皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
|
メルカトルさん |
|
|---|---|
| 平均点: 6.04点 | 書評数: 2008件 |
| No.528 | 7点 | きみとぼくの壊れた世界- 西尾維新 | 2014/10/26 22:19 |
|---|---|---|---|
| シスコンの兄とブラコンの妹と、その兄妹を取り巻く学友たちの青春ストーリー。ミステリの要素もあるが、とても本格とは呼べない、言ってみればエンターテインメント作品であろう。
それにしても相思相愛の兄妹は、読んでいて正直気持ち悪い。いわゆる妹萌えなのだろうが、あまりにもいちゃつき過ぎで、これは誰もが引き気味になるのではと思う。私には一人妹がいるが、勿論女として意識したことなど一度たりとてないし、大体「お兄ちゃん」などと呼ばれた記憶もない。まあ出来の悪い兄貴なのでさもありなんと言ったところだ。すまぬ妹よ、やくざな兄を許せ・・・ これだけ貶してなぜこの点数なのか、それは各キャラが立っているのと、かいとう編のクイーンばりの推理の構築が余りに見事だったからという理由である。もんだい編では、死体の状況すら分からず、これだけの材料でどうやって犯人にたどり着くのか不思議だったが、それを難なくクリアしている手腕が素晴らしい。作者自身が予防線を張っているように、容疑者を限定してしまっているが故に新たな問題が生じているのは間違いないが、可能性の拡張はどのミステリにも共通するものとして排除されている。よって、本作の欠陥とはなり得ないと判断してもよいだろう。 尚、各章に挿入されているイラストにもいくらか点数を差し上げたいくらい、作風とマッチしている。 しかし、様刻、夜月、箱彦、黒猫、六人と妙な名前を付けるのは、作者の趣味なのか。普通の名前でいいじゃんと思うけど。 |
|||
| No.527 | 6点 | 午前零時のサンドリヨン- 相沢沙呼 | 2014/10/21 23:16 |
|---|---|---|---|
| リズミカルな文章が心地よい、片想い+マジック+日常の謎的な内容の学園ミステリの連作短編集。とは言っても、ほとんど長編と言っても良いような構成である。
主人公の須川君はどことなく不器用な雰囲気だが、意外と積極的に片思いの相手である酉乃初にアタックしていて、その辺りがこの手の青春物とは一線を画しているところだろう。だがやはり若さゆえか、相手の気持ちを汲み取ろうと努力はしているものの、細かい心理状態にまでは気付かないのはよくあるパターン。それにしてもこの酉乃初という少女は個性的過ぎて、普通の男子には荷が重いんじゃないのかね。 まあそれはそれとして、真冬の誰もいない水を抜いたプールサイドに腰かけて、足をブラブラさせながらお弁当を広げている少女の孤独感と、その光景の寂寥感といったら、そりゃもう中年のおっさんの心をも捉えて離さない魅力いっぱいである。このシーンはもしかしたら一生忘れないかもしれない。 ミステリとしても良く出来ていると思う。細かいところまで神経が行き届いている感じで、派手さはないが堅実なロジックを繰り広げている。ただ、若干こじつけっぽいのと、想像が多分に混じっている気がしないでもない。 |
|||
| No.526 | 7点 | とむらい機関車- 大阪圭吉 | 2014/10/18 22:09 |
|---|---|---|---|
| 噂にたがわぬ名作揃いの短編集。
好みから言うと表題作と『石塀幽霊』である。『とむらい機関車』はホワイダニットとして大変優れた作品だと思うし、ミステリとしてのみでなく文芸としても十分評価に値する。また、真相は人間の哀れを誘う悲哀に満ちたもので、独自の作風にマッチした名作だろう。『石塀幽霊』は不可思議な自然現象を扱ったもので、正直真偽のほどは怪しい気もするが、その奇想には一目置かれてしかるべきではないかと思う。 評判の高い『抗鬼』だが、個人的にはあまり面白いとは思わなかった。名作と呼ばれているらしいが、なんとなく全体的に煩雑な印象を受け、ストーリーがややこしい気がするのが原因。文体もやや合わなかった。 余談だが、巻末の随筆の中の『お玉杓子の話』は一読に値する。約60年前に書かれているにもかかわらず、内容が先鋭的で現代でも十分通用するものとなっているのには驚きを隠せない。 |
