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[ ハードボイルド ]
消された女
私立探偵シェル・スコット
リチャード・S・プラザー 出版月: 1963年01月 平均: 7.00点 書評数: 2件

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早川書房
1963年01月

No.2 7点 人並由真 2018/09/26 14:03
(ネタバレなし)
「おれ」こと、ロサンゼルスの私立探偵シェル・スコット(30歳)は、20代後半の金髪の美女ジョージア・マーティンから、行方不明の妹トレーシィを見つける協力をしてほしいと頼まれる。だがジョージアはスコットに捜索を一任せず、妹を見つけるため、一日100ドル+必要経費で、彼女が望むときにいっしょに行動してほしいと願い出た。何かあるなと思いつつ、ジョージアに随伴してナイトクラブ「エル・クチロ」に赴くスコット。そこでは美人ダンサー、リーナ・ロヤールがエキゾティックな踊りを披露したのち、ナイフ投げのショーの相方を務めていた。スコットとジョージアはリーナを含む店の関係者数人に接触し、店を出る。だがそこで謎の人物が放った一発の銃弾が、ある者の命を奪った。

 1950年作品。21世紀でも未訳長編の発掘がなされて日本ではそれなりに恵まれている、私立探偵シェル・スコットシリーズの第一弾。
 アクションあり、適度に込み入った人間関係の綾あり、下品にならないお色気あり、そしてダイイングメッセージの謎(これ自体はそれなりのものだが)や、後半に明かされて物語の様相が大きく様変わりする意外なサプライズなどちゃんとミステリ的な興味の準備もあり、と、非常にバランスの良いウェルメイドな軽ハードボイルド。スコットの、時代に連れて推移していくロサンゼルスの都市文化観(P76)や、独特な拳銃哲学(P188)など、作者が自作の小説のなかでちょっと言っておきたいこともいい感じのスパイスになっている。
 特に後者の拳銃へのこだわりは、数年前に翻訳されたプラザーの長編『墓地の謎を追え』での拳銃の謎(被害者を射殺した弾丸の条痕が、事件の起きた時刻、スコットの手元にあった彼の拳銃のものとなぜか一致する)を連想させて楽しい。
 先年他界されたベテラン訳者・宇野輝男の訳文も悪擦れしない感じで軽妙で、一冊のエンターテインメントとしてとても面白かった。あと何かもうひとつ、スコットの内面の葛藤を覗かせる観念のソースでもかかっていてもよかったかとも思うが、そういう方向に色目を使わなかった潔さこそが素敵な作品なんだろう。
 
 最後にポケミス裏表紙のあらすじ紹介は希に見るデタラメさで笑った。リーナはストリップしません。パンティをステージ上で脱ぎません。射殺事件も店内で起きません。ジャロロ(©『Piaキャロット2』の玉蘭)に言いつけちゃうぞ。確認してみたらこのあらすじ、2013年11月号の「ミステリマガジン」(ポケミス60周年記念特大号)巻末の、全ポケミス裏表紙再録でもそのままです。まあわざわざこの膨大な冊数をチェックする人員も時間もないだろうけど。いつかどっかのミステリ同人でインチキポケミスあらすじベスト10とかの企画やらんかなー。大笑いできそうだ。
 評点は0.5点ほどオマケ。

No.1 7点 mini 2015/01/08 09:58
昨日7日に論創社から、リチャード・S・プラザー「墓地の謎を追え」とジョン・P・マーカンド「サンキュー、ミスター・モト」の2冊が同時刊行されちまったぜ、本来なら先月末予定だったのだが忙しい年末なので年越しになったのだろうよ

普段から俺様がこんなタメ口きいてる訳じゃねえぜ、通俗ハードボイルドにお堅い書評文は似合わねえからよ、ついこんな口調になっちまうぜ
戦後から60年代までのハードボイルド派は、チャンドラーやロスマク等の正統派と通俗タイプが2本の柱だな、ただし70年代に入るとハードボイルドの主流は一変する、まぁこれは後のお楽しみだ
その通俗B級ハードボイルドを代表する作家の1人がリチャード・S・プラザーだ
軽ハードボイルドって言うとカーター・ブラウンをまず思い浮かべる読者も多いと思うが、俺の受ける印象ではC・ブラウンはおふざけが過ぎるぜ、どちらかと言えばユーモア・ミステリーに分類した方が似合う
しかしプラザーは正真正銘の通俗ハードボイルド派って感じだ、気取ったミステリー小説なんざ吹っ飛んじまうぜ、通俗タイプなんだからこれでいいのさ
主役は銀髪の私立探偵シェル・スコット様だ、女には弱いがちゃんと私立探偵してし謎もきちんと解いてるぜ
以前アンソロジーでプラザーの短編読んだ時には俺はあまり良い印象は無かったが、長編だと違うようだ
「消された女」は初期の作だが、プロットもしっかりして普通ののハードボイルド派に負けてねえぜ、こいつは高評価しちゃうぜ


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リチャード・S・プラザー
2015年01月
墓地の謎を追え
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