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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.280 5点 透明受胎- 佐野洋 2010/05/09 17:15
SF設定のミステリ。
処女受胎によるクローン人間、ナチス・ドイツが開発した不老長寿薬など、いくらでも面白くなるネタを使いながら、こじんまりしたいつも通りのミステリになっているのは、時代性だけでなく作者の創作姿勢なんでしょうね。ちょっともったいない作品。

No.279 6点 贋作ゲーム- 山田正紀 2010/05/09 12:47
犯罪をゲーム感覚で読める襲撃小説の短編集。
悪党パーカーシリーズにコンゲーム風のテイストを加味したような、アクションと頭脳戦を両方楽しめる逸品。
コンピュータ管理の列車からの絵画の強奪作戦「贋作ゲーム」、絶対に排除不可能と思われる機雷の除去作戦「スエズに死す」など、いずれも最後のオチが効いています。

No.278 5点 光媒の花- 道尾秀介 2010/05/09 12:13
ロンド形式の連作短編集。
第1話の脇役格の登場人物が第2話の視点人物となるような形で6つの物語が語られます(トラックの運転手はちょっと苦しいですが)。テイストは「龍神の雨」風ですが、親子間の暗い関係とか昭和の清貧な家族小説を読んでいる気分になりました。
ラストで救われる話もありますが、全体的に暗いトーンの話が多いので読後感はあまりいいものではありません。

No.277 2点 神秘の扉- 高木彬光 2010/05/09 00:03
通俗怪奇スリラー。
一種の復讐譚ですが、同時期に「白昼の死角」とか「誘拐」などを出していながら、このような戦前の作家が書くような古臭い物語を書く事情がよくわからないですね。

No.276 5点 雪のマズルカ- 芦原すなお 2010/05/08 23:55
女性私立探偵ものはちょっと相性が悪い。
私立探偵の夫が銀座のホステスと交通事故死し、後を継いだ里子という女性を主人公とするハードボイルド連作短編集。
あまりぱっとしない設定で、作者が書くほどの物語とは思えない。脇役で「月夜の晩に・・」のふーちゃんが出てきたのが救いかな。

No.275 7点 蒼い描点- 松本清張 2010/05/08 17:27
箱根・宮の下の旅館に逗留する女性作家のある秘密と周辺で発生した殺人事件を描いた本格風ミステリで、社会派的要素が希薄な作品です。
探偵役は女性編集部員と同僚男性で、事件に直接関係しない男女が好奇心から積極的に絡んでゆくプロットは「二人で探偵を」風で、筆致は重厚ではあるものの、これまでの清張作品のイメージと異なる作風といえそうです。
余談ながら、この時期のミステリのタイトル付けの流行として「空白の起点」「白昼の死角」「憎悪の化石」「影の告発」とか思わせぶりで抽象的なものが多いのは清張の影響なんでしょうか。

No.274 7点 幻の女- 香納諒一 2010/05/08 16:31
数年前に不倫関係にあった女性と再開した直後その女性が殺される。主人公の弁護士が彼女の生い立ちを調べると全く別人の過去が立ち現われ、謎の集団が動き出す。彼女はいったい何者だったのか?
ストーリーを要約してみてあまりのベタな展開に萎えそうになりましたが、おじさん世代のハードボイルド読みにとっては結構おもしろく読めました。最後の彼女からの手紙の文面がよかったですね、余韻の残る終わり方です。

No.273 6点 金塊船消ゆ- 多島斗志之 2010/05/08 15:56
初期の謀略系冒険サスペンス。
戦後40年たって届いた手紙は、フィリピンの海岸で焚かれた4つの火に関するものだった。
今作は、米ソ謀略戦などの国際的スケールの物語ではなく、戦争中に沈められた金塊を探す話ですが、多島作品らしくミステリ趣向が施されていて最後はどんでん返しが待っています。
現在この手の主題で書けばもっと長大なストーリーになると思いますが、後半コンパクトにまとまってしまったのは惜しい。

No.272 6点 死んだ時間- 佐野洋 2010/05/08 15:33
女性タレント殺人事件の犯人として自首してきた女はれっきとしたアリバイがあった。
初期の作品で、ホワイダニットを前面にだした秀作です。著者自身も好きな作品のひとつと言っているだけに、謎の設定と意外な展開はなかなか読ませます。
謎の中心となる女性はストーリー上最後まで姿を見せず、その不可解性を高めているのも巧い構成だと思います。

No.271 5点 怒りの菩薩- 陳舜臣 2010/05/08 01:14
終戦直後の台湾を舞台背景にした長編ミステリ第4作。
日本から引き揚げた新婚の台湾人青年の視点で、帰省先での連続殺人が語られていきますが、著者の父親の出身地と思われる台北郊外の田舎町の情景や風習が目に浮かぶように描かれていて興味をひかれます。
ミステリとしては、近隣の菩薩山からの人間消失にそれらしき所がありますが、トリックにあまり見るべきものがないのと、動機がいつものパターンなのでマンネリを感じました。

No.270 6点 歌うダイアモンド- ヘレン・マクロイ 2010/05/08 00:56
ミステリ&SF短編集。
バラエテイに富んだ作品が収録されています。長編のミステリでも超常現象を取り入れているので、ホラー風の作品は予想の範囲内でしたが、SFまで書いていたのは意外でした。
ミステリ作品では、清朝末期の中国を舞台にロシア女性の失踪を描いた「東洋趣味」が当時の雰囲気を醸し出していて読み心地が抜群によかった。SF作品では、人類の終末がテーマの「風のない場所」が非常に印象に残りました。

