皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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まさむねさん |
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| 平均点: 5.89点 | 書評数: 1282件 |
| No.662 | 4点 | パレードの明暗 座間味くんの推理- 石持浅海 | 2017/05/09 21:16 |
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| 作者の代表作のひとつ「月の扉」の探偵役・座間味クンが登場する短編集の第3弾。
「月の扉」から登場している大迫さんは毎回偉くなっていて、何と今回は警視長だそうです。今回のゲストは、女性特別機動隊所属で羽田空港保安検査場に勤務する警察官で、毎回、大迫さん、座間味クンと3人でお食事します。その席で、大迫さんが過去の事件や出来事について話すと、座間味クンが新たな解釈を出して…という典型的な展開。 この展開自体は過去の2短編集と同じなのですが、スケールがどんどん小さくなっています。全話とも転換が用意されてはいるのですが、如何せんこれも小さいのですよねぇ。ゲスト役の女性警察官の魅力も小さいし、女性警察官の成長譚っぽくしようとしているのも、はっきり言って片腹痛い。また、恒例の食事シーンも薄く、そんなにおいしそうに感じられない。何よりも、全話ともパターンが同じだけに、途中から飽きてしまいました。 |
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| No.661 | 7点 | 群青のタンデム- 長岡弘樹 | 2017/05/05 22:56 |
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| 男女2名の同期警察官を描いた連作短編集です。
まず、この作者さんに関する個人的な印象の推移を述べますと、ヒット作「傍聞き」→「陽だまりの偽り」と読み、これは新たな短編の名手誕生では?という期待を抱いたものです。一方で、このミス的評価は高かった「教場」に関しては、巧いのだけれど何となく物足りない(現実味もない)という印象を受け、その後「波形の声」→「赤い刻印」→「白衣の嘘」と読むにつれ、その消極的印象が次第に深まっていき(こじつけ感が強いという印象まで加わり)、嗚呼、私の初期の期待が高すぎたのだろうか…などとちょっと悲しくなっていたところでございました。 前置きが長くなりました。で、この作品ですが、私の作者に対する評価グラフが相当に回復する結果となりました。「警察小説連作短編」という前知識だけで読んだ自分としては、プチ驚き所にも綺麗にハマり、読ませるテクニックも相まって、ほぼ一気読み状態。多くは述べませんが、なるほど、こういうタッチの警察小説、向いているかもしれません。 |
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| No.660 | 6点 | 聖女の毒杯- 井上真偽 | 2017/05/05 21:34 |
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| 話題作となった「その可能性はすでに考えた」の続編。
今回の事件は「毒殺」ということで、前作に比して事件のスケールは相当にダウンしています。(まぁ、前作の謎が集団自殺や首なし状態で歩いた少年とかでしたからねぇ。) とはいえ、「飛び石毒殺」という設定、その中での推理合戦(かなり強引すぎる嫌いはあるが)、中盤以降の急展開、終盤での連続捻り技等々、全体のプロットとしては前作に引けを取らないように思います。むしろ前作より引き締まっているようにも感じます。 正直7点とも思ったのですが、前述のように推理合戦にあまりにも強引な点が散見された点、それとラノベ・テイストが何とも肌がゆく感じた点(完全に個人的な好みの話で恐縮ですが)、この2点がちょっと興覚めだったことは事実なので、1点減点とします。 |
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| No.659 | 7点 | 猫には推理がよく似合う- 深木章子 | 2017/04/30 19:52 |
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| 私も敢えて多くは書きませんが、非常に凝ったプロットです。「仕掛け花火が次々に炸裂するような本格ミステリ」との有栖川有栖氏のコメントも素直に頷けます。
しかし、この作者さんは引き出しが多いですねぇ。流石です。 |
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| No.658 | 7点 | 十字屋敷のピエロ- 東野圭吾 | 2017/04/29 21:01 |
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| 東野先生の初期ド本格作品。私は好きです。結構「てんこ盛り」な内容を非常に巧くまとめていると思います。ピエロ視点も効果を発揮したのではないでしょうか。
今の東野先生であれば、更に巧みにストーリーを運べそうな気もするのですが、逆に現時点では決して書かないであろう分野でもあります。そういう意味では貴重かな。 |
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| No.657 | 5点 | 眠り姫とバンパイア- 我孫子武丸 | 2017/04/22 23:08 |
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| ミステリーランド作品。
真相に多少強引な点が無いわけではないのですが、結構引き込まれる展開であったし、何よりも「ミステリーランド」として「正しい」作品だなと感じましたので、この点数に。 |
