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メルカトルさん
平均点: 6.02点 書評数: 1773件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.5 6点 掟上今日子の推薦文- 西尾維新 2015/05/08 21:50
前半のワクワク感と比べると、後半は若干トーンダウンの感がしないでもない。全体的にストーリーがあっさりしており、複雑系が好みの読者には物足りないかもしれないが、じっくり読み込むことによって、なかなかの味わい深さを堪能できる。
忘却の探偵、最速の探偵という特異なシチュエーションを物語に据えることにより、常に注意深さを要求されるので、作者側も丹念に描きこんでいる印象を受ける。
物語は登場人物が限られているため、自然予想される通りに進行するが、実はこれは織り込み済みで、そのためホワイダニット、ハウダニットに特化される。予定調和的な一面がかなり強いが、だからと言って本作が退屈であるとか、意外性に欠けるというわけでは決してない。

No.4 7点 掟上今日子の備忘録- 西尾維新 2014/10/31 22:34
遂に西尾維新が本格ミステリの世界に帰ってきた。この時をどれだけ待っていたことか。続編も刊行予定のようだし、私としては出来ればこのまま本格の道を邁進していただきたいと願う次第である。
さて本作だが、名探偵ジャパンさんがおっしゃっているように、余計な情報をできる限り排除して、さらには登場人物も最低限に抑えることにより、読者をストーリーの中へ無理なく入り込めるように細やかな配慮がなされている。なので、非常にスッキリとスマートな仕上がり具合となっていると思う。この辺りはこれまでの西尾氏と一線を画するところだろうし、新境地と言えなくもない。
探偵の今日子さんは、前向性健忘の一種で、一度寝てしまうと前日の記憶がなくなってしまう。だから彼女は病気に罹って以降の記憶が全くないのである。よって探偵という職業を選ばざるを得なかったし、事件をその日のうちに解決してしまう「最速の探偵」なのである。
おそらく治る見込みのない病気を抱えて、さぞ辛い思いをしているだろうと推測されるが、悲壮感は全く感じさせない。作者はそうした湿った作品を望んではいなかったのだろう。しかし・・・
「私は掟上今日子。25歳。置手紙探偵事務所所長。白髪。眼鏡。記憶が一日ごとにリセットされる」これにはじんわりと涙腺が緩んでしまった私であった。
とにかく、西尾氏のファンは勿論だが、いつものクセのある文体に敬遠気味の読者のみなさんにも、この作品は一読の価値があると言いたい。

No.3 7点 きみとぼくの壊れた世界- 西尾維新 2014/10/26 22:19
シスコンの兄とブラコンの妹と、その兄妹を取り巻く学友たちの青春ストーリー。ミステリの要素もあるが、とても本格とは呼べない、言ってみればエンターテインメント作品であろう。
それにしても相思相愛の兄妹は、読んでいて正直気持ち悪い。いわゆる妹萌えなのだろうが、あまりにもいちゃつき過ぎで、これは誰もが引き気味になるのではと思う。私には一人妹がいるが、勿論女として意識したことなど一度たりとてないし、大体「お兄ちゃん」などと呼ばれた記憶もない。まあ出来の悪い兄貴なのでさもありなんと言ったところだ。すまぬ妹よ、やくざな兄を許せ・・・
これだけ貶してなぜこの点数なのか、それは各キャラが立っているのと、かいとう編のクイーンばりの推理の構築が余りに見事だったからという理由である。もんだい編では、死体の状況すら分からず、これだけの材料でどうやって犯人にたどり着くのか不思議だったが、それを難なくクリアしている手腕が素晴らしい。作者自身が予防線を張っているように、容疑者を限定してしまっているが故に新たな問題が生じているのは間違いないが、可能性の拡張はどのミステリにも共通するものとして排除されている。よって、本作の欠陥とはなり得ないと判断してもよいだろう。
尚、各章に挿入されているイラストにもいくらか点数を差し上げたいくらい、作風とマッチしている。
しかし、様刻、夜月、箱彦、黒猫、六人と妙な名前を付けるのは、作者の趣味なのか。普通の名前でいいじゃんと思うけど。

No.2 6点 クビシメロマンチスト- 西尾維新 2013/12/23 22:32
再読です。
ミステリが3割、青春エンターテインメントが4割、その他キャラ萌えなどが3割って感じの小説。ミステリ度は薄い、その代わりに登場人物、特に主人公であるぼくのかなり歪んだ性格が浮き彫りにされてはいる。
前作が再読してみて思いのほか素晴らしい出来だったので、こちらも読み直してみたのだが、やはり予想通りそこそこであった、それ以上の評価は出来ない。
まず気に入らないのは、第一の事件と第二の事件の間が無駄に長すぎて、いささか間延びしているのである。
それに零崎人識が連続猟奇殺人鬼のくせに、只のいい人みたいになっているのもどんなものかと思う。
そして最初の殺人事件の動機、これが納得いかない。そんなんで人を殺していたら、どれだけ殺人を犯してもキリがないじゃないか。
もう一つおまけに、アリバイトリックに使われた携帯、それはないでしょ、って感じですか。そんな小手先のトリック誰にでも分かってしまうって。
もうこれで西尾維新はいいや。しかし、西尾維新って変なペンネームだと思っていたけど、ローマ字変換したら回文になっているのね。昨日まで気付かなかった、情けない・・・。

No.1 8点 クビキリサイクル- 西尾維新 2013/11/30 23:20
再読です。 
戯言、戯言と言いながら、骨格は非常にしっかりとした本格ミステリだ。文体はライトノベルに近いせいか、各キャラが立っているのも好印象。13人もの主要登場人物にそれぞれ個性が感じられ、見事に描き分けられているのは、デビュー作にしては、と言うかだからこそと言うべきか、見事の一言に尽きる。
さらには、戯言に隠れて分かりづらいかもしれないが、凝りに凝ったプロットと読者を欺く欺瞞に満ちていて、素晴らしい作品に仕上がっていると思う。
首なし死体に絡むトリックも、これこそ前例のないもので、思わずタイトルのセンスに感心させられる。
ただ、後味だけは正直あまりよくない、というよりほろ苦い感じでラストを迎えるので、それだけが減点の対象であろうか。まあ私にとっては、ということなので、それほど気にならない読者のほうが多いとは思うけれど。
ああ、「いーちゃん、髪くくって」がクセになりそう。
当然、次に続く『クビシメロマンチスト』も刊行と同時に期待を込めて読んだわけだが、残念な結果に終わってしまった。西尾氏はもうあっちの方向へ行ってしまったので、いまさら何を言おうが仕方ないが、もう一度ミステリの世界に戻ってきてほしいと心から願うものである。

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メルカトルさん
ひとこと
「ミステリの祭典」の異端児、メルカトルです。変人でもあります。色んな意味で嫌われ者です(笑)。
最近では、自分好みの本格ミステリが見当たらず、過去の名作も読み尽した感があり、誰も読まないような作品ばか...
好きな作家
島田荘司 京極夏彦 綾辻行人 麻耶雄嵩 浦賀和宏 他多数
採点傾向
平均点: 6.02点   採点数: 1773件
採点の多い作家(TOP10)
浦賀和宏(33)
島田荘司(25)
西尾維新(25)
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京極夏彦(22)
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