No.269 6点 ケイティ殺人事件- マイケル・ギルバート 2010/05/08 00:37
著者後期の捜査小説ですが、意外な拾いものの一冊でした。
田舎町のダンスパーティの夜、町出身の有名女性アイドルが惨殺される。物語の序盤は町の住民たちが次々登場し人物の交通整理が大変ですが、捜査陣の住民一人一人の聞き込みによって主要人物の造形が徐々に浮き彫りになってきます。
終盤、法廷場面になってダミー犯人と真犯人がおぼろげに推理できるのですが、最後の数ページでとんでもない事をやってくれてます。途中ちょっと違和感を覚えた記述があったのですが、M・ギルバートがそれをやるとは思わなかったので相当驚きました。

No.268 6点 三重露出- 都筑道夫 2010/05/06 00:12
著者初期の作品全般に言えることですが、今作も捻った趣向を凝らしたメタ風ミステリです。
2つの物語が交互に進行します。ひとつは、忍者に憧れ来日したアメリカ人が奇天烈な忍術を使う女忍者たちとスパイ戦に巻き込まれるという、山風の忍法帖にジェームズ・ボンドを登場させたようなアクションもの。もうひとつの物語は、その小説の翻訳者が小説のなかに現実の記述がある謎に戸惑い調査を始めるというもの。
この二つの物語がどのように結びつくのかが肝のはずなんですが、結末はちょっと肩透かしの感じでした。狙いはよかったけど着地に失敗というところでしょうか。

No.267 6点 阿蘇・雲仙逆転の殺人- 深谷忠記 2010/05/05 20:59
黒江壮&美緒コンビの本格ミステリ。
静岡と愛知の海岸に流れ着いたバラバラ死体と九州・福岡の容疑者とを結びつけるアリバイ崩しもの。
初期の逆転シリーズは比較的アリバイ・トリックに凝ったものが多く、今回も壮大なトリックが虚を突き、ていねいな伏線とか死体をバラバラにした理由とかなるほどと思わせます。「逆転」とは発想の転換の意味のようです。しかし、終盤に壮が「考える人」状態になるパターンは、毎度苦笑ものです。

No.266 6点 聖夜の越境者- 多島斗志之 2010/05/05 19:13
初期の国際謀略小説。
ソ連のアフガン侵攻を絡めた米ソの謀略戦に日本人考古学者が巻き込まれるというストーリー。
なぜソ連はアフガン侵攻を企てたのか、その謎ひとつで壮大なホラ話を構築してます。「一粒の小麦」がもたらす真実に関しては、よくそんな発想が出てくるなあと感心しますが、あまり一般受けする話ではないです。

No.265 6点 死者たちの夜- 結城昌治 2010/05/05 18:47
紺野弁護士ものの連作短編集第1弾。
著者の硬軟取り揃えた私立探偵を主人公にしたハードボイルドは70年代に入ってほぼ姿を消してしまいましたが、私立探偵・真木のシリーズの作風を受け継いだのが、紺野弁護士シリーズだと思います。
職業柄、題材は失踪に限りませんが、愛と欲望の人間関係をシリアスに描いていて抒情的筆致は読ませます。
この第1作品集では、「汚れた月」「風の鳴咽」が印象に残りました。

No.264 5点 柘榴館- 山崎洋子 2010/05/05 18:20
風俗嬢を狙う猟奇連続殺人犯の手掛かりを求めて、風俗嬢の主人公が「柘榴館」と言われる医者一家に潜入するという話。
横浜が舞台といい、デビュー作の「花園の迷宮」を現代版にしたような設定ですが、サイコサスペンス風の味付けがより強くなっています。真相は救いようのないものですが、今読むと既読感をぬぐえません。

No.263 7点 風よ、緑よ、故郷よ- 岩崎正吾 2010/05/05 18:07
父親の死の謎に向き合うため教職を辞して、故郷に帰ってきた主人公を中心に描く田園派の本格ミステリ。
田舎が舞台ですが土俗的な陰湿感はなく、登場人物も個性的で爽やかな青春ミステリのような雰囲気なので、読後感は非常によかったです。さりげない伏線の張り具合といい、作者の作品のなかでは比較的完成度の高い本格編だと思います。

No.262 6点 事件は場所を選ばない- 海渡英祐 2010/05/05 14:00
ノンシリーズのミステリ短編集。
これは意外と良質の本格ミステリ集で、軽妙な物語のなかに考えられたトリックが施されています。
エレベーター内の不可能殺人「殺しもあるでよ」や、捻ったアリバイトリックもの「臭い仲」などが印象に残りました。

No.261 7点 神州日月変- 栗本薫 2010/05/05 13:41
巨漢の八丁堀同心・古河雷四郎を主人公にしたスーパー伝奇時代小説。
ストーリーを簡単に言えば桃太郎の鬼退治というところでしょうか、道中物の連続活劇で一種のRPGですね。とにかく、登場人物が敵も味方も魅力的なんですが、やはり妖術使いの老人・乱月斎が一番かな。
正統派の伝奇もので終わらないところが作者の面目躍如で、最後にとんでもない結末が待っています。スーパー伝奇の「スーパー」とはそういう意味だったのかと最後に分かった次第です。

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