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ナニワ・モンスター
海堂シリーズ現代篇
海堂尊 出版月: 2011年04月 平均: 6.20点 書評数: 5件

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新潮社
2011年04月

新潮社
2014年03月

No.5 7点 猫サーカス 2020/06/08 18:16
海外で広まった動物由来の新型インフルエンザが日本に持ち込まれる。その感染症は伝播力が強く、国民に免疫がないため感染拡大しやすい特徴があり、基礎疾患のある患者や免疫低下者に重症化リスクがある。国内で感染経路不明の患者が出た段階で水際作戦は意味がなくなるにもかかわらず、政府と厚生労働省は空港での検疫を強化する水際作戦にこだわり、感染が疑われる患者であってもPCR検査を渡航歴のある人間に限定した。そんな中、国内での発生源とされる都市が経済的に封鎖され、感染者を出した組織のトップは記者会見で感染者を出したことを謝罪、感染者の家族は地域コミュニティーで居場所がなくなり、引っ越しを余儀なくされる。これが第一部のあらすじ。読みながら今回の新型コロナウイルス騒動を記したノンフィクションに思えて仕方がなく、作者の未来を透視する能力に舌を巻いた。単行本が出た2011年に初めて読んだ際、ドラマチックに展開する物語が戯画的に描かれすぎているように感じた。日本に治療の確立していない新型の感染症が広まったとしても、政府も国民もメディアも冷静に対処するだろうと高をくくっていた。しかし、2020年の現状を見る限り、作者の読みが正しく、自分が間違っていたことを認めざるを得ない。

No.4 6点 小原庄助 2018/02/25 16:05
物語の発端は、浪花府で発生した新型インフルエンザ発症をめぐる大混乱。経済封鎖の状態となった裏には霞が関の陰謀が潜んでいたというもの。
本作は、インフルエンザ騒ぎや検察の失態など、日本で実際に起きた出来事を下敷きにしつつ、単に医療の問題にとどまらず、社会の病巣の一面を痛烈な皮肉とともに物語っている。例えば、霞が関の不祥事隠蔽工作部隊の作戦会議、という場面があった。各省庁で大きな不祥事が起きると、世俗的な関心を呼ぶ小さな不祥事をわざと表沙汰にしていく作戦。そうすることで世間の目をそらし、うやむやにしているというのだ。
ある開業医の視点で描かれるかと思えば、検察特捜部をめぐる「検察の正義」を問う章があるなど、いったい話がどこへ着地するのか見当もつかない。だが後半の展開を読むと、もはや医学ミステリというよりも日本という国の在り方を問うスケールまで発展している。いまや国家の未来が最大のサスペンスなのだろう。

No.3 7点 E-BANKER 2015/01/17 22:06
浪速(ナニワ=もちろん大阪のことですが)を舞台として、海堂ワールドの面々が大騒ぎする物語。
いつもの桜宮(=東城大学医学部)ではないが、これもまた“桜宮サーガ”を彩る一編であるのは間違いない。

~浪速府で発生した新型インフルエンザ「キャメル」。致死率の低いウィルスにも関わらず、報道は過熱の一途をたどり、政府は浪速の経済的封鎖を決定する。壊滅的な打撃を受ける関西圏。その裏には霞ヶ関が仕掛けた巨大な陰謀が蠢いていた・・・。風雲児・村雨弘毅府知事、特捜部のエース・鎌形雅史、大法螺ふき・彦根新吾。怪物たちはこの事態にどう動くのか・・・? 海堂サーガ、新章開幕~

相変わらずの超エンタメ作品に仕上がっている。
海堂ワールドの軸となる白鳥=田口コンビこそ登場しないが(白鳥は一瞬だけ出てくるのだが・・・)、その代わりに大暴れするのが彦根新吾。
彦根は村雨府知事(=これは完全に橋下知事をパクってる)すらも呑み込み、まるでフィクサーのように日本の政治すらも動かそうとする!

Aiについては一番最初(「バチスタ」)の頃から、その必要性を強く訴え続けてきたが、今回もそこは不変。
最近は救急医療や医師不足などのテーマにも切り込んできた作者だが、本作ではそんな個別の問題ではなく、医療をベースに置いた地方自治を主張しているのだ。(何とも壮大!)
確かに、政治家の使命とは、全ての住民に幸福をもたらすことだろうし、幸福のベースというのは「健康」そして「命」にあることは間違いないのだから、あながち作者の主張は誇大妄想ではないように思える。
しかし、今回は道州制にまで踏み込んで、日本を三つに分けることまで提案してきたからなぁ・・・
(あくまで彦根の主張ですが)
ここまでくれば、作者には是非選挙戦に立候補していただきたくなった。

何だかミステリーと全く無縁の書評になってしまいましたが、やはりエンタメ小説としては一級品。
ここまで大量に発表される作品をすべて関連付け、「サーガ」としてまとめる構想力には脱帽だ。
でも、果たして桜宮サーガは終局へ向かっているのか、はたまた新しい展開を志向しているのか・・・?
とにかく次の作品に進むことにしよう。
(今回の登場人物では、村雨や彦根ではなく、第一章に登場する菊間名誉院長が何ともいい味出してる。こういう人物こそが日本の医療を支えてきたのだろう。それと大河内老人。解説者の見解では「白い巨塔」の大河内教授へのオマージュらしいが、本当か??)

No.2 7点 ayulifeman 2012/03/09 02:14
官僚のこととか政治家のこととか医療のこととか興味深く読みました。
機上八策とか予知的です。

No.1 4点 白い風 2011/12/20 23:41
またしても海堂さん主張の”Aiセンター”設立に向けての大ストーリーの一部なんだね(笑)
確かに1冊の本にまとまっているけど、なんかその”大テーマー”の一端の話の感じちゃうんだよね。
うーん、このシリーズ一体いつ完結するんだろう・・・もしかして後10巻は続くかも?(爆)
(もう、私は挫折しそう・・・)


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