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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2426件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.25 6点 怪盗ニック全仕事(3)- エドワード・D・ホック 2016/07/12 18:44
泥棒にして探偵役、〈怪盗ニック〉ことニック・ヴェルヴェットが登場する短編87作品を発表順に収録する全集(全6巻)の3巻目。このシリーズは早川書房から日本独自編集で4冊出ていますが、この創元社版の3巻目は本邦初訳4作をはじめ、いままで個人短編集に未収録だったものが半数以上占めているのは嬉しい。

どのようにして盗むか(ハウダニット)の部分は、ややご都合主義が目立ち、手段もパターン化されていて、それほど力点は置かれていません。やはり当シリーズに一貫する魅力は、なぜ価値がないもの(あるいは奇妙なもの)を大金を出して盗ませようとするのか?という謎(ホワイダニット)にありますね。
シリーズも30話を超えると(本書には第31話から44話までの14作を収録)、新鮮なアイデアは少なく、マンネリを感じることは否めないのですが、往年のファンであれば、安心して楽しめる作品集です。本書では、恋人のグロリアの存在を活かすプロットがいくつかの作品で見られるのが、作者の工夫かなと思います。また、依頼された仕事が終わったあとに意外な展開をみせる作品が多いのも特徴的です。
収録作の個人的ベスト3は(再読が多いのですが)、「きのうの新聞」「感謝祭の七面鳥」「田舎町の絵はがき」あたり。また、「駐日アメリカ大使の電話」は、日本が舞台で、7月に皇居のそばで凧揚げをするシーンが出てくる異色作ですw

No.24 5点 サイモン・アークの事件簿〈Ⅴ〉- エドワード・D・ホック 2014/03/04 18:38
悪魔と超常現象の探求者、オカルト探偵サイモン・アークものの第5短編集。前巻につづいて翻訳者・木村二郎氏によるセレクト集になっています。

怪奇趣向を前面に出したパズラーというのが本シリーズの特徴ながら、そういった要素が弱まっているものが散見され(なかにはアークが探偵事務所を開いているものまであり)、探偵のミステリアスさ・独自性が失われている作品が多かったのは残念なところ。他の探偵キャラクターでも違和感のない事件が多かった気がする。また、当シリーズは、サム医師ものと違って、シリーズとしての連続性が配慮されていないのも不満なところです。
個々の収録作の中で印象に残ったのは、施錠された礼拝堂内の殺人を扱い構成にも仕掛けがある「怖がらせの鈴」、前半冗長なところがあるも読みごたえ十分のフーダニットもの中編「炙り殺された男の復讐」、顔のない死体テーマにヒネリがある「海から戻ってきたミイラ」の3作品です。
まだまだ未訳作品があるも本書でサイモン・アークものは終了らしい。つぎはレオポルド警部シリーズの訳出を期待したい。

No.23 5点 サイモン・アークの事件簿〈Ⅳ〉- エドワード・D・ホック 2013/01/18 13:04
オカルト探偵サイモン・アークの第4短編集。作者ホックが自ら選んだこれまでの3巻分の26作品とは違って、本書は訳者・木村仁良氏がセレクトした作品集です。

率直に言うと出来がいいと思った作品はあまりなかったですね。
悪魔との対決を求めるオカルト研究家というシリーズの基本設定が足かせになってマンネリを感じます。また、怪奇現象などの発端の謎に引き付けるものがない、普通の作品が多いように思います。
印象に残った作品を強いていうと、語り手「わたし」の故郷と家族に関わる事件「黄泉の国の判事たち」と、修道院に棲む悪魔の正体が印象的な「悪魔がやって来る時間」ぐらいかな。

No.22 6点 革服の男- エドワード・D・ホック 2012/10/14 18:44
光文社文庫の”英米短編ミステリー名人選集”シリーズの5巻目。
今でこそ創元推理文庫から続々と出ているホックですが、早川の怪盗ニックぐらいしか簡単に読めない時期があり、そういう時期に出た本書は当時ファンに喜ばれたに違いありません。
ホック入門に最適な「ホックと13人の仲間たち」に倣ったような、多くのシリーズ探偵ものを中心に編まれていますが、サム医師もので、”パリ万博綺譚”を元ネタにした魅力的な謎の表題作や、オカルト探偵サイモン・アークものなど、いくつか後発の創元文庫と被るのは止むを得ないでしょう。
「不可能夫人」のギデオン・パロ卿(フェル博士+ポアロのパロディ?)、「七人の露帝」の暗号解読専門家ジェフリー・ランド、「ジプシーの勝ち目」のジプシー探偵ミハイ・ヴラドなど、マイナーなシリーズ探偵ものが入っているのは嬉しい。