|||
| No.525 | 6点 | リカ- 五十嵐貴久 | 2014/10/14 22:14 |
|---|---|---|---|
| 第2回ホラーサスペンス大賞受賞のデビュー作。
妻子ある主人公のたかおは後輩の手引きにより、出会い系サイトに次第にハマっていく。そこでターゲットに選んだのがリカだった。彼はリカに少しずつサイトを通じて接近していき、次第に自分に依存するように仕向けていくことに成功したかに見えたが、そこからが真の恐怖の始まりだった。内心、こんな女いないだろうと思いながらも、嫉妬に狂った女の恐ろしさは私も身に染みているので、一口にに絵空事では済まされない面もある。 概略は非常にありふれた、どこにでもあるようなストーリーだが、細かいディテールに拘っていることや、こなれた文章、恐怖を徐々に盛り上げていく手腕などが際立っており、なかなかの仕上がりになっている。 ただ、いくつかの謎がそのまま残されており、特に娘の亜矢に関するいくつかの疑問が有耶無耶なのは、もしかしたらいつか続編が書かれることを意識しているのかもしれない。が、やはり一つの小説として、完結すべきところはちゃんとケリをつけるべきだろう。 尚、エピローグは加筆されたらしいが、これは怖い。実に凄みのある印象深い結末となっている。 |
|||
| No.524 | 6点 | 家日和- 奥田英朗 | 2014/10/11 22:07 |
|---|---|---|---|
| さすがに奥田氏は期待を裏切らない。いずれもごく平凡な人物の、誰にでも起こり得る少しだけ日常から逸脱したエピソードを綴った短編集。
ネット・オークションの出品に燃える主婦、会社が倒産し初めての主夫を経験することになる中年男性などを、何とも軽妙なタッチで描いている。どの短編も主人公は勿論、その伴侶や子供までが生き生きしており、いかにもありそうな家族の生身の姿を描写することに成功している。慣れてしまえばどうということもない日常を、これだけ面白おかしく書けるのは、氏をおいて他に考えられない。 心が疲れた時や、ふと会社や家庭に嫌気がさした時などには持って来いの一冊。『我が家の問題』と双璧を成す、夫婦や家族の絆をさりげないタッチで描いた佳作だと思う。 |
|||
| No.523 | 6点 | COVERED M博士の島- 森晶麿 | 2014/10/08 22:29 |
|---|---|---|---|
| どことなくよそよそしい文章が好みではないが、孤島物としてはまずまず合格点ではないかと思う。構造は本格ミステリだが、サスペンスの要素も多分に含まれている。その割には緊迫感が感じられず、考えてみればかなりの苦境に立たされているにもかかわらず、意外と平常心を保っている登場人物たちが異様に思える。
通常のミステリであれば、首なし死体や生首が現れたのだから、推理合戦とまではいかなくても、犯人は誰かとか、動機は何なのかなどの論戦が繰り広げられるものだと思うが、本作においては一向にその気配もなく、議論は明後日のほうに終始しているのが訝しい。それもそのはず、この作品の白眉は、実は孤島を脱出してからなのだから。 正直、島での殺人事件が起こるまでは勿論、それ以降もなんとなく展開がもたついてスッキリしない気分だが、終盤に来てようやく本来のキレを取り戻している感がある。そこにいたって初めて本書の良さが理解できるだろう。まあ、はっきり言ってお薦めとは言えないが、孤島物が好きな人は一応読む価値はあるかもしれないね。 |
|||
| No.522 | 6点 | ○○○○○○○○殺人事件- 早坂吝 | 2014/10/05 22:12 |
|---|---|---|---|
| この採点はひとえに一発勝負の大仕掛けに捧げられるものである。よって、それを除けばせいぜい4点程度の平凡な作品と思われる。それにしても、これは史上まれに見る下品というか、お下劣な作品だ。それはチープな表紙によく表現されている。人によっては、そういった低俗な作風が許せないという方もおられるかもしれない。かく言う私も、エログロは決して苦手ではないが、本作に対してはあまり好感を持ってはいない。だが、あのバカミス的大トリックがいかにもインパクトが強く、一概に貶すわけにもいかないわけである。
