皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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nukkamさん |
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| 平均点: 5.44点 | 書評数: 2925件 |
| No.1945 | 5点 | イモジェーヌに不可能なし- シャルル・エクスブライヤ | 2017/11/29 09:31 |
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| (ネタバレなしです) 1963年発表のイモジェーヌ・マッカーサリーシリーズ第4作の本格派推理小説です。謎解きとしてはシリーズ主人公が殺人の相談を耳にするところはアガサ・クリスティーの「死との約束」(1938年)、事件の真相はやはりクリスティーの某作品を連想します。とはいえこの作者らしくパズル要素よりもユーモア、いえどたばた要素の方が強いです。但し例えばクレイグ・ライスなどは探偵活動とどたばたを上手く絡ませているのですが、本書では探偵活動と関係のないどたばた場面もかなり多いので謎解き重視派の読者の好き嫌いが分かれるかもしれません。キャランダーの町が親イモジェーヌ派と反イモジェーヌ派に分かれて喧騒を繰り広げるのがめっぽう楽しいです(もちろんイモジェーヌ自身も騒ぎを拡大させます)。ちょっと不思議なのがハヤカワポケットブック版の日本語タイトルで、仏語原題の「Imogene, vous etes impossible」(仏語独特のアクセント記号が付きます)とは逆の意味ではないでしょうか? | |||
| No.1944 | 5点 | 現代忍者考- 日影丈吉 | 2017/11/26 20:02 |
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| (ネタバレなしです) 1963年に発表された当時かなり不評だったらしい風変わりなタイトルの本格派推理小説です。忍術に興味があって日本語は流暢だが時々変な言葉づかいになるアメリカ人の探偵(都筑道夫のシリーズ探偵キリオン・スレイに影響を与えたかも?)を登場させてユーモア本格派を意識したようなところがあります。この探偵の他に警察や新聞記者たちがそれぞれ謎解きに挑戦し、他にもアジアのV国人やアマチュア奇術師や女流推理小説家など個性的な登場人物を揃えてます。謎の方もビルの8階から墜落したはずの人間が地面に激突することなく消えたり密室殺人事件が起きたり幽霊が目撃されたりとこの作者の作品では最も派手なプロットではないでしょうか。しかしながら犯人当てとしては「それはあんまりだ」と言いたいし、トリックについても「それはあんまりだ」と言いたいです。kanamoriさんのご講評で指摘されているように江戸川乱歩を連想させるグロテスクなスリラー風結末でユーモアも破綻しています。結末が全てではないのでしょうけど、本書に関してはあまりにも着地の減点要素が大きいように思います。 | |||
| No.1943 | 5点 | 猫とねずみ- クリスチアナ・ブランド | 2017/11/26 05:59 |
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| (ネタバレなしです) 1950年発表の本書はハヤカワポケットブック版の裏表紙粗筋紹介では本格派推理小説と紹介されていますがかなりスリラー色の強い作品です。特に前半でヒロイン役の女性記者カティンカが自分の言うことを誰からも否定されて孤独感を強めていく場面はゴシック・スリラーに通じるところがあるように思います。第6章で謎の一部が明らかにされて風通しはよくなりますがまだまだ物語りは二転三転、登場人物はそれほど多くないのに誰もが怪しく見えてくるところはこの作者らしい巧さが光ります。劇的な結末も印象的です。色々な伏線を張っているところは本格派の名手である作者らしいのですが、サスペンス重視のためか謎解き説明が整理不十分に感じられてしまうのが惜しいところです。 | |||
| No.1942 | 6点 | 夜明け- 笹沢左保 | 2017/11/25 23:50 |
