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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2849件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.549 5点 濡れた心- 多岐川恭 2014/10/17 11:22
(ネタバレなしです) 1958年発表の長編第2作で女子高生の同性愛を扱った作品と紹介されており、それだけでも読者を選びそうですね。男の私は気にしませんでしたが仮に男同士の同性愛だったら読むのをためらったと思います(笑)。官能小説風ではありませんが、かといってプラトニック・ラブでもない微妙な描写です。また片方の女性は男からのアプローチに嫌悪感を示しながらもはっきり拒否するわけでもなく、なかなか複雑な人間関係になっています。登場人物の手記(日記やメモ)で構成されたプロットがユニークで、多彩で繊細な心理描写が光ります。ちゃんと動機、機会、手段を推理する本格派推理小説になっていますが、謎解きの興味以上に犯罪が登場人物たちの人生に与えた影響の方が気になります。登場人物の1人がもう未解決でもいいじゃないかというようなことを言っているのも納得できます(もちろん未解決にはならず、ちゃんと真相は明らかになります)。

No.548 6点 下北の殺人者- 中町信 2014/10/17 11:05
(ネタバレなしです) 1989年、出版社勤務と兼業だった作者がついに専業作家となって最初に発表した本格派推理小説です(通算16作目)。講談社文庫版の巻末解説の通り、登場人物は決して多くありませんがこの複雑な真相を読者が解決前に完全に見破るのは不可能ではないでしょうか。二転三転、どんでん返しの連続が半端でなく、まさに論理のアクロバットです。当時の国内は新本格派推理小説の黄金時代を迎えていましたが、トリック重視の作品が多い新進作家とは異なる、プロット勝負の謎解きで個性を発揮しています。

No.547 6点 ルイザの不穏な休暇- アンナ・マクリーン 2014/10/14 16:46
(ネタバレなしです) 2005年発表のルイザ・メイ・オルコットシリーズ第2作の本格派推理小説で、シリーズ前作よりもルイザの家族描写に力が入っており、「若草物語」の登場人物ローリーのモデルとなる青年を登場させたりとオルコットのファン読者にもアピールしています。有力な手掛かりがやや少ないですが謎解きはしっかりしており、私はミスディレクションに引っかかってしまいました。

No.546 5点 殺人投影図- 結城恭介 2014/10/14 16:36
(ネタバレなしです) 1980年代後半から花のジャンスカ同盟シリーズ(私は未読です)など軽妙な作品を発表していた結城恭介(1964年生まれ)が1994年に発表した雷門京一郎シリーズ 第1作です。生真面目で理系のイメージを与えるようなタイトルですが内容はユーモアに満ちた本格派推理小説で、理系要素はありません。構想に4年もかけたとは思えないほどリラックスした雰囲気が漂っています。粗野な会話が多いのがちょっと気になりますけど、複雑なプロットを軽妙かつ明快な文章でわかりやすく説明しています。ただ雷門の説明で「事実」と「真実」がどう違うのかは私にはわかりませんでした。密室トリックは古典的なトリックが使われています。なおノン・ノベル版の裏表紙粗筋で中盤の展開まで踏み込んで紹介しているのは少々行き過ぎに感じました。そこは読んでのお楽しみでよかったと思います。

No.545 5点 バトラー弁護に立つ- ジョン・ディクスン・カー 2014/10/14 10:10
(ネタバレなしです) フェル博士シリーズの「疑惑の影」(1949年)で主役級の活躍をした弁護士バトラーを再登場させた1956年発表の本格派推理小説です。本書ではフェル博士は登場せず、バトラーはフェル博士の後ろ盾なしで謎を解きたいとこだわっています。ところがこのバトラーが主役かというとそうではなく、準主役に留まっており(主役はやはり弁護士のヒュー・ブランティス)、しかも法廷場面がないのですからどうしてこのタイトルになったのか不思議です。ハヤカワポケットブック版は手袋を「手套」と表記するほど古い翻訳ですが、それでも巻き込まれ型冒険スリラーとしては文句なく面白かったです(ヒューが結構火に油を注いでいます!)。日本人読者には辛い言語絡みの手掛かりなど謎解きとして粗い面もありますが、どたばた劇の中に忍ばせた伏線はカーならではの巧妙さが光ります。なお作中に「疑惑の影」のネタバレがありますので未読の読者は注意下さい。

