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江守森江さん
平均点: 5.00点 書評数: 1256件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.416 4点 消失!- 中西智明 2009/08/11 22:55
好き嫌いが、そして評価の高低が顕著に出るタイプの作品。
私的には違和感を感じさせずに結末手前まで読ませ、結末での"驚き"を最大限にもたらすか。
仕掛けを知った上でも再読する気になるか。
以上2点を評価基準にしている。
更に、好みの中心からズレているので最高点を8点止まりと決めている。
あとは、読者の"察しレベル"と作者の"隠蔽レベル"の噛み合わせの問題だろう。
この作品が書かれた時代、復刊にあたった選者が仲間内な事の2点を考慮して評価する。
読み始めからネタの大部分はバレバレだった。
結末のドンデン返しも後出しジャンケンで論理的にはダミー推理を結論にして捻らなくても通用する為に評価出来ない。
“あとがき”での作者の自信程の作品では断じてない。
この一作で作者自身が"消失"してしまった事に納得。

No.415 5点 犯人(ホシ)に願いを- 森巣博 2009/08/10 06:16
悪刑事の完結編?
ここまで突っ走ればリアリティなんて糞喰らえ!
でも、細かな設定なんかは現実味がある。
笑い飛ばして読んでもよし、散りばめられた社会問題について考えてもよし、見かけより奥が深い。
このシリーズで作者を気に入ったなら、作者の本質に迫る博打小説はもっと面白いと勧めておく。

No.414 5点 悪刑事(わるでこ)- 森巣博 2009/08/10 06:04
森博嗣でも読んでみるかと図書館の棚を眺めていたら、こっちが気になって読んでしまった。
博打生活で培われた人間観察、人間の「帰属」を二本柱に小説やエッセイを発表している作家だが、警察ピカレスク・ロマンなエンタメ作品も書いていた。
のりピーが覚醒剤で逮捕された今が読み頃な内容。
純然たるミステリーではないが、警察小説である以上ミステリー要素は満たされている。
お堅い警察小説が苦手でも、この作品なら問題なしで笑い飛ばして読めてしまう。

No.413 7点 密室は眠れないパズル- 氷川透 2009/08/08 17:55
実質のデビュー作に手直しを加えシリーズ2作目として出版された。
ストーリーにもう一つドキドキできない、2つのダミー推理の先の真相解明過程と論理性に驚きがないなど短所はある。
その一方で、前半に書かれた(私と同様な)作者の本格に対する思いを実践して「読者挑戦」する姿勢を絶賛したい。
当時の作者は私のミステリ嗜好の実践者として“希望の星”だった(再読して改めて思った)
作者の現状には落胆を禁じ得ない。

No.412 4点 ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件- 橋本治 2009/08/08 00:47
「桃尻娘」で一世を風靡した作者が手掛けた青春ミステリ。
書かれた時代そのままに昭和後半の高度経済成長期を舞台にし、当時ブームだった横溝作品をパロディ化した。
推理会議や「虚無への供物」の引用、更には解決過程から(作者の思惑とは関係なく)まさに“アンチ”ミステリなので、見かけから正統派本格を期待すると肩すかしをくらう。
色々な試行を詰め込み過ぎ、クドくて纏まりに欠ける割にサラッと読めてしまう。
その辺りに、他分野で人気を得た作者の実力の片鱗が垣間見える。

No.411 5点 絶望ノート- 歌野晶午 2009/08/07 07:47
新たなる試みに常にチャレンジする作者が、今回はデスノートの叙述ミステリ的アレンジを試みた。
結末までに何度も捻ってくるのだが、伏線に乏しく後出しジャンケンになってしまい驚きが得られない。
登場人物達に不快感を覚えながら読み進め、最後まで引っ張られた辺りの人間描写は上手い。
ジョン・レノンに無関心なので、すべてを汲み取れなかったであろう自分が腹立たしく評価を下げた。

No.410 5点 不可能犯罪コレクション- アンソロジー(国内編集者) 2009/08/07 01:07
本のタイトルを「お題」にしたアンソロジー。
この手の企画なら各作品が作者毎に一冊の短編集に纏まるとしても当分先と思えるので出版する意義はあると思う。
しかし、編者の嗜好の偏りと、これといった傑作が収録されていず残念。
大山誠一郎作品はフーダニット短編の名手らしい意外な犯人を一つの手掛かりから導き出し素晴らしい。
その一方、使い古されたトリックで大幅減点され水準レベル。
岸田作品は楽しく読めるが、展開からオチまで見え見え過ぎた。
門前、鏑木、加賀美作品は編者の嗜好に問題があるとの思いしか浮かばない。
石持作品は「お題」から離れれば、この本一押しだろう。
普通な設定では被害者は壊れないが、この特異な設定で如何ともし難い能力差を考えるとリアリティを感じる。