私もやはり、前半のごたごたが冗長に感じられて、せめて島に到着するまでのシーン全体を、半分以下にカットしていただきたく思った。それと、大袈裟にタイトル当てみたいなお遊びをさも凄いことのように喧伝しているが、大した意味はなかったと感じる。 さて、この作者、果たして私が予想するような一発屋なのか、それともさらに一皮むけた大物に化けるのか、いずれにしても次回作を楽しみにしたいと思う。 |
|||
| No.521 | 7点 | 放課後探偵団- アンソロジー(出版社編) | 2014/10/01 22:13 |
|---|---|---|---|
| これこそ粒ぞろいと呼ぶにふさわしい学園ミステリ珠玉の短編集。しかし、みなさんタイトルで敬遠されてはいないでしょうか?読んでみればそれが杞憂に終わると思うので、どのジャンルが好みとかに拘わらず、多くの方に読まれることをお勧めしたい。
それぞれが他愛無い、或いは些細な日常の謎を扱っているが、それを端正なロジックで攻めて、スッキリと解決に導いている辺りはとても好感が持てる。似鳥氏のトリックだけはちょっとややこしいが、まあ私の頭脳がついていけなかっただけで、問題ない。 各キャラもふとしたしぐさや言葉に個性が出ていて、よく描かれているので、ライトな読み物としても合格だろう。特に、それぞれの物語に登場する女子は魅力に溢れていて、読んでいてほのぼのとした気分にさせてくれる。 各短編が際立った特徴を持っていて、違った色の光を放っているが、最後の最後で梓崎氏にもっていかれた感が半端ない。掉尾を飾るに相応しい作品だと感じる。途中まではあまり好みではなかったが、見事な反転でやられた、いや本当に参りました。 |
|||
| No.520 | 4点 | ハーモニー- 伊藤計劃 | 2014/09/26 22:06 |
|---|---|---|---|
| 面白いか面白くないかと言う基準ならば、断然面白くない。どれだけの賞を受賞し、読者から絶大な支持を得たか知らないが、私にしてみれば、所詮SFなんてこんなものかとしか思えなかった。ただし、私はすこぶる頭が悪いし、IQも低いので、その点を考慮に入れるとこの評価はいささか怪しいとも言えるかもしれない。
しかしながら、この観念小説のようでもあり、とてもエキサイティングとは言えない小説を褒め称える気にはなれない。例えば、一生懸命読んでいても、途中誰と誰の会話か分からなくなったり、今誰が話しているのか判然としなかったりすることはないだろうか。或いは、相当クセの強い文章が読みづらかったりはしないだろうか。 そして、一体なぜミャハはあのようなとんでもない犯罪を実行しようとしたのか、その動機があまりに抽象的過ぎて私には理解できなかった。 それにしても、SFファンというか読者は、こういった難解な小説が大好きな人種なのだろうか。本作が面白い、または素晴らしいと言えるのであれば、ミステリファンに転向すればどれだけ興奮を抑えきれないような体験ができるか分からないと私は思う。 この経験を戒めとして、私は当分SFを読まないだろう。もしかしたら一生読まないかもしれない。最早SFの世界に私の求めているものはないのだから。 |
|||
| No.519 | 5点 | 配達あかずきん- 大崎梢 | 2014/09/22 22:13 |
|---|---|---|---|
| 何と言っても、表紙のイラストがとても雰囲気が出ていて好ましい。ずらりと並んだ書籍は白一色で統一されており、ところどころに使われているワンポイントの色彩が印象的である。見ているだけで、思わず書店へ行きたくなってしまう。
肝心の中身は、帯に謳ってあるように、本格書店ミステリの名に恥じないものであると思う。第一話の『パンダは囁く』が出色の出来だろう。他はまあどれも平均的に面白いが、あまりピンとくるほどのものではなかった。シリーズ化する気持ちも分かるが、書店の店員やそれに準ずる仕事をされている方以外の一般人、つまり我々からすると、それ程深い興味を持って読まれないのが普通の感覚ではないだろうか。とは言うものの、書店員の日常がうっすらと想像できて、少しは勉強になる面もある。 キャラ設定に関しては、確かにあまり魅力的とは言えない。主役の二人、杏子と多絵からしてこれといった特徴が見られないので、その意味では若干損をしていると思う。以後のシリーズではその辺り改善されていると良いのだが、この作者の淡々とした書きっぷりを見ていると、あまり期待できない気がするが。 |