No.544 4点 メッキした百合- E・S・ガードナー 2014/10/13 21:59
(ネタバレなしです) 1956年発表のペリー・メイスンシリーズ第51作です。どうも本書のメイスンは法廷で精彩を欠いているように感じられます。いつもなら自分の流儀を押し通すはずなのに今回は被告人からああしろこうしろと注文つけられているし、反対尋問では検察から「異議あり」を次々に決められています。まあ後者に関してはメイスンも検察の尋問に対して「異議あり」を返していますけど。最後はちゃんとどんでん返しが鮮やかに決まるのですが、メイスンの推理説明が一見論理的でいるようでいてその決め手が「人の性格を正しく判断すること」というのでは説得力のある論理とは思えませんでした。

No.543 3点 大会を知らず- ジル・チャーチル 2014/10/13 21:32
(ネタバレなしです) 2003年発表のジェーン・ジェフリイシリーズ第14作です。これまでのシリーズ作品中(創元推理部文庫版の巻末解説の表現を借りるなら)最も「地味」ではないでしょうか。小さな犯罪はいくつか起きますが、解くべく謎が何なのかはっきり提示されないまま物語が進行します。一応はジェーンがある秘密を探り出すのに成功していますがそれほど印象に残りませんでした。いつクライマックスが訪れるのかと待ちながら読みましたが、とうとう盛り上がらないまま終わってしまったような読後感です。

No.542 6点 ミンコット荘に死す- レオ・ブルース 2014/10/07 16:39
(ネタバレなしです) 1956年発表のキャロラス・ディーンシリーズ第3作の本格派推理小説です。私はこの作者はアイデアが優秀でも謎解きプロットが雑になって損しているというイメージを持っているのですが、本書は結構緻密なプロットになっていると思います(とはいえ扶桑社文庫版巻末の訳者付記では謎解き伏線の問題点がいくつか指摘されていますが)。どことなくのどかな雰囲気が漂っていますが真相は結構大胆で衝撃的です。この仕掛けは某海外作家Cの1930年代発表作品や別の海外作家Cの1940年代発表作品に似たような前例があるし、好き嫌いも分かれそうな仕掛けではあるのですが印象的であることは間違いありません。

No.541 6点 スリー・パインズ村の無慈悲な春- ルイーズ・ペニー 2014/10/01 19:44
(ネタバレなしです) 2008年発表のガマシュ警部シリーズ第3作である本書は2つの物語で構成されています。1つは殺人事件の謎解きとしての物語、もう1つはかつての警察スキャンダル絡みでガマシュ警部が苦境に陥る物語です。複数の物語が交錯するミステリーも最近では珍しくありませんが往々にして読みにくくなったり、謎解きの面白さが減ってしまったりしてしまうことも少なくありません。本書の場合はぎりぎりセーフといったところでしょうか。ガマシュ警部、捜査どころではないのではという場面もありますが最後は推理による解決へと持っていってます。できればシリーズ第1作の「スリー・パインズ村の不思議な事件」(2005年)を本書より先に読んでおくことをお勧めします。

No.540 5点 クッキング・ママの事件簿- ダイアン・デヴィッドソン 2014/09/26 16:41
(ネタバレなしです) 「事件簿」というタイトルがつくと短編集であることが多いのですが本書は1994年発表のシリーズ第4長編です(ちなみに英語原題は「The Last Supers」)。これまで読んだシリーズ作品もコージー派らしからぬ暗くてとげとげしい雰囲気に満ち溢れていましたが、本書では不幸に打ちひしがれるゴルディがしつこく描かれ、ちっとも楽しくありません。それでもまあ、探偵活動は頑張っていて今回は聖職者や信者の複雑な人間関係という、ケイト・チャールズのミステリーみたいな世界を扱っています。しかしチャールズの作品では共感しやすい人物もいるのですが、本書はそういう人物がほとんどいないのでますます重苦しいです。コージー派のミステリーってもっと気軽に読めるのではなかったっけ?

