海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2815件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.6 6点 苦いオードブル- レックス・スタウト 2016/06/11 01:04
(ネタバレなしです) 1940年発表の本書はテカムス・フォックスシリーズ第2作の本格派推理小説です。「手袋の中の手」(1937年)の女性探偵ドル・ボナーも顔を出しますがわずかな登場シーンだけの脇役扱い、しかも活躍しているとは言えないのがちょっと残念。私立探偵に対して必ずしも協力的ではない事件関係者からどうやってフォックスが情報を探り出すかというのを丹念に描いているところはネロ・ウルフシリーズと共通していますね。本書のプロットなら危機に巻き込まれたエイミーにもっと焦点を当ててサスペンスを盛り上げるというのも一つのやり方ではあったでしょうけど、探偵の丁寧な捜査と推理を堪能できる本格派推理小説として手堅く書かれた作品に仕上がりました。

No.5 6点 ネロ・ウルフの事件簿 ようこそ、死のパーティへ- レックス・スタウト 2015/11/16 00:30
(ネタバレなしです) ネロ・ウルフシリーズの「黒い蘭」と「ようこそ、死のパーティーへ」の2つの中編を一つに収めた第一中編集「黒い蘭」(1942年)を、論創社版はそれぞれ他の中編と組み合わせた独自編集で二巻に分けました。「ようこそ、死のパーティーへ」とセットにされたのは第五中編集(1951年)の「翼の生えた銃」と第六中編集(1952年)の「『ダズル・ダン』殺人事件」です。三作品とも本格派推理小説としてしっかり作られていますが、特に切れ味鋭い推理が印象的な「翼の生えた銃」と七つの手掛かりから犯人を追い詰める「『ダズル・ダン』殺人事件」はなかなかの出来栄えです。それにしても鉄面皮のイメージのあるウルフが結構怒ったりどなったりしているのには驚きました。なお「『ダズル・ダン』殺人事件」は1951年に米国で最初に出版された時の原題が「See No Evil」、第六中編集では「The Squirt and the Monkey」に改題、更に後に「The Dazzle Dan Murder Case」へと改題され、日本でも以前に「ヒーローは死んだ」という題で翻訳紹介されていたというややこしい経歴を持つ作品です。

No.4 6点 黄金の蜘蛛- レックス・スタウト 2015/08/14 10:36
(ネタバレなしです)  1953年発表のネロ・ウルフシリーズ第16作です。日本で初めて翻訳紹介されたスタウト作品らしく、ハヤカワポケットブック版は半世紀以上前の古い翻訳で誤字脱字もいくつか見られますが、その割には意外と読みやすい作品でした。サスペンス豊かな序盤、手掛かりを求めての駆け引きにも似た容疑者調査が面白い中盤と読み応え十分です。後半のアクションシーンはハードボイルドが苦手な私はそれほど楽しめませんでしたが相手がならず者系なのでまあ許容範囲です(笑)。最後はご都合主義的な証人が登場して解決しますが、その前に犯人に結びつく手掛かりと推理をウルフがちゃんと説明していますので本格派推理小説として合格点を付けられます。

No.3 6点 ラバー・バンド- レックス・スタウト 2015/06/28 20:42
(ネタバレなしです) 1936年に発表されたネロ・ウルフシリーズ3作目の本書は謎解きとしてはやや容易過ぎの感もあるけれど伏線がしっかり張ってあり、シリーズ入門編として最適の本格派推理小説だと思います。全く関係なさそうな2つの依頼から物語が始まりますがプロットがいたずらに複雑になることもなく読みやすいですし、最後のまとめかたも上手いです。

No.2 6点 黒い蘭―ネロ・ウルフの事件簿- レックス・スタウト 2014/10/20 09:06
(ネタバレなしです) スタウトのネロ・ウルフシリーズは長編33作が書かれていますが中短編も結構あり、生前に13もの中短編集が出版されています。収められた作品は最少で2作、最多でも4作ですからほとんどが中編かと思われます。1942年発表の第一中編集「黒い蘭」は表題作と「ようこそ、死のパーティーへ」の2作品を収めたのが米国オリジナル版ですが、論創社版は後者を除外して代わりに第4中編集(1950年)から1作、第12中編集(1961年)から1作を選んで独自編集したものです。国内初の単行本化は読者として大いに感謝しますし独自編集を否定するつもりもありませんが、本書のアーチー・グッドウインによる作品紹介を読むと「ようこそ、死のパーティーへ」も黒い蘭絡みの事件のようで、米国オリジナル版をそのまま翻訳してもよかったのではという気もします。とはいえ論創社版に収められた3作品はどれも面白く、特にウルフやアーチーに臆することのない(容疑者でもあるのですが)依頼人が痛快な「ニセモノは殺人のはじまり」は私の1番のお気に入りです。

No.1 4点 ネロ・ウルフ最後の事件- レックス・スタウト 2014/08/14 15:42
(ネタバレなしです) スタウト(1886-1975)の最後の作品となった1975年発表のネロ・ウルウシリーズ長編第33作です(英語原題は「A Family Affair」です)。作者が最後の作品のつもりで書いたのかはわかりませんが内容的にはシリーズ締め括りにふさわしい趣向が用意されています。但しこの趣向はある程度シリーズ作品を読んでいないとわかりにくいので、できればシリーズ作品を沢山読んでいることを勧めます。謎解きとしては読者に対してアンフェアなのが残念です(例えばソール・パンザーがある手掛かりを説明していますが、あれは普通の読者には手掛かりとして認知できないと思います)。とはいえシリーズファン読者なら読み落とすわけにはいかないでしょうね。

キーワードから探す
nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2815件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(80)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(44)
エラリイ・クイーン(42)
F・W・クロフツ(31)
A・A・フェア(28)
レックス・スタウト(26)
カーター・ディクスン(24)
ローラ・チャイルズ(24)
横溝正史(23)