|||
| No.518 | 4点 | よろず占い処 陰陽屋へようこそ- 天野頌子 | 2014/09/18 21:43 |
|---|---|---|---|
| 占い、失せ物探し、加持祈祷、霊障相談などを看板に掲げる、インチキ陰陽師が店主の陰陽屋。その店主こそ、元カリスマホストの眉目秀麗、腰まで届きそうな長髪の安陪祥明である。本作は彼と陰陽屋のアルバイトで、妖狐の中学生沢崎瞬太のコンビが活躍する、いわゆる日常の謎を扱った、極めて薄味のミステリだ。
ミステリと言っても、どちらかというとライトノベルの要素が強く、二人の人間関係のほうに重きを置いているので、若年層向けの軽い読み物となっているようだ。しかし、老若男女を問わず広く読まれているようだし、ドラマ化までされているわけで、世間的には思いのほか好意をもって受入れられている作品の模様である。一般読者にとってはディープな本格ミステリよりも、こういったライトで低刺激な物語のほうが喜ばれるのは確かなことだろう。 だが無論、本格ファンが読むべき作品ではない。私のような悪食ならば、話のタネに読んでみても良いかもしれないが、当然、強烈な印象は残らない。畢竟、本作はほのぼの系のごく軽量級ミステリだと考えられる。 それにしても、やはりミステリ読みから見ると、これだけシリーズが何作も上梓されているのは、首を傾げざるを得ない。これだけ人気を博しているにもかかわらず、私にはそれ程魅力は感じられなかった。ミステリ作家ならこんな書き方はしないだろうみたいな箇所が、いくつも散見されるのももどかしい。 |
|||
| No.517 | 5点 | 楽園都市- 本堂圭一 | 2014/09/13 21:48 |
|---|---|---|---|
| 典型的なサバイバルゲーム。しかし、残虐な殺戮シーンや民衆パニックなどは皆無である。
ある日主人公の少年の元に、楽園都市と名付けれたユートピアへの招待状が届く。誘われるように楽園都市へと向かうのだが、そこで少年のクラスこそ違うが同級生の少女と出会う。そしてもう一人、少年の幼馴染で剣豪の少女と三人で、このサバイバルゲームに立ち向かうのだが・・・。 中盤で山場を迎えるが、ここはなかなか読み応えがあって雰囲気を出している。意外な事実を知らされたりもして、ちょっといい感じである。終盤でもう一山あると想像していたが、トーンダウンしてラストを迎える。消化不良気味であるのは否めない。 全体的に設定が安直で、いかにもお手軽感が満載といった感じもする。要するに深みが足りないのである。文体も平板で、逆に読みづらいというか、頭を素通りするような感覚であった。面白くないかと言えばそうとも思わないが、インパクトに欠けるのは間違いないであろう。 |
|||
| No.516 | 6点 | 僕と『彼女』の首なし死体- 白石かおる | 2014/09/08 21:50 |
|---|---|---|---|
| 愚かなことに、最近まで私はこの作品の存在を知らなかった。だが知ってしまったからには、そしてそのタイトルを目にしたからには読まない選択肢はなくなった。
本作は第二十九回横溝正史賞優秀賞受賞作である。意外なことに、選考委員の中で最も評価が高かったのは北村薫氏だったそうだ。読んでみれば分かるが、この作風やストーリーから氏の称賛を受けるとは考えにくいのである。私は少しだけ北村氏を見直した、と同時にちょっぴり好きになった。 物語は「ぼく」こと白石かおるが女性の生首を、ハチ公の銅像の前にひっそりと置き去るところから始まる。実にセンセーショナルな出だしで、その後の展開を期待させるが、全くミステリらしいところはなく、「ぼく」の会社での活躍ぶりや人間関係が乾いた筆致で描かれるばかりである。これは果たしてミステリなのか、という疑問が頭をよぎる頃、ようやくらしさを発揮し始める。 「ぼく」は実に冷静で物に動じない、浮世離れした人間性を持っており、そこに違和感や嫌悪感を覚える人は読まないほうが賢明だ。逆にそれが許容できるのであれば、一度読んでみるのも面白いと思う。 取り敢えず、終始一貫して興味の的はなぜ彼は冒頭のような異様な行為を行ったかというホワイダニットである。それは、あっと驚くような理由ではなく、うーむと思わず唸ってしまうようなものであり、それだけに余計に腹に響く感がある。 いずれにしても、本作は他のどの作品にも全く似ていない、独自のオリジナリティを持った作品と言えそうだ。少なくとも、私の乏しい読書経験からは本作を彷彿とさせるようなものは見当たらないと言ってよいだろう。なかなか面白い作家となりそうな予感もする。 |
