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江守森江さん
平均点: 5.00点 書評数: 1256件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.376 8点 妖婦の宿- 高木彬光 2009/07/08 01:19
但し書き
作品集として入手出来ず表題作「妖婦の宿」のみを「密室遊戯」(鮎川、島荘監修アンソロジー)で見つけて読んだ。
よって採点、書評共に「妖婦の宿」単独です。
読者挑戦物短編の最高峰を鮎川「達也が嗤う」と分け合う傑作だろう。
一つの大事な手掛かりから論理的に導かれる犯人。
心理的密室トリックを囮にした結末の大技!
作者を打ち取って解決編前に正解に辿り着いても素晴らしいと賞賛出来る。
読者挑戦物好きで未読なら是非とも手にして欲しい。

No.375 3点 時計仕掛けのイヴ- 関田涙 2009/07/07 15:56
作者は、メフィスト賞作家で、ヤングアダルト路線でも生き残れずに、現在は小学生向けミステリーに転身している(居場所を見つけたようで結構人気がある)
この作品は、ネットで懸賞小説として公開された物に加筆訂正して出版された。
第二部終了時までで真相に辿り着く変形の読者挑戦物になる。
探偵役の特殊な能力はラブ・ストーリーには関係するが、推理に関係しない辺りが小学生向けに転向した作者の力量を示している。
変形クローズドサークル物で、散りばめた伏線からプロファイルする推理部分も驚きが無い。
貶すほどの酷さは無いが推せる材料も無い中途半端な作品。

No.374 7点 歳時記(ダイアリイ)- 依井貴裕 2009/07/05 15:03
シーマスターさんの書評に刺激され書評を書き直した。
作中作を読んで真相を推理する形式で読者挑戦も付されている。
散りばめられた(一部のミエミエな)伏線から作者の狙いが読めやすいのと、狙い隠蔽の為に非常に読みにくい。
しかし、読みにくさは作中作だからと言い訳可能だし、伏線を散りばめ読者挑戦するスピリットは賞賛される。
読者挑戦物好きなのでスピリットの方を採点に反映させた。
※以前、書評で触れる事を躊躇ったパクリ疑惑について。
某T氏「R事件」と作者の狙いは全く同じである。
しかも狙い隠蔽の為に違和感タップリで読みにくい事まで同じ。
しかし、書評本やサイトでパクリについて目にした事が無い、共にランキング上位に評価されていたりする。
想像の域を出ないが、完成後出版まで時間が空く等の大人の事情(創元社は完成から出版まで待たされる例が多数)が業界では知られているから問題視されていないのだろうか?

No.373 4点 能面殺人事件- 高木彬光 2009/07/04 12:19
初読時、作者の神津シリーズ読者挑戦傑作群を先に読み、その興奮が覚めやらぬままに興味を持ち手にした。
思いっきり失望した記憶がる。
最近、再読して初読当時の失望感の原因に思い至った。
プロローグでクリスティー「アクロイド殺し」のネタバレから始まり“作者の狙い”が透けて見えてしまうのが原因だった。
殺人方法や密室トリックを枝葉にして挑んだ大技にしては余りに不用意な書き出しだったと思う。
※多数の古典作品が未読で、これから読もうと思っている方々へ
海外古典作品のネタバレを多数含む。
現在では色褪せ古典的名作の評価には値しなくなった。
以上を踏まえて、手にして下さい。

No.372 7点 影なき女- 高木彬光 2009/07/03 22:18
神津シリーズの短編集。
各話共通でプロットや作風が初期のシリーズ長編に通じるものがある。
よって、この作品集を読んでから「刺青〜」「人形は〜」「呪縛の家」など読者挑戦物を読むと手の内を知った手品になり、推理する楽しみを奪いかねない。
故に、先に前出の作品を読む事を勧めたい。
前出の長編では事件の継続の為に犯人に弄ばれたりして神津恭介の名探偵らしさが削がれる(私的には犯人に翻弄され悩む神津も好きだが・・・)シーンもあるが、短編では全開で描かれている。
読む順番を守ればより楽しめると思う。

No.371 5点 日曜探偵- 天藤真 2009/07/03 16:00
中編2作にショートミステリ1作を読者挑戦を挟む形の作品集として纏めた物。
この作品集の出版当時は、ミステリ史上に燦然と輝く傑作「大誘拐」以外の作者の作品は完全に埋もれていた(後に創元社文庫で全集が出版されたのは喜ばしい→今なら全集に全て収録されているので其方がお勧め)
当時初読した際、埋もれた作品が読めて凄く嬉しかった。
ただ、今になって再読すると古臭さが否めず残念に思える。

