただそれだけという感じ。

No.1609 7点 グラーグ57- トム・ロブ・スミス 2011/10/16 21:10
旧ソ連を舞台にした冒険・警察小説、「チャイルド44」の続編。
この主人公レオ・デミドフ、かなり悲運がつきまとう運命にあるようで、フルシチョフ体制に変わったとたん今度はスターリン批判の余波で再び過酷なミッションを強いられることに-----まあ、ソ連版”ダイ・ハード”ですね。
史実をもとにした前作と違って、やや荒唐無稽というかリアリティという点で疑問符がつきますが、モスクワの下水道の追跡劇、オホーツク海での囚人護送船内の死闘、強制労働収容所のシーンなど、冒険活劇小説としては楽しめました。

No.1608 6点 人間の尊厳と八〇〇メートル- 深水黎一郎 2011/10/15 18:13
バラエティ豊かというか、ミステリの範疇に入らない作品もあったりで、いままで書いたのを全て揃えましたという印象の初短編集。
目玉作品はもちろん協会賞の表題作。初対面の男との”賭け”というダール風の物語の結末は、意外性充分な上に伏線すべてが美しい。(えっ、なに、最近同じようなネタの短編を読んだ?部位が違うでしょ、部位が)。
カタカナを排し漢字にこだわった文体の「北欧二題」は、一話目の”日常の謎”風エピソードが秀逸。好みだけで言えば表題作よりこちらがよかった。
他の作品は、悪くはないけれど斬新なアイデアという点では、前2作と比べると普通かなと。

No.1607 6点 探偵術マニュアル- ジェデダイア・ベリー 2011/10/14 18:28
大手〈探偵社〉に務める裏方の記録員アンウィンは、ある日突如探偵への昇格を命じられ、マニュアル本と眠り病の女性助手とともに奇々怪々な事件の迷宮へと足を踏み入れる。-------これは粗筋紹介からは想像がつかないトンデモ本、不条理小説でした。
いってみれば「不思議の国のアリス」(=読んだことないけど)の世界観で「木曜日の男」(=読んだけどよく分からなかった)風のテイストという読後感。文章は読みやすいのに、夢と現実が交錯するファンタジー風のプロットが難解で、読む者を迷宮に誘います。
個人的な嗜好からは外れた作風ですが、今年の問題作の一つに数えられるのは間違いないでしょう。

No.1606 5点 死刑台のロープウェイ- 夏樹静子 2011/10/11 18:11
初期のミステリ短編集。トリック的な面白味より叙情性やプロットのヒネリで読ませる作品が中心でした。

失踪した姉からの手紙を契機に殺人事件の謎を追うことになる妹。愛人の人形師の殺人容疑を晴らそうとする女性テレビ局員。愛人殺しの嫌疑を受けた夫のため真犯人と対峙することになる妻。-----収録された5編に共通するのは、いずれも主人公が女性で、身近な人物が男女関係がらみの事件に巻き込まれるというもの。いかにも2時間もののサスペンス・ドラマ風なのは時代性ゆえ止むを得ないところでしょうか。
なかでは、最後に収められた表題作「死刑台のロープウェイ」が、ラストの反転が巧く決まったまずまずの作品。

No.1605 8点 チャイルド44- トム・ロブ・スミス 2011/10/10 20:36
スターリン圧政下50年代の旧ソ連を舞台にした警察小説---という内容紹介ではピントがずれているかもしれない。

”殺戮犯罪は資本主義の病理であり、全てが平等な共産主義国家において凶悪犯罪はありえない”という社会理念のもと、猟奇的な大量児童殺害事件に関わることになる元保安省捜査官レオの苦難の連続の物語が読ませます。
閉塞した社会のなかで、部下の裏切りから、レオの自己再生、夫婦・家族関係の再生が描かれる緻密な心理描写の上巻。逃避行と冒険活劇そして謎解きに転調する下巻と、スペクタクルな展開に息つく暇がないとはこのことでしょう。

No.1604 5点 真夜中の探偵- 有栖川有栖 2011/10/09 23:12
北海道が独立し敵対国となっている”もう一つの日本”を舞台にしたシリーズの第2弾。

前作「闇の喇叭」で作品世界を構築し、本書で物語が大きく動くのかと思っていましたが、”禁じられた私的探偵行為”というテーマの周辺で物語がグルグル空回りしているだけのように感じた。長期のシリーズ化を考えているためか、いくつかの伏線が未回収になっているため、これ単品で評価するのは難しいが。
本格ミステリとしても、ネタであるアリバイ・トリックの原理が前作と似ており面白味がなかった。

No.1603 6点 クライム・マシン- ジャック・リッチー 2011/10/08 17:19
無駄な描写を削ぎ落としたシンプルかつ軽妙洒脱な文体で、短編ミステリの名手といわれるジャック・リッチーの傑作選。今回は河出文庫での再読ですが、シリーズものがカットされ単行本とは若干収録作が違います。

殺し屋のもとにタイムマシンで過去の殺しを目撃したという男が現れる表題作の「クライム・マシン」。奇抜な設定と意外な着地点が面白い。「エミリーがいない」は、妻殺しを疑われた男と従妹の対決もの。結末のツイストはまあこうなるだろうと予想がつくものの、そこまでの持って行き方が巧い。
その他、結末のインパクトが弱い作品も散見されますが、職人芸が発揮された好短編集という印象です。

No.1602 4点 密室殺人ゲーム・マニアックス- 歌野晶午 2011/10/07 17:43
シリーズの番外編。
これまで5人の鬼畜メンバー内で閉じられていた密室ゲームをオープンにすることによって初めて意味を持つことになる作品全体に仕掛けられた本書のアイデアはそう悪いとは思わない。
しかしながら、個々の出題に対する真相はお寒い限り。ゲームだからトリックが巧く行ったものを出題したという趣旨の”メンバー”の発言があるが、それを言ったらオシマイだ。

No.1601 7点 ブラッド・ブラザー- ジャック・カーリイ 2011/10/06 18:31
サイコパスを兄に持つカーソン・ライダー刑事シリーズの4作目。
本書では、いままで登場シーンが少ないのに存在感が尋常でなかった実兄・連続殺人犯ジェレミーが主役。矯正施設から解き放たれ舞台を潜伏先のニューヨークに移し、連続して発生する惨殺事件を巡っての兄弟の知的対決が一番の読みどころでしょう。ジェレミーの他人を思いのまま操るテクニックや、カーソンにヒントを与える手法など、レクター博士とダブって見えてきた。
「すべては驚愕の真相のために」と題した解説の冒頭に、ジェフリー・ディーヴァーとマイクル・コナリーの代表作からの引用があるのだけど、確かに騙しの巧妙さは二人と比べても遜色ないように思える。

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