|||
| No.515 | 4点 | キマイラの新しい城- 殊能将之 | 2014/09/04 21:45 |
|---|---|---|---|
| 残念ながら、どこが面白いのかさっぱり分からなかった。私の読者としての読解力が足らないのか、総合的に評価の高い書評家のみなさんの鋭い批評が的を射ているのか、多分両方だと思うが、いずれにしても私のレベルの低さが露呈した結果になったようだ。
エドガーが憑いた江里が、自動車やバイク、テレビ、六本木ヒルズを目の当たりにして、とんでもない感慨を抱く辺りはかろうじて面白かったが、ミステリとしての魅力にいささか欠ける気がしてならない。どうでもいい描写が長くて、肝心の殺人事件に関する記述があまり詳述されていなかったりして、肝の部分がおろそかになってはいないだろうか。 迷探偵の石動も相変わらずのらりくらりの推理を繰り返すばかりで、どうにも本格ミステリとして、締まりがなさすぎる気がする。 私も一書評家として、この作品はミステリ読みの方々にお薦めできない。それはわずかに残っている己の矜持が許さないのである。本作が絶版になっているのも、それなりの理由があってのことのような気がしてならない。 |
|||
| No.514 | 5点 | デッドマン- 河合莞爾 | 2014/08/31 21:27 |
|---|---|---|---|
| 良くも悪くもデビュー作らしく、初々しい印象を受けた。とは言うものの文章はかなりの熟練ぶりを見せ、とても読みやすいのは褒められるべき点だと思う。一方警察小説として、序盤は専門知識などを駆使しての書きっぷりは素晴らしいが、中盤以降は捜査状況を含めてやや端折り気味な点が気になるところである。
それよりもむしろデッドマンが蘇るパートのほうにより惹かれるのは、人情というものだろう。少ないページ数とは言え、少女とのふれあいや介助猿カプとの交流はなぜかしら心に残る。 だが、かの『占星術殺人事件』に真っ向から挑んだと言われるアゾート殺人に関しては、正直あまり感心しない。どうせネタは割れているのだから、信憑性も乏しく、その背景にある動機もいかにも弱い。当然、歴史に残る名作とは比較するのもおこがましいと言えるだろう。 特捜班の面々はアクの強さこそないものの、いずれも個性的で続編が書かれるのも理解できる。勿論、今後期待できる新人には違いないと思うが、例によって妙な方向へ進まないことを祈っている。また、この人には警察小説ばかりでなく、名探偵が活躍する物語も書いて欲しいものである。 |
|||
| No.513 | 5点 | 地球平面委員会- 浦賀和宏 | 2014/08/27 22:07 |
|---|---|---|---|
| アイディア自体はまあ悪くはないとは思うが、「平面世界」の正体には正直唖然とするばかりで、どうも真実味に欠けるというのが率直な意見。確かに世の中様々な人間が生きて生活しているわけで、こうした一種異様な思想というか、観念を信奉している人も中にはいると思うので、あり得ないとは言わないが。だが、個人的にはやはり共感しかねるのである。ここまで書いて未読の方には理解できないだろうが、これはそうした抽象的な側面を持った作品なので、ある意味やむを得ないと考える。
冒頭は、大学のキャンパスの雰囲気も良く伝わってくるし、地球平面委員会という得体の知れない同好会?にも興味を惹かれるようにうまく誘導しているため、それなりにストーリーに入り込めるのだが、途中ダレるのがよろしくない。 なぜ主人公の大三郎にここまでしつこく入会を勧めるのか、最大の謎の正体には正直拍子抜けした。何だそんな事だったのかって感じ。まあ、このジャンルに強い人にはピンとくるのかもしれないけれど。 全体像がなんとなくぼんやりして、強烈なシーンも見当たらないし、どこと言って見るべき点もないため、素材は面白いだけに損をしている気がする。やはりこの作家は自分には合わないのかもしれないし、客観的にみて文章がこなれているとは言い難い。 |
|||