No.409 7点 犬神家の一族- 横溝正史 2009/08/06 07:57
私的に金田一シリーズ作品は初期の古谷一行版ドラマが一番で、次いで石坂版映画、その後に原作小説の順だと思っている。
そして、どの作品においても上記の順で印象に残っている。
更に、新規で映像化された物まで観てしまう為に原作小説が置き去りになる傾向にある。
しかし、本来は真っ先に原作に接するべきだろう。
プロット、雰囲気、読みやすさの三拍子が揃い素晴らしい“この作品”か獄門島から読み始めたい。
この作品の悪意の出発点は遺産を残して死んで逝く爺様に尽きる(もっと掘り下げれば戦争を起こした日本そのものが悪意の原点かもしれない)
※追記(平成22年大晦日)
昨日の「人間の証明」に続いてMXTVの年末ロードショーで旧石坂版を観てノスタルジーを擽られた。
若き日の島田陽子は金田一作品のヒロインに相応しい(松嶋菜々子より遙かに良い)
あおい輝彦はジャック・マローンや矢吹丈の声も含め好きな役者だと再認識した。

No.408 7点 容疑者Xの献身- 東野圭吾 2009/08/06 00:30
この作品の影響下で書かれたと噂の二階堂黎人の新作を読む前に再読してみた。よって書評を改めた。
※以下ネタバレしてます!
本格ミステリではないとの論争があったが、ミステリとしての骨格は倒叙物の中に叙述トリックを織り交ぜたハウダニット作品で本格ミステリだと思う。
ホームレスの扱いに対する変な評論も目にしたが、ミステリで被害者の扱いを論じる事はミステリ評論の本質から外れていると思う。
さて、この作品は恋愛?小説でもあるが、石神の一方的な献身は精神的ストーカーと思える。
真相を知ってしまった彼女が自白せずに石神の呪縛から逃れる術はなかったと思われる、しかし実際に逃れられたかは想像するしかない・・・私的には逃れられなかったと思う。
作者は心の奥底を汲み取ってほしくて、この構成にしたのかもしれない。
骨格はしっかりしたミステリだが、読み所はストーカー?部分と思える。
それ故、変な横槍が入り、作者の評価は高騰し、横槍を入れた者の評価は下落する皮肉な結末となった。

No.407 7点 葉桜の季節に君を想うということ- 歌野晶午 2009/08/05 23:46
再読したのを機に書評を改めた。
※ネタバレ要注意!!!
初読前から'驚きの一冊'との前評判は知っていた。
構えず読み出したが、アウトローな世界を覗いた人間には違和感いっぱいだった。
途中で(葉桜ならぬ姥桜・ヒロインから)違和感の原因(作者の狙い)を察してしまった。
ハードボイルドとしては、ありきたりとしか言いようがなく、一発大技頼みな作品で違和感を感じさせたら結末での驚きは薄い。
その一方で「葉桜の季節」に〔桜の散った後〕と〔一年で一番爽やかな季節〕のダブルミーニングを内包させタイトルから仕掛けを施したのなら驚嘆に値する(作者の真意は不明)
作品自体は水準レベルで6点だが秀逸なタイトル(の意味)に1点加算した。
※追記
子育ても仕事も終わり悠々自適な年金生活をしている両親を見て、疲弊した現役世代よりも確実に人生を謳歌していて、青々とした葉桜が思い浮かんだ。

No.406 5点 電送怪人- 芦辺拓 2009/08/01 18:45
乱歩の少年探偵団を森江春策版にしたシリーズ三作目。
タイトルからして乱歩的ムードが漂いワクワクする。
現状の最終話なだけに森江春策の名探偵らしさに溢れファンには嬉しい。
子供と一緒に読書して森江春策の気分を味わってみてはいかがだろう。

No.405 4点 謎のジオラマ王国- 芦辺拓 2009/08/01 18:38
森江春策を明智小五郎に見立てたシリーズの二作目。
大人向け、子供向けに関係無く今回の設定は使い回し感があって好きになれない。
シリーズの企画はミステリの読者拡大に一役かっていると思う。

