皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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メルカトルさん |
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平均点: 6.02点 | 書評数: 1769件 |
No.289 | 9点 | 悪魔の手毬唄- 横溝正史 | 2013/03/19 22:24 |
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個人的に横溝作品の中で『本陣殺人事件』に次いで好きな作品。
本作も人間関係がかなり複雑だが、それだけに読みごたえもあり、手毬唄の全容が少しずつ明かされていく辺りは、なかなかのサスペンスぶりを発揮している。 メインとなるトリック、と言うか仕掛けは単純なものであり、わざわざ金田一が神戸まで出向かなくても良いのではないかと思うが、当時としてはやむを得なかったのかもしれない。 犯人にとって動機はまさに真に迫るものであり、やむに已まれぬ事情があったわけだが、冷静に考えると、もう少し穏便にことを済ませる方法もあったのではないかとも思うのだが。 しかし、やはりこの隠された動機に繋がる裏事情は他言できるような種類のものではなかったのだろう。 それだけに、真相が明らかになった時、犯人の苦悩が浮き彫りにされて悲哀が漂う結末になっており、とても印象に残る。 多少の瑕疵はあるものの、横溝の代表作のひとつであることは間違いないであろう。 |
No.288 | 9点 | 犬神家の一族- 横溝正史 | 2013/03/18 22:25 |
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なんだか原作より映画(市川崑監督の一作目)のほうが印象深い。
とは言え、あの名作と名高い『獄門島』より中身は面白いのだから、これはまさしく歴史に残る大傑作と言えるかもしれない。 適度に複雑な人間関係、一族の忌まわしい過去、佐兵衛翁のいわくつきの遺言状など、いかにもな雰囲気満載の本作は横溝作品の白眉と呼んでも差し支えないのではないだろうか。 ただ、犯人の意外性のなさや、かなりのご都合主義はまあいつものごとくだが。 それでも、ゴムマスクで顔を隠した、謎の人物(果たして本当にスケキヨなのか?)を最大限に生かしたプロットは見事である。 |
No.287 | 6点 | 夜想曲(ノクターン)- 依井貴裕 | 2013/03/17 22:31 |
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再読です。
作中作の部分が特に読みづらかった。そう、まるで教科書を読まされた気分である。 もう少し情感を込めて描写できないものだろうか、よく言えば端正、悪く言えば文章が固すぎるのであろう。 まあ、それは置いておいて、作中作の第二章から既に違和感を覚えた。どうもおかしいなと思いながら、結局トリックは見破られなかったのが悔しいが、真相が明かされたときに最初に思ったのが、これはアリなのか?ということだった。 そうだったのかと納得できる半面、何か姑息な感じが否めなかった。 その後の仕掛けは、これは単純に驚かされた。よくあるパターンと言ってしまえばそれまでだが、こうした使い方はあまり見られないし、私としては素直に感心出来た。 前半はいささか退屈、解決篇はなかなかの出来栄え、ということで、良い点悪い点相半ばする感じの、ややアンバランスな作品だというのが正直な感想。 |
No.286 | 8点 | さよならドビュッシー- 中山七里 | 2013/03/15 22:22 |
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『カエル男』も良かったが、本作も負けていない。
私のようなクラシック音楽の素養がない者でもそれなりに楽しめたのだから、そちら方面、特にピアノ協奏曲や練習曲に詳しい人なら更に面白く読めるに違いない。 ただ、専門用語などはそれほど出てこないが、やはり本作に登場する曲を知っていたら、と思うと少し残念な気もする。 火災で大やけどを負った少女が、ピアノ・コンクールを目指して猛特訓をこなし、いかにハンディを克服していくのかが主題の、いわば音楽スポ根ものかと思いきや、本格ミステリの部分もしっかりしており、その二つが実に上手く絡んで、見事な音楽ミステリに仕上がっている。 そして想像もしていなかった衝撃の真実には、誰しもが目を疑うだろう。 探偵役の岬も爽やかで、好感が持てる。 |
No.285 | 8点 | グリーン家殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン | 2013/03/14 22:27 |
