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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2849件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.509 6点 地底獣国の殺人- 芦辺拓 2014/09/05 10:42
(ネタバレなしです) 1997年発表の森江春策シリーズ第4作です。プロローグの中で作者はわざわざ「本作品はあくまで本格推理小説であります」と注釈しておりそれはその通りなのですが、秘境冒険小説と国際陰謀小説の雰囲気が濃厚なプロットに圧倒され、謎解きにはほとんど集中できませんでした。それだけ冒険小説としてもよくできているとも言えるのですが、秘境や古典的SFのくどいほどの描写は好き嫌いが分かれるかもしれません。

No.508 5点 逃げ出した死体- ノエル・ヴァンドリ 2014/09/03 18:27
(ネタバレなしです) フランスでは1930年代に本格派推理小説の黄金時代を迎えていたそうですが、アルー予審判事シリーズで知られるノエル・ヴァンドリ(1896-1954)はその代表的作家の1人です。第二次世界大戦後のフランスはサスペンス小説やノワール小説の時代に突入しますがヴァンドリは(非ミステリー作品も書いたが)本格派を書き続けたようです。本書は1932年発表のアルー判事シリーズ第3作です。行方不明の被害者と2人の自称犯人(1人はこれまた行方不明)という謎がユニークで面白いですが、動機をひた隠す自称犯人への警察の追及が甘すぎるなど不自然さが気になるプロットです。なおROM叢書版では巻末解説で1930年代に集中して発表されたアルー判事シリーズ全12作の粗筋が紹介されています。

No.507 5点 ウィーンの殺人- E・C・R・ロラック 2014/09/03 17:34
(ネタバレなしです) ロラック晩年の1956年に発表されたマクドナルドシリーズ第41作の本格派推理小説で、題名どおりオーストリアのウィーンを舞台にしています。第14章でマクドナルド警視自身が述べているように「てんでばらばらの話を結び合わせる」展開なのですがその結び方が非常に弱く感じられてしまい、話に付いていくのが大変困難でした。一応謎解きの伏線も張ってはあるのですが、肝心の殺人事件についてはこれだけで犯人を決定するのは無理があると思われます。マクドナルドが休暇中だということをなかなか信じてもらえなかったり、容疑者の中に非常に個性的な人物を配したりと部分的には面白いところもあるのですが、プロットが複雑過ぎで読みにくいです。

No.506 7点 検死審問 インクエスト- パーシヴァル・ワイルド 2014/09/03 17:20
(ネタバレなしです) 1939年発表の本書は長編ミステリー第2作の本格派推理小説で法廷ミステリーでもあります。質疑応答場面は意外と少なく供述書や日記、被害者のメッセージ、スローカムたち陪審メンバー間の会話(とてもユーモア豊か)など手を変え品を変えのストーリーテリングが秀逸で一本調子になりません。途中(第三回公判期日)で推理小説批判をしているのも面白いです。後半は複雑な人間関係が明らかになってややごちゃごちゃしますが最後はしっかりと張られた謎解き伏線に基づく緻密な推理で真相が明らかになり、本格派好き読者を納得させてくれます。

No.505 7点 棺のない死体- クレイトン・ロースン 2014/09/03 17:09
(ネタバレなしです) 1942年発表のマーリニシリーズ第4作でロースン最後の長編ミステリーです。過去の作品では地味な脇役に甘んじていたロス・ハートが本書では大活躍します(活躍といってもお騒がせ男的な役回りです)。ロースンらしく本書でも色々なトリックが使われていますが、私がびっくりしたのは幽霊写真です。私は写真技術のことなど何も知りませんが、身体の向こうが透けて見える幽霊の写真がこの時代に果たしてどうやって出来たのか結構どきどきしました。確実性には難ありですが、仮に失敗してもねらわれたことを気づかれない殺人方法も印象的です。ちょっとペテンに近い引っ掛けもありますが、どんでん返しの連続に圧倒される本格派推理小説です。

No.504 6点 帽子屋の休暇- ピーター・ラヴゼイ 2014/09/03 16:22
(ネタバレなしです) 1973年発表のクリッブ部長刑事&サッカレイ巡査シリーズ第4作です(作中時代は1882年夏)。第一部はある種の犯罪の萌芽らしきものも描かれてはいますが、ミステリーとしてのサスペンスに乏しく冗長に感じます(後でサッカレイも「害がないかどうか何とも言えません」と述べています)。しかし第2部になってクリッブとサッカレイが登場してからは快調で面白くなります。第14章で犯人が判明しますがまだそれで終わりではなく、新たな謎が発生します。その謎解きについてはやや駆け足気味だし、専門的トリックが絡みますがそれを不満に感じさせないほど印象的な結末が待っています。現在でも有名な観光地ブライトンの描写も秀逸です(できれば現地図を添付してほしかったけど

