皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
まさむねさん |
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平均点: 5.87点 | 書評数: 1229件 |
No.989 | 6点 | 優しい死神の飼い方- 知念実希人 | 2022/02/05 22:09 |
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ゴールデンレトリーバーに姿を変えた死神が死を控えた人間の未練を次々に解消する連作短編なのかなと思ったら、後半はサスペンス的な盛り上がりもあって楽しませてくれました。いかにも、と言ってはダメなのかもしれませんが、様々な工夫にも好印象。売れるでしょうねぇ。レオ(ゴールデンレトリーバー)と菜穂、さらに患者たちの関係性がイイ。切ないのだけれども、何とも言えない清々しさと勇気をもらえましたね。 |
No.988 | 5点 | 悪いものが、来ませんように- 芦沢央 | 2022/01/23 20:10 |
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私には珍しいことなのですが、仕掛けの一つには途中で気付いちゃいましたね。ちょっと不自然だったからかな。イヤミスではあるのですが、考えさせられる内容。両作者に失礼かもしれませんが、湊かなえさんを想起させる作品でした。 |
No.987 | 6点 | はるか- 宿野かほる | 2022/01/17 23:03 |
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デビュー作「ルビンの壺が割れた」でヒットを放った覆面作者の第2作。グイグイと読まされた点は素直に評価したいのですが、ちょっと複雑な読後感でしたね。
終盤までの「気にさせる」具合はなかなかで、様々な結末を想定しながら終盤に突入したものの、ラストでは中途半端な印象を抱きました。一方で、結局はそれでよかったのかな、という気持ちにもなっている辺りが、何とも複雑な読後感につながっています。すごく深いトコロを突いていると思うのだけれども、逆に浅くて薄っぺらい印象もなくはない。個人的には、優美さんが最も普遍的で力強く、かっこよかった。賢人さんは、賢い人ではない。よく分からない書評ですみません。総合的にこの採点で。 |
No.986 | 6点 | ミステリなふたり- 太田忠司 | 2022/01/15 22:54 |
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軽妙で読みやすい短編集。決して大掛りではなく、クイズレベルの短編も無くはないのだけれども、謎も一定魅力的だし、気楽に読めて良かったですね。京堂ご夫妻の雰囲気もいいな。 |
No.985 | 9点 | 兇人邸の殺人- 今村昌弘 | 2022/01/10 21:02 |
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シリーズ第三弾。面白かったですねぇ。「屍人荘の殺人」以降、高水準の作品を確実に示してくれている作者に感謝したい。
やはりクローズドサークルの作り上げ方が巧みですね。巨人の設定もポイントが高い。細かい点ではありますが、各登場人物の設定がスッと頭に入ってくる気配りも素晴らしい。中盤まではドキドキ、中盤以降は完全に作者の掌で転がされていました。真相も印象深いですし、全体として様々に考えられています。個人的には「屍人荘」以上の評価かも。続編も大いに期待します。 |
No.984 | 7点 | 毒を売る女- 島田荘司 | 2022/01/04 22:28 |
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マイベスト短編は、やはり「糸ノコとジグザグ」。タイトルとともに、印象に残ります。島荘名作短編と評されることも頷けます。
表題作のアクセル感、女性同士の心理的サスペンスも好きなのだけれども、巻き込まれ加害者となった方が可哀想すぎて、何かスッキリとしない感じもあったかな。 「渇いた都市」は、清張作品かと思わせる設定だけれども、そこはやっぱり島荘。でも、清張であればどう捌いて、どのように幕を下ろすのか…と勝手に想像してしまいました。 掌編を含む他の短編にも、島荘ワールドを感じることができましたね。 |
No.983 | 7点 | あと十五秒で死ぬ- 榊林銘 | 2021/12/30 10:06 |
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まずは、「あと十五秒で死ぬ」という縛りの中で4短編を揃えた意気込みを評価したいですね。しかも、各短編のシチュエーションはバラバラで、バラエティーに富んでいます。読んでいて楽しかった。達者な作家さんですね。
