皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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臣さん |
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平均点: 5.90点 | 書評数: 660件 |
No.11 | 5点 | シャーロック・ホームズの叡智- アーサー・コナン・ドイル | 2021/11/17 16:17 |
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「技師の親指」「緑柱石の宝冠」「ライゲートの大地主」「ノーウッドの建築士」「三人の学生」「スリー・クォーターの失踪」「ショスコム荘」「隠居絵具屋」の全8編。
新潮版で、「冒険」「帰還」「思い出」「事件簿」から漏れたものが「叡智」として収録されている。 したがって特別なホームズ短編集というわけではない。しかしホームズ短編はみな特別であるとも言え、いろんな背景のストーリーが楽しめた。 ただ期待しすぎたせいか、少し物足りなかったかな。話として、推理物としてもっと凝ったものがあってもいいような・・・ 個人的には、「技師の親指」と「三人の学生」が好み。この2編が読めただけでもよかったかな。 |
No.10 | 5点 | ドイル傑作集1 ミステリー編- アーサー・コナン・ドイル | 2021/08/06 09:50 |
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「消えた臨急」「甲虫採集家」「時計だらけの男」「漆器の箱」「膚黒医師」「ユダヤの胸牌」「悪夢の部屋」「五十年後」の全8作。
ホームズが登場しない短編ミステリー集。 ホームズ物でなくても、謎の提起にはホームズ物らしい、わくわく感を覚える。 『消えた臨急』は、ミステリー編のトップバッターとして申し分なし。 タイトルどおりの列車モノで、意外に凝っている。 ホームズがいなくても十分にミステリーを構成しているだろう、とドイルが威張っているようにも想像できる。 最終編の『五十年後』は、他とはずいぶんと趣向の違いが感じられる。 解説を読むと、訳者が気に入って勝手に加えたとある。 冒頭の1文に「惑星」という語句が出てくるから、てっきりSFかと思っていたが・・・。 80年ぐらい前の有名なロマンス小説・映画作品を思い起こさせる。 この映画ほど恋愛風味はないのだが。 この作品も悪くなかった。 |
No.9 | 7点 | バスカヴィル家の犬- アーサー・コナン・ドイル | 2018/09/28 13:07 |
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ホームズの出番はわずか。そのせいなのか短編のように、とんとんとんと急展開に話が進むことはありません。ホームズ短編は良すぎるから、くらべることに無理があります。
とはいえ長編としては上出来の部類で、読み終えてみれば、長編4作の中で、「緋色の研究」より上位のベスト長編となりました。 2部構成にはせず、平板になりつつある中盤に脱獄囚を絡ませたり、その後絶妙なタイミングでホームズを再登場させたり、さらに冒険要素を盛り込んだり、とストーリーに変化をつけ、長編らしいサスペンス性豊かな作品に仕上げているのが、他の長編との違いです。 謎の提起や謎解き自体に醍醐味があるのも特徴です。 ホームズの再登場の遅さの理由は想像どおり。このことを含め種々の事情を最後の背景開示&謎解き解説で説明してくれます。このパートは15ページほどありますが、この部分が、ドイルお得意の2部構成の第2部のようにも思えます。 |
No.8 | 4点 | シャーロック・ホームズの事件簿- アーサー・コナン・ドイル | 2017/04/20 09:36 |
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ホームズの特徴的なスタイルはほとんどなくなっている。
ちょっと形を変えただけで面白くなくなるのはなぜか。ドイルは不器用な作家だったのだろうか。 『ソア橋』はトリック重視作品だが、ただそれだけ。ホームズ物にしては単調すぎる。 数十ページの中で種々変転があるのがホームズ物の特徴なのに、それがないのはなんともさみしい限りだ。 『三人ガリデブ』はなんとか楽しめるが、また焼き直しか、と思わないでもない。 といったレベルの作品集で、残念な結果でした。 もう一度読み直せば感想は変わるかも?いやぁ変わらんかな~w |