No.404 5点 妖奇城の秘密- 芦辺拓 2009/08/01 18:33
大乱歩の少年探偵団を念頭に置きながら書かれた現代の少年向け探偵小説。
トリック面などは読者層を意識して本来の作品ほど難しく入り組んでいない。
そして、なにより森江春策が大人向けと違いカッコいい。
助手の新島ともかとデキチャッテル感が子供向けなのに強い辺りが作者らしい。

No.403 3点 天使はモップを持って- 近藤史恵 2009/08/01 17:20
以前テレビ朝日で放送のドラマ「モップガール」に似た設定、しかも「モップガール」が海外ドラマ「トゥルー・コーリング」(詳細不明)のモロパクリ問題でDVD化&キー局で再放送されない。
この作品の書かれた時期と海外ドラマの放映時期が気になる(面倒くさいから調べない)
偶々、図書館の棚で見つけて棚の前で小一時間立ち読みして読了した。
その程度の軽い読み物で印象が薄い。

No.402 8点 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術- 泡坂妻夫 2009/08/01 14:23
本そのものがマジックの種であり、どんなマジックか?まで(作者が作者だけに)読み始めで気付く、素晴らしい試みだけに少し残念に思えた。
手間のかかる仕掛けだが読みにくくなっていない辺り'そこらの仕掛け頼みな作品'とは一線を画する。
しかし、ストーリー自体の評価はありふれたミステリだった。
この作品に触発され多くの作家が稚気に富んだ作品を出版している事からもパイオニア精神を賞賛したい。
ストーリー上のトリックも組み込んだ本で出版すれば(試す読者も現れ)絶版時点で現存冊数上でも稀少本となり未読者が多数出て「しあわせの書」から「ふしあわせの書」に変貌する更なる一撃を仕込めただろう!
そこまでやったなら"満点"だった。

No.401 8点 ブラックペアン1988- 海堂尊 2009/08/01 10:23
読み始めは海堂版「白い巨塔」でミステリーではない印象だった。
しかし、最終章では「ブラックペアン」の意味をも含めしっかりミステリーしていた。
臨場感溢れる手術シーンの描写、短くまとめスリリングさが増したストーリー、医療物作品として採点すれば満点でもよい。
田口シリーズの外伝に位置付けられ、過去を描いている。
シリーズ本編より素晴らしく“本作”が現状の最高作だと思う。
そして、自分が海堂ワールドにどっぷり浸かっていると認識した。

No.400 6点 本格ミステリ03- アンソロジー(出版社編) 2009/07/30 20:33
この年度は粒ぞろい。
しかも、この本でしか読めない作品もある。
※埋もれたフーダニットの傑作。
大山誠一郎「彼女がペイシェンスを殺すはずがない」
※助産師シリーズの単行本未収録作品で現状は最終話。
青井夏海「別れてください」
以上2作品だけでも充分満足できた。

No.399 5点 本格ミステリ04- アンソロジー(出版社編) 2009/07/30 20:20
一冊に纏まっていない東川篤哉“霧ヶ峰涼シリーズ”の初作品で読むべき順番の制約を受けるトリックが使われた「霧ヶ峰涼の屈辱」は埋もれているのが惜しい(この本でしか読めない)
その他の作品に興味があればネット検索して下さい(作家別の個別作品集で読む事を薦めます)

No.398 4点 本格ミステリ05- アンソロジー(出版社編) 2009/07/30 17:01
例年に比べレベルが低いとは思わないが、今更ここまで遡ってアンソロジーで読む意義は薄い。
取り分けこの年度の高レベル作品は個別作品集に纏まり、埋もれた傑作は収録されていないと思う。
気になる作品があるなら一冊に纏められた連作短編集で読むべき(伯方雪日「覆面」等)

No.397 5点 文章探偵- 草上仁 2009/07/30 16:29
純粋にミステリとしての採点なら4点と思う。
しかし、今後の読書生活に影響を及ぼすだろう“文章解析”の過程は作家側の思考も伺え楽しめる。
小説より文章講座と思って読めば良い作品。
ミステリ、ミステリー、ミステリィをどう使う(使い分ける)かを考えさせられた。
私的には、本格はミステリ、広範な物はミステリーで使い分けている。

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江守森江さん
ひとこと

※「読書(ミステリ)は趣味で娯楽」「相容れない主張(嗜好)は、どこまでも平行線」を標榜している。
※多くの作品に接する努力として、映像化作品で済ます等々、ファジーな方法を常に模索している(本質的...
好きな作家
高木彬光、天藤真、平石貴樹、古野まほろ (ミステリーに限定しなければ一番は梶山季之...
採点傾向
平均点: 5.00点   採点数: 1256件
採点の多い作家(TOP10)
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