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| (ネタバレなしです) 1990年発表のタクシードライバー夜明日出夫シリーズ第2作の本格派推理小説です。講談社文庫版で約250ページというコンパクトな作品で、登場人物も多くなくシリーズ前作の「アリバイの唄」(1990年)と同様、犯人当てではなくアリバイ崩しの謎解きです。そのアリバイはシンプルにして鉄壁、何しろ犯人と思われる容疑者が犯行推定時刻には夜明の運転するタクシーに乗っていたというものなのです。「アリバイの唄」のような大掛かりなトリックではありませんが、逆転の発想が印象的なトリックが使われています。なお本筋とは関係ありませんが元敏腕警部補だった夜明がなぜ警察を辞職したのかの理由が本書で説明されています。 | |||
| No.1941 | 6点 | 謎解きはスープが冷める前に- コニー・アーチャー | 2017/11/25 23:12 |
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| (ネタバレなしです) 様々な職業を経験した米国のコニー・アーチャーが2012年に発表したデビュー作であるラッキー・ジェイミソンシリーズのコージー派の本格派推理小説です。故郷を離れていたラッキーが冒頭で両親を事故死で失い、唯一の家族となった祖父のジャックは認知症の疑いがあり、両親が残したスープ・レストラン(シチューやサンドイッチも出ます)は赤字経営と、のっけから不幸のオンパレードでコージー派ならではの明るく楽しい雰囲気は期待できません(過度に暗くもありませんけど)。そして殺人事件容疑者でレストランスタッフが逮捕となりレストランは閑古鳥状態。やむを得ずラッキーはにわか探偵となって事件関係者を問い詰めていきますが当然のごとく空回りと混乱の連続です。お世辞にも有能には見えないネイト警察署長から「突拍子もない想像」とまで言われてしまう始末。でも運任せでなく一応は推理で犯人を当てましたね。 | |||
| No.1940 | 5点 | 宇宙神の不思議- 二階堂黎人 | 2017/11/19 21:43 |
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| (ネタバレなしです) 幽霊とか伝説の呪いとかを謎解きにからめたオカルト本格派推理小説ならジョン・ディクスン・カーの作品群を筆頭にそれなりの数が出回っていますが、宇宙人の仕業ではという謎解きにSFでない合理的な回答を用意する本格派推理小説は(私の極めて限られた読書経験範囲内ですが)珍しいと思います。2002年発表の水乃サトルシリーズ第4作(学生サトルとしては第2作)の本書でそれに挑戦した作者の意欲は高く評価したいのですが、その出来栄えとなると個人的には微妙な感想になってしまいます。角川文庫版で700ページを越す分量がまずきつかったです。同じ作者でも例えば二階堂蘭子シリーズの「悪霊の館」(1996年)とか「人狼城の恐怖」(1998年)などは登場人物数もページ数も本書以上の大作ですが冗長な感じはしなかったのですけど。宇宙神を信仰する宗教団体を登場させたのが問題だったかもしれません。プロット上の重要な役割を与えてはいるのですがせっかくの宇宙の謎がぼやけてしまったような気がします。また宇宙人による(と思われる)誘拐トリックは「そこまで万能なトリックなの?」と突っ込みたくなるような好都合な使い方で、かえって腰砕けの印象が残ってしまいました。 | |||
| No.1939 | 5点 | シャーロック・ホームズの事件録 芸術家の血- ボニー・マクバード | 2017/11/16 08:53 |