| No.512 | 7点 | 暗黒女子- 秋吉理香子 | 2014/08/25 21:51 |
|---|---|---|---|
| これは好き嫌いがはっきり分かれるタイプのミステリだろう。本格大好きマニアには総スカンを食らう可能性が高い。その点悪食の私は、面白ければジャンルを問わない質なので、十分許容範囲内である。しかし、イヤミスの中でも完成度の高い部類に入る作品だと思う。
カトリック系女子高の女王的存在の死をめぐって、彼女が主催した文学サークルのメンバーによる小説の形をとった犯人告発の朗読が始まる。それぞれの創作はすべて違った犯人が指摘されており、しかも、各々がなかなか良く描けていて面白い。いつみの死に際に手に握られていたすずらんに、いちいち違った意味を持たせている辺りも凝っていて興味深く読ませてもらった。一体犯人は誰なのか、それとも事故なのか・・・。 それにしてもなぜ闇鍋なのか、という疑問が湧くのは自然なことだろうが、これにも実はある狙いがあったのに気付くのは最後の最後だ。 最終章までは、イヤミス的な要素がちらほらと垣間見える程度だが、ラストにいたってイヤミス全開になる。しかもかなり意外な展開が待っていて、なるほどと唸らされることになるのも好印象である。この作者は基礎がしっかりしているようで、文章力は問題ないと断言できる。ラノベ風との意見もあるようだが、そんなことはあるまい。十分に読ませる作品と感じる。 |
|||
| No.511 | 5点 | 路地裏のあやかしたち- 行田尚希 | 2014/08/23 22:06 |
|---|---|---|---|
| 何となく京極作品を彷彿とさせる作風を期待していたが、甘かった。だが、軽めながらこれはこれでそれなりの味わいを醸し出しており、好感が持てる。
登場人物のほとんどが妖怪だが、それぞれが人間に化けており、全く違和感がない。それだけに怪しい雰囲気はほぼゼロで、ただどことなく懐かしいような素朴な印象を受けるのが本作の特徴といえるだろうか。 本シリーズは表具師という相当マニアックな世界を描いており、他では得難い体験をさせてくれる。主に掛け軸に関しての怪異を扱っており、さして怖くはないが数多のホラーとは一線を画す作品に仕上げている。各キャラもきっちり描き分けができていて、特に猫又と雪女が化ける女子高生コンビは物語全体に花を添えている感じである。勿論、主役の400年生きている化け狐の環さんは、さすがの貫録と言えそうだ。見た目は二十歳そこそこの大人可愛い、和服が似合う楚々とした女性だというのだから、その魅力は妖怪といえどもバカにできないのである。 |
|||
| No.510 | 2点 | キャットフード 名探偵三途川理と注文の多い館の殺人- 森川智喜 | 2014/08/20 22:05 |
|---|---|---|---|
| 何これ。小学生の作文かい?
ラストの捻りがちょっと効いているので2点だが、本来なら1点。 こんなもの出版しちゃいけないよなあ、講談社も落ちたもんだ。 |
|||
| No.509 | 5点 | ホーンテッド・キャンパス 桜の宵の満開の下- 櫛木理宇 | 2014/08/19 22:12 |
|---|---|---|---|
| シリーズ第3弾、連作短編集。前作と比べて質が落ちたとかいうわけでは決してない。本シリーズはホラーと青春物という一見ミスマッチな組み合わせが、ことのほか特に若年層に受けているのだろう。意外なヒットとなっているようだ。だが、やはり己の情緒不安定な精神状態を反映してか、前作よりも楽しめなかった。どこか物足りないのである。ホラーと青春が絶妙なバランスで配されているのだが、どちらも中途半端という意地悪な見方もできるわけで、要するに飽きがきてしまいやすい質の作品なのかもしれない。
本作を読んで感じたのは、しっかりとした因果律が作品の底辺に根付いていることだ。それゆえ、物語は落ち着くべきところに落ち着くので、安心感を持って読み進められる。だが、一方では不安感をあおるべきホラーのあるべき姿とは若干異なる気もするわけである。怖さも程々、青春物としてもそれなり、いかにも一般読者受けしそうな作品であるのは間違いないし、良心的であるとも言えるだろう。 それにしても、相変わらず表層のみの書評で、本質を鋭くえぐるには程遠いねえ。我ながら情けないが仕方あるまい。 |
|||