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[ ハードボイルド ]
ミステリオーソ
沢崎シリーズを含む
原尞 出版月: 1995年06月 平均: 7.00点 書評数: 2件

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早川書房
1995年06月

早川書房
2005年04月

No.2 7点 Tetchy 2024/11/25 00:39
本書は遅筆で有名な原氏によるエッセイ集。本書は1995年に発刊された著者のエッセイ集をもう1冊のエッセイ集『ハードボイルド』とに分冊したうちの1冊。
まず驚いたのは寡作家である著者が1冊に纏まるほどのエッセイを書いていたことだ。その内容は作者の遍歴と作者の趣味である音楽、とりわけジャズ、映画と小説について語られている。

この作家、かなりの気分屋で、己の規範を崩さない男だ。そう、彼自身の生き方そのものがハードボイルドに登場する、世の中を斜に構えて見つめる私立探偵そのものと云えるだろう。

とにかく自分本位な男である。

私は福岡生まれで、佐賀の鳥栖生まれで福岡の大学に通っていた作者とは親近感を覚えるが、公立の小・中・高を卒業し、一浪を経て大学に入学し、その後東証一部上場の企業に入社し、サラリーマンとなって現在に至るという堅実かつ典型的な普通の人生を歩んできた私とはかけ離れた綱渡りの人生である。従って安定主義の私は原氏のような生き方はとても怖くてできなく、またあまりにはっきりと物を云う態度に眉を顰めて理解に苦しむところがあることは正直に告白しよう。

本書で最も驚いたのは中村哲氏との対談だ。あのアフガニスタンで医療活動のみならず治水工事などインフラ整備にも尽力した日本人医師。そして2019年にアフガニスタンで武装勢力に銃撃され、死去した福岡の誇りだ。
彼と原氏が同級生であったことに驚き、そして両者ともまともに学校に通ってなかったことに驚く。普通の生き方をしていない2人だからこそ相通ずるものがその対談にはあり、これはかなり面白く読めた。

私が思うにはこのような人間こそが傑作を物にする、それも後世に残るほどの作品を書けるのだろうと思った。普通の生き方では得られない経験と人生訓。そういう知らない世界が描けるからこそ、人々は彼の小説を読み、そして自分の人生ではできない反抗と隠し続けなければならない反骨心を代わりに見せてくれる主人公に共感を覚えるのだろう。
そして原氏そのものがそんな生き方をしているからこそ、彼の作品は輝くのだ。彼の生活はとにかく自身の内に秘める欲求のままに突き進んでいる。

人間として魅力的かと云われればそうとは思わない。
生き方がでたらめだと思えば確かにそうだろう。
何物にも属さず、そして何者にも媚びず、自分が欲するままに生きる。
しかしだからといって暴力的ではなく、傍若無人でもなく不遜でもないが、頑固ではある。世界が止めろと云っても、販売禁止指定アイテムになってもずっとタバコは吸うだろう。そんな男だ。
本当に不器用な男だと思う。
しかし生き方が不器用なだけで音楽と映画と小説を観る目は確かで、その文章は練達の極みだ。
彼の生き方自体がジャズなのだ。生き方自体がアドリブとインプロビゼーションに満ちている。
それをカッコいいというには私は年を取りすぎた。寧ろ危うさが先に立つ。
こんな男がハードボイルドの第一人者だというのが悔しすぎる。
認めたくないが、認めざるを得ない。
そんな男なのだ、原尞という男は。

No.1 7点 由良小三郎 2003/03/30 17:22
いろいろ思うところがあって原りょうを読み返したいと思って未読だった、この作品を図書館の蔵書検索システムの威力で読むことができたのですが、自伝というかエッセィ集でした。それでもおもしろかったですよ。作家の人柄がわかるこういうのは好きです。


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