No.7 | 4点 | シャーロック・ホームズ最後の挨拶- アーサー・コナン・ドイル | 2016/07/28 10:04 |
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どの作品も物語として退屈で、捻りもほとんどない。
突然、依頼が持ち込まれ、ホームズはすぐに現地に赴き、あっという間に奇想な話に急展開したり、とんでもない方向に進んだりする。 また、『緋色の研究』みたいに、主たる人物の過去の因縁話に及び、そして結びへと突き進む。 2,3の作品は、こんなホームズ物らしい定番の展開なので、安心感があっていいのだが・・・。 それでもせいぜい5,6点レベル。 全体としては『冒険』の1/3程度の面白さか。 ひとことで言えばネタ切れ。作者からすれば、ネタ切れではなく方向性を変えただけかもしれないが、今までが今までなので、読者にしてみれば期待を裏切られた感は当然ある。 まあ先入観なしに読めば多少は楽しめたのかもしれない。 |
No.6 | 7点 | シャーロック・ホームズの帰還- アーサー・コナン・ドイル | 2014/10/20 09:49 |
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ミステリー的な意味合いでいえば不足点も多いが、どれだけ印象に残るかという観点でみれば、秀作ぞろい。「冒険」に匹敵するかもしれない。
「空き家の冒険」。ワトスンとの再会シーンは堪らない。歴史に残る作品。ついに復活ののろしがあがった。 「踊る人形」。工夫があっていいのだが、こういうのは他の作家に任せておけばよいのに。 「美しき自転車乗り」。ドラマ版の記憶が頭に焼き付いているということもあるが、映像的な一面があってはずせない逸品。ただ、本格ファンには受けはイマイチかも。 「プライオリ学校」。しっかりと記憶に刻まれた作品。図面が載せてあったせいだろうか。ホームズもワトスンもよく頑張った、という印象。 「黒ピーター」。じつは思い出せない。典型作品との声もあるが、もしかして飛ばしてしまったのか(笑)。 「犯人は二人」。ちょっと意外な展開にびっくり。物語性は抜群。タイトルも良し。 「六つのナポレオン」。タイトルのみの記憶はあったが、数ページ読めば簡単にオチを思い出す。そこが残念。でも出来は良い。 「金縁の鼻眼鏡」。イチオシ作品。鼻眼鏡を見つけてすぐに自身の推理をスラスラと開示する。そこがホームズらしい。 「アベ農園」。依頼をいったん断った後、引き返すところがおもしろい。なんとなく雰囲気が好き。 「第二の汚点」。現代のミステリーにも通じる。タイトルもすこし今風。ホームズ物にはたまにたいそうな背景話(たとえばボヘミアの醜聞)がある。社会派絡み本格物とでもいうべきか。 新潮版なので以上の計10編。 やっぱりホームズ物は長編より短編だな、とつくづく感じた作品集だった。 |
No.5 | 6点 | 恐怖の谷- アーサー・コナン・ドイル | 2014/04/09 14:51 |
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第一部は、殺人事件とその種明かし。
第二部は、ある男のスパイ・ストーリー。こんな話だったとはね。「赤い収穫」風の話で、国内の時代小説を読んでいるような気分にもなれた。 それぞれ独立した話として楽しむことはができるが、2つの話がどのようにつながるのか、そこも楽しむための要素だ。 2つの独立したストーリーを作っておけば、あとでそれら2つをつなぐことはどうということはない、ということがよくわかった。「緋色の研究」「四つの署名」も同じような2部構成となっている。うまく考えたものと感心した。 最後の長編である本作についても同じ様式を採用したということは、結局、ドイルはこのスタイルからは脱しきれなかったということだろう。 嗜好からすれば悲劇性のある「緋色の研究」のほうがすこし上だが、ミステリー性を加味すれば両者は同格か。 もう1つの長編「バスカヴィル家の犬」だけは2部構成ではないらしい。これは子どもの頃にも読んでおらず、まったくの未読なので、楽しみにしている。 それにしても本作の記憶は5%ぐらいだろうか。かなりひどい。 |
No.4 | 6点 | シャーロック・ホームズの回想- アーサー・コナン・ドイル | 2013/01/17 11:31 |
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新潮文庫の「思い出」を読みました。