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『僧正殺人事件』と共にヴァン・ダインの代表作とされる名作と呼んでも差し支えないのではないだろうか。
まさに古き良き時代の、端正な推理小説と言った風情である。 多くの手掛かりを列挙し、そこから事件を検証し真犯人に迫る推理法は圧巻と言えよう。そこには作者の矜持が色濃く表れているような気さえする。 しかし、ヴァン・ダインと言えばこの2作が超有名だが、残りの作品との出来の差が激しすぎるきらいがあり、読者は注意が必要だ。 なので、正直他の作品を敢えて読む必要性はかなり薄いと言わざるを得ないと思う。『僧正』と『グリーン家』が抜きんでているためであるというべきなのだろうが。 |
No.284 | 8点 | 僧正殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン | 2013/03/13 22:22 |
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随分前に読んだのに、なぜか強く印象に残っている一冊。
見立て殺人というものにあまり耐性がなかったせいなのか、衒学趣味にうまく惑わされたせいか、その辺り自分でもよく分からないが、とにかく当時としては面白かった。 ラストの、二人の教授の対決は見ものだったが、ファイロ・ヴァンスの行動でやや後味が悪くなってしまったのも事実。 ストーリーを盛り上げるためには、仕方なかったのかもしれないが、一探偵がそこまでして良いものかどうか、大層疑問に感じたものである。 が、それを差し引いても、ミステリ史に残る名作だと思う。 |
No.283 | 5点 | ZOO- 乙一 | 2013/03/12 22:24 |
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再読です。
正直なところ、面白かったのは『SEVEN ROOMS』だけ、これは確かに訳の分からない設定ながら、緊迫感は只者ではなく、非常に緊張感をもって読むことができた。しかもまるで自分がその場にいるような臨場感をもって迫ってくるような迫力もあり、とても楽しめた、というか、手に汗握るような感覚を覚えた。 他の短編は、あまり感心しない。 どれもいまひとつ、或いは取るに足らないものばかりが並んでいて、読んでいてあまり気分が乗らなかった。 そんな中、『陽だまりの詩』はちょっと風変わりで、どことなく切ない佳作ではないかと思う。 まあ、全体としてはあまり高評価はできないね。そこそこ面白かった記憶があるだけに、読み直してみてちょっぴり残念だった。 |
No.282 | 6点 | 三つの棺- ジョン・ディクスン・カー | 2013/03/11 22:19 |
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フェル博士による、かの有名な密室講義が披露される。もうこれだけで読む価値は十分だろう。
それにしても、本書はさすがの貫録の一冊となっている。 トリック的にはあまり感心しないが、よく考えられてはいると思う。 まあしかし、余程集中して読まないと、なんだかすぐに忘れてしまいそうな作品ではある。 ちょっと読みづらいしね。 |
No.281 | 8点 | 過ぎ行く風はみどり色- 倉知淳 | 2013/03/10 22:36 |
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再読です。
初読の際よりも一層楽しめた気がする。 それにしても、あの叙述トリックには参った。思わずえっと声に出してしまいそうになった。 この仕掛けはそうそう見破れまい。だが、伏線はところどころにしっかりと張ってあり、一概にアンフェアとは言えないだろう。 それでも、ほとんどの読者が作者の罠に嵌るのではないか。 そして、冒頭のエクトプラズムと言い、降霊会の最中での殺人と言い、まるでカーを思わせる雰囲気を纏っていて、とても読みごたえがある。 しかし、決して陰湿なムードではなく、どちらかというと爽やかささえ感じる。 あえて苦言を呈するなら、第一の殺人は動機が弱い、第二の殺人はいかにも無理がありすぎる、といったところだろうか。 それでも、最後に披露される猫丸先輩の謎解きはそんな些事を一掃させるくらいの勢いが感じられるし、それはまあ見事な推理ではある。 だが、この謎解きも苦渋の決断であり、猫丸先輩の苦しい胸の内が初めて明かされる貴重なシーンでもある。 後味もいいし、本作は倉知氏の最高傑作と言えるんじゃないだろうか。 |
No.280 | 6点 | 夜歩く- ジョン・ディクスン・カー | 2013/03/08 22:21 |