No.503 5点 悪魔とベン・フランクリン- シオドー・マシスン 2014/09/03 16:06
(ネタバレなしです) 1961年発表の長編歴史本格派推理小説で、1734年のフィラデルフィアを舞台にして政治家、科学者として後世に名を残すことになるベンジャミン・フランクリン(1706-1790)を主人公にしています。本格派の謎解きとしては推理があまり論理的でなく、思いついた仮説が結果的に当たったに過ぎないようにしか感じませんが終盤での容疑者を絞り込んでいく過程はジル・マゴーンの某作品を連想させて印象的です。オカルト要素やタイムリミット要素を織り込み、起伏に富んだ物語はサスペンスたっぷりです。

No.502 4点 オオブタクサの呪い- シャーロット・マクラウド 2014/09/03 15:55
(ネタバレなしです) 1985年発表のシャンディ教授シリーズ第5作の本書は冒険スリラーと本格派推理小説のジャンルミックス型でシリーズ最大の異色作。何しろシャンディたちが中世へタイムスリップするのですから。本書の中世は魔女や怪物グリフィンが登場する設定なので本格派推理小説ファンの受けは微妙なところかもしれません。この作者はスリリングなアクションを上手く描いた作品もあるので決して冒険スリラーと相性が悪いとは思いませんが、本書に関してはシャンディたちの態度があまりに冷静過ぎて前半の冒険小説パートにどきどきわくわくできませんでした。後半になってようやくミステリーらしくなるのですがページ数が残り少なくなっていてシンプル過ぎる謎解きになってしまい、この私にでさえ犯人はこの人しかありえないというのがみえみえでした。

No.501 4点 フェニモア先生、宝に出くわす- ロビン・ハサウェイ 2014/09/03 15:27
(ネテバレなしです) 2001年発表のフェニモア先生シリーズ第3作でこれまでの作品では1番分厚いボリュームですが、ミステリーとしては1番薄味になってしまったと思います。いくつか事件が起きますが、地上げ集団による嫌がらせ的な内容なのでミステリーの題材としては魅力に欠けます。推理による謎解きもほとんどなく本格派推理小説というよりスリラー小説に近い気がします。ドロシー・L・セイヤーズの「不自然な死」(1927年)のクリンプトン嬢を髣髴させるようなドイル夫人の奮闘ぶりやフェニモアの恋人ジェニファーの活躍など女性陣が元気です。

No.500 6点 忙しい蜜月旅行- ドロシー・L・セイヤーズ 2014/09/03 15:08
(ネタバレなしです) 人気絶頂期ながらセイヤーズ(1893-1957)の長編ミステリー最終作となった1937年発表のピーター卿シリーズ第11作の本格派推理小説です(映画化もされたそうです)。作者が序文で「謎解きはちょっぴり、恋愛の要素はいやになるほどたっぷり」と断っているので推理色の薄いコージー派的なミステリーなのかと思いましたが十分謎解き小説として成立しています。かなりのページ分量がありますがユーモア溢れる文章のおかげで読みやすいです。あちこちで炸裂する文学作品引用癖も好調で、この種の趣向を得意とする作家は結構多いですけど文学知識に自信のない読者にも楽しく読ませる点ではセイヤーズを超える作家はいないと思います。エンディングもまた感動的な余韻を残します。ところで本書は戯曲版と小説版が存在します。あのトリック(やや強引に感じますが)は確かに舞台映えしそうだが果たしてどうやって再現しているのでしょうか?