No.370 7点 青い密室 名探偵星影龍三全集(2)- 鮎川哲也 2009/07/02 22:14
星影シリーズ短編集のパート2でタイトルを「*い密室」で統一した為に密室物短編集的なイメージを抱いてしまう。
しかし、目玉は読者挑戦物の傑作「薔薇荘殺人事件」「朱の絶筆」の2作品。
本格の原点回帰したい方にお薦め。
※注意書き
「●い密室」シリーズ2冊に収録された密室物作品は密室トリック分類などでは典型的作品例にあたる。
現在でも多くの密室物作品に転用されている。
以上2点に留意してお読み下さい。

No.369 7点 芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション2- 江戸川乱歩 2009/07/01 17:51
(但し書き)
他の短編集で読んだが思い入れある作品「赤い部屋」を単独で書評したい。
有栖川・綾辻ミステリージョッキーへの収録で再読した。
イタズラとプロバビリティーの犯罪をテーマに書かれており30年以上前に初読した。
当時の自分は、線路に小石を載せたり、青になる前の信号で飛び出す素振り(犯罪と認識せずに)のイタズラをした事がある。
黄信号とか微妙に危険な時に善意で「危ない!!」と叫ぶ事が逆効果になる等々で子ども心に怖さを感じた。
現在に措いても罪に問えない形で応用可能な点に改めて(乱歩の中の悪意に)恐怖を覚えた。
しかも、余りにドギツイためか妄想オチで終わるが、悪意は拭いきれない。
※その他の収録作品については各自の好みで収録された作品集をあたればよいと思います。

No.368 6点 江戸川乱歩短篇集- 江戸川乱歩 2009/07/01 17:22
「心理試験」「二銭銅貨」「D坂~」を同時収録した別の傑作短編集もある。
また、このサイトでは乱歩の場合、特例的に短編タイトル単独で作品登録され書評されている作品もある。
短編集として最低限読んでおくべき作品は網羅されているので、一応(少年探偵団物以外の)乱歩もかじってみようと思う方には持って来いだろう。
読むにあたって図書館利用が現実的で、地元図書館の蔵書如何で他の作品集での代用が可能な点を考慮して借りれば良い。

No.367 7点 二つの標的- 鮎川哲也 2009/06/29 19:01
埋もれたノン・シリーズな挑戦物短編を掘り出すシリーズだが、最後はさすがに傑作は残っていなかった感じがする。
それでも、モノクロ時代のテレビシナリオにイラストを添付したり工夫され、推理する楽しさは損なっていない。
特別収録「密室の妖光」は、発表当時は問題編が大谷羊太郎で、解決編の作者を当てる読者挑戦企画作品。
大谷の後書きから、犯人及び犯人指摘の伏線を鮎川には教えずに解決編を書かせた模様で、企画とは別に挑戦している。
どう鮎川が受けて立ったかを含めて楽しめた。

No.366 8点 山荘の死- 鮎川哲也 2009/06/28 06:45
鮎川哲也コレクション挑戦篇と銘打たれ三冊に纏められたノン・シリーズ読者挑戦物短編集のパート1。
以前出版された読者挑戦物短編集に収録された作品もあるので全14作が埋もれていた訳ではない。
しかし、特筆すべきは読者挑戦物短編の最高峰と思え、稚気に富んだ「達也が嗤う(笑う)」が完全版で収録された点に尽きる。
その他の作品も問題編と解答編に別れ存分に推理ゲームを楽しめる。
作品ノート、解説も本格の鬼"鮎川哲也"を知る良い資料と思う。

No.365 7点 疑心- 今野敏 2009/06/27 03:09
キャリアの警察官僚である主人公・竜崎の魅力を描いた大河ロマンとして一般小説部門で採点するならシリーズ全作満点でも良いと思っている。
今作は、ブレない信念の持ち主である竜崎が"恋"で揺らぎ、そして超越する。
竜崎を取り巻く人々のキャラ立ちも素晴らしさを増した。
小説新潮に掲載された外伝も今話の前振りな為、読んでおきたい。(雑誌のバックナンバーが揃う図書館がお勧め)
但し、ミステリ的には見え見えなテロ警備ストーリーなので、このサイトでの採点は控え目にした。
※追記
‘一穴主義’(←これって差別用語?)な竜崎が‘多穴主義’に転向し、不倫を迫ったらどんな展開だったのか読んでみたかった(でも、それじゃシリーズ終了だよな)
人間としての揺るぎない信念も時として本能(無意識な性欲)に勝てないのは身をもって知っているから・・・・・。

No.364 7点 朱漆の壁に血がしたたる- 都筑道夫 2009/06/26 15:25
物部太郎シリーズの三作目。
前作に少しだけ今作の前振りがある。
だからと言って読む順番は問わない。
スピーディーな展開、最後のセリフが端的に示すユーモラスな設定から、シリーズ終了が惜しまれる。
動機面の弱さ、構成の複雑さの割にあっさりした解決編にやや不満が残り残念。
それでも、光文社文庫版を読めば最後の楽しい解説?で(チョイと下品だが)ニヤリとできる。
採点は解説分で+1した。

