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まさむねさん
平均点: 5.86点 書評数: 1160件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1020 5点 天使はモップを持って- 近藤史恵 2022/08/23 20:34
 連作短編集。女性視点でのお話が多く、好き嫌いは分かれそう。個人的には、若くお洒落な清掃人キリコと、社会人1年生の大介のキャラもよく、二人の会話も楽しめました。でも、ミステリとしては薄味か。
 最終話「史上最悪のヒーロー」で、短編集として一応の区切りはついているのだけれど、何と続編もあるようですね。そのうち読んでみようかな。

No.1019 6点 元彼の遺言状- 新川帆立 2022/08/21 21:12
 「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という、元彼の残した遺言状をめぐる物語。数百億円ともみられる遺産を勝ち取るべく、「犯人選考会」に代理出席する女性弁護士が主人公。つかみも良く、次々と展開される面白さはあります。色々なタイプの女性同士のやり取りや、主人公の心情の変化は、好き嫌いはありそうだけど、個人的には悪くはないかな。巧く組み立てられていると思います。

No.1018 7点 午後の脅迫者- 西村京太郎 2022/08/15 21:23
 「西村先生の短編集って、トラベル系しか読んだことがないのではないか」と気になってしまい、講談社文庫の新装版を手にした次第です。
 9作品で構成。嗚呼、いいな。まずは表題作「午後の脅迫者」の鮮やかさ。ラストのセリフもグッとくる。「密告」の締めの一言もいいが、これは「二一:〇〇時に殺せ」も併せて警察小説としての妙味か。「美談崩れ」は横山秀夫を彷彿(その随分前の作品であることがすごい)。「柴田巡査の奇妙なアルバイト」のブラックさも印象的。「私は職業婦人」は、男女雇用機会均等法施行のずっと前の時代の作品であると考えると凄い。個人的には、ラストを飾るショートショート「マルチ商法」に唸った。最後の一言の切れ味が素晴らしい。
 そうでもない短編もありつつも、総合的にこの採点で。西村短編は、もう少し読んでみようかな。

No.1017 7点 虚像のアラベスク - 深水黎一郎 2022/08/11 21:39
 中編2本で構成。
 1作目「ドンキホーテ・アラベスク」。冒頭からバレエの専門用語の解説が山盛りで、結構辛いのですが、諦めずに読み切るのが吉。お話としては、まぁ普通。
 2作目「グラン・パ・ド・ドゥ」。語り口から一定の想定はしていたのですが、その遥か上から一気に叩きつけられた感じ。この類の読書は久しぶりだぁ。何やら清々しいぞ。エピローグ「史上最低のホワイダニット」も含めて、私は好きです。

No.1016 5点 うまたん ウマ探偵ルイスの大穴推理- 東川篤哉 2022/08/07 13:14
 この間、様々なキャラクター(マイベストは「ゆるキャラ探偵」なのだけど)を登場させてきた作者。とうとう人間を超えて元競走馬(15歳・牡馬)を探偵役に据えてきました。関西馬だから関西弁というのは、ちょっとアレのような気がしますが、相棒が女子高生といった設定は作者らしいかな。
 最終話の一捻りは嫌いじゃないのものの、ネタは総じて小粒。疑問に思うネタも無くはない。採点はこの辺りで。

No.1015 6点 クスノキの番人- 東野圭吾 2022/08/02 22:27
 不思議なクスノキを巡る人間ドラマ。
 次々とページをめくらされた辺りは、さすが東野さん。安心して読めるイイ話で、特段の不満がある訳ではないのですが、最後の方は少し書き急いでいる感じも受けたかな。皆の「その後」も気になったのだけれども、読者として欲張り過ぎかな。

No.1014 7点 幻月と探偵- 伊吹亜門 2022/07/25 22:02
 昭和初期の満州国を舞台とした作品。岸信介氏も登場します。衝撃的な事件があった今こそ読んでみようかと、手にした次第です。
 探偵役・月寒三四郎のハードボイルドタッチの探偵譚としても楽しめたのですが、真髄はホワイダニットの部分。この時代の、この国(地域)だからこその物語。歴史の結末を知っている自分が言うのはおこがましいのですが、極寒の乾いた満州の風景とともに描かれる、儚い一時期の夢(と表現していいのか?)が印象的。今では語られることも少なくなった、当時の満州国に対して想いを巡らせていただいた点に感謝して1点加点。

No.1013 5点 さよならに反する現象- 乙一 2022/07/23 22:45
 5編を収録した短編集。うーん、どうなのだろう。総じて中途半端な印象を受けました。
 最も作者らしい設定の短編が「悠川さんは写りたい」。心霊写真を作ることが趣味の青年と交通事故で亡くなった女子大生のやり取りが、何かホッとします。でも尻切れトンボ感が否めず。「そしてクマになる」も嫌いじゃないのだけれど、もうワンパンチほしかった印象。