No.21 6点 エドワード・D・ホックのシャーロック・ホームズ・ストーリーズ- エドワード・D・ホック 2012/08/29 22:59
ホックが長い作家生活の間に断続的に書いたホームズ譚のパスティーシュ集。すでに同じ版元の原書房からは贋作ホームズのアンソロジーが数冊でていて、いずれもホックの作品が入っているため重複するのですが、本書はシャーロッキアンよりホック・ファンのための作品集という感じがするので良しとしましょう。
パスティーシュといっても文体の模倣は意識していなくて、ホームズ譚の構成を借りた、あくまでも”ホック流ミステリ”です。
個人的お薦めは、隠退しサセックス州で養蜂家となったホームズ宛に”あの女性(ひと)”から依頼が舞い込む「モントリオールの醜聞」と、タイタニック号の船上でホームズが”あの作家”と共演する「瀕死の客船」です。後者はワトソンの手記ではなく、ホームズの一人称で語られるのだけど、最後に明らかになるその理由には思わずニヤリとなります。

No.20 5点 サイモン・アークの事件簿〈Ⅲ〉- エドワード・D・ホック 2012/01/08 18:13
オカルト探偵サイモン・アークものの第3短編集。
50年代に書かれたものから2編、80年代から6編の作品が選ばれていますが、作風や設定にまったく変化なし。出版社の編集者である「わたし」を伴って、世界各国の悪魔や怪異現象をを調査しているうちに、不可解な殺人事件に遭遇するというパターン。
「焼け死んだ魔女」のまさに今日的すぎる真相もいいけれど、厳重に警備されたドイツの古城からのナチス戦犯の消失や、ガラス張りのエレベーターからのロック歌手の消失など、やはり不可能トリックを扱ったものが印象に残りますね。後者のトリックの真相はダメ出し相当ですけども。

No.19 6点 サイモン・アークの事件簿〈Ⅱ〉- エドワード・D・ホック 2011/01/18 18:26
オカルト探偵サイモン・アークの第2短編集。
目玉作品は、唯一の中編「真鍮の街」かな。意識したかどうかは判りませんが、地方都市が舞台で人間関係を錯綜させたプロットは、師匠クイーンのライツヴィルものを髣髴させます。メイン・トリックはいたって古典的ですが。
その他、犯人特定方法がロジカルな「百羽の鳥を飼う家」と、死体が一瞬にして老衰する謎「死を招く喇叭」がまずまずかと思いますが、枚数の関係で短編はいずれも解決があっけない。

No.18 6点 夜の冒険- エドワード・D・ホック 2010/09/02 20:03
ノン・シリーズのミステリ短編集で、ほとんどが非パズラー系の作品が収められています。10年程前に出た「夜はわが友」の姉妹編という感じですが、本書の方が総じて出来がいいように思います。
ダークな雰囲気なもの、奇妙な味、ウールリッチ風の都会派ロマン、謀略もの、心理サスペンスなど、パズラー作品にはない多彩な作風を披露してくれていて満足でした。

No.17 5点 サイモン・アークの事件簿〈Ⅰ〉- エドワード・D・ホック 2010/06/17 20:11
オカルト探偵サイモン・アークの第1短編集。
シリーズ作品は60作以上書かれていますが、発表順の全集ではなく、各年代からチョイスされているのはちょっと残念。
著者の短編デヴュー作の「死者の村」が探偵の特質を活かしたオカルト色の強い設定で編中のベストですが、年次を重ねる毎にアークが普通のキャラになっているように思います。
不可能犯罪の趣向が光る「狼男を撃った男」が準ベスト作品です。
他の作品集で読める作品が多く含まれているため編集方針に▲1点。

No.16 5点 怪盗ニック対女怪盗サンドラ- エドワード・D・ホック 2010/05/23 23:13
怪盗ニック・シリーズの連作短編集第4弾。
しばらく出版がとぎれて久々にでたシリーズですが、全篇ニックの商売敵の女怪盗サンドラ・パリスが絡むプロットになっています。シリーズ中期の作品集で、さすがに意外性を追求する姿勢はゆるくなっているように思います。
なかでは、レオポルド警部との共演「レオポルド警部のバッチを盗め」が個人的ベスト作品。

No.15 6点 怪盗ニックの事件簿- エドワード・D・ホック 2010/05/23 23:01
怪盗ニック・シリーズの連作短編集第3弾。
引き続き本書のテンションも下がっていません。恋人のグロリアにニックの正体がばれてしまうという展開があります。
個人的ベストは、その「昨日の新聞」でしょうか。極めつけの価値のない昨日の新聞が何故依頼人には盗む価値があるのか、その理由はなかなか予想外です。
すでに終演した芝居のチケットの盗難依頼「劇場切符の謎」もホワイダニットの秀作だと思います。

No.14 6点 怪盗ニックを盗め- エドワード・D・ホック 2010/05/23 22:48
怪盗ニック・シリーズの連作短編集第2弾。
本書もいろいろなヴァリエーションで楽しませてくれます。
ハウダニットとホワイダニットともに意表をつく「プールの水を盗め」と「聖なる音楽」、ニック自身が誘拐される「怪盗ニックを盗め」、 <赤髪組合>バージョンかと思わせる「何も盗むな!」などが印象に残っています。

