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ワシントン・スクエアの謎
ハリー・スティーヴン・キーラー 出版月: 2015年05月 平均: 5.00点 書評数: 2件

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論創社
2015年05月

No.2 5点 kanamori 2015/07/14 18:44
うっかりミスで紛失した約束手形を回収するためシカゴにやってきたハーリング青年は、ワシントン・スクエア近くの廃屋内で、女性用帽子の留ピンが右目に刺さった男の死体を発見する。その留ピンは偶然出会った女性トルーデルのものと判るが、この殺人事件の裏には、偽札騒動や宝石の盗難事件が絡んでいて---------。

”史上最低の探偵小説家”という呼び声もあるキーラーが1933年に出した長編ミステリ。通俗スリラー風の展開ながら、終盤に「ちょっと待った!」として”読者への挑戦”が挿入されているのが目を引きます。
殊能将之氏のブログをはじめ巷の評判では、”怪作”とか”トンデモ本”ということだったので覚悟して読み出したのですが、主要登場人物の”偶然の出会い”を多用するご都合主義的な展開には苦笑を禁じえないものの、テンポのいいストーリー展開で、それなりに楽しめます.......途中までは。
でもねぇ、さすがにこの解決編はいかんでしょうwww 
真犯人や殺人トリックに繋がるような伏線はいったいどこに? 読者への挑戦状にある「公明正大なる提案」とは何だったのか!--------さすがに版元もこのままではまずいと思ったのか、気を効かせて装丁部分にある工夫をしてはいるのですが.....。

No.1 5点 nukkam 2015/06/08 23:11
(ネタバレなしです) 米国のハリー・スティーヴン・キーラー(1890-1967)は長編作品が約70作と結構な多作家(ミステリーだけでなく歴史ロマンスやSFも書いたそうです)で、活躍時期がE・D・ビガーズ、ヴァン・ダイン、エラリー・クイーンと重なっていますが1933年発表の本格派推理小説である本書の(論創社版)巻末解説を読むと怪作や問題作の多い一癖も二癖もありそうな作家です。この巻末解説がなかなかの力作で、本書のことを「一度読んだきりでは紙くずのような駄作にしか見えないかもしれません」とか「猛烈に中途半端」とか随分と批判しているのですがそれでいて「読者諸氏よ、それでも怒ってはいけません。これがキーラーです」と、できの悪い子ほどかわいい的に擁護しまくっています(笑)。この巻末解説さえあれば私の拙い感想文なんて全く不要です。26章の終わりに「読者への挑戦状」を挿入していながら思い切りアンフェアな謎解き、脱力感を感じるトリック、巻末解説で「すばらしいまでのつまらなさ」と評される動機など良くも悪くもインパクトはあります。これでもキーラー作品の中では「なじみやすい」部類だそうですが。


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ハリー・スティーヴン・キーラー
2015年05月
ワシントン・スクエアの謎
平均:5.00 / 書評数:2