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[ パスティーシュ/パロディ/ユーモア ]
エッフェル塔の潜水夫
カミ 出版月: 1942年01月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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白水社
1942年01月

生活百科刊行会
1955年01月

筑摩書房
1969年01月

筑摩書房
1990年08月

No.2 6点 クリスティ再読 2022/09/04 18:50
愉しく読めるユーモア古典、と続けたわけだけど、有名な本作、意外に長い。「さまよえるオランダ人」伝説をネタにした怪異譚と、エッフェル塔に潜水夫というありえない組み合わせで始まる冒険小説。いやだから、解剖台の上でミシンとコーモリ傘が出会ったようなシュルレアリスムの味わいがある。
でしかも本作1929年だから、ちょっと前にはルネ・クレールの「眠る巴里」が印象的にエッフェル塔を描いたりしている。そんなフツフツとアートがたぎるような戦間黄金期のパリのイキでシュールでユーモラスな姿を描く楽しさがある。

「さまよえるオランダ人」なんだけど、ちくま文庫の翻訳だと「飛び行くオランダ人(Flying Dutchman)」じゃあなんか雰囲気出ない。ヴァーグナーのオランダ人のテーマが脳内流れっぱなしなんだが、オペラ通り「船長はたった1人で永遠にさまよう運命にあるが、7年に一度上陸でき、そのとき船長を愛す女性に出会えれば、呪いから解放される」を下敷きにして話が進む。実はロシア革命で云々なんてコジツケっぽい背景があったりするんだけどもねえ。そんなだけども、深刻には全然ならなくて、いろいろな面白要素をつぎはぎしたコラージュ風の味わいが強い。レビューっぽいファンタジーだと思うのがいいのかな。

まあだから、主人公っぽく紹介されたファンファン・ラ・トゥール(エッフェル塔の子供)と古胡桃ジュール・ラノワの少年コンビも実はあまり活躍しなかったりする(苦笑)しっちゃかめっちゃか、行き当たりばったり、なんだけども最後は強引に全部つじつまを合わせたりする。そんな剛腕をオタノシミ!

No.1 6点 mini 2014/02/28 09:59
先日25日発売の早川ミステリマガジン4月号の特集は、”乙女ミステリのススメ”、小特集として”カミのワンダーランド”
ここでカミが採り上げられているのは、今月7日にそれまでポケミス仕様だった「機械探偵クリク・ロボット」が文庫化されたのと、来月にポケミス新刊で「三銃士の息子」が刊行されるのに合わせた宣伝も兼ねてだろう
こうなったらカミのミステリー分野での代表作、短編集「ルーフォック・オルメス」の新訳を御願いしたいものである
この「エッフェル塔の潜水夫」は一昨年ミスマガでユーモア特集やった時に書評済だけど一旦削除して再登録

ピエール・カミは大戦間に活躍したフランスを代表するユーモア作家で、名前が紛らわしいがノーベル文学賞の不条理作家カミュとは全くの別人である
活躍したのが本格黄金時代真っ只中ということもあってか、カミは「ルーフォック・オルメス」というホームズのパロディも書いている
私は出帆社版「ルーフォック・オルメスの冒険」を所持しているので(古本屋で少々高かった)読んで書評書書こうと思えば出来るのだがする気は無い
だって「ルーフォック・オルメス」は現在やや入手難となっていて、これを紹介しても意味が無いと思うからだ、こいうのは各出版社が何とか復刊すべきだろう
その点現役本の「クリク・ロボット」やちくま文庫で復刊したので古本でも見付け易い「エッフェル塔の潜水夫」なら意味があるだろう
「エッフェル塔の潜水夫」はカミの長編代表作と目される作でユーモア小説を通り越してナンセンス小説の領域である
冒頭からエンジン全開、セーヌ川に身投げした死体を潜水夫が引き上げたら再度川に転落、再度川に潜った潜水夫の目前で幽霊のような謎の潜水夫が死体を回収、しかも目撃した潜水夫は後にエッフェル塔の上部で溺死体で発見される
そして謎の幽霊船があちこちに出没
もうやりたい放題の展開に、こんなの収拾するのかと危惧してしまうが、かなり強引だが力技で謎を解決してしまうのには恐れ入った、ちゃんと最後にはミステリー小説の範疇に収まっているのだ
関西弁まで交えた翻訳文にも笑えるぞ


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カミ
2016年05月
ルーフォック・オルメスの冒険
平均:6.71 / 書評数:7
2014年04月
三銃士の息子
平均:6.00 / 書評数:1
2010年06月
機械探偵クリク・ロボット
平均:6.25 / 書評数:4
1942年01月
エッフェル塔の潜水夫
平均:6.00 / 書評数:2