皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
nukkamさん |
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平均点: 5.44点 | 書評数: 2814件 |
No.514 | 5点 | 三回殺して、さようなら- パスカル・レネ | 2014/09/08 18:57 |
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(ネテバレなしです) フランスのパスカル・レネ(1942年生まれ)はいくつかの文学賞を受賞するほど純文学畑で有名な作家ですが1985年からミステリーを書くようになって世間を驚かせました。シリーズ主人公のロベール・レスター主任警部はアガサ・クリスティーの名探偵ミス・マープルの甥という設定で(残念ながらミス・マープルは故人扱いです)、さらに1985年発表のシリーズ第2作である本書では某クリスティー作品(ポワロシリーズです)の登場人物が主役級の役割を与えられています。とはいえ創元推理文庫版の巻末解説でも言及されているように「クリスティーのフランス版」を期待すると裏切られる内容で、皮肉や後味の悪さを感じさせる真相が用意されています。別にクリスティーを模倣したスタイルでなければ駄目とはいいませんが、本書を読む限りではわざわざクリスティー作品と関連させる必要性もあまりないように感じました。 |
No.513 | 4点 | 封印の島- ピーター・ディキンスン | 2014/09/08 15:38 |
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(ネタバレなしです) 1970年発表のピブルシリーズ第3作ですが、これまでとがらりと趣向を変えて冒険スリラーになっているのに驚かされます。いや、変幻自在の作者ということをよく知っている読者なら不思議でも何でもないのかもしれませんが、いずれにしろ推理の要素は皆無に近い作品です。なぜフランシス卿がピブルを呼んだかの説明が不十分なまま話がどんどん進むのが読んでて辛かったです。後半からは冒険小説らしく起伏に富む展開となりますが、ピブルも決して頼もしい主人公ではないところに彼の周囲にはさらに心もとない人間ばかりが集まってしまい、どうやって危機を脱するのかで読者の興味を引っ張ります。サスペンスの中にもどこかとぼけたような味わいがあり、骨折り損のくたびれもうけに終わったようなピブルもそれほど悲壮感はありません。 |
No.512 | 5点 | 美の秘密- ジョセフィン・テイ | 2014/09/08 15:30 |
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(ネテバレなしです) 1950年発表のグラント警部シリーズ第4作の本格派推理小説です。「フランチャイズ事件」(1948年)では完全な脇役、しかもまるでいいとこなしだったグラント警部、主役返り咲きおめでとうでしょうか(笑)。ハヤカワポケットブック版は半世紀以上前の骨董品級の翻訳で読みにくく(誤訳があると紹介している文献あり)、また登場人物リストに載っていない重要人物も多くて頭の整理が大変です。それでも人間味あふれるグラントの捜査描写は読み応えがあり、ぜひ新訳で再版してほしいです。使われているトリックの実現性には疑問符がつきますが、それでも「フランチャイズ事件」の(悪い意味で)驚嘆のトリックに比べればまだまともに感じられました。 |
No.511 | 5点 | おしゃべり雀の殺人- ダーウィン・L・ティーレット | 2014/09/08 15:02 |
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(ネタバレなしです) ダーウィン・L・ティーレット(1904-1964)は生粋の米国人ながらドイツ人女性と結婚してドイツに在住しました。第二次世界大戦前は不可能犯罪の本格派推理小説を、戦後はスパイ・スリラー小説を書いたそうです。本書は1934年の作品なので本格派推理小説かと思ったら微妙な作品でした。しゃべる雀の謎解きや犯人当て推理もありますが、一方で巻き込まれ型スパイ・スリラー的な展開もあるジャンルミックス型になっています。誰が敵か味方かわからなくするために必要以上に人物の個性を殺してしまったようなところがあって、テンポの速い物語にもかかわらず意外と読みにくかったです。とはいえナチスが勢力拡大してユダヤ人や共産主義者への迫害が日常茶飯事となっているドイツが描かれていて、(物語としてはフィクションながら)時代の証言的なところは価値があります。 |
No.510 | 6点 | パディントン・フェアへようこそ- デレック・スミス | 2014/09/08 11:21 |