①十五秒 ミステリーズ!新人賞の佳作受賞作。この設定自体が面白い。終盤の連続捻りには唸らせられました。 ②このあと衝撃の結末が これも終盤の連続捻りが見事。15秒縛りと作中作形式の選択。巧い。 ③不眠症 この短編集の中では目立たないものの、作者の裾野は広いかも、と思わせられました。 ④首が取れても死なない僕らの首無殺人事件 作者名当てクイズを出されたら、私は迷わず「白井智之」と答えそう。特殊設定本格短編として秀逸。 |
No.982 | 6点 | メルカトル悪人狩り- 麻耶雄嵩 | 2021/12/19 17:47 |
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メルカトル鮎の魅力?を味わえる短編集(掌編も含む)。
個人的なベストは、最も”らしい”作品である「メルカトル式捜査法」。独自すぎる論理をどう捉えるか、ということにはなるのでしょうが。それと、掌編「不要不急」も何気に好き。メルカトル鮎が言うからこその、社会派的なオチがいい。 |
No.981 | 5点 | 居酒屋「一服亭」の四季- 東川篤哉 | 2021/12/12 22:07 |
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極端に人見知りなのに居酒屋の女将を務める「安楽椅子(あんらくよりこ)」が、日本酒片手に事件を解き明かす連作短編集。推理の舞台が居酒屋とはいえ、料理ネタで引っ張ろうとしない姿勢は嫌いではない。
4短編とも死体の一部が切断されている猟奇的事件。でも、ソコは東川さんですから、陰鬱さがあるはずはない。探偵役の「いかにも」設定も含めて作者らしさを楽しみましょう。全体的に小粒だけれど「鯨岩の片脚死体」のホワイがベストか(現実的ではないけれどね)。 探偵役の毒舌は作者の十八番ですが、本作のベストは「いいえッ、ぶちクソ間違ってますわッ」。和服姿の居酒屋の女将に叫んでいただきたい。 |
No.980 | 5点 | 文豪たちの怪しい宴- 鯨統一郎 | 2021/12/07 22:57 |
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作者お得意の新解釈モノ。今回は歴史ではなく、文学作品ですね。夏目漱石「こころ」、太宰治「走れメロス」、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」、芥川龍之介「藪の中」の4作品がテーマです。
新たな解釈は確かに面白いのだけれども、いずれの短編にも何らかの「いちゃもん感」や「こじつけ感」を感じてしまいましたねぇ。それと、個人的には、宮田の「ものの言い方」に多少イラッときたりして。嗚呼、私のおじさん化が着実に進行しているのだなぁ、そして、私とこの作者さんとのフィット感はどうなのだろうかなと、あらためて考えさせられました。 |
No.979 | 5点 | 超短編!大どんでん返し- アンソロジー(出版社編) | 2021/11/28 20:55 |
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30人の作家による掌編30連発。それぞれの作者らしさを感じましたが、出来栄えはマチマチ。
好きな作品を掲載順に挙げれば、骨なし(田丸雅智)、親友交歓(法月綸太郎)、花火の夜に(呉勝浩)、阿蘭陀幽霊(柳広司)、電話が逃げていく(乙一)ですかね。1作品2000字程度なので、ちょっとした隙間に読めます。使い勝手?はいいかもしれません。 |
No.978 | 6点 | 間宵の母- 歌野晶午 | 2021/11/26 21:23 |
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何の事前情報もなく手にしたのですが、いやはや、何とも言えない後味を残す作品でした。心が疲れている時に読まなくてよかった。
連作短編の最終話における伏線回収(と言っていいのか?)は、ストーリー的に複雑な心境になりながらも、なるほどと思わせられた部分もありましたね。 しかし、全体的には、作者が時折繰り出す、ブラック歌野色に染まっています。人を選ぶ作品ですね。 |
No.977 | 6点 | ルビンの壺が割れた- 宿野かほる | 2021/11/21 20:13 |
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文庫の帯にあった「日本一の大どんでん返し」との評は、さすがに持ち上げ過ぎとは思いますが、終盤のたたみ掛け具合は良いですね。最後の一文も印象的。メールのやり取りのみで構成したことが、様々な面で効果を上げています。ほぼ一気読みでした。 |