No.1012 6点 シェルター- 近藤史恵 2022/07/18 22:38
 整体師シリーズ第3弾。
 安定的に面白いのだけれども、1作目、2作目と比較すれば、多少下がるか。力先生と恵・歩姉妹、さらに小松崎のメインメンバーの関係性が固まってしまっているので、やむを得ない部分もあるとは思うのですが、真相を知って振り返ってみると怪しげな人物の置き方があざと過ぎて、何かうまく流された感じも受けます。
 とはいえ、メインメンバーのキャラは魅力的。今後続編はないものか。

No.1011 7点 茨姫はたたかう- 近藤史恵 2022/07/11 23:26
 前作「カナリヤは眠れない」の読み心地の良さから、早速シリーズ続編も入手して読んでみました。
 前作に引き続いて好印象。力先生をはじめ、登場人物たちの雰囲気が何とも好ましいのですよね。主人公の成長も好ましく、うまく言えないのだけれども、嬉しい気分で読み終えました。力先生のコトバも沁みる。このシリーズ、いいな。

No.1010 5点 寝台特急(ブルートレイン)八分停車- 西村京太郎 2022/07/09 16:16
 相当前に読んだはずなのですが、ほとんど記憶に残っていないので再読。
 腎臓結石で入院した亀井刑事が、夜のレントゲン室から漏れる男女の会話を耳にします。寝台特急は八分間停まる。八分あれば人殺しもできる。今週の日曜日には必ず奴を殺す。
 序盤から中盤まではグイグイと引っ張られました。中盤以降は、犯人が明らかなこともあって、ちょっと中だるみの印象もあったかな。ラストは、レントゲン室で自身の犯行を思わず叫んじゃうのかな?と思ったら、結構あっさりとした幕引き。亀井さんの石が早めに出てきてくれたことは良かったけどね。
 ちなみに、有名な話では、あるのですが、作者の、文章は、読点が、多すぎて、とても、読みにくいですよね。

No.1009 6点 珈琲店タレーランの事件簿7- 岡崎琢磨 2022/07/03 23:08
 4つの短編と3つの掌編で構成されています。うち4短編については、全て実際の出来事を題材にしたとのこと。その方針のきっかけとなったらしい「ビブリオバトルの波乱」がベストかな。一方で、4短編ともに無理やり感が漂うような気がしましたね。実際の出来事を用いただけに、やむを得ない部分もあるのかな。
 ちなみに、今回の美星バリスタは、一部の掌編を除いて、純粋に探偵役に徹しています。これはこれでいいかも。でも、美星バリスタはお客の話を盗み聞きし過ぎでは?それを言っちゃあ短編集にならないか。

No.1008 6点 スクイッド荘の殺人- 東川篤哉 2022/06/30 21:19
 烏賊川市シリーズ13年ぶりの長編。鵜飼探偵&流平コンビ、さらに砂川警部&志木コンビ等々、とても懐かしい気分で読ませていただきました。その点は素直に嬉しかったですね。(朱美さんが顔を出す程度にしか登場しなかったのは少し残念だったけど。)
 一方で、ミステリ的な側面についての積極的な評価はしにくい。端的に言えば、長く引っ張るだけのネタだったのだろうか、といったところ。伏線も含めて巧くまとめているし、スイスイと楽しく読ませてはいただいたので、全体として悪い印象ではないのですが、もうワンパンチほしかったかな。
 ちなみに、「烏賊」の英訳が「スクイッド」らしいですね。烏賊押しの姿勢は嫌いじゃないです。

No.1007 7点 カナリヤは眠れない- 近藤史恵 2022/06/22 21:35
 買い物依存その他諸々、テーマ自体は重たい内容だと思うのですが、そんなに鬱々とならず、むしろ前向きに読み終えられたことに好感。「そんな迂遠な手法をとるのかなぁ」とか、突っ込みどころもなくはないのですが、メインメンバー達の雰囲気のよさやリーダビリティの高さが勝って、心地よく読み切りました。転換の内容とタイミングについても、個人的にはポイントが高い。
 ちなみに、自分も合田整体師に心と体を調整してもらいたいものだなぁ…としみじみ感じました。最近、疲れがとれにくくなっているのですよねぇ。続編もそのうち読むことになりそうです。