ミステリー的に評価が劣るのは理解できますが、おどろおどろしさもあれば、子ども心をくすぐるものもあり、物語の雰囲気は「冒険」と変わらないか、案外上なのかもしれません。ホームズ物らしい作品集といえます。 個別には、ホームズが意外な役回りを演じる「黄色い顔」(これがベスト)や、わくわくドキドキの「マスグレーブ家の儀式」、ミステリー的にまずまずな出来の「海軍条約文書事件」が好みです。二番煎じだけど「株式仲買店員」も悪くはありません。「最後の事件」はいかにもジュブナイル的だけど、味わい深くて、心に残ります。 最後まで読めば、著名で評判のいい「白銀号事件」は普通の謎解きミステリーっぽく見えてしまい、個人的にはむしろ蚊帳の外といった感じになりました。 二編に登場する、卓越した推理力の兄・マイクロフト。活字では初めてだから、「マイクロソフト」と読み違えてしまうんですよね(笑)。 |
No.3 | 5点 | 四つの署名- アーサー・コナン・ドイル | 2012/06/08 10:21 |
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本書も奇想かつ不気味な雰囲気がよくでています。
この不気味な味と、ホームズのスマートであり偏屈でもあるキャラクタとの一見すると不釣合いにもみえる組み合わせが、ホームズシリーズの魅力です。本作はさらに冒険小説的な要素もあり、少年たちのこころを揺さぶるような作風となっています。 タイトルからは謎解き要素がたっぷり詰まったミステリーとも想像できますが、実際には推理小説とはいえず、自ら進んで謎解きを楽しむことはできません。でも、ホラー系冒険ミステリーとして読めば、十分に小説世界を堪能できると思います。 最終章では、それまでの事件の顛末編とはがらりと語り口を変えて、動機・真相を開示しています。このメリハリのある構成も巧みです。そのあたりは「緋色の研究」に似ていますが、現代のミステリーにすこしだけ近づいたような感じがします。 『すべての条件のうちから、不可能なものだけ切りすててゆけば、あとに残ったのが、たとえどんなに信じがたくても、事実でなくちゃならない』 このワトスンに対するセリフは本書に出てきたのですね。そのあとの、「あれほどたびたびいってあるじゃないか」というセリフからすれば、他の作品でも繰り返されているのでしょうか。 |
No.2 | 9点 | シャーロック・ホームズの冒険- アーサー・コナン・ドイル | 2011/11/17 09:41 |
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本短編シリーズの魅力は、奇想天外で不気味な謎が提起されることと、そこからとんでもない方向へと発展してゆく、変化とスリルのある展開とにあると思う。
本格黄金時代作家の作品では時代性をほとんど感じられないが、ホームズ物はヴィクトリア朝の時代性を垣間見ることができ、古めかしさも存分に楽しめる。 キャラクタはもちろん良い。ホームズの独善的ともいえる行動や言動は嫌味ではなく、奇抜な謎の中にあっては不思議なほど映えている。 テンポのよい語り口も申し分なし。 尻すぼみな作品もあるが、そんな作品でも中途は十分に楽しめる。とにかく名編ぞろいで、みな心をときめかせてくれた。 小学生のときジュニア版を読んで以来だから、なにもかも忘れているはずだけど、その後、ジェレミー・ブレット主演のドラマも見たし、数多の似非ホームズにも触れてきたから、今回の再読では何十年もの間読んでいなかったわりには、ホームズ&ワトソンを驚くほど身近に感じることができた。 あらすじについて記憶していたのは、映像が頭に焼き付いている「まだらの紐」と「唇の捩れた男」ぐらいだった。 一般的にはミステリ初心者向きなのだろうが、奇想な物語を好む人なら、いくつになっても、初読でも再読でも楽しめると思う。だからシャーロキアンが存在するのでしょう。 ホームズとワトソンによる階段の段数問答がどの話の中に入っていたのか、このサイトを初めて訪れて以来ずっと気になっていたが、このたび本書を読み始めてすぐに解決した。実は、長編「恐怖の谷」の中だと思っていた。 |
No.1 | 6点 | 緋色の研究- アーサー・コナン・ドイル | 2009/04/18 15:20 |
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第一部は事件発生から推理・解決までパート。第二部は動機、背景、因縁のパート。
第一部は、第二部の最後に推理の経過を説明してくれてるけど、あっさりしすぎた感じがしますね。ホームズはそれだけスーパーマンってことですか。 第二部は、第一部にくらべて重々しく、暗い。でもそんな乖離した感じがまたいいですね。ここだけ読んでも面白いですよ。 こういう2部構成は、書き手にとっても読み手にとっても楽ですね。 |