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カーはデビュー作から怪奇色溢れる密室ものを書いていたんだねえ。その心意気は見事なものであり、一貫して本格ミステリを書き続けた姿勢は素晴らしい。
本作は、ややあっさりしすぎている感もあるが、密室とアリバイを組み合わせたトリックはなかなかよく考えられていると思う。 探偵役のバンコランはアクの強さはないものの、それだけに逆に好感が持てる気がする。 処女作としては十分合格点じゃないのかな。 |
No.279 | 8点 | 皇帝のかぎ煙草入れ- ジョン・ディクスン・カー | 2013/03/07 22:31 |
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カーの作品の中では最も読みやすい部類に入るので、未読の方にも入門書としてお薦めできる。
がしかし、珍しく物理トリックではなく、心理的トリックを用いており、カーとしては異色の存在なのかもしれない。 それでも、その一作のみにしか使えないであろうトリックが見事に決まっており、「これは凄い」と素直に感心させられたものだ。 数あるカーの作品の中でも、ひときわ異彩を放つ名作と言い切ってしまっても文句はあるまい。 素晴らしい出来だと思う。 |
No.278 | 7点 | ダレカガナカニイル・・・- 井上夢人 | 2013/03/06 22:25 |
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再読です。
かなりの長尺だが、長さを感じさせない作者の筆力は素直に褒めたたえたいと思う。 とにかく読者をグイグイ引っ張っていて、いつの間にか物語の中に引き込まれているのに気付くだろう。 SFだが、監視カメラのトリックから真犯人を突き止める辺りは、ミステリの要素もふんだんに盛り込まれており、単なるSFとは一線を画する作品なのではないだろうか。 こうした作品は、いかに着地を決めるかが勝負だと思うのだが、その意味で若干分かりづらかった部分もあった。多分これは己の理解力が足りなかったせいだと思うけれども。 まあとにかく、いろんな意味で楽しめる逸品であるのは間違いないだろう。 さすがに井上氏はソロになっても、その力量を存分に発揮しているのは素晴らしいことである。 デビュー作とは思えない手練れだ。 |
No.277 | 8点 | エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン | 2013/03/04 22:22 |
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国名シリーズの中で出来はともかく、最も好きな作品。
派手な展開で最後まで読者を引きずり回して、結局最後には手掛かり一点で解決にもっていってしまうところが、いかにもクイーンらしい。 首なし死体という、オーソドックスかつ日本人好み?のテーマを、序盤のエジプト十字架に関する薀蓄などでうまく攪乱しながら、犯人の的を絞らせない工夫も心憎い演出となっている。 シリーズ中、ひときわ異彩を放っている異色作だと思う。 |
No.276 | 9点 | Yの悲劇- エラリイ・クイーン | 2013/03/03 22:19 |
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クイーンの作品をすべて読んだわけではないので、偉そうなことは言えないが、個人的にはやはり本作がクイーンの最高傑作だと思う。
まるでクイーンが標榜する理想形を体現したかのような名作ではないか。 特に意外な犯人には驚かされた。 国名シリーズもいいけれど、私の一押しはこれで決まり。 |
No.275 | 9点 | オリエント急行の殺人- アガサ・クリスティー | 2013/03/02 23:51 |
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この作品は、私が思うにクリスティーの代表作の一つではないだろうか。おそらく多くの読者がこの意見に賛同されると思う。それくらい意外性のある、クリスティーらしい大仕掛けの逸品であろう。
アリバイ崩しがメインかと思わせておいて、実は究極のフーダニットだったという、いかにもなアイディアには脱帽せざるを得ない。 それにしても、さすが灰色の脳細胞を誇るポアロだけのことはあり、これだけの事件を見事に解決に導いているのはさすがだ。 事件そのものは、考えてみれば単純なものだし、容疑者も完全に限定されているので、簡単に解けるかと言えば決してそうではない。 単純なトリックほど盲点になりやすいという、好例ではないかと。 余談だが、アルバート・フィニー主演の映画もDVDで観たが、こちらも面白かった。お薦めである。 |