No.499 6点 赤い右手- ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ 2014/09/03 14:38
(ネタバレなしです) 米国のジョエル・タウンズリー・ロジャーズ(1896-1984)はいわゆるパルプ作家で、1923年のミステリーデビューから晩年に至るまでパルプ雑誌等におびただしい作品を発表しています。1945年発表の本書は非常に型破りであまりにも個性的、好き嫌いがはっきり分かれそうです。本格派推理小説でないという意見があるのももっともだと思います。時間軸が何度も前後にぶれるプロットと微妙に不自然さを残す説明表現は読者を混乱させるでしょう。しかしながら文章に不思議な勢いがあり、意外とすらすら読める作品でもあります。謎解きも問題点を多く含みながらも緻密に伏線を張っていて雰囲気だけのスリラー小説とは一線を画しており、個人的には本書を本格派推理小説に分類しています。

No.498 5点 黒猫は殺人を見ていた- D・B・オルセン 2014/09/03 14:01
(ネタバレなしです) 複数のペンネームを使い分け、本格派推理小説からサスペンス小説、ハードボイルドまで書き分けた米国の女性作家D・B・オルセン(1907-1973)による1939年発表のレイチェル・マードックシリーズ第1作の本格派推理小説です。マードック姉妹シリーズと紹介された文献もありますが本書を読む限りではレイチェルは文句なく主役として活躍してますがジェニファーの方は完全な脇役でした。レイチェルは本書で既に70歳の老婦人ですが、推理だけでなく足を使っての捜査にも重点を置いており案外と活動的です。米国作家にありがちな能天気な雰囲気はなく、むしろ暗いサスペンスが印象的です。現代ではあまりお目にかかれない昔の道具がトリックに使われていて今の読者にはなじみにくいのと、最後の決め手が目撃者登場に頼っているところが推理好き読者には不満に映るかもしれません。なおハヤカワポケットブック版の巻末解説はネタバレ気味の個所があるので読了後に読むことを勧めます。

No.497 6点 リヴァイアサン号殺人事件- ボリス・アクーニン 2014/09/03 12:05
(ネタバレなしです) ボリス・アクーニン(1956年生まれ)はロシア(但し出身地はジョージア)のベストセラー作家です。日本との関係が大変深く、日本留学経験があり三島由紀夫などの文学作品をロシア語翻訳しており(ということは漢字も読める?)、アクーニンというペンネームが「悪人(あくにん)」に由来しているという冗談みたいなエピソードも伝わっています。19世紀を舞台にしてロシア外交官エラスト・ファンドーリンがスパイや殺し屋や秘密組織と対決する冒険スリラーのシリーズ作品ですが1998年発表のシリーズ第3作である本書は例外的に本格派推理小説でした。ファンドーリンの推理には粗いところも多いのですが(犯人にまで指摘されている!)、国際色豊かな登場人物や冒険スリラー作家ならではの事件の背景など読みどころは多いです。ロシアの小説というと暗いとか重苦しいとかいうイメージがありますが本書は起伏に富んだ筋立てにユーモアも交えて読みやすい作品に仕上がっています。

No.496 6点 ルイザと女相続人の謎- アンナ・マクリーン 2014/09/03 11:07
(ネタバレなしです) 別名義で歴史小説を書いている米国女性作家が2004年に発表した「若草物語」(1868年)の著者ルイザ・メイ・オルコットを探偵役にした歴史本格派推理小説のシリーズ第1作です。作中時代が1854年と「若草物語」が書かれるより前に設定されているので「若草物語」を読んでいなくても特に問題ありませんが、読んでいる読者は本書の社会描写と「若草物語」の世界を比べてみるのも一興かもしれません。但し本書はミステリーということもあって暗く重い描写も少なくなく、事件の真相には痛々しい一面もあります。しっかりしたプロット構成と歯切れのいい文章で読みやすく、謎解きと時代性を上手く組み合わせているので上質な歴史ミステリーを読んだ満足感を得られました。

No.495 5点 まだ死んでいる- ロナルド・A・ノックス 2014/09/03 10:43
(ネタバレなしです) 1934年発表のマイルズ・ブリードンシリーズ第4作で手掛かり脚注付きの本格派推理小説です。作品自体の出来映えは悪くありませんが「コーリン・リーヴァはいつどこで死んだのか」をメインの謎とする展開なので、このネタで長編ミステリーでは退屈と感じる読者もいるでしょう。ハヤカワポケットブック版は小さい「っ」を「したがつて」とか「こうだつた」など大文字で印刷しているのが違和感あり過ぎで、世界推理小説全集版の方がまだ読みやすいです(こちらのタイトルは「消えた死体」です)。もっともどちらも半世紀も前の翻訳なので新訳が待ち望まれますが。