No.976 | 6点 | 雨と短銃- 伊吹亜門 | 2021/11/20 13:10 |
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デビュー作「刀と傘 明治京洛推理帖」が好印象でしたので、手にした次第です。
薩摩藩と長州藩が協約を結ぼうとしていた、慶応元年の京都が舞台。前作(デビュー作)同様に架空の人物・鹿野師光が探偵役を務めます。前作の前日譚の位置づけですね。坂本龍馬や中岡慎太郎、桂小五郎、西郷吉之助(隆盛)に中村半次郎、土方歳三といった人物が、重要な役割をもって登場します。ココがポイント。 ミステリとして目立った点はないのですが、歴史的な背景とともに読み込むべき作品であり、幕末好きな私としては、ワクワクしながら読ませていただきました。 |
No.975 | 7点 | 蒼海館の殺人- 阿津川辰海 | 2021/11/14 22:56 |
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力作です。最後まで感心しながら読ませていただきました。
一方で、同様の感想を持たれた方もいらっしゃるようですが、ソコまでは操れないと思いますがねぇ。特に、大前提となる最後の一手までは…。その点は結構気になりましたね。あと、前半のとある表記はフェアと言えるのかな? とは言え、繰り返しになりますが、熱のこもった力作です。心意気を評価し、次回作にも期待。 |
No.974 | 7点 | 新・新幹線殺人事件- 森村誠一 | 2021/10/30 18:15 |
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二本の「ひかり」に絡む謎もいいのだけれど、誘拐事件や詐欺事件と贅沢に?話が広がり、発想の転換を含めて終盤に収束していく構成が印象に残りそう。会社人間とその家族の再生を感じさせる点も好印象。前作以上の評価。 |
No.973 | 6点 | 暗色コメディ- 連城三紀彦 | 2021/10/24 22:43 |
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①もう一人の自分を目撃したという人妻、②消失狂の画家、③「今日はあんたの初七日じゃないの」と妻に言われる葬儀屋、④妻が別人にすり替わっていると悩む外科医…。謎は魅力的だし、精緻に組み立てられているし、筆致も流麗だし、流石だなと思わせてくれます。
でも何だろう、何かストンと落ちないような複雑な心境。精神的な病を組み合わせると、ご都合主義とまでは言わないけれども、色々とできてしまいますからねぇ。雰囲気も陰鬱になるし。 ちなみに、上記③は、自分に置き換えて考えてみると相当に怖い状況。旦那さんが可哀想すぎです。 |
No.972 | 5点 | 祈りのカルテ- 知念実希人 | 2021/10/17 09:27 |
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研修医を探偵役に据えた連作医療短編集。患者の行動の謎・行動の裏側にある心理が読みどころ、ということなのでしょう。
確かに、1話目の「彼女が瞳を閉じる理由」の読了後は、なるほどと感じましたし、そのフリが後々の短編にも効いているのだけれど、広い意味で「同パターン」に偏り過ぎた印象はあります。もうワンパンチ、という気もします。現役医師らしい医療描写の安定感やスラスラと読ませる力は、素直に評価します。 |
No.971 | 6点 | 炎舞館の殺人- 月原渉 | 2021/10/14 21:29 |
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ツユリ・シズカシリーズ第5弾。
肝となるトリックの本質的な部分は、多くの方が既視感を抱くものと思われますが、一定の工夫は施されています。変に水増しせず、締まった分量での本格モノは、個人的には嬉しいかな。色々とあり得ないお話だし、突っ込みどころもあるのだけれども。 |
No.970 | 6点 | 石ノ目- 乙一 | 2021/10/09 18:32 |
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「平面いぬ。」と改題された文庫版で読了。
4つの短編で構成されています。いずれも、実際にはあり得ない能力や状況を設定しながら、何気に感情移入させられてしまう辺りは流石と言うべきか。決してハッピーエンドとは言えないのに、温かみのある切なさを醸し出しています。 ベストは文庫版の表題作でしょうか。やっぱり家族っていいな。そしてイヌがいい味を出しています。当初の?表題作「石ノ目」は、ある方の正体は自明と言っていいのだけれど、一捻りが効いていました。 |