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(ネタバレなしです) アマチュア作家デレック・スミスの「悪魔を呼び起こせ」(1953年)は知る人ぞ知る幻の本格派推理小説的な存在でしたが、それから40年以上経った1997年に発表した本書は更にレア度アップ(笑)。何と本書は日本でのみ限定出版されたのです。これでは本国(英国)でもほとんど認知されなかったでしょうし、オリジナルは当然英語版なので日本の読者でも相当のマニアしか入手していないのではないでしょうか。よくこれが日本語版で出版されましたね。劇場を舞台にした本格派推理小説で、ジョン・ディクスン・カーに献呈されていますが、「悪魔を呼び起こせ」のようなオカルト演出はなく不可能犯罪でもありません。別々の銃による狙撃という、カーター・ディクスンの「第三の銃弾」(1937年)を連想させる事件がちょっと珍しいですが派手な要素はまるでなく、複雑な人間関係の整理と地道なアリバイ調査が中心のプロットです。重箱の隅をつつくような捜査場面がじれったくなる時もありますが、丁寧な真相説明は本格派推理小説を読んだという手応え十分です。 |
No.509 | 6点 | 地底獣国の殺人- 芦辺拓 | 2014/09/05 10:42 |
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(ネタバレなしです) 1997年発表の森江春策シリーズ第4作です。プロローグの中で作者はわざわざ「本作品はあくまで本格推理小説であります」と注釈しておりそれはその通りなのですが、秘境冒険小説と国際陰謀小説の雰囲気が濃厚なプロットに圧倒され、謎解きにはほとんど集中できませんでした。それだけ冒険小説としてもよくできているとも言えるのですが、秘境や古典的SFのくどいほどの描写は好き嫌いが分かれるかもしれません。 |
No.508 | 5点 | 逃げ出した死体- ノエル・ヴァンドリ | 2014/09/03 18:27 |
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(ネタバレなしです) フランスでは1930年代に本格派推理小説の黄金時代を迎えていたそうですが、アルー予審判事シリーズで知られるノエル・ヴァンドリ(1896-1954)はその代表的作家の1人です。第二次世界大戦後のフランスはサスペンス小説やノワール小説の時代に突入しますがヴァンドリは(非ミステリー作品も書いたが)本格派を書き続けたようです。本書は1932年発表のアルー判事シリーズ第3作です。行方不明の被害者と2人の自称犯人(1人はこれまた行方不明)という謎がユニークで面白いですが、動機をひた隠す自称犯人への警察の追及が甘すぎるなど不自然さが気になるプロットです。なおROM叢書版では巻末解説で1930年代に集中して発表されたアルー判事シリーズ全12作の粗筋が紹介されています。 |
No.507 | 5点 | ウィーンの殺人- E・C・R・ロラック | 2014/09/03 17:34 |
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(ネタバレなしです) ロラック晩年の1956年に発表されたマクドナルドシリーズ第41作で、題名どおりオーストリアのウィーンを舞台にしています。第14章でマクドナルド警視自身が述べているように「てんでばらばらの話を結び合わせる」展開なのですがその結び方が非常に弱く感じられてしまい、話に付いていくのが大変困難でした。一応謎解きの伏線も張ってはあるのですが、肝心の殺人事件についてはこれだけで犯人を決定するのは無理があると思われます。マクドナルドが休暇中だということをなかなか信じてもらえなかったり、容疑者の中に非常に個性的な人物を配したりと部分的には面白いところもあるのですが、プロットが複雑過ぎで読みにくいです。 |
No.506 | 7点 | 検死審問 インクエスト- パーシヴァル・ワイルド | 2014/09/03 17:20 |
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(ネタバレなしです) 1939年発表の本書は長編ミステリー第2作の本格派推理小説で法廷ミステリーでもあります。質疑応答場面は意外と少なく供述書や日記、被害者のメッセージ、スローカムたち陪審メンバー間の会話(とてもユーモア豊か)など手を変え品を変えのストーリーテリングが秀逸で一本調子になりません。途中(第三回公判期日)で推理小説批判をしているのも面白いです。後半は複雑な人間関係が明らかになってややごちゃごちゃしますが最後はしっかりと張られた謎解き伏線に基づく緻密な推理で真相が明らかになり、本格派好き読者を納得させてくれます。 |
No.505 | 7点 | 棺のない死体- クレイトン・ロースン | 2014/09/03 17:09 |
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(ネタバレなしです) 1942年発表のマーリニシリーズ第4作でロースン最後の長編ミステリーです。過去の作品では地味な脇役に甘んじていたロス・ハートが本書では大活躍します(活躍といってもお騒がせ男的な役回りです)。ロースンらしく本書でも色々なトリックが使われていますが、私がびっくりしたのは幽霊写真です。私は写真技術のことなど何も知りませんが、身体の向こうが透けて見える幽霊の写真がこの時代に果たしてどうやって出来たのか結構どきどきしました。確実性には難ありですが、仮に失敗してもねらわれたことを気づかれない殺人方法も印象的です。ちょっとペテンに近い引っ掛けもありますが、どんでん返しの連続に圧倒される本格派推理小説です。 |
