皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
臣さん |
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平均点: 5.90点 | 書評数: 655件 |
No.35 | 6点 | 動脈列島- 清水一行 | 2009/05/31 09:58 |
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社会性たっぷりの倒叙サスペンス作品です。
騒音公害に義憤を覚える犯人が様々な手段を使って新幹線を止めようとする展開には、引き込まれます。アリバイトリックもあり、いちおうミステリ形式は保っています。 社会派ミステリには、後半で唐突に社会的真相(例えば、グリ森事件が背景にあるとか)が明かされ、それまでの内容の雰囲気が崩れてしまって、しらけてしまうものも多いのですが、本作はそういった駄作群とは違って、無理なくストーリーが組み立てられていて、好感が持てます。 |
No.34 | 5点 | 数奇にして模型- 森博嗣 | 2009/05/31 09:38 |
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予想していた以上に楽しめました。
最初に読んだ「詩的私的ジャック」があまりにも駄作だったので、もうやめようかとも思いましたが、今回は読んで正解でした。ストーリーもいいし、あれだけヘタクソだった文章も、今回はうまく感じられました。合格点です。 トリックについても、理系知識を駆使するより無理せずこの程度にしておくほうがはるかにいい。知識は薀蓄程度で十分です。 でも、無駄はあいかわらず多いですね。ラストもしつこい感じがします。それにレギュラーの登場人物が多すぎるし、それを知らない読者にとっては惑わされる存在でしかありません。初心者がシリーズ物の後半作品を読むのはよくなかったようですね。 |
No.33 | 4点 | 海は涸いていた- 白川道 | 2009/05/24 10:19 |
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現代任侠物という感じ。
好みの話だが、役所広治主演の映画(絆)を観た後で読んだので、印象が薄かった。 ハードボイルド調だったけど、そうでなくてもよかったのに、と思いました。 |
No.32 | 5点 | 時の森殺人事件- 吉村達也 | 2009/05/24 10:04 |
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全6巻だが、読みやすくストーリーも面白いのであっという間に読めてしまう。
吉村氏がツインピークスに触発されて書いた、壮大な異次元空間の世界。 でもそんなこと何も知らずに読んだから、あのラストには驚くやら、白けるやら。 |
No.31 | 8点 | 犬神家の一族- 横溝正史 | 2009/05/22 19:14 |
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地方旧家のどろどろした雰囲気がよく出ていて、しかもリアリティのなさゆえ、かえって恐怖感をたっぷり味わえる。でも、その恐怖は、つまるところ人間関係、親子の情愛などからくるもので、意外に身近さを感じる。そんなところに人気の秘密があるのかもしれないな。
本作は記念すべき僕のミステリデビュー作品。若い頃、横溝作品は多数読んだが、みな似た雰囲気なので、今では記憶が交錯して、どれがどれなのかわからなくなってしまっている。でも本作だけは、映画の印象が強烈だから、記憶にはっきりと残っている。 |
No.30 | 3点 | 奇跡島の不思議- 二階堂黎人 | 2009/05/22 19:10 |
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仕掛けは派手で大作であることは認めるが、納得できない箇所が多すぎる。人物も魅力がなかった。
10数年前、再燃し始めた本格を切り拓くつもりで、東野(初期)、綾辻(十角館)、本作と続けて読んでみたが、本作で大きくつまづいてしまった。 |
No.29 | 3点 | 行きずりの街- 志水辰夫 | 2009/05/22 19:03 |
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ストーリーは好みだが、設定がイマイチで、入り込めなかった。ミステリとしても水準以下。なぜ再ブームになったのかな?表紙が良かったからかな。 |
