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[ サスペンス ] 無垢の殺人 大罪シリーズ/エドワード・X・ディレイニー |
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ローレンス・サンダーズ | 出版月: 1983年11月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1983年11月 |
No.1 | 8点 | tider-tiger | 2015/02/08 20:11 |
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倒叙もののサイコサスペンスに警察小説の要素も加味された作品です。
普段は平凡な日常を送る地味な独身女性であるゾーイは殺人の時だけは派手な装いに様変わりして、男を誘い、殺す。ディレイニー元刑事部長はニューヨークを恐怖に陥れているこの連続殺人事件を解決すべく、捜査の協力を依頼される。 犯人の日常生活と殺人が描かれ、ディレイニーや警察が大騒ぎする。その繰り返しですが、巧みな物語展開で飽きさせません。描写が非常に事細かでうるさく感じる方もいそうですが、凝った言い回しは使用せず、単文を多用しているのですんなりと頭の中に入ってきます。情景が易々と頭に浮かび、殺人のシーンは酷く生々しい。そして、犯人の人物像が自然と構築されていきます。被害者はもちろん気の毒ですが、犯人も憐れでなりませんでした。 動機不鮮明の連続殺人犯はほとんどが男であり、女が犯人という事例は現実にはほとんど存在しない。このことをきちんと踏まえたうえで、例外的な女を鮮明に、鮮明過ぎるほどに描いたことを自分は最も評価しています。 ただしミステリとしてはいくつか問題あり。特に女が犯人である可能性を警察が除外していたのは大きな瑕疵ではないかと。確かに女の連続殺人犯はほとんどいませんが、現場の状況からすると警察は女が犯人である可能性を考慮せざるを得なかったのではないかと思いました。 これは以下二点の作者都合によって生じた瑕疵だと思います。 ディレイニーの指摘によって捜査の照準が女性に向けられるようにしたい。 犯人の人物像からしてあのような現場にせざるを得ない。 かつてはベストセラーを連発していましたが、忘れられつつあるローレンス・サンダーズ。自分も忘れかけておりましたが、たまたま押入れの奥から発見、再読して驚きました。 異常心理を扱った小説の中でも最重要な一冊だと今さらながらに思いました。 |