No.504 | 6点 | 帽子屋の休暇- ピーター・ラヴゼイ | 2014/09/03 16:22 |
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(ネタバレなしです) 1973年発表のクリッブ部長刑事&サッカレイ巡査シリーズ第4作です(作中時代は1882年夏)。第一部はある種の犯罪の萌芽らしきものも描かれてはいますが、ミステリーとしてのサスペンスに乏しく冗長に感じます(後でサッカレイも「害がないかどうか何とも言えません」と述べています)。しかし第2部になってクリッブとサッカレイが登場してからは快調で面白くなります。第14章で犯人が判明しますがまだそれで終わりではなく、新たな謎が発生します。その謎解きについてはやや駆け足気味だし、専門的トリックが絡みますがそれを不満に感じさせないほど印象的な結末が待っています。現在でも有名な観光地ブライトンの描写も秀逸です(できれば現地図を添付してほしかったけど |
No.503 | 5点 | 悪魔とベン・フランクリン- シオドー・マシスン | 2014/09/03 16:06 |
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(ネタバレなしです) 1961年発表の長編歴史本格派推理小説で、1734年のフィラデルフィアを舞台にして政治家、科学者として後世に名を残すことになるベンジャミン・フランクリン(1706-1790)を主人公にしています。本格派の謎解きとしては推理があまり論理的でなく、思いついた仮説が結果的に当たったに過ぎないようにしか感じませんが終盤での容疑者を絞り込んでいく過程はジル・マゴーンの某作品を連想させて印象的です。オカルト要素やタイムリミット要素を織り込み、起伏に富んだ物語はサスペンスたっぷりです。 |
No.502 | 4点 | オオブタクサの呪い- シャーロット・マクラウド | 2014/09/03 15:55 |
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(ネタバレなしです) 1985年発表のシャンディ教授シリーズ第5作の本書は冒険スリラーと本格派推理小説のジャンルミックス型でシリーズ最大の異色作。何しろシャンディたちが中世へタイムスリップするのですから。本書の中世は魔女や怪物グリフィンが登場する設定なので本格派推理小説ファンの受けは微妙なところかもしれません。この作者はスリリングなアクションを上手く描いた作品もあるので決して冒険スリラーと相性が悪いとは思いませんが、本書に関してはシャンディたちの態度があまりに冷静過ぎて前半の冒険小説パートにどきどきわくわくできませんでした。後半になってようやくミステリーらしくなるのですがページ数が残り少なくなっていてシンプル過ぎる謎解きになってしまい、この私にでさえ犯人はこの人しかありえないというのがみえみえでした。 |
No.501 | 4点 | フェニモア先生、宝に出くわす- ロビン・ハサウェイ | 2014/09/03 15:27 |
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(ネテバレなしです) 2001年発表のフェニモア先生シリーズ第3作でこれまでの作品では1番分厚いボリュームですが、ミステリーとしては1番薄味になってしまったと思います。いくつか事件が起きますが、地上げ集団による嫌がらせ的な内容なのでミステリーの題材としては魅力に欠けます。推理による謎解きもほとんどなく本格派推理小説というよりスリラー小説に近い気がします。ドロシー・L・セイヤーズの「不自然な死」(1927年)のクリンプトン嬢を髣髴させるようなドイル夫人の奮闘ぶりやフェニモアの恋人ジェニファーの活躍など女性陣が元気です。 |
No.500 | 6点 | 忙しい蜜月旅行- ドロシー・L・セイヤーズ | 2014/09/03 15:08 |
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(ネタバレなしです) 人気絶頂期ながらセイヤーズ(1893-1957)の長編ミステリー最終作となった1937年発表のピーター卿シリーズ第11作の本格派推理小説です(映画化もされたそうです)。作者が序文で「謎解きはちょっぴり、恋愛の要素はいやになるほどたっぷり」と断っているので推理色の薄いコージー派的なミステリーなのかと思いましたが十分謎解き小説として成立しています。かなりのページ分量がありますがユーモア溢れる文章のおかげで読みやすいです。あちこちで炸裂する文学作品引用癖も好調で、この種の趣向を得意とする作家は結構多いですけど文学知識に自信のない読者にも楽しく読ませる点ではセイヤーズを超える作家はいないと思います。エンディングもまた感動的な余韻を残します。ところで本書は戯曲版と小説版が存在します。あのトリック(やや強引に感じますが)は確かに舞台映えしそうだが果たしてどうやって再現しているのでしょうか? |
No.499 | 6点 | 赤い右手- ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ | 2014/09/03 14:38 |