No.28 | 6点 | 黒き舞楽- 泡坂妻夫 | 2009/05/19 23:02 |
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これは凄い。これが究極の愛なのだろうか。
中篇で、プロットは一見単純だが、だからこそ謎は重なり合ってくる。そして体が震えるほどの真相がラストに明かされる。伏線の張り方も実にうまい。 歪んだ愛、それを受け入れる女性たち。こんな女性たちを理解できない、リアリティに欠けるなんて批判したら、笑われそうだし、逆に批判を受けそうだ。 |
No.27 | 6点 | 五十万年の死角- 伴野朗 | 2009/05/18 17:35 |
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北京原人の化石骨の消失と、それに絡む殺人と、重要人物失踪の謎を、上官の命令で軍事通訳の戸田が追う。舞台は大平洋戦争開始時の中国。
物語は、これらの謎を国民党結社・藍衣社、日本軍・松村機関、中国共産党が同時に追うスリリングな展開(戸田自身も命を狙われスリル満点)であり、しかも謎が絡み合い、1つの謎が解けてもまた新たな謎が生まれるという複雑な内容で、上級サスペンスミステリと言える。しかも歴史的事実にもとづいているから歴史ミステリでもある。 また、伏線もていねいに張られており、解明するつど説明してくれるから、わかりやすい。ただ、どんでん返しはなく、ある程度予想された結末なので、その点は少し不満である。 本作は、文庫化と同時に購入したが、中国読みルビの多さで1、2ページで断念。その後、積ん読状態がつづいたが引越しを重ねるうちに紛失してしまう。当初はハードボイルド、中国物ということもあって読みづらさだけを感じた作品だったが、今回、図書館で借り念願かなって読んでみると、文章自体は意外に平易であった。しかも今では興味の持てる内容であり、30年ぶりにやっと読破できた。この作家はミステリ作家としてスタートし、中国歴史物に移行した人で、陳舜臣と似ている。なんだか興味がわいてきたなぁ。本作以外は絶版のようなので、図書館通いかな。 |
No.26 | 8点 | 長いお別れ- レイモンド・チャンドラー | 2009/05/15 13:03 |
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探偵マーロウは酒場で知り合った友人、レノックスの周辺で起きた殺人事件と、謎の自殺を調査する。当然ミステリ仕立てで、物語は後半に大きく動き、真相が判明する。そのときあのあまりにも有名なセリフが飛び出す。
全編を通してマーロウの仕草とセリフは、かっこよすぎるが、それもこの小説の持ち味のひとつだ。しかし、マーロウの本当のすごさは、レノックスのことを初対面で見抜き、親友として信じてしまうことだ。 本作は、殺人事件、謎の自殺など、ミステリ要素はたっぷりあるし、ボリュームも十分にあって立派な長編推理小説なのだが、ただ謎解き要素はあまりなく(記憶がないだけかもしれないが)、やはりこの小説、Tetchyさんの言われるように雰囲気を楽しむ小説なのだと思う。 その雰囲気っていうのは、マーロウのかっこよさだけではなく、全編に漂う何か得体の知れないものなのだろう。 ストーリーの詳細は忘れてしまったが、よほどその雰囲気に波長が合ったのか、しびれるほどの読後感があったことだけは覚えている。 本作は評価が分かれると聞くが、どこが問題なのだろうか。何か欠点があるのか、それとも、あまりにも男の友情に焦点をしぼりすぎて、ミステリの醍醐味が味わえないからだろうか。 |
No.25 | 8点 | ゼロの焦点- 松本清張 | 2009/05/15 12:44 |
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makomakoさんと同様、30年前に読み、数年前再読しました。なんど読み返しても受ける印象は同じです。
戦後の悲しさが全編を通して出ていて、その雰囲気は私の好みにピッタリです。 今年は生誕100年ということなので、清張をもう少し読んでみようかなと思います。 |
No.24 | 6点 | 点と線- 松本清張 | 2009/05/15 12:35 |