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| (ネタバレなしです) アメリカのボニー・マクバートはハリウッド映画界で脚本家やプロデューサーとして活躍、女優でもあり水彩画の画家でもある多才ぶりです。小説としてのデビュー作がシャーロック・ホームズのパスティーシュ三部作の第1作として2015年に発表された本書です。作中時代はワトソンが結婚したばかりの頃で、ホームズが取り組む事件は国際規模の芸術品盗難事件(それに付随して4人もの人間が殺されてます)と少年の行方不明事件、どちらも背後には有力な貴族の存在が見え隠れしています。ハーパーBOOKS文庫版の巻末で解説されているように(過激にグロテスクな描写ではありませんが)犯罪の暗黒面の描写や派手なアクション場面はコナン・ドイルの原作の雰囲気とは異なるマクバートの個性です。結末で思い切ったどんでん返しがありますが、(本格派推理小説でないとはいえ)伏線が少ないので唐突感しかありませんでした。登場人物では実在した(世界最初の)探偵フランソワ・ヴィドックの子孫を自称するジャン・ヴィドックが印象的です。ホームズからは用心されていますがどこか憎めないキャラクターで、25章で彼の語る物語はユーモアがにじみ出ています。ホームズはもう少しかっこよく描いてほしかったですね。 | |||
| No.1938 | 6点 | 心霊は乱れ飛ぶ- 九鬼紫郎 | 2017/11/15 08:59 |
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| (ネタバレなしです) 1956年発表の本格派推理小説で、東方新書版の巻末の作者コメントでは「初の長編本格派作品」のように紹介されています。この作者には九鬼澹(くきたん)名義の「動く屍体」(1950年)という作品もあるのですが短めなので長編作品という意識がなかったのかもしれません。このコメントで作者は本格派への志向を前面に出し、「チャンドラーやガードナーのハードボイルド探偵小説から私の学ぶものはない」とまで宣言してますが後年にはハードボイルド小説を発表するようになるのですけどね(笑)。前首相が拘置所にいる心霊術師の予言通りに死んでしまうという怪事件で本書は幕開けします。正体不明の殺人鬼「影」の仕業ではという疑惑も生じて謎は混迷の度合いを増していきます。警察の活躍はようやく終盤になってからで、それまでは怪しげな容疑者が他の容疑者を怪しいと主張するなど誰の言うことを信じればいいのかわからない状況が続きます。トリックには強引過ぎではと思えるのもありますがプロットはそれなりに楽しめました。文章も意外と古臭くなくて読みやすいです。 | |||
| No.1937 | 5点 | <サーカス・クイーン号>事件- クリフォード・ナイト | 2017/11/12 20:06 |
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| (ネタバレなしです) 1940年発表のハントゥーン・ロジャーズシリーズ第8作の本格派推理小説です。東洋の国々を<サーカス・クイーン号>で巡業するサーカス団の団長が死んで水葬されるところから物語が始まります。その死因は飼っているゴリラに殴り殺された(と思われている)というのが衝撃的で、私は思わずE・S・ガードナーの「嘲笑うゴリラ」(1952年)を連想しました。その後も何者かによる侵入、新たな殺人未遂や殺人、証拠品の盗難、脅迫と事件は相次ぎます。舞台も船上だったり陸上だったりと変化します。惜しいのはこの作者の文章力(平明だがメリハリがない)ではサスペンスもいまひとつ、舞台や異国情緒の描写もいまひとつです。探偵役のロジャーズが何と道化師になる場面もありますがこれも盛り上がらず、せっかくいい材料を揃えているのに生煮えに終わってしまった料理みたいです。肝心の謎解きもロジャーズがそれなりのページ数を費やして説明しているにも関わらず、あっけない解決に感じられます。 | |||
| No.1936 | 6点 | 公園には誰もいない- 結城昌治 | 2017/11/11 22:30 |
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| (ネタバレなしです) 松本清張監修による10冊から成る「新本格推理小説全集」の1冊として1967年に発表された真木三部作の第2作です。本格派推理小説としての謎解きもしっかりしていますが、空さんのご講評の通りハードボイルドに分類すべき作品でしょう。無駄のない簡潔でドライな文章は紛れもなくハードボイルドですが生々しい暴力、低俗に過ぎる言動、麻薬や婦女暴行のような卑しい犯罪、マフィアや暴力団のような犯罪組織といった要素はほとんどありませんのでそういうのが合わない読者にも勧められます。tider-tigerさんやkanamoriさんのご講評で評価されているように「公園には誰もいない」は作中の悲劇のヒロインであるシャンソン歌手の持ち歌のタイトルでもあるのですが、事件の虚しさと哀しさを読者に訴えるのに実に効果的に使われています。 | |||