No.363 6点 最長不倒距離- 都筑道夫 2009/06/26 10:48
「七十五羽の烏」の物部太郎シリーズ二作目。
謎と論理のエンタテインメントとの副題に沿った作品で、論理的に謎を解明しながら犯人を絞り込む過程(解決編前半)は良くデキている。
しかし、エンタテインメント性強化の為か結末への展開(解決編後半)が、察しやすくなり逆効果になってしまった。
オーソドックスな論理を詰める犯人当てで書かれていたらもっと高評価しただろう。

No.362 8点 龍神池の小さな死体- 梶龍雄 2009/06/25 21:30
「本格ミステリ・フラッシュバック」とここの書評から是非とも読みたかった。
古本屋、地元図書館に無く途方に暮れていたが、他地区図書館からのお取り寄せで念願がかなった。
昔の事件の謎を追ううちに新たな事件に巻き込まれる主人公。
ダミー探偵役がデータは揃ったと読者挑戦まで宣言する。
そして迎える解決編。
ダミー探偵役の推理後に本当の探偵による更なる解決は最初から散りばめられた伏線を回収する奥深さだった。
「埋もれた本格ミステリの傑作を発見せり」といった感慨があった。

No.361 5点 ある閉ざされた雪の山荘で- 東野圭吾 2009/06/25 15:56
「仮面山荘〜」から間隔を開けずに書かれたクローズドサークル&**オチ作品。
いくら捻ったバリエーションを思いついても普通は同じ作家が書かないと思うのだが・・・。
当時の作者がいかに一般に読まれていなかったかが伺える。
更に、添付された図面で直ぐに狙いに気付いてしまった。
それでも読ませた辺りが作者の現在を予見させる。
ミステリとしてより作者の作品遍歴を知る為に読めば良いのかも。

No.360 6点 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 2009/06/25 15:38
この作品が書かれた当時に初読した時は楽しめた記憶がある。
当時の作者は本格を書いていた。
スリリングな展開と結末手前までの論理的推理は本格そのものだった。
しかし、作品評価の肝である結末の**オチと‘その目的’は、この作品より"かなり"以前に書かれた広瀬正「T型フォード〜」(マニアには有名作品)で使われていた事からパクリ疑惑は払拭出来ない。
そして、現在に至っては夢オチと並ぶしょうもない結末の典型に成り下がったとも思う(ミステリードラマでは未だに良く使われる)
再読しなければ良かった。

No.359 5点 軽井沢マジック- 二階堂黎人 2009/06/25 09:27
浅見光彦擬きの設定を書けば"軽くて読みやすいだろう"との作者の思い込みから生まれた迷探偵。
更には、有栖川設定まで取り入れ学生シリーズも書いた。
見え見えの良いとこ取り狙いは失敗感が漂う。
作者の本格愛とは裏腹に、読み所はミステリ部分ではなく、サトルのキャラクター紹介部分とお姉様登場のドタバタ部分。
そこに馴染めるかがこのシリーズ最大の問題点。
因みに、シリーズ全作共通で読み直す気が全く起こらない。
5点にしたのはサトルのお姉様方への期待度、本来なら4点。

No.358 7点 狐火の家- 貴志祐介 2009/06/24 09:08
「硝子のハンマー」の続編になる連作短編集。
この探偵達には「密室」はお約束。
無理やりかなと思えるトリック、犯人との対決、犯行の決め手等、内容がバラエティーに富む。
探偵達のユーモラスなキャラが前作以上に立ってきた。
探偵達の登場場面が多い短編集での続編が待たれる。

No.357 7点 密室の如き籠るもの- 三津田信三 2009/06/23 13:48
シリーズ物の中短編集。
単独で読んでも問題ないが、シリーズ執筆順に読めばより楽しめる。
短編3作はこのシリーズらしさを損なわずに上手く短編に仕上げ、長編以上に刀城言耶のとぼけた魅力を引き出している。
表題作の中編は、長編同様に論理をこねくり回し、ダミー解決(ダミー用伏線も)をバッサリ捨てて真相に至るシリーズのお決まりパターンが楽しめる。
このシリーズが好きならお得感満載。

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江守森江さん
ひとこと

※「読書(ミステリ)は趣味で娯楽」「相容れない主張(嗜好)は、どこまでも平行線」を標榜している。
※多くの作品に接する努力として、映像化作品で済ます等々、ファジーな方法を常に模索している(本質的...
好きな作家
高木彬光、天藤真、平石貴樹、古野まほろ (ミステリーに限定しなければ一番は梶山季之...
採点傾向
平均点: 5.00点   採点数: 1256件
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