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実は本作は、空白の4分間という名トリックがあり、アリバイ崩しがメインとなっているから立派な本格物です。
しかし、汚職などを絡めて動機を強調させた内容となっているので、清張の社会派長編第1作として有名になったようです。 本作は東西ミステリベスト100の上位にも食い込み、かなり評価が高いようですが、社会派好きの私は、なぜかそれほど好きではありません。あまりにも泥臭いせいでしょうか。とにかくリアリティがありすぎます。 |
No.23 | 7点 | 柊の館- 陳舜臣 | 2009/05/11 19:53 |
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神戸の船会社宿舎の異人館「とんがり屋敷」を舞台にしたミステリで、そこに勤めるメイドの思い出話を連作短編に構成した形式をとっています。メインの謎は最初に起こった殺人事件で、短編ごとにも個別の謎があり、短編ごとに完結するとともに、最終の短編で最初に起きた殺人事件が解決します。
30年ほど前に読んだときは、連作ミステリという形式が初めての体験で、その形式に驚き、さらに古き良き時代のゆったりとした、とげとげしさの全くない空間で、とうてい起こりえないような殺人事件が発生することのアンマッチ感に驚くとともに、殺人事件があったことさえ忘れてしまうほどの、そのあまりにも柔和な雰囲気に浸りながら、最終話では最初の事件が解決したことに唖然とした記憶があります。ミステリ経験が浅かったころで、自分で全く推理することなく、読了していました。 特別な仕掛けはなく、異色ミステリという程度であって、氏のミステリの中では決してベストとはいえませんが、氏の柔らかな筆使いが典型的に表れた作品だと思います。 そして、その後、中国歴史物を含め、陳氏の作品には長年にわたり楽しませてもらいました。 |
No.22 | 7点 | アルキメデスは手を汚さない- 小峰元 | 2009/05/09 08:32 |
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このサイトではかなりきびしい評価ですね。びっくりしました。
高い点数をつけるのに勇気がいりますが、気を取り直して評価してみます。 「アルキメデス」という不可解な言葉を残して死んだ少女。この冒頭の謎は読者を惹きつけてくれるのですが、全体的にはフーダニット、ハウダニットのいずれの要素も不十分で、小粒な感じがします。それにトリックは皆無といってよく、とうてい本格ミステリを構成していません。 また、4つの事件を結び付ける真相、動機は、ある高校生グループの思想にもとづくものですが、これについてもすぐに納得できるものではありません。 しかし、動機の内容はともかくとして、その真相で4つの事件を結び付けていく後半のストーリー展開には唸らされます。このようにスムーズに結び付けてくれれば、希薄であったはずの動機にも、高校生ならこの程度かと納得してしまいます。 それに、プロット、ストーリーがいいので、テンポよくさっと読ませてくれます。 ただ、4つ目の事件については、事件自体は必要なのですが密室にする必要はなかったのでは、と思います。乱歩賞を狙うには密室が必須だったのでしょうか。とにかくこれはアクセント程度です。 このように問題もあるのですが、十分に楽しめたし、記憶に残る良作品でした。なんといっても私の場合、横溝、清張についで、ミステリの世界に引き込んでくれた作家、作品ですから、思い入れもありますね。 なお、本作は当時、ある深夜ラジオで、「ピカレスク青春推理」と紹介されていました。世間に斜に構えて生きる高校生を主人公としたこの小説には、こんな呼び方がぴったりです。 |
No.21 | 5点 | 斜め屋敷の犯罪- 島田荘司 | 2009/05/04 09:17 |
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舞台が斜め屋敷だけあって、トリックの奇抜さはある程度予想できましたが、実際のあのトリックには度肝を抜かれました。少し漫画的ですが、まずまずの満足度です。またテンポもよく文章も読みやすいし、その点も満足。
問題なのは動機。動機自体が重すぎてトリックの奇抜さとマッチしていなかったし、重いわりには割かれたページ数が少なすぎるように感じました。 そのへんのバランスがイマイチな作品でした。 |
No.20 | 5点 | 黒猫- エドガー・アラン・ポー | 2009/04/24 09:37 |
