皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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まさむねさん |
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| 平均点: 5.89点 | 書評数: 1282件 |
| No.782 | 6点 | 謎の館へようこそ 黒- アンソロジー(出版社編) | 2018/10/01 20:49 |
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| 新本格30周年記念アンソロジー。 姉妹編「白」も合わせ、合計12名の作者さんの作品が揃っています。
テーマはそのものズバリ「館」であるとはいえ、この「黒」の収録作品に純粋な館モノは見当たりません(そもそも「純粋な館モノ」の定義って何だよ…と突っ込まれそうですが…)。そういう意味で肩透かし感を抱く方もいるとは思いますが、広い視点でなかなか興味深い作品もございました。マイベストは、終盤の転換が見事だった井上真偽の「囚人館の惨劇」で、白黒全体を通してもベストの印象。恩田陸「麦の海に浮かぶ檻」と綾崎隼「時の館のエトワール」も嫌いじゃない。 個人的には、作者の顔ぶれから、まずは「白」に興味をそそられて先読した訳ですが、「館モノ」の魔力に捉われなければ、「黒」の方が読み得という印象もあります。白黒両方を読んでみるのも面白いかもしれません。 |
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| No.781 | 6点 | ゲームの名は誘拐- 東野圭吾 | 2018/09/26 23:19 |
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| 「はい、ここ伏線ですよ~」と言わんばかりのネタが多数あり、結末には一定の予測がつきます(作者が敢えてそうしている可能性も高いのですが)。さらに、犯人は極めて頭が回る設定であるはずなのに、何故にこんな分かりやすい罠(?)をスルーしてしまうのだろう…といったチグハグ感も、確かにございます。
とは言え、リーダビリティの高さは流石でして、グイグイ読まされたことも事実です。「一定の予測がつく」と書いてしまいましたが、正直に言えば、その想定の上をいく真相でもありました。完全に身を委ねて読む場合でも、「こういう真相なんでしょ?違うの?早く教えてよ」と予測しながら読む場合でも、それなりに楽しめるのではないかと思います。 |
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| No.780 | 7点 | ささらさや- 加納朋子 | 2018/09/22 23:35 |
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| 「ああ、良いな」と単純に思わせられる連作短編集。ミステリー要素は決して濃くはないのだけれども、その使いどころも巧いですね。主人公「サヤ」を取り巻くキャラクターも魅力的で、作者の優しさを感じることができます。
一方で、「サヤ」の気弱さや頑固さ(?)を心配してしまう(というか、多少イライラしてしまう)面もございました。そう感じるのは、私が単に身勝手だからなのか、それとも中途半端に年をとってしまったからなのか。うーん、そういう意味でも考えさせられたかな。 |
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| No.779 | 6点 | 謎の館へようこそ 白- アンソロジー(出版社編) | 2018/09/17 21:35 |
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| 新本格30周年記念アンソロジー第二弾。
テーマはそのものズバリ「館」で、第一弾「7人の名探偵」よりもテーマ自体のハードルは高いと思います。こちらもハードルを上げて読んでしまった面もあるのですが、作者ごとの個性は十分に出ていて、その点では楽しめたと言えるのかな。個人的なベストは、思考の落とし穴をスッキリと見させてくれた、青崎有吾氏の「噤ヶ森の硝子屋敷」でしょうか。 |
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| No.778 | 6点 | 5分で驚く!どんでん返しの物語- アンソロジー(出版社編) | 2018/09/13 21:36 |
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| 宝島社文庫の「ひと駅ストーリー」シリーズと「10分間ミステリー」シリーズから、選ばれた25の掌編で構成されています。「どんでん返し」と銘打っているだけに、オチが分かりやすい作品も確かにあるのですが、なかなか味わいのある作品も複数ございました。次の掌編はアタリかハズレか…というような楽しみ(?)もあって、スキマ読書としては悪くなかったですね。 | |||
| No.777 | 7点 | 黒い白鳥- 鮎川哲也 | 2018/09/10 21:37 |
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| いかにも「鮎哲」という作品。後半はアリバイ崩しがメインとなり、個々のアリバイトリック自体は分かりやすいのだけれども、決してそれだけで解決するものではなく、複数のトリックを非常に巧く組み合わせています。鬼貫警部の調査の過程も面白く、途中の複数の転換点の驚きもあって、ほぼ一気読み状態。
個人的に大好きな名作「黒いトランク」は、一般的には複雑さを敬遠される向きもあると思うのですが、この作品は、脳内で十分に完結できる作品なので、鮎哲初心者向きと言えるような気がします。 ちなみに、優等列車「白鳥」が登場するのだろうと、勝手に思い込んでいたのですが、全然関係なかったのですねぇ。 |
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| No.776 | 5点 | 探偵Xからの挑戦状!Season2- アンソロジー(出版社編) | 2018/09/08 21:02 |