No.494 6点 消えた街燈- ビヴァリイ・ニコルズ 2014/09/03 10:19
(ネタバレなしです) 英国のビヴァリイ・ニコルズ(1898-1983)の著作は小説、児童文学、戯曲、園芸書、旅行記、ノンフィクションなど実に広範囲に及んでいることで知られています。ミステリー著作はホレイショ・グリーンを探偵役にした本格派推理小説のシリーズを1954年から1960年の間に5冊発表しており、本書が1954年発表の第1作です。戦争の傷跡をまだ残す舞台や犯罪が醸し出す暗さとクラシック音楽の優雅さや飄々とした探偵役のグリーンの性格が上手いコントラストを演出していますし、トリックの大胆さ(必要性についてはやや疑問もありますが)や小道具の扱い方もなかなかの出来栄えです。ただハヤカワポケットブック版の翻訳(1958年の訳)はさすがに古くて読みづらいです。内容的には新訳版を出す価値は十分あると思いますが。

No.493 6点 消えた犠牲(いけにえ)- ベルトン・コッブ 2014/09/03 10:06
(ネタバレなしです) 1958年発表のチェビオット(本書のクライム・ブック版ではチェヴィオットと表記)・バーマンシリーズ第22作の本格派推理小説である本書は登場人物がバーマン警部を含めてわずか7人しかいないためかプロットは簡潔ですが、その中にも一杯工夫を凝らしており作中でクリスティーの「そして誰もいなくなった」(1939年)を引き合いに出すなど謎解き読者を強く意識しています(但し本書は連続殺人ものではありません、念のため)。古い訳ですが文章が軽妙なためか思ったよりも読みやすいです。20世紀中に翻訳されたこの人の作品は長編では本書のみのようですが、本書を読む限りではもっと紹介されてもいいのではと思われます。

No.492 6点 ヨット船上の殺人- C・P・スノウ 2014/09/03 10:00
(ネタバレなしです) 英国のC・P・スノウ(1905-1980)はは科学者として名高く、「二つの文化と科学革命」(1960年)という本は世界的に話題を集めたそうですが最初に出版された著作は1932年に発表された本書だそうです。ヴァン・ダインの影響が明らかで、探偵役のフィンボウの心理分析が推理の中心を占めていますが時に彼の説明が饒舌過ぎるところまでヴァン・ダイン風にならなくてもよいのにと思います(笑)。まあそれでもヴァン・ダインに比べれば知識教養ネタをやたら披露しない分まだ読みやすいし、手掛かりのカモフラージュにはジョン・ディクスン・カーばりの巧妙なテクニックが使われています。

No.491 6点 氷の女王が死んだ- コリン・ホルト・ソーヤー 2014/09/02 19:33
(ネタバレなしです) 1989年発表のシリーズ第2作の本書ではアンジェラの年齢がばらされています。それなりの年齢ですけど(女性の年齢につきここでは内緒)、めちゃくちゃ元気でじっとしていないし、毒舌も(昔よりは丸くなったそうですが)相当なもの。相変わらずの体当たり的捜査が楽しくて一気に読めました。手掛かりの配置バランスがあまりよくないのがちょっと感心できませんが、コージー派の中ではサイドストーリーを控え目にして謎解きを前面に押し出した展開なのが好ましいです。

No.490 5点 カリブ諸島の手がかり- T・S・ストリブリング 2014/09/02 18:32
(ネタバレなしです) 米国のT・S・ストリブリング(1881-1965)は純文学の作家としてもピューリッツアー賞を獲得するほど成功した作家で、ミステリー作家としては短編で50編以上書かれたポジオリ教授シリーズで有名です。この短編集は1925年から26年にかけて発表した第一期の作品をまとめて1929年に出版されました。本格派推理小説作品が多いのですが、中編の「カバイシアンの冒険」は冒険スリラーに分類すべきでしょう。なぜ密偵が正体を見破られてのかという謎解きはありますけど真相は腰砕けです。本格派としてまあまあと思うのは「亡命者たち」と「アントゥンの指紋」です(後者のトリックはB級ミステリー的ですが)。ポジオリ教授が作品によって役回りが変化するのも本書の特徴で、これをバラエティーに富んで面白いと解釈するか統一感がなくてすっきり読めないと解釈するかは分かれそうです。全作品中最も有名で短編アンソロジーに何度も選ばれる「ベナレスへの道」は世評に違わず、規格外の凄さを見せつける作品です。何度も読み返すに値するかと訊かれれば答えに悩みますが、一度は読むべき作品かと訊かれれば絶対に「イエス」です。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2849件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(82)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(44)
エラリイ・クイーン(43)
F・W・クロフツ(32)
A・A・フェア(28)
レックス・スタウト(27)
ローラ・チャイルズ(26)
カーター・ディクスン(24)
横溝正史(23)