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まさむねさん
平均点: 5.89点 書評数: 1282件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1142 7点 案山子の村の殺人- 楠谷佑 2024/02/20 23:01
 従兄弟で合作推理小説を書いている大学生コンビが、秩父の山奥の村で遭遇した殺人事件。奇をてらわないクラシック・スタイルの本格モノで、好感を持たれる同志の方も多いと思います。登場人物の造詣も上手く、ストレスなく読み進められます。密室の謎は小粒かもしれませんが、ミスディレクションには感心。ぜひとも続編を書いてほしい。

No.1141 8点 好きです、死んでください- 中村あき 2024/02/15 21:31
 いいですねぇ。好きですよ。
 恋愛リアリティーショーという舞台設定を最大限活かしています。「三年×組にて」と題された幕間の存在も大きい。様々に想定しながら読んだものの、完全にしてやられました。新鮮味のあるクローズドサークルものです。
 リーダビリティも高く、ほどよい「軽み」も好印象。映像コンテンツやSNSに対するメッセージ性も含めて、一読の価値はあると思います。

No.1140 5点 119- 長岡弘樹 2024/02/12 17:31
 和佐見市の漆間分署(いずれも架空)に所属する消防官たちを主人公に据えた連作短編集。9作で構成されますが、全短編を振り返ると10年の歳月が流れていることになります。ある短編で脇役だった者が後の短編で重要な役割を担ったりしていて、それぞれの登場人物による群像劇的な面もございます。
 短編ごとに見ると、こじつけ感や違和感が引っかかる作品もありますし、全体として中弛み感もあったのですが、前述の要素が連作短編集として一定の効果を発揮してくれた後半以降、多少盛り返してくれた感じでしょうか。

No.1139 4点 製造迷夢- 若竹七海 2024/02/09 23:49
 渋谷猿楽署の刑事・一条風太とサイコメトリー能力を持つ井伏美潮のコンビによる連作短編集。
 物語としてサイコメトリーを活用すること自体、私は否定的にとらえているものではなく、むしろミステリとして絶妙な調味料にもなろうと思っています。でも、それは素直にストレートに使ってほしいなぁ…という気もしていて、それにドラッグやら何やらをかまして複雑化されてしまうと、どうにも興味が減退してしまう面がありました。
 若竹作品の中では異色作として位置づけられると思うのですが、成功しているかと問われれば、個人的には消極的な評価になってしまいます。辛口ですが敢えてこの採点で。

No.1138 6点 秘書室の殺人- 中町信 2024/02/05 22:06
 文庫版で250ページ弱という文量ながら、作者らしい企みに満ちた作品。プロローグの仕掛け自体の驚きはないものの、ソコも含めた全体構成がいかにも中町信らしい。発端となった秋保温泉での事案に関してはちょっとモヤモヤした気持ちがあるし、色々とご都合主義的な部分もあるけれど、最後まで引っ張っていただけたので、楽しい読書ではありました。

No.1137 8点 出版禁止 死刑囚の歌- 長江俊和 2024/02/03 07:41
 二人の幼児が殺害される事件(柏市・姉弟誘拐殺人事件)が発生。犯行を自供した男の死刑が確定する。当該事件の22年後、幼児の両親が殺害される事件(向島・一家殺傷事件)が発生。死刑は既に執行されており、男の犯行はあり得ない。両事件の裏には何があるのか…。
 複数のルポルタージュや雑誌記事を読み進める形で、徐々に真相が明らかになっていきます。先が気になってグイグイ読まされました。不穏な空気が序盤から漂っているので、それなりに注意深く読んできたつもりだったのですが、ラストには驚かされました。「どういうこと?」と首をひねった私は、きっとすごく幸せな読者なのであろうと、暫くして自分を励ましたりもしました。(よく考えれば、気づけるのでしょうが…)和歌の解釈は、もはや解説サイト任せなダメな私ではありますが、こういった点も含めて、純粋に面白かったですねぇ。

No.1136 6点 汚れた手をそこで拭かない- 芦沢央 2024/01/27 17:33
 短編集。濃淡はあるけど、人の心の絶妙な悲哀を感じて、ホラーとは違った「怖さ」を感じることができます。でも、好き嫌いはあるでしょうねぇ。爽快な気分になれるものでもないですし。
①ただ、運が悪かっただけ:過去の自分に悩む夫。末期癌の妻が解き明かす真実は。嫌な奴も登場するけど、読後感は悪くないかも。
②埋め合わせ:社会問題と言ってもいい、学校のプールの水問題。教師に賠償請求するのは社会的に正しいのかねぇ…。で、この作品の主人公が悲しいほどにダメ。それに輪をかけて…
③忘却:アパートの隣人が熱中症で孤独死した。原因は…。温かさと怖さと。
④お蔵入り:色んな人が色々とダメ。嫌な気分になれます。
⑤ミモザ:元カレもダメだけど、料理研究家の主人公もねぇ…。これも嫌な気分になれます。