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| 2009年にNHKで放映された番組のために辻真先、近藤史恵、井上夢人、我孫子武丸の4名が執筆した作品を文庫化したもの。それぞれ、問題編と解決編に分かれています。
丁寧に考えていけば解けるであろう作品もあれば、いやいや、これは分らんだろう…って作品まで、幅は様々。クイズ好きの方は読んでみてもいいかも。 |
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| No.775 | 6点 | 少女を殺す100の方法- 白井智之 | 2018/09/04 23:10 |
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| タイトルどおり、たくさんの少女たちの死体が遠慮なく登場する短編集。作者らしいグロ鬼畜系の作品が揃っていますが、ミステリーとしてのバリエーションは意外に豊か(?)で、心に一定の壁を作って読めれば、楽しめるのではないでしょうか。でも、決して万人受けするとは思えないので、ご注意ください。我慢して読んでいくうちに慣れるという面もありますが。
①少女教室 いきなり21人の少女が殺され、ある意味で圧倒されます。しかし、全短編読了後に振り返ってみると、この作品が最も王道路線だったような気もします。 ②少女ミキサー もう、タイトルから嫌な予感がしますよね。荒唐無稽な設定すぎて、絶対に人を選ぶ作品です。何が謎なのか、ちょっと判らなくなったりもします。ああ、ミキサー自体は謎じゃないのね…って感じ。 ③「少女」殺人事件 個人的にはこれがベスト。別に人が死ななくてもいいような気はするけど、メタミステリとして面白い。「ノックスの十戒は作者が守るルールであって、読者が守るルールじゃありません」…という台詞は名言。 ④少女ビデオ 公開版 作者らしいエログロが全編にわたって展開されます。白井ワールド全開で、好き嫌いは相応に分かれると思いますね。 ⑤少女が町に降ってくる これも、荒唐無稽すぎる設定。ああ、少女が空から降ってくること自体は、謎ではないのね…って感じ。 |
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| No.774 | 6点 | 虚栄の肖像- 北森鴻 | 2018/09/02 22:30 |
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| 絵画修復師・佐月恭壱シリーズの第二弾。
過去の恋人も登場し、佐月の過去も多少明らかにされています。シリーズとしての続編を期待したくなる締め方であるものの、もはや続編を読むことが叶わないことが残念でなりません。 |
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| No.773 | 3点 | ηなのに夢のよう- 森博嗣 | 2018/08/26 22:53 |
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| うーん、「F」以来読み続けて来た読者にとっては、コレはコレでいいのかもしれないけれども、もはやミステリーとは言えないのではないか?そして、正直、ファンに甘え過ぎなのではないか?
ちなみに、私は、萌絵嬢はもとより、犀川も紅子も四季も好きになれないタイプなのに、何故にこのシリーズを読み進めているのだろうかと、今さらながら悩みだしています。 |
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| No.772 | 7点 | 眼球堂の殺人~The Book~- 周木律 | 2018/08/24 23:41 |
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| メフィスト賞受賞作であり、現在も続く「堂シリーズ」の第一作。
舞台となる「眼球堂」の秘密については、序盤における建造物の図面や丁寧な伏線を把握する中で、全てではないにしても、その一部はかなりの読者が気付くような気がします。それをなぜ、天才数学者が気付けないのか等々、突っ込みたくなる点もございます。 とは言え、エピローグも含め、作者の気概は評価したい。現実味はともかく、志は天晴。続編も読んでみようかな…と思わせられた時点で、私の負け(?)です。 |
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| No.771 | 6点 | 朱色の研究- 有栖川有栖 | 2018/08/19 09:59 |
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| 放火殺人事件、海岸での殺人事件、マンションでの殺人事件を組み合わせ、朱色をキーワードに巧く纏めたなぁ…という印象。
次々とページをめくらされ、楽しめたことは間違いないのですが、読後の爽快感が何か物足りなく感じたのも事実。何故なのだろう。やはり、第二の事件の犯人の心情が、個人的にはイマイチ理解しにくかったからなのかな。 |
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| No.770 | 6点 | ヨギ ガンジーの妖術- 泡坂妻夫 | 2018/08/12 23:30 |
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| ヨギ ガンジーシリーズといえば、何といっても「しあわせの書」と「生者と死者」の仕掛けが有名で、読者の記憶にも強く残るのでしょうが、ガンジーの初出はこの短編集。なかなかの名探偵ぶりを発揮しています。
ベストは1作目の「王たちの恵み」。終盤の転換がお見事で、短編の見本のような佳作。他の作品のレベルはまちまちだったけれども、全体的にコミカルで読みやすいし、好きなタイプの短編集だったかな。マジックネタの勉強にもなったしね。 |
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| No.769 | 6点 | 深淵のガランス- 北森鴻 | 2018/08/11 18:53 |
