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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] アシェンデン 別題『スパイ物語』『秘密諜報部員』『英国諜報員アシェンデン』 |
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サマセット・モーム | 出版月: 1950年01月 | 平均: 7.33点 | 書評数: 3件 |
月曜書房 1950年01月 |
新潮社 1955年01月 |
東京創元社 1959年05月 |
東京創元社 1960年01月 |
早川書房 1961年01月 |
筑摩書房 1994年12月 |
新潮社 2017年06月 |
No.3 | 7点 | クリスティ再読 | 2018/04/13 17:02 |
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モームの実体験に基づいたスパイ小説である。とはいえ、本作ではプロットはさほど重要ではなく「スパイという視点からのスケッチ」という雰囲気の連作である。まあ小説家というのも、「人生というものをスパイの視点から見る」ような職業のわけで「劇作家を隠れ蓑にスイスに駐在するイギリス情報部員」なんだけど、ついつい小説家視点で関係者を観察するあたりがいろいろ面白い。
だが正直のところ、彼のような雑魚にとっては、特務機関の一員であることも、一般に考えられているほど冒険心を満足させるものではなかった。アシェンデンの仕事は市役所の事務と同じように、整然として単調だった。一定の期間ごとに、自分のスパイと出会い、給料を払う。新しい人間を手に入れると、スパイとして契約し、指図を与えてドイツに送り込む。 なので本作では明確なオチやはっきりしたプロットがあるわけでもなく、アシェンデンがスパイ活動を通して出会った人々の運命が綴られる。ただの中間管理職だから作戦の末端で全貌もわからず人の手配をするだけのことだ。スリーパーらしい老嬢の臨終に居合わせるが、情報らしいものが手に入るわけではないし、結果的に暗殺を指示することになるが、誤殺に終わることもあるし...とスパイ管理職のルーチンワークを淡々とこなしていく。身元を偽るスパイ、というのもあり、感情移入を一切排したカメラアイ的な描写が続く。不条理さの漂う上等のハードボイルド小説を読んでいるような印象である。焦らずじっくり読んで楽しむべし。 |
No.2 | 7点 | mini | 2014/03/28 09:57 |
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本日28日に新潮文庫からサマセット・モーム「月と六ペンス」が刊行される、もちろんミステリーじゃなくて純文学作品だが、画家ゴーギャンをモデルにしたモームの代表作である
今だと岩波文庫のイメージかもだが新潮文庫はモームを得意にしている サマセット・モームは英国諜報部の仕事の経歴があり、その体験を活かした作品が「アシェンデン」である モームで唯一ミステリー作品として扱われる作品だろう、実際に岩波文庫や新潮文庫だけでなく創元文庫(題名は違う)でも刊行されている、私は創元文庫で読んだ 「アシェンデン」は後のアンブラーに通じるリアリズム型スパイ小説の先駆で、007などとは全く異なるタイプである 連作短編集の体を成しており、モームらしい特に何という事も無いエピソードの羅列だ、スパイの生態って案外とこんな感じなんだろうなぁ 当サイトで空さんも御指摘通りでスパイ活動とは言えないエピソードすらある ル・カレ同様に体験者が書くとこうなるのでしょうねえ、そう考えると007のフレミングって自身余程の冒険家だったのだろうか? |
No.1 | 8点 | 空 | 2014/03/23 14:15 |
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本作は1928年にモームが書いたシリアス・スパイ小説の元祖として有名ですが、タイトルの意味は知りませんでした。主役の秘密諜報部員の名前だったんですね。
驚かされたのは、アンブラーやル・カレのような「スパイ・ミステリ」ではないということです。モーム自身『人間の絆』等を書きながらスパイとしても活動した事実を元にした、あるスパイの経験談といったところで、いくつかのエピソードを重ねて、一応長編仕立てにしてあります。そしてそのエピソードの中には、彼のスパイ活動そのものとは関係なくて全然ミステリになっていない話もかなり多いのです。ただ、連作短編集的長編という小説構造は、ほぼ同時期のクリスティーのスパイもの『ビッグ4』『おしどり探偵』と共通します。 ミステリと言えるかどうかはともかく、バラエティに富んだ小説としての味わいは、さすがモームとうならされました。 |