No.539 3点 秘跡- エリス・ピーターズ 2014/09/26 15:04
(ネタバレなしです) 1985年発表の修道士カドフェルシリーズ第11作ですがあまりミステリーらしくありません。一応あるトリックが使われているし、ある秘密が最後に暴かれはするのですが、解くべき謎としてはっきり提示されたプロットではありません。カドフェルも探偵らしい活動をほとんどしていません。ストーリーテリングは巧妙で、どういう結末を迎えるのか目が離せない展開ですが物語としてはともかく、本格派推理小説としては高い評価点を与えることができません。これで英語原題が「An Excellent Mystery」とは!

No.538 5点 鍵のない家- E・D・ビガーズ 2014/09/26 11:42
(ネタバレなしです) 書かれたチャーリー・チャンシリーズ作品はわずか6作なのに、シリーズ映画が40本近く制作され、ラジオドラマや漫画版も作られたほどの人気でした。1925年発表の本書がシリーズ第1作となりますが、本書のチャンはハレット警部の優秀な部下という立場で後年の作品と比べるとまだ名探偵としての個性を確立していません。最後に犯人と対峙しているのも別の人物で、チャンはサポート役に徹しています。後年デビューとなるヴァン・ダインやエラリー・クイーンと比べると謎解きパスルとしては粗いのですが、舞台となるハワイ描写に力が入っています。作中人物に色彩豊かで天真爛漫な場所だったハワイが本土の機械文明の真似だらけになったことを嘆かせていますが、それでもなおボストン出身の主人公には十分なカルチャーショックを与え、そこから少しずつ馴染んでいく経過を丁寧に描くなど物語性をおざなりにしていない点では上回っています。

No.537 5点 ためらう女- E・S・ガードナー 2014/09/24 18:37
(ネタバレなしです) 1953年発表のシリーズ第41作です。本書は本格派推理小説には分類できないでしょう。終盤にメイスンがあるものを破壊して見つけた証拠品はあまりに唐突に提示され、しかもほとんど推理がからみません。「三日月形の〇〇」に関する推理も飛躍し過ぎの感じがします。とはいえサスペンスはシリーズ屈指の出来映えです。最初からクライマックスを迎えているかのように読者をぐいぐいと引っ張り、やっと光明が見えたと思ったらピンチが更に広がってしまう展開はハヤカワポケットブック版の古い翻訳もハンデにならない面白さです。スマートな捜査が身上のトラッグ警部の意外な一面も読めます(これには驚きました)。

No.536 4点 ポルノ・スタジオ殺人事件- ロバート・バーナード 2014/09/24 18:19
(ネタバレなしです) 1986年発表のペリー・トリソワンシリーズ第4作です。「拷問」(1981年)もそうでしたけど小心者の読者を追い払ってしまいそうなきついタイトルですね(笑)(ちなみに英語原題は「Bodies」です)。セクシャルな場面は全くなく、むしろすっきりした文章でまとめられていますが風俗犯罪がテーマとして扱われているところはアガサ・クリスティーやジョン・ディクスン・カーとは違う時代の作品であることを感じさせます。個人的に残念だったのは「拷問」と比べて推理が物足りなく、犯人当てよりも犯罪組織のしっぽを掴むことに重点を置いた、警察小説に近いプロットになっています。

No.535 5点 レモンメレンゲ・パイが隠している- ジョアン・フルーク 2014/09/24 16:51
(ネタバレなしです) 2003年発表のシリーズ第4作で、ハンナの末妹ミシェルが初登場して更ににぎやかになりました。そのせいかお菓子の描写もこれまで以上に美味しそうです。犯人当てミステリーとしては都合よすぎるぐらいの展開で謎が解けてしまいますが、1番の読ませどころはハンナが密室に挑戦する場面でしょう。といっても密室トリックの謎解きでなく、ハンナが密室からの脱出を試みるのです。