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| No.656 | 7点 | 家守- 歌野晶午 | 2017/04/16 23:36 |
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| 捻りの効いた作品が揃った、高水準の短編集だと思います。
①人形師の家で:ギリシャ神話から始まる、多層的な構成が一本の線で結ばれる様が美しい。 ②家守:バカミス+構成の妙。 ③埴生の家:裏の裏は…的な発想が実に面白く、秀逸。 ④鄙:様々な意味での“密室モノ”。横溝を想起させる雰囲気で余韻も印象的。 ⑤転居先不明:正直、この作品だけは消極的な評価。 |
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| No.655 | 6点 | ヒポクラテスの誓い- 中山七里 | 2017/04/08 21:25 |
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| 連作短編として綺麗にまとまっていますし、読ませる筆力もあります。さすがに巧いなぁ、と認めつつも、何となく化学調味料を使った味付けと言うか、どこかで食べたような味付けと言うか、そんな印象も受けました。勿論、巧いからこそ受ける印象なのであって、小説自体は楽しく読ませてもらったのですが。(E-BANKERさんの書評に同意です。)ちなみに、私も海堂尊氏のバチスタシリーズを想い起しましたねぇ。Aiも出てくるし。 | |||
| No.654 | 6点 | 人魚の眠る家- 東野圭吾 | 2017/03/20 23:39 |
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| 脳死と臓器移植という、非常に重く、難しい問題と真正面から対峙した作品です。
読者によって読後の感想に相当の幅があるであろうな、というのが率直な印象。個人的には、両親の行動に相当の違和感を抱きつつも、これを自分らに置き換えて考えてみると、実際にどう判断するのか全く判らないという、何とも情けない状態にあります。かなり考えさせられましたね。 ちなみに、ミステリの手法を使っている部分も一部ございますが、全体とすればミステリとは言い難いでしょう。無論、この作品は「ミステリか否か」などとは無関係に読まれるべき作品であると思うので、この段落は蛇足以外の何物でもないのですが。 |
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| No.653 | 5点 | 暗闇の殺意- 中町信 | 2017/03/15 22:16 |
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| 「これは!」と膝を打つ作品は見当たらなかったものの、「これは…」と首をかしげる作品も見当たらないなぁ…といった印象の短編集。でも、こういう、決して派手ではない(地味と言ってもいい)けれども安定感のある短編集って、結構好きです。
内容としては「裸の密室」がベストで、次点が「動く密室」か。ダイイングメッセージとしてはかなり判りやすいし、現実的にそんな残し方はしないだろ…と突っ込みつつ、真相に意外性のあった「濁った殺意」も印象には残りそうかな。 |
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| No.652 | 2点 | おやすみ人面瘡- 白井智之 | 2017/03/05 18:25 |
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| 理論的な面にだけ着目すれば、純粋な本格ミステリでありましょう。ミステリランキングで高評価であることも頷けます。
でも、私はこの採点。作者の特異的な環境設定は、三作目で幾分慣れたと思っていたのですが、本作品はかなり不快でありました。嫌悪感と言ってもいい。いや、内容じゃなくて、個人的な感覚としてなのですがね。 というのも、本作の舞台の一つ「海晴市」って、宮城県の海岸部の設定なのですよね。作品世界とは直接関係ないけれど、6年前の大災害を思い浮かべたのは私だけ?いくら架空の都市名としても、宮城県の海岸部って設定に敢えてしているのはなぜ?そして、その扱い方が、かなり酷いよね。無意識なの?わざとなの? 多分、作者にとっては震災とか過去の話になっているのだろうね。仙台の大学を卒業したらしいのにね。想像力が豊かなのか、貧困なのか、紙一重だよね。この作家さん、大丈夫か。 …といった、嫌悪感を持ってしまったら、本格度も何もないですよね。よって、この点数になりますな。 |
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| No.651 | 5点 | 遠い唇- 北村薫 | 2017/03/02 22:38 |
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| 7篇で構成される、ノンシリーズの短編集。
パンチ力という点では消極的な評価となりますが、作者もソコは狙っていないでしょうし、全体としてはいかにもこの作者らしい、しみじみとした短編集に仕上がっていると思います。 一方、完全に私個人の嗜好の問題なのですが、ダイイングメッセージや暗号モノにはあまり興味がありません。このタイプの短編も複数ありまして、これらの個々の短編自体の雰囲気は決して嫌いではなかったのですが、採点としてはこの辺りといたします。 |
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| No.650 | 5点 | 愚行録- 貫井徳郎 | 2017/02/26 17:55 |
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| 長らく我が家で積読状態になっていた本書。映画化され、公開されるとのことで本棚から引っ張り出してきた次第です。相変わらずミーハー気質ですみません。(私は誰に謝っているのだろう?)
