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[ サスペンス ]
おれは暗黒小説だ
A.D.G 出版月: 1979年03月 平均: 6.50点 書評数: 2件

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早川書房
1979年03月

No.2 7点 クリスティ再読 2017/11/22 00:14
フレンチノワール第二世代、左大臣マンシェットと並ぶ、右大将A.D.G の出世作。ここらってぇと、岡村孝一の「岡村節」な饒舌体が、A.D.Gのモトがそうなのか岡村節なのか、区別がつかないくらいにノリノリ満開である。「ゆるふん」だとか「おろく」「おぜぜ」「おこもさん」といった、評者でもここウン十年聞いたことのないようなナツい言い回しが連発している...若い人だったら聞いたこともないような懐かしの俗語である(オロクに至っては..あれ、幕末くらいからあるような忌みコトバでは?)。そもそもフレンチノワールっていうと、カタギなフランス人は耳にしたこともないようなギャングの隠語がテンコ盛りで、シモナンの隠語辞典とか片手に読むようなものだそうだから、若い人が意味を引き引き読んだ方がそういうニュアンスが出ていいのかも...なんて思うくらいだな。
まあ本作、ほぼ文体と狂ったキャラがすべて。プロットは典型的な巻き込まれ型スリラーで、ノワール作家の主人公が、罠にかけられて反撃する話。作家が主人公、というあたりからも、読んでて筒井康隆みたいな饒舌のテイストを感じるなぁ。評者的にはクールなマンシェットの方がツボだが、お下品なA.D.Gだって「俗文学の極み」って感じで悪かあない。
まあ本作の最高!なところは、何と言ってもタイトル。「僕はうなぎだ」という日本語の文法に関する議論があって、こういう文を「うなぎ文」と俗称するのだけど、本作のタイトルだって随分の破格。どうせタイトルつけるなら、こういうタイトルつけたいものだ。

No.1 6点 kanamori 2011/03/03 18:54
暗黒小説(Roman Noir)の作家である「おれ」が、女房の殺害容疑と政治的陰謀に巻き込まれる顛末を描いたフレンチ・ノワール。

とにかく主人公がよく喋る。饒舌でポップな会話口調で読者に語りかける物語は、シュールなユーモアと残虐性が混然一体となっている。たとえば、「クリスマスの夜」というところを、「二千年ばかり前にイスラエルで小憎らしい私生児が生まれたのを祝う夜」と言ってみたり、なにかとカミソリで相手の耳を削ぐ飲み友達や、その妹で声まね名人の登場人物など、癖になる面白さがある。

フランス・ミステリ特有のプロット構成力の弱さもあるけれど、同じ”セリ・ノワールの若き狼たち”の一員であるマンシェットの研ぎ澄まされた文体とは好対照の文体で、話のタネに一読の価値ありです。

一風変わった「A・D・G」というペンネームの由来は、森事典によると、コラムニスト時代の筆名の頭文字らしい。まあ、「AKB48」と似たような発想ですかね。


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A.D.G
1979年09月
病める巨犬たちの夜
平均:5.67 / 書評数:3
1979年03月
おれは暗黒小説だ
平均:6.50 / 書評数:2