| No.1935 | 5点 | U路線の定期乗客- クロード・アヴリーヌ | 2017/11/11 16:08 |
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| (ネタバレなしです) 書かれたのは1940年から1942年にかけてながら第二次世界大戦のため出版が1947年になったフレデリック・ブロシリーズ第3作です。シリーズ第1作ながらブロ最後の事件であった「ブロの二重の死」(1932年)に対して本書は作中時代的には1番最初のようです。シリーズ異色作でもあった「ブロの二重の死」に比べれば本書はある意味対極的に普通の本格派推理小説といえるのですが、ビギナー読者向けとは思えません。「ブロの二重の死」の創元推理文庫版(300ページに満たない)と比べて本書(やはり創元推理文庫版)のページ数は約500ページの厚さがあり、しかも「ブロの二重の死」のよりも活字が小さいため実質的には倍以上の分量です。登場人物が単に多いだけでなく登場人物リストに載っていない人物も多数入り乱れます。第一部第3章のタイトルについて第5章でやっと読者に説明されたり、第二部で番号外の章を挿入したりしているのは作者のお遊びかもしれませんが無駄に冗長にしているだけという気がします。文章もまわりくどい表現が多くて読みにくいです。第二部10章から14章にかけてブロ(ともう1人の重要人物)によって謎解き説明されますがそこで解明されるのは謎の半分だけ。残りは後の章に持ち越されますが、それは(本格派の)推理による謎解きでないという展開も読者の好き嫌いが分かれそうです。 | |||
| No.1934 | 4点 | 砧最後の事件- 山沢晴雄 | 2017/11/04 23:35 |
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| (ネタバレなしです) 山沢晴雄(1924-2013)が79歳にして書き上げた2004年発表の砧順之助シリーズ第4長編でシリーズ最終作となった本格派推理小説です。高齢ゆえ筆が淡白になるというのはこの作者は当てはまりません。緻密で難解な謎解きプロットが持ち味ですが本書は構成までもが入り組んでます。作中作である「見えない通路」で始まり、これの問題編が終わったところでやはり作中作として諏訪警部が手掛ける「唄う白骨」が続きます。これが相当もつれたところで今度は隠岐警部が手掛ける現実の事件の謎解きが始まります。どの謎解きも複雑難解な上に、モジュール型警察小説のように入れ替わり立ち替わりとなるプロットには頭がくらくらします。さらに終盤にとどめとばかりに新たな作中作として「密室1952」が挿入されます。おまけに過去のシリーズ作品を読んでないとわからない仕掛けまであるのです(私は読んでましたがよくわかりませんでした)。砧はシリーズ後期になるほど存在感が薄まってしまいますが本書に至ってはもうシリーズ番外編といってもいいのでは。 | |||
| No.1933 | 5点 | 絶版殺人事件- ピエール・ヴェリー | 2017/11/04 22:29 |
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| (ネタバレなしです) 森英俊がフランス最良のミステリー作家と評価したピエール・ヴェリー(1900-1960)は大人になっても夢やロマンを追い続けた作家で、30冊ほど書いたミステリーに対しても「詩的でユーモアに富んだものにすること」を目指していたそうです。1929年発表のデビュー作は非ミステリー作品ですがミステリーデビュー作は1930年発表の本格派推理小説である本書です。船上での毒殺事件は一見単純で、第1章の第9部で警察が挙げた仮説ぐらいしか可能性がなさそうに思えますがなかなか大胆な真相を用意しています。謎解き伏線もそれなりに用意してあります。後半になるともつれにもつれる展開となりますが、前半の事件と後半の事件の関連性が思ったより弱いのが惜しいです。これなら2つの作品に分けてもよかったのでは。 | |||