No.534 4点 ローズ・ティーは昔の恋人に- ローラ・チャイルズ 2014/09/23 13:11
(ネタバレなしです) 2012年発表のシリーズ第13作です。謎解きは大いに問題ありで、第17章ではセオドシアが謎解き伏線を思い出そうとしている場面があり、最後にそれは明らかになりますがとても証拠といえるような有力なものではなく拍子抜けです。これならいくらだって他の人間を犯人としてこじつけることが可能でしょう。珍しいのは終盤に唐突にホラー風な演出があること。「ジャスミン・ティーは幽霊と」(2004年)よりも不気味な雰囲気となっています。あと謎解きとは関係ないのですが、日本語タイトルのローズ・ティーってどこかで描かれていましたっけ?(英語原題は「Agony of the Leaves」です)

No.533 5点 ブレイディング・コレクション- パトリシア・ウェントワース 2014/09/23 11:51
(ネタバレなしです) アガサ・クリスティーと同時代に活躍した女性ミステリー作家はセイヤーズ、ナイオ・マーシュ、アリンガム、E・C・R・ロラック、エリザベス・フェラーズ、クリスチアナ・ブランドなどが日本でも有名ですが、最も作風がクリスティーに近いのは英国のパトリシア・ウェントワース(1878-1961)ではないでしょうか。作品も独身で編物が好きな老婦人のミス・シルヴァーのシリーズを中心に60作以上発表していたので人気も高かったと思います。1950年発表のシリーズ第17作の本書では事件がすぐに起きず、序盤は控え目なロマンス小説風ですが殺人事件が起きて探偵役のミス・シルヴァーが警察の捜査に協力するようになると一気に本格派モードに突入します。犯人当てとしてはちょっと面白くなかったところもありますが犯行のきっかけになったある出来事は西村京太郎の某有名作を彷彿させて印象に残りました(無論本書の方がずっと早く書かれています)。

No.532 4点 怪奇な屋敷- ハーマン・ランドン 2014/09/16 16:31
(ネタバレなしです) 1920年代から1930年代にかけて怪盗グレイファントムシリーズや侠賊ピカルーンシリーズで人気を博した米国人作家が1928年に発表したスリラーと本格派推理小説のジャンルミックスタイプの非シリーズ作品です。当時の米国ミステリー界はヴァン・ダインの本格派推理小説が人気急上昇中だったそうですが、ランドンはスリラーの方が得意分野だったのでしょう。密室殺人、怪奇な雰囲気、わけありげな容疑者たちと本格派推理小説好き(後年デビューとなるジョン・ディクスン・カーが好きな読者ならなおさら)がわくわくしそうなネタで満載ですが、謎の魅力よりも雰囲気づくりの方に力が入っています。第29章で探偵役が真相説明していますが読者に対して手掛かりをフェアに提示していなかったことが目だってしまっています。論創社版の巻末解説で「読んだ直後では本格派の評価を下すには至らなかった」と書いてあるのもごもっともで、本格派の部分には過度に期待しないで読んだ方がいいと思います。

No.531 5点 死の扉- レオ・ブルース 2014/09/15 10:46
(ネタバレなしです) ビーフ巡査部長シリーズの執筆をやめて新たなシリーズ探偵ものとして20作以上発表することになったキャロラス・ディーンシリーズの1955年発表の第1作の本格派推理小説です。ビーフ巡査部長シリーズに比べると探偵役の個性や謎解きの技巧という点で控えめになった感があります(といってもシリーズ第9作の「骨と髭」(1961年)は結構技巧的でしたが)。本書の推理手法は、ある仮説を前提にしてその裏づけをしていくという演繹的手法でした。仮説が最後の場面まで伏せられているので意外性を狙いやすい長所がある一方、それほど論理的に考えられていない仮説だったため思いつきが結果的に正しかったような印象を与えている面も否めません。

No.530 5点 猿の肖像- R・オースティン・フリーマン 2014/09/10 20:06
(ネタバレなしです) 1938年発表のソーンダイク博士シリーズ第19作の本格派推理小説です。第二次世界大戦直前の作品ですが時代の緊迫感を感じさせることもなく、謎解きに集中した作品です。相変わらずプロットは無駄も回り道もなく、読者を引っ掛けるような細工もほとんどないため大方の読者は結末を容易に予想できるのではと思います。注目すべきトリックもなく、シリーズ作品の中では平均点的な出来だと思います。

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー、D・M・ディヴ...
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2849件
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E・S・ガードナー(82)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(44)
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