No.1135 7点 アリアドネの声- 井上真偽 2024/01/25 21:47
 大地震で壊滅的な被害を受けた地下構造体(地下都市)に取り残されてしまった方を、ドローンを駆使して救助する物語。しかも要救助者は、「見えない、聞こえない、話せない」という複数のハンディキャップを抱えていた…。
 サスペンスとしての救出シーンも悪くないのですが、そのラストには素直に驚き、そして感動しました。色々な意味で「誘導」が巧みです。
 能登半島の報道に接しながらの読書だったこともあり、個人的には様々考えさせられもしました。
 ちなみに、設定的に「方舟」と近しいところがあるように見えるかもですが、方向性は全然違っています。どちらの作品も好きですね。

No.1134 6点 一千万人誘拐計画- 西村京太郎 2024/01/22 20:41
 5編からなる短編集。主人公のキャラも内容も画一的ではないので、ワクワクしながら読み進められると思います。初期の西村短編の奥深さを感じることができるのではないでしょうか。長編に活かされたと思われる短編もあって興味深かったです。
 「受験地獄」は、他の短編集で既読。皮肉な結果が印象に残ります。
 「第二の標的」、「一千万人誘拐計画」では、平刑事時代の十津川さんが捜査に当たります。イケイケで結構やんちゃです。表題作は、頭脳戦というよりも心理戦?
 「白い殉教者」、「天国に近い死体」では、徳大寺京介が探偵役。ハウをメインに、本格度は高いです(いずれも多少無理のあるトリックではありますが)。

No.1133 7点 私雨邸の殺人に関する各人の視点- 渡辺優 2024/01/20 23:37
 クローズドサークルでの密室殺人。複数の視点での物語の進行。確たる探偵役はおらず、各々が推理を開陳して…という、正統派フーダニット作品。目新しさという観点では弱いし、動機も弱いと思うのだけれども、ロジカルな本格作品というのは、やっぱりいいものですな。締め方も良いですねぇ。
 昨年末の各種ミステリランキングで、もう少し評価が高くても良かったのでは?…などと思いましたね。目立ちはしないけど、佳作とは言えると思います。

No.1132 6点 アミュレット・ホテル- 方丈貴恵 2024/01/17 21:47
 犯罪者御用達のホテル「アミュレット・ホテル(別館)」を舞台にした短編集。
 銃火器や毒物、偽造パスポートに至るまで、電話一本で部屋にお届けしてくれるという、犯罪者にとっては夢のようなホテル。一方で、利用者には「ホテルに損害を与えない」「ホテルの敷地内で傷害・殺人事件を起こさない」という、厳格なルールが課されています。仮にホテルで事件が起きた場合、警察の捜査は一切入れさせないのですが、代わりに登場するのが「ホテル探偵」で、事件の一切の「処理」を任されています。
 こうした設定は、ちょっとユーモラスな感じもあって、個人的には嫌いではないです。各短編に工夫が施されていて、ロジックも効いています。楽しめると思います。
 しかし何だろう。ちょっと入り込みにくい短編もありました。作り込みすぎているというか…。もしかして我儘な読者なのかな?

No.1131 7点 変な絵- 雨穴 2024/01/10 21:57
 すみません。売れていることは当然に把握していたのですが、「自分好みの作品ではないのだろうなぁ…」と勝手に思い込み、これまで手にしてきませんでした。思い込みって良くないね。損するね。反省しています。
 全体を俯瞰すると、しっかりと練られた構造。何となく予測しやすそうなのだけれど、作者の術中に嵌るところもあって、個人的には十分に満足できる内容でしたね。作中のブログを実際に閲覧できるのも一興。一方、複数の局面で「絵」を噛ませた必然性が高いとは言い難く、特段「絵」縛りに拘らずとも、内容自体で勝負できたような気もします。勿論、効果もあると思うのだけれど。
 前作「変な家」も読んでみようかな。

No.1130 6点 福家警部補の挨拶- 大倉崇裕 2024/01/08 15:46
 倒叙形式の短編集。刑事コロンボファンを公言する作者だけあって、コロンボ愛に溢れています。マイベスト短編は、科警研OBとの対決「オッカムの剃刀」でしたが、解決シーンはコロンボの名作「逆転の構図」を思い出しましたね。
 犯人は、私設図書館長、科警研OBの大学講師、女優、酒造会社社長といった一筋縄ではいかなそうな人物で、福家警部補との知的対決が楽しめます。どの短編も、最後のシーンは古畑任三郎のテーマ曲が耳に響きそうな感じ。倒叙形式はあまり好まないのだけれど、このシリーズは好きになりそう。