エリートサラリーマン一家4人の惨殺事件について、ある週刊誌記者が行なった、複数の関係者らへのインタビューが物語の基軸となります。インタビュー形式の各話の間に、ある女性の独白が小出しにされ…という構成。まぁ、タイトルどおり、様々に「愚か」です。そして哀しくなります。どうにもやるせない。 ミステリとしてはこの位の採点としますが、確かに映画向きのような気がします。(凄く暗くなりそうな予感もありますが。)監督がどう料理するのか、映画も観たくなりましたね。 |
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| No.649 | 5点 | 偽りの殺意- 中町信 | 2017/02/21 19:25 |
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| アリバイ崩しをメインとした、作者にとっては最初期における3短中篇が収録されています。
全体的に地味であります。アリバイものが苦手な方にとっては、ちょっと辛いかも。万人向けとは言い難いような気がしますねぇ。 しかし、そもそもアリバイ崩しが嫌いではないワタクシとしては、刑事が足で稼ぐ姿も含め、何とも言えない「懐かしさ」を感じました。特に最終話「愛と死の映像」は、今となってはトリビア的な知識も盛り込まれているし、なかなかの読み応えで好印象。 |
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| No.648 | 6点 | 暗い越流- 若竹七海 | 2017/02/19 20:17 |
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| 5篇で構成される短編集。
うち2篇には葉村晶が登場しますが、短編自体の出来栄えとしては他の3篇の方が良かったかな。個人的なベストは日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作で、最後の最後まで企みに満ちたプロット。 結構読み得な短編集と言えるのではないでしょうか。 |
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| No.647 | 6点 | 悪いうさぎ- 若竹七海 | 2017/02/11 22:35 |
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| 葉村晶シリーズの長編。葉村自身、また周りを囲む登場人物も魅力的で、話も次々に展開していくので、どんどんとページをめくらされました。その意味では、確かに楽しめたと言えます。
一方で、「ああ、そのまま終わっちゃうのね」といった印象も。それと、それを言っちゃあオシマイと言われるかもしれませんが、現実味が薄すぎるかなぁ。 |
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| No.646 | 7点 | 闇に香る嘘- 下村敦史 | 2017/02/07 21:17 |
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| 第60回江戸川乱歩賞受賞作で、2014年末の各種ミステリランキングでも上位に位置付けられた作品。
正直、中盤までの雰囲気は万人向けとは言い難く、個人的にも多少重苦しい心持ちの中で読み進めたところです。しかし、終盤における構図の転換はお見事で、社会派ミステリとしての流麗さに感服いたしました。トリック自体はいたってシンプル。だからこそ、真相が判明した後に見える各々の人生の深さが際立つ気がします。 中国残留孤児や視覚障害の点でも、大変勉強になり、考えさせられました。そしてそれらの(語弊はあるかもしれませんが)活かし方も巧い。 デビュー作としては出色で、各種ランキングで高評価であったことも頷けます。 |
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| No.645 | 7点 | 許されようとは思いません- 芦沢央 | 2017/02/02 23:26 |
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| 短編5編を収録。総じてブラックな色彩ではありますが、巧みな筆致でスッと物語に引き込まれ、反転までもっていかれます。
1「許されようとは思いません」 日本推理作家協会賞短編部門の候補作となった作品。ホワイとしての独創性が印象に残りそう。 2「目撃者はいなかった」 サラリーマンとしては身につまされるサスペンス的展開の中での終盤の転換がお見事。 3「ありがとう、ばあば」 読後、非常に怖くなりました。深い。 4「姉のように」 育児ノイローゼに至る過程が怖い…のだけれども、これまた反転が見事で、読後に読み返したほど。 5「絵の中の男」 重層的なホワイ作品で、連城ミステリを思い起こさずにはいられない雰囲気。 |
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| No.644 | 5点 | いまさら翼といわれても- 米澤穂信 | 2017/01/29 21:37 |
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| 古典部シリーズ第6作目(だと思う)。
いやー、小市民シリーズほどではないけれども、結構久しぶりですねぇ。折木奉太郎、千反田える、伊原摩耶花、福部里志の4人組に会えた懐かしさはあるけれども、ミステリとしては相当に弱めだし、表題作などは「そんなに悩むことか?」って思ってしまう面もございました。「いまさら青春といわれても」って感じか。それは単に私のおじさん度が増したからではと突っ込まれれば、何ら言い返せないのだけれども。 とは言え、結構次が気になる終わり方なので、きっと次作も読むことになるのだろうなぁ。次作をいつ読めるのかは別として。でも、その時には彼らの設定年齢と私の年齢のギャップがさらに広がっているんだよねぇ…。 |
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| No.643 | 4点 | 白衣の嘘- 長岡弘樹 | 2017/01/26 22:04 |
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| タイトルから想像できるように、全て医師が登場する短編集。
「珠玉のミステリ六編」的に紹介されている本書ですが、珠玉かどうかはかなり疑問。決してイイ話ばかりではないのだけれども、何というか綺麗に纏めようとし過ぎているというか、綺麗にしようという努力感が出過ぎているような…。結果的に、登場人物の種々の行動に対して「いやいや、やらんでしょ、普通は」と感じてしまい、人間性を描こうとして、逆に人間性が滲み出ない、作りモノ感を強めている気がします。 スマッシュヒットとなった「傍聞き」の印象が強く、個人的に期待値を高めに設定し過ぎているのかもしれませんが、採点としては4~5点レベル。同じような印象を前作「赤い刻印」の書評でも述べた記憶があるので、ちょっと厳しいかもしれないけれども、今回は端数切捨てのこの点数で。 |
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