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狂気の行動。塗り込めの発想は、後の推理作家に影響を与えたのではないかと思う。 |
No.19 | 6点 | 緋色の研究- アーサー・コナン・ドイル | 2009/04/18 15:20 |
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第一部は事件発生から推理・解決までパート。第二部は動機、背景、因縁のパート。
第一部は、第二部の最後に推理の経過を説明してくれてるけど、あっさりしすぎた感じがしますね。ホームズはそれだけスーパーマンってことですか。 第二部は、第一部にくらべて重々しく、暗い。でもそんな乖離した感じがまたいいですね。ここだけ読んでも面白いですよ。 こういう2部構成は、書き手にとっても読み手にとっても楽ですね。 |
No.18 | 6点 | 標的の向こう側- 藤田宜永 | 2009/04/17 19:06 |
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パリ在住の私立探偵、鈴切信吾シリーズ、第2弾。
ハードボイルドにしては、欲望と愛憎が絡んだどろどろとした設定だ。前半はパリが舞台で、信吾のセリフや仕草は小気味がよい。後半はスペインが舞台となって、地元の暴力団も登場して血なまぐさくなる。ストーリーとしては、じょじょに登場人物が増え、もつれてきて、サスペンスも加味されながらミステリらしくなるのだが。。。 著者・藤田宜永氏は、直木賞作家で今は完全に恋愛小説家に移行しているが、かつては本作でも知られるハードボイルドミステリ作家だ。北方、大沢に比べると、私好みの雰囲気を出してくれているし、ちょっとした思い入れもあって、何作かは読んでみた。 |
No.17 | 7点 | 山口線"貴婦人号(エレガンス・トレイン)"- 草野唯雄 | 2009/04/16 20:27 |
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30年ぐらい前の鉄道ミステリー。時刻表トリックもあったし、今なら最も嫌われるタイプのミステリかもしれません。
でも、トリックは意外にすごいです。はっきりいって本格中の本格です。まだミステリ経験の浅かった当時は、読後、興奮状態が続きました。サスペンスフルなこともあって楽しめた作品です。 その後、なんども2時間ドラマになっています。ミステリーロマンという陳腐で、チープで、俗っぽい表現が似合いそうですが、これは仕方ありません。当時はそれがよかったのですから。 草野唯雄という作家は、好きな作家の一人ですが、活動した時期が悪いのか、知名度はあまり高くないですね。今は作品のほとんどが入手しにくくなっています。残念です。 なお、評価は、記憶が薄れている分を減点しています。 (2010年6月追記) 筋の記憶がほとんどないので評点を抑えていたが、読後の感動があったことだけは今も忘れていないので、1点加点した。 |
No.16 | 9点 | 黒い画集- 松本清張 | 2009/04/15 09:50 |
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清張の中短編を所収。もちろん全てがミステリだが、サスペンスの色合いが濃い。いや、そんなカタカナ表現は似合わない。心理恐怖小説のほうがピッタリだ。
おそらく阿刀田高は影響を受けたのだろうが、清張の作品がとにかくリアリティの点で数段上、というか私の好みである。 『遭難』は、山岳ミステリで、登山者の一人が遭難して死亡する話。犯行までの展開、その後の犯人を追い詰めるまでの展開がともに良い。緊張感の連続である。そして結末がまた凄い。中編だが、内容は長編なみにずっしりと重い。完成度はきわめて高い。 少ない登場人物の役割分担もよくできていて、プロット、ストーリーについても申し分のない作品であった。 その他『天城越え』『凶器』も負けず劣らず、よかった。なんどでも読み返したい作品群である。 なお、遭難は映画化もされています。なんと若かりし日の児玉清が準主演で出ていますよ。 (空さんの書評を見てひとこと)2012年3月 終わり方について、ちょっと思い出したのですが(実ははっきりとは思い出せないのですが)、原作と映画では終わり方が反対だったように記憶しています(記憶違いだったらごめんなさい)。 でも、どちらのラストでも、怖いんですよね。 記憶が間違っていたら、ほんとうにごめんなさい。 |