No.1129 7点 焰と雪 京都探偵物語- 伊吹亜門 2024/01/06 12:26
 大正時代の京都を舞台とした連作短編集。警察を辞めて私立探偵となった鯉城武史と、伯爵の落とし子である露木可留良が事件の真相に迫ります。
 第一話「うわん」は、結構あっさりとした結末で多少肩透かし。でも読み続けるべし。第二話「火中の蓮華」、第三話「西陣の暗い夜」で人間の情念を示しつつ、読みどころは第四話の「いとしい人へ」。その流れでの最終話「青空の行方」もハードボイルドタッチで好印象。
 一般的なバディものとは一味違った味わいでした。6.5点を切り上げてこの採点。

No.1128 8点 十戒- 夕木春央 2023/12/30 09:24
 衝撃度という点だけで見れば昨年の「方舟」に及ばないものの、この作品も相当に良質な本格作品。犯人とコミュニケーションがとれる「孤島モノ」の設定が秀逸だし、足跡のロジックも好印象。ラストも、最初は〝違和感〟レベルであったけれど、気づけばなるほど、なるほど。これも印象深い。

No.1127 8点 可燃物- 米澤穂信 2023/12/23 09:51
 作者の力量を再確認いたしました。どの短編も無駄のない流れですが、決して無機質ではなく、グイグイ読ませます。その中での転換が実にお見事。
 マイベストは思わず唸った「命の恩」。次点はタイトルも秀逸「本物か」。凶器は何か「崖の下」も良作で、いずれも盲点を突く転換がポイント。その後に「ねむけ」「可燃物」と続く印象。
 良質な警察小説短編集と言えるのではないかな。

No.1126 7点 臨場- 横山秀夫 2023/12/17 22:54
 作者の短編集の中でも上位に位置付けたくなる、高水準の短編集。
 検視官を主人公として、事件の意外な結末を見抜くという基本線は勿論のこと、それに事件の関係者の心情もキッチリと噛ませつつ反転させていく構成力には感服いたします。ちょっと無理筋な点もなくはないけれども、とにかく読ませます。さすがは短編の名手。

No.1125 7点 女が死んでいる- 貫井徳郎 2023/12/12 23:07
 文庫版の解説でも触れられていたのですが、実は貫井さんの短編集って少ないのですよねぇ。実際、私は「被害者は誰?」しか読んだことがないし。短編も巧い作家なのに勿体ない…ということで、現時点での最新短編集(実は四半世紀前の短編も多く収録されているのだけれどね)を手にした次第。
 作者らしい反転系が中心なのですが、短編自体のバラエティは豊かで、次の短編はどうなんだろう…と期待しながら読むことができます。「殺意のかたち」や「憎悪」、「母性という名の狂気」あたりで作者の技巧を堪能しつつも、個人的には「レッツゴー」の軽み&深みも好み。この短編、好きだな。
 ちなみに、「殺人は難しい」の答えは、多くの方が気づくのではないかな。

No.1124 5点 モップの精は旅に出る- 近藤史恵 2023/12/07 22:27
 シリーズ第5弾、そしてシリーズ最終巻。前作は長編だったのだけれど、今回は短編集に戻っています。
 ミステリとして特段目立つ部分はない(むしろ犯人は分かりやすい)のですが、キリコと大介の夫婦関係も好ましく、読み心地が良いです。ミステリ的な側面は別としても、安心して読める、結構好きなシリーズだっただけに、これ以上読めないのは残念。

No.1123 8点 密室狂乱時代の殺人 絶海の孤島と七つのトリック - 鴨崎暖炉 2023/12/05 20:18
 前作も良かったのだけれど、続編はそれに輪をかけて楽しかったですねぇ。軽快でコミカルな語り口もフィットしてましたね。
 今回の密室では特に「十字架の塔の密室」の振り切れ具合が印象的。こういうの、嫌いになれない。というか、本当は大好き。また、密室推しの流れの中での最終盤のネタも嫌いじゃない。結構驚いちゃったりして。
 ちなみに、他の豪快系ネタも含めて「いやいや、犯行時に誰かしら気づいちゃうだろ、普通!」等々の考えは、楽しい読書の妨げになるので早々に捨て去りました。そういった考えこそ楽しいのだ、という説もあるのですが。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.89点   採点数: 1282件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(58)
有栖川有栖(45)
東川篤哉(44)
森博嗣(37)
島田荘司(29)
道尾秀介(28)
伊坂幸太郎(26)
西村京太郎(24)
米澤穂信(23)
歌野晶午(21)