皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ ハードボイルド ] 殺しのデュエット |
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エリオット・ウェスト | 出版月: 1984年10月 | 平均: 6.67点 | 書評数: 3件 |
河出書房新社 1984年10月 |
河出書房新社 1988年05月 |
No.3 | 7点 | 人並由真 | 2020/12/14 19:09 |
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(ネタバレなし)
1970年代前半のロサンジェルス。その夜、「わたし」こと49歳の私立探偵ジム・ブレイニーは、秘書で恋人の24歳の美女ベデリア・ベリーとのデート中の路上で、麻薬の売人と警官との銃撃戦に遭遇する。負傷した警官を支援して犯罪者を射殺したブレイニーは時の英雄となり、その評判を認めた裏社会の大物ジョン・コルビーが依頼を申し出てきた。コルビーの頼む案件とは、総額10万ドルほどの宝石を持って愛人のもとに走った妻クレアの所在を探し、その宝石を奪回すること。だがクレアの恋人とは、ラスベガスの大物ギャング、マックス・ガンナーだった。ブレイニーはベデリア、そして助手の青年ドン・プライスとともにラスベガスに向かうが、事態は血臭ただよう殺人事件へと発展してゆく。 1976年のアメリカ作品。 ハードカバーの叢書「アメリカン・ハードボイルド」の方で読了。 翻訳される前から1970年代後半のミステリマガジン誌上で小鷹信光が熱く語っていた一冊で、当時の世代人ならこの作品の現物を読んだことはなくても、その小鷹の記事内で語られた(中略)のインパクトはなんとなく頭に残っているかもしれない(かくいう評者がそうであった)。 そんなレジェンド的な当時の話題作、衝撃作といえる一冊だが、ようやくこのたび読んでみると……。 なんというか、北方謙三の格調で書かれたハドリイ・チェイス風の勢いの私立探偵小説、みたいな内容。 ノンシリーズものという強みを盾にとった作劇がイケイケで、つまりこの主人公ブレイニーが最終的にどこに行くのかわからない(くたばるかも知れないし、悪に堕するのかも知れない)。そんな種類の先の見えない緊張感を、ほぼ全域にわたって読み手にバシバシとぶつけてくる。 こいつはリュウ・アーチャーやマイケル・シェーン、シェル・スコットとの付き合いじゃ得られない(まずたぶん)感興だ。 山場の(中略)シーンは、作品紹介のポイントにされただけあって、さすがに今読んでもスゴイし。 ミステリとしては先が透けてしまう部分もないではないが、真犯人に向けてブレイニーが指摘する決めてのロジック(一番最初の)はなかなか鮮やか。明快でよろしい。 終盤は様式に流れた? セオリーを守った? 感触もあるが、随所の文芸ポイントをひとつふたつ押すことで本作の個性を獲得しようとした作者の本気さは認める。 大半の作家の立場で、ハードボイルド私立探偵小説はシリーズものにしないで、本当に自分を出し切ったものを生涯でただ一冊書いちゃえばいいんでないの、というような一面があるようにもかねてより思うのだけれど、これはまさにそんな方向で培われたタイプの作品のような。 ラストはもうちょっと若い頃に読んでおいても、良かったかもな。10~20代に読んでいたら、もっと鋭敏に心に刺さっただろう。 読み応えから言えば8点を十分にあげたいんだけれど、作者の奮闘や完成度とは別の部分で(中略)という弱点を感じてこの評点。実質7.75点くらいで、でもそれでも8点はあげにくい、そんな気分の作品。 あ、断片的に語られる、メインヒロインたちの(中略)な恋愛観と、その顛末は、なかな味のある描写であった。 |
No.2 | 7点 | 空 | 2019/02/12 23:54 |
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まず意外だったのが、1976年発表作、つまり完全にネオ・ハードボイルド時代の作品だったことです。なんとなくもっと昔の作品かと思っていました。訳者あとがきによれば、作者は「重厚な国際陰謀小説作家として確固たる地位をもつ」そうですが、検索してみると1966年の『夜は耳をすます時』しか翻訳はありません。英語のWikiにもこの作家の記載はなく、フランス語のWikiで他に2作あることは確認できましたが…
プロローグ的部分の後、高価な宝石の奪回依頼を受け、私立探偵ブレイニーが秘書、助手と策をめぐらすあたりは、ハードボイルドよりルパン・タイプみたいだとも思ったのです。しかしトラブルはあったものの、奪回作戦は1/3程度のところで成功してしまい、その後がよりハードな展開になってきます。 結末は予想できましたが、構成に工夫を凝らしていて、かなり楽しめました。 |
No.1 | 6点 | kanamori | 2010/04/20 18:52 |
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ある翻訳ミステリサイトでハードボイルド小説の私的ベストテンに選ばれていた作品で、興味をひかれて読みました。
たまたま街中のギャングの銃撃戦に遭遇し英雄になってしまった私立探偵の皮肉な末路を描いている。 スピーディでアクション満載のミステリでしたが、人物造形に厚みが不足していて、どちらかと言うとB級ハードボイルドに近い内容。ただ、ラストシーンは祭りの後の寂しさに似た情景で印象に残りました。 |