| No.1932 | 5点 | 無人島の首なし死体- 藤原宰太郎 | 2017/11/04 21:56 |
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| (ネタバレなしです) 1988年発表の久我京介シリーズ第2作の本格派推理小説です。この作者ですと古今のミステリーのネタバレが気になるところですが果たして作中でネタバレの大盤振る舞い(笑)。首なし死体はエラリー・クイーンの「エジプト十字架の謎」(1932年)にクレイトン・ロースンの「首のない女」(1940年)、アリバイ・トリックはアガサ・クリスティーの「シタフォードの謎」(1931年)にロイ・ウインザーの「死体が歩いた」(1974年)、密室トリックは斎藤栄の「国会議事堂殺人事件」(1978年)がネタバレされていますのでまだ未読の方はお覚悟を。トリックが小粒なのはまあ仕方がないところでしょうが、手掛かりに基づく推理というよりは思いつきが当たったレベルの謎解きにしか感じられないのが少々不満です。 | |||
| No.1931 | 5点 | 殺意のバックラッシュ- ポーラ・ゴズリング | 2017/11/04 01:13 |
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| (ネタバレなしです) 1989年発表のストライカーシリーズ第2作の警察小説です。連続警官殺し(序盤で早々と4人殺されます)の犯人探しプロットです。冒頭で犯人が自分の賢さを自画自賛しているような場面がありますが、殺人手段のほとんどが遠距離からの狙撃ということでは知能犯らしさが感じられません。姿の見えない犯人相手にストライカーたちの捜査は後手に回ることが多く、特に肝心のストライカーのミスが目立つありさまで他の捜査官の方がお手柄ではという気がします。ハヤカワ文庫版の巻末解説ではこのシリーズを「クラシックパズラーに近い」と評価していますが本書に関しては、登場人物の1人が「確信は正しかった。だが、間違っていた可能性もある」と述懐しているように丁寧な推理で犯人を絞り込む本格派推理小説の味わいは少なく、作者都合でいくらでも(他に)犯人を仕立てられるような気がします。サスペンスがなかなかの切れ味でどんでん返しも上手く嵌っています。 | |||
| No.1930 | 6点 | コール- 結城恭介 | 2017/10/29 17:13 |
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| (ネタバレなしです) 1995年発表の雷門京一郎シリーズ第2作の本格派推理小説です。シリーズ前作の「殺人投影図」(1994年)と比べるとユーモアはほとんど見られず、理系要素が格段に強くなります。第2章で登場人物の1人が(当時の)ハイテクの産物として「留守番電話、ファクス、ポケットベル、携帯電話、PHS、パソコン通信、インターネット」を語っていますが、本書に登場するフォンフリーカと名乗る大胆な知能犯がこれらを駆使したトリックの数々で京一郎や警察をきりきり舞いさせます。京一郎以上に「頭がクラシック」な私には完全には理解できませんがトリック説明はとても丁寧で、その中では携帯電話で話している被害者を飛び降り自殺させるトリックがデジタルトリックとアナログトリックを組み合わせたもので印象的です。トリックだけでなく犯人当ての謎解きにもきちんと配慮されています。本書と同年発表で、ネット社会が産み出した犯罪を描いた本格派推理小説の栗本薫の「仮面舞踏会」と読み比べるのも一興かもしれません。 | |||
| No.1929 | 6点 | とりすました被告- E・S・ガードナー | 2017/10/28 00:12 |
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| (ネタバレなしです) 1956年発表のペリー・メイスンシリーズ第50作の本格派推理小説です。麻酔薬を使った治療を受けていた女性が何と殺人を犯したことを告白するという冒頭がなかなか刺激的です。告白は真実なのか、真実だとしたらこの告白は法廷で証拠になるのかというだけでも興味深いですがこの作者はまだまだひねりを加えます。ビン詰めにして湖に捨てられた毒薬、有能な秘書デラの意外なおせっかい、被害者と被告の意外な関係などが複雑に絡み合いますが、これでもメイスンシリーズの中では地味なプロットです。それでも嘘(であることは読者には明白)の証言でメイスンが追い詰められる法廷場面では緊張感が頂点に達します。ここぞとばかりにかさにかかる宿敵ハミルトン・バーガー検事に対してメイスンが被告人の権利を放棄するかのような勝負手を打ち、一気にどんでん返しの謎解きが繰り広げられます。 | |||