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| 気品あるオトナの連作集。絵画修復師・佐月恭壱は勿論のこと、周りを囲む登場人物も魅力的です。緊張感のある展開で、殺伐とした何かを想定させながらの、何気な温かさも良かったな。 | |||
| No.768 | 5点 | まっすぐ進め- 石持浅海 | 2018/08/05 23:39 |
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| 連作ミステリ仕立ての恋愛小説って感じ。作者としては珍しい分野ではありますが、酒飲みながら皆であれこれ推理してみたり…っていうパターンは一緒という見方もできます。
「砂糖合戦」ならぬ「ワイン合戦」における推理など、嫌いじゃない部分もあったけれども、正直、採点としてはこの辺りでしょうか。作者がよく手掛ける「人間の行動や心理をロジカルに考察していく」スタイルって、イマイチ好みではないのですよねぇ。何が正解なのか、よく分からないし。ちなみに、全体の真相としては、全く違った(捻くれた)パターンを予測していたのですが、結構ストレートでしたねぇ。 |
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| No.767 | 3点 | λに歯がない- 森博嗣 | 2018/08/04 21:56 |
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| 密室の研究所内で、四人の銃殺死体が発見された。殺された四人とも、死後に歯を抜かれていた…。
謎自体は興味深いのです。でも、解決編は尻すぼみで、もの凄くがっかり。あまり語りたくないほどに残念。うーん、ちょっと評価できないなぁ。 |
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| No.766 | 6点 | ダリの繭- 有栖川有栖 | 2018/08/03 22:59 |
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| 有栖川作品は、心穏やかに(?)安心して読めるので好きです。今回の火村シリーズ長編も安心して読める、手堅い長編と言えると思います。
決して派手なトリックがある訳ではないのですが、複数の容疑者を用意し、それぞれに容疑を高めつつも、一定の説明を経て圏外としていく丁寧な姿勢には好感を持ちました。(単に容疑だけ強めて、最終的に投げっぱなしにする作品も、世の中に多数ありますからねぇ…)。 【以下、微妙にネタバレっぽいかな?】 ただ1点だけ意見を。殺意を持っていた方(ある種の真犯人)が、死体を移動させ、殺害現場を偽装できると考えていたことに強い違和感。科学捜査で簡単にばれるよねぇ。「(真犯人が)慎重さによってカバーできる自信を持っていたのだろう」というフォローだけでは弱いような気がしましたねぇ。 |
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| No.765 | 6点 | 海のある奈良に死す- 有栖川有栖 | 2018/07/25 20:53 |
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| 以前から、有栖川作品にしては当サイトでの評価が随分と低いなぁ…と思っておりました。むしろ読みたくなっちゃいますよねぇ。
で、結論から言えば、個人的にはそれほど悪い印象は抱かなかったですね。確かに、2つ目の殺人については、トリック自体がアレですし、効果も疑問。また、そこまでして実行する意義も理解しがたい等々、指摘したい点は複数あります。 一方で、全体構成としては、伝説等の絡ませ方も含めて、比較的綺麗に纏まっているのではないかと感じました。終盤の絵解きもなかなか楽しかったし、記憶に残りそうではあります。 このサイトの平均点の低さは、有栖川作品への一般的な期待値の高さの裏返しなのであろうと、ファンとしては捉えたいと思います。 |
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| No.764 | 6点 | レタス・フライ- 森博嗣 | 2018/07/17 23:31 |
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| 文庫版で読了。10の短編・掌編で構成されています。うち、収録作品の中では長めの2短編の感想を。
「ラジオの似合う夜」は、それ単体でも読めるのですが、Vシリーズを読まれてからの方が「ああ、あの方ですね」という付加価値があって、より楽しめると思います。 「刀之津診療所の怪」も同様に、それ単体でも読めます。で、登場人物からして、こっちはGシリーズを読んでからなのでしょうね…と思わせておきながら、実はVシリーズとの関係が重要だったりするパターン。いや、正確にはVシリーズというよりも、これまで発表されてきた短編集の中の1編が重要なのかも。でもコレって、個人的には終盤1ページで「ん?何だっけ。記憶にあるような、ないような…」と気になり、最終的には他の方のブログで判明できたもの。確かに判明した後は「!」となりましたが、普通はソコまでは把握していないのではないかなぁ。真に楽しめるのは、コアな森ファン限定のような気がします。 他の短編&掌編は、如何にも作者らしい作品で、人によって好き嫌いが大きく分かれると思いますが、個人的には積極的な評価は控えたいかな。ちなみに、最終話の「ライ麦畑で増幅して」は、私が未読の作品(Xシリーズ?)と関連がありそうなのだけれども、現時点ではよく分からなかったですね。 |
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| No.763 | 6点 | ライオンは仔猫に夢中- 東川篤哉 | 2018/07/14 16:06 |
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| 近年、複数のシリーズによる短編を書き続けている作者。各シリーズの使い分けというか、シリーズの特徴について、作者はどこまで拘っているのか、微妙なところがあるのですが、ついこの間読んだ「探偵少女アリサ」シリーズと比べてみると、本書は、本格度はやや高め、ギャグは低めといったところでしょうか。短編自体の練り具合も、本書の方が堅実かも。気軽に読む分には、いいかな。 | |||