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(ネタバレなしです) 米国のジョエル・タウンズリー・ロジャーズ(1896-1984)はいわゆるパルプ作家で、1923年のミステリーデビューから晩年に至るまでパルプ雑誌等におびただしい作品を発表しています。1945年発表の本書は非常に型破りであまりにも個性的、好き嫌いがはっきり分かれそうです。本格派推理小説でないという意見があるのももっともだと思います。時間軸が何度も前後にぶれるプロットと微妙に不自然さを残す説明表現は読者を混乱させるでしょう。しかしながら文章に不思議な勢いがあり、意外とすらすら読める作品でもあります。謎解きも問題点を多く含みながらも緻密に伏線を張っていて雰囲気だけのスリラー小説とは一線を画しており、個人的には本書を本格派推理小説に分類しています。 |
No.498 | 5点 | 黒猫は殺人を見ていた- D・B・オルセン | 2014/09/03 14:01 |
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(ネタバレなしです) 複数のペンネームを使い分け、本格派推理小説からサスペンス小説、ハードボイルドまで書き分けた米国の女性作家D・B・オルセン(1907-1973)による1939年発表のレイチェル・マードックシリーズ第1作の本格派推理小説です。マードック姉妹シリーズと紹介された文献もありますが本書を読む限りではレイチェルは文句なく主役として活躍してますがジェニファーの方は完全な脇役でした。レイチェルは本書で既に70歳の老婦人ですが、推理だけでなく足を使っての捜査にも重点を置いており案外と活動的です。米国作家にありがちな能天気な雰囲気はなく、むしろ暗いサスペンスが印象的です。現代ではあまりお目にかかれない昔の道具がトリックに使われていて今の読者にはなじみにくいのと、最後の決め手が目撃者登場に頼っているところが推理好き読者には不満に映るかもしれません。なおハヤカワポケットブック版の巻末解説はネタバレ気味の個所があるので読了後に読むことを勧めます。 |
No.497 | 6点 | リヴァイアサン号殺人事件- ボリス・アクーニン | 2014/09/03 12:05 |
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(ネタバレなしです) ボリス・アクーニン(1956年生まれ)はロシア(但し出身地はジョージア)のベストセラー作家です。日本との関係が大変深く、日本留学経験があり三島由紀夫などの文学作品をロシア語翻訳しており(ということは漢字も読める?)、アクーニンというペンネームが「悪人(あくにん)」に由来しているという冗談みたいなエピソードも伝わっています。19世紀を舞台にしてロシア外交官エラスト・ファンドーリンがスパイや殺し屋や秘密組織と対決する冒険スリラーのシリーズ作品ですが1998年発表のシリーズ第3作である本書は例外的に本格派推理小説でした。ファンドーリンの推理には粗いところも多いのですが(犯人にまで指摘されている!)、国際色豊かな登場人物や冒険スリラー作家ならではの事件の背景など読みどころは多いです。ロシアの小説というと暗いとか重苦しいとかいうイメージがありますが本書は起伏に富んだ筋立てにユーモアも交えて読みやすい作品に仕上がっています。 |
No.496 | 6点 | ルイザと女相続人の謎- アンナ・マクリーン | 2014/09/03 11:07 |
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(ネタバレなしです) 別名義で歴史小説を書いている米国女性作家が2004年に発表した「若草物語」(1868年)の著者ルイザ・メイ・オルコットを探偵役にした歴史本格派推理小説のシリーズ第1作です。作中時代が1854年と「若草物語」が書かれるより前に設定されているので「若草物語」を読んでいなくても特に問題ありませんが、読んでいる読者は本書の社会描写と「若草物語」の世界を比べてみるのも一興かもしれません。但し本書はミステリーということもあって暗く重い描写も少なくなく、事件の真相には痛々しい一面もあります。しっかりしたプロット構成と歯切れのいい文章で読みやすく、謎解きと時代性を上手く組み合わせているので上質な歴史ミステリーを読んだ満足感を得られました。 |
No.495 | 5点 | まだ死んでいる- ロナルド・A・ノックス | 2014/09/03 10:43 |
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(ネタバレなしです) 1934年発表のマイルズ・ブリードンシリーズ第4作で手掛かり脚注付きの本格派推理小説です。作品自体の出来映えは悪くありませんが「コーリン・リーヴァはいつどこで死んだのか」をメインの謎とする展開なので、このネタで長編ミステリーでは退屈と感じる読者もいるでしょう。ハヤカワポケットブック版は小さい「っ」を「したがつて」とか「こうだつた」など大文字で印刷しているのが違和感あり過ぎで、世界推理小説全集版の方がまだ読みやすいです(こちらのタイトルは「消えた死体」です)。もっともどちらも半世紀も前の翻訳なので新訳が待ち望まれますが。 |