No.274 | 6点 | 水中眼鏡の女- 逢坂剛 | 2013/03/01 22:16 |
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表題作他、併せて3編からなる短編集。
20数年前に書かれた作品だが、現在でも十分通用すると思われる、大胆な仕掛けが魅力の粒揃いと言って差し支えない短編というか、中編に近いものが並ぶ。 いずれも精神鑑定が何らかの形で関わってくるが、だからと言って小難しい要素は全然なく、むしろそれをエンターテインメントに昇華させる作者の腕は確かなものがあるようだ。 テンポも良く、とても読みやすい、すぐに物語にのめり込んでしまえる、なかなかのサスペンスぶりを示している。 それぞれ、結末には驚きが待っていて、一瞬「えっ」を心の中で叫んでしまうそうになる。 よって、どんでん返しや意外な結末が好きな読者にはお薦めとなっている。 |
No.273 | 9点 | そして誰もいなくなった- アガサ・クリスティー | 2013/02/28 22:17 |
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今更私ごときが書評を書くのもおこがましい、世界的な名作。
今読んでみたら、もしかしたら古臭さを感じてしまうかもしれないが、やはり書かれた年代を考えると素晴らしいと言わざるを得ないだろう。 現在巷にあふれるミステリ小説とは、同じ土俵で語られるべきではない作品じゃないかな、というのが個人的に思うところ。 後世に大いなる影響を与えた稀有な名作として、低い評価は付けられない。 当時でこの全員が探偵で、全員が被害者、全員が容疑者というアイディアは凄いと思う。 孤島物というジャンルを確立した、記念すべき作品でもある。 |
No.272 | 7点 | 水車館の殺人- 綾辻行人 | 2013/02/27 22:18 |
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再読です。
私にとって、館シリーズ中最も印象が薄かった作品だった。 がしかし、改めて読み返してみると、意外と面白かった。確かに地味ではあるが、じっくり読んで自ら真相を追及してみたい読者には持って来いの一作なのではないだろうか。 取り敢えず、犯人はすぐに目星がついたし、おおよそのからくりにも気づいたが、残念ながら人間消失のトリックだけは分からなかったのが悔しい。 全体として、島田潔の推理が始まるまで、なんとなく淡々と進行していくので、その辺りやや物足りなかった気もするが、館シリーズらしい仕掛けも健在だし、伏線の張り方もなかなかうまいと感じた。 前作ほどの派手さはないが、じっくり腰を据えて物語に入り込める良作だと思う。雰囲気も館シリーズらしいしね。 |
No.271 | 8点 | 双頭の悪魔- 有栖川有栖 | 2013/02/24 22:33 |
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再読です。
川の氾濫により橋が崩壊し、陸の孤島と化した芸術家が集う小さな村で起きた奇妙な殺人事件。 そしてその川を隔てた隣村で起こる殺人、果たして二つの事件には関連性があるのか。更に起こる第三の殺人、しかもいずれの事件にも一々「読者への挑戦状」が挿入されているという徹底ぶり。 これは作家有栖川有栖畢生の大作であり、間違いなく代表作に挙げられる作品であろう。 トリックよりロジックに重きを置いた、クイーンの継承者としての肩書を背負って臨む、江神シリーズ第三弾の本格的な推理小説である。 こうした論理的に推理していけば、確実に犯人にたどり着けるという、フーダニット物を愛するミステリファンにとっては堪らないだろうと容易に想像できる。 しかし、私はどちらかというと派手なトリックやどんでん返しが好きなほうなので、この手の作品はあまり好みではない。 が、やはり高得点は付けざるを得ないであろう。 ただし、一点だけ第一の殺人で説明されていない部分があったように思われるのが、やや残念ではある。 |
No.270 | 5点 | 水底の殺意- 折原一 | 2013/02/19 21:50 |
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再読です。
てっきり読んでいないと思っていた、私の中で完全に忘れ去られた作品。 殺人リストに次々と名前が書き加えられていくというアイディアはなかなか面白いと思うが、いかんせん内容が伴っていない感は否めない。 この作品に関しては、折原氏得意の叙述トリックもなりを潜めているようだし、サスペンスもいまひとつ効いていない気がする。 従って、折原ファンの一人として高得点は付けられない。 |