No.13 7点 怪盗ニック登場- エドワード・D・ホック 2010/05/23 22:24
無価値のものだけを盗む怪盗ニック・ヴェルヴェットの連作短編集、日本で独自に編集されたシリーズ第1弾。
ホックの数多いシリーズ・キャラクターの中でもレオポルド警部とほぼ同数の約90編の作品に登場する看板キャラです。
このシリーズの肝は盗難方法のハウダニットよりも、依頼人は何故無価値のものを盗ませるのかというホワイダニットにあります。
ニックが事件に巻き込まれ、その理由を追求せざるを得なくなるプロットは最初は新鮮でしたが、パターンが限られているだけに元々マンネリは避けられないプロットかもしれません。
本書は第1作の「斑の虎」をはじめ、盗難理由が意外な「真鍮の文字」と「陪審員を盗め」、何を盗むか分からない「からっぽの部屋」など秀作がそろっています。

No.12 4点 コンピューター404の殺人- エドワード・D・ホック 2010/05/23 15:34
近未来の高度情報社会を背景にしたコンピューター検察局シリーズ第2弾。
大統領選挙集票マシンへの陰謀犯と反コンピューター過激派組織との三つ巴戦に殺人が絡む通俗ミステリですが、SF設定がほとんど活かされていない点とプロットに捻りがないのが不満。

No.11 6点 大鴉殺人事件- エドワード・D・ホック 2010/05/23 15:21
ホックの長編ミステリ・デビュー作。
アメリカ探偵作家クラブのパーティでの殺人を扱っていて、多くのミステリ作家が実名で出てくるのが楽しい。被害者が陶器の大鴉像を粉砕してダイイングメッセージを提示するが、、探偵役がエラリー・クイーン(F・ダネイ)に解釈のアドバイスを仰ぐ所はニヤリとさせてくれます。
プロットはやや通俗的ですが、犯人当てミステリとしてまずまずの佳作だと思います。

No.10 6点 サム・ホーソーンの事件簿Ⅵ- エドワード・D・ホック 2010/05/22 17:58
本格パズラー短編集の最終第6弾。
サム医師の昔語りも最終章を迎える。戦争の影が濃く、プライベートでも大きな出来事がある今作です。
さすがにこの時期の作品は、トリックの趣向として優れたものはありませんが、「自殺者が好む別荘の謎」などは、ある趣向がニヤリとさせてくれる印象に残る作品でした。
シリーズ全作を通して言うと、人物造形や物語性などはともかくとして、これだけ不可能トリックにこだわった短編集は稀有で、その創作姿勢を高く評価したいと思います。

No.9 6点 サム・ホーソーンの事件簿Ⅴ- エドワード・D・ホック 2010/05/22 17:43
本格パズラー短編集の第5弾。
看護婦のエイプリルが復帰し、女性獣医アナベルが登場して重要な役割を果たします。
各編トリックは分かりやすいものが多い様に感じましたが、「奇蹟を起こす水瓶の謎」の毒殺トリックがまずまずでしょうか。
ボーナス・トラックは「レオポルド警部の密室」ですが、同シリーズの他の未訳作品にしてほしかった。

No.8 7点 サム・ホーソーンの事件簿Ⅳ- エドワード・D・ホック 2010/05/22 17:33
本格パズラー短編集の第4弾。
看護婦のエイプリルに変わって一時的にメリー・ベストが登場します。
収録作では、「革服の男の謎」が抜群の私的ベスト。サム医師が知り合った男が突然消失し、目撃者である町の人々全員がその存在を否定するという不可思議性が非常に魅力的。ほかでは、「要塞と化した農家の謎」が久々の密室トリックものの秀作でした。
今作には、西部探偵ベン・スノウものが2作収録されているのも嬉しい。サム医師との共演「呪われたティビーの謎」と「フロンティア・ストリート」が読めたのは収穫。

No.7 6点 サム・ホーソーンの事件簿Ⅲ- エドワード・D・ホック 2010/05/22 17:15
本格パズラー短編集の第3弾。
ガチガチの本格ミステリを12編続けて読むと、さすがに疲れます。独創的トリックがそうそう案出できる訳もありませんので、過去のヴァリエーションになりますが、既読感を覚えるものもありました。
なかでは、「干し草に埋もれた死体の謎」が伏線の巧妙さで編中のベストでしょうか。
ボーナス・トラックは非シリーズもの「ナイルの猫」。これは動機が意表をつくホワイダニットの秀作でした。

No.6 7点 サム・ホーソーンの事件簿Ⅱ- エドワード・D・ホック 2010/05/22 17:02
本格パズラー短編集の第2弾。
今作も不可能トリックがてんこもりです。個人的ベストは、レンズ保安官の結婚式会場の密室殺人を扱った「八角形の部屋の謎」です。この作品は全体のプロットにも面白い仕掛けがあり楽しめました。
ボーナス・トラックはレオポルド警部ものの「長方形の部屋」で、これはホワイダニットの傑作です。

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