| No.1928 | 5点 | 偽りの墳墓- 鮎川哲也 | 2017/10/25 12:23 |
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| (ネタバレなしです) 1962年発表の短編版(私は未読です)を長編化して1963年に出版された鬼貫警部シリーズ第7作の本格派推理小説です。時刻表や地図が登場するのはこのシリーズらしいのですが単なるアリバイ崩しプロットではありません。重要そうに思えない証拠品で容疑者が顔色を変えたのはなぜかとか、嘘らしい証言だが何のためにそんな嘘をつくのかわからないとか、結構ひねりのある謎が用意されています。しかしりゅうさんのご講評でも指摘されているように、第一の事件の謎解きと第二の事件の謎解きのつながりが弱く、どこか間延びしたプロットに感じられるのは長編化の問題点かもしれません。また鬼貫警部の登場場面が最後の2章だけの上に、斎藤警部さんのご講評で指摘されているようにアリバイトリック説明のかなりの部分が犯人自白によるものという締めくくりも本格派としてはどこか消化不良に感じられました。 | |||
| No.1927 | 4点 | ヴォスパー号の遭難- F・W・クロフツ | 2017/10/22 13:55 |
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| (ネタバレなしです) ジュリアン・シモンズが評論集「ブラッディ・マーダー」(1992年)で「フレンチ警部物のうちでは秀作に属する」と評価した、1936年発表のフレンチシリーズ第14作の本格派推理小説です。序盤は好調です。大西洋を航行中の貨物船ジェイン・ヴォスパー号の船倉で爆発が起き、船員たちの奮闘むなしく沈没してしまう第1章はなかなか劇的です。その後海事審問が開かれ、事故ではなく何者かによる犯罪の可能性が濃厚になり保険会社が探偵を使って調査を開始しますが、その探偵が行方不明になってフレンチの登場になるまでの展開にもよどみがありません。しかしフレンチが失踪者の足どりを追跡する、文字通り「足の探偵」らしさを発揮すると物語の流れは一気にスピードダウンします。捜査が順風満帆でないところがリアリティ重視派の読者にはたまらないのでしょうけど個人的には結構辛かったです。第14章でフレンチが「つぎの三日間はこの事件にかかわって以来もっともつまらない、もっともみのりの薄い日々だった」と述懐してますが、いやいやそこに至るまでも十分じりじりさせられましたよ(笑)。フレンチが最初から「悪党ども」と呼んでいるように複数犯による事件の可能性が高いことも本格派の謎解きとしては好き嫌いが分かれそうです。 | |||
| No.1926 | 6点 | 葬送行進曲殺人事件- 由良三郎 | 2017/10/21 21:52 |
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| (ネタバレなしです) 1985年発表の本書はタイトルから結城鉄平シリーズを期待する読者もいるかもしれませんが非シリーズの本格派推理小説で、音楽に関する描写もありません。とはいっても名探偵役の飄々としたキャラクターは結城鉄平に通じるところがありますが。最初の4章で企業秘密が漏洩し、金庫の中から指紋が発見されたことから守衛の逮捕、そして判決が出たところで一段落します。5章からは舞台ががらりと変わり、葬儀場で棺の中から頭が2つと胴体が1つ、押入れから胴体が1つ発見されるという怪事件の謎解きが始まります。両方の事件に関係する人物がいたことから2つの事件の謎解きは融合し、容疑も転々とします。トリックもありますが一番印象に残るのは犯人の計画の緻密さでした。あまりに細部までこだわり過ぎて間抜けな警察を上手くミスリードできなかったところまで丁寧に謎解き説明されます。 | |||