No.1006 6点 堪忍箱- 宮部みゆき 2022/06/14 22:18
 8篇からなる時代モノ短編集。
 江戸の市井の人々の日常生活を描きつつ、登場人物の心情について、押しつけがましくなく、スッと読者の心に染み込ませる力量はさすがの一言。「心の動き」で次々にページをめくらされました。
 ホラー風味の短編から純粋な人情モノまで幅広い品揃えで、読者としては、同パターンが続かなかったことも嬉しいですね。個人的には、「敵持ち」の味付け、「砂村新田」の優しさが特に良かったかな。

No.1005 6点 なぜ、そのウイスキーが死を招いたのか- 三沢陽一 2022/06/11 16:59
 仙台のバーが舞台となる短編集。バーテンダーが馴染みの客の話を聞き、真相を解き明かすスタイルで統一されています。
 4短編のタイトルは、「何故、ブラック・ボウモア四十二年は凶器となったのか?」、「何故、死体はオクトモアで濡れていたのか?」、「何故、犯人はキンクレイスを要求したのか?」、「何故、利きマッカランの会で悲劇は起きたのか?」。タイトルどおり、ウイスキーにまつわるホワイドニット中心の構成。内容として、斬新な何かがあるものではなかったけれど、悪い印象はなかったですね。ウイスキーへの愛は強く感じました。(逆に、その辺りが合わない方もいらっしゃるかもだけど)

No.1004 5点 ミステリなふたり a la carte- 太田忠司 2022/05/28 21:37
 シリーズ第3弾。一編一編がコンパクトな短編集なので、スキマ読書用として活用させていただきました。結果、結構長い期間をかけて読み切ることになってしまったのですが、前半の短編の内容はほとんど覚えていない(汗)。悪くはないのだけれど、「ほほう」と記憶に残る点もないという、まぁ、そういった短編集。

No.1003 8点 六人の嘘つきな大学生- 浅倉秋成 2022/05/24 22:35
 見事です。この間、様々な媒体で高い評価を受けていたことも頷けます。
 多くの皆さんが経験する(した)であろう「就活」をテーマにした上で、最終選考に残った6人たちで内定者1名を決定するためにグループディスカッションを行う…まずはこういった舞台設定が興味深い。第一部で就活時点を描き、第二部で8年後を描くという、時間差攻撃?も効果を上げています。何よりも、「犯人は誰だったか」という主たる謎のみならず、周辺にも複数の謎を配置し(しかもそれらの謎が主たる謎と絶妙にリンクしてくる辺りが心憎い)、伏線を配置しながら二転三転させてくる技巧には唸らされました。
 読み終えた後、「自分だったら、ディスカッションの際、そんなに取り乱さずに別の対応を採ると思うな」といった不自然さを感じた面も正直ございました(そもそも、こういった採用手法自体があり得ないだろうしね)が、全体の作りこみ具合は、こういった不自然な点を凌駕していたと思います。本当に採用すべき人材は誰だったのか、否、そんなことを結果論で捉えること自体が間違っているような気もするし、様々に考えさせられる作品でもありました。

No.1002 6点 むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。- 青柳碧人 2022/05/16 22:43
 日本昔話シリーズの続編(ちなみに、この間「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。」も出版されているので、昔話シリーズとして括れば3作目ということになりましょうか)。
 第一作に比べて、ミステリとして様々に手を加えようとする姿勢を感じた一方で、手を広げすぎというか、紡ぎすぎというか、そんな印象も受けました。勿論その努力は買うのだけれども、面白味に結びついているかという観点では消極的な評価。特に最後の二話連作(猿蟹合戦+ぶんぶく茶釜)は、舞台設定としてはなかなか興味深かっただけに、すごく惜しいような気がしましたねぇ。結果、この作品の中では、第一作の雰囲気に最も近い「竹取探偵物語」が個人的に一番しっくりきたりして。

No.1001 7点 華麗なる誘拐- 西村京太郎 2022/05/12 22:52
 左文字進探偵シリーズの第二作。
 面白かったですねぇ。まずは、全国民を誘拐したとして政府に5千億円の身代金を要求するという発想が斬新。そして政府が支払わないと見るや、犯人グループは、安全・平和と印刷された5千円のワッペンを付けていれば殺さないと国民に呼びかける。売れ続けるワッペン。まさに「華麗なる誘拐」。どんどんページをめくらされましたねぇ。左文字の語る「犯人の計画が成功すればするほど破滅が近づく」という論理も記憶に残りそう。
 犯人グループの特定があっさりし過ぎていないか?という気がしないでもないのですが、個人的には、西村京太郎作品の中でかなり上位に入りそうな作品。(ちなみに、現時点でのトップは「殺しの双曲線」であります。)

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.86点   採点数: 1160件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(56)
有栖川有栖(43)
東川篤哉(41)
森博嗣(37)
伊坂幸太郎(26)
道尾秀介(26)
島田荘司(23)
米澤穂信(22)
歌野晶午(21)
倉知淳(19)