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[ 本格/新本格 ]
思いあがりのエピローグ
思い三部作
斎藤肇 出版月: 1989年06月 平均: 5.50点 書評数: 2件

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講談社
1989年06月

No.2 5点 nukkam 2025/08/27 22:53
(ネタバレなしです) 1989年発表の思い三部作の第3作の本格派推理小説です。冒頭にエピローグAを配置し、巻末にエピローグBとエピローグCが配置されています。さらに作者あとがきが「あとがき(そのまえがき)」「他人の書いた小説」「あとがき(そのあとがき)」の三部構成されているという凝りようです。冒頭のエピローグAは別に後日談でもなく、普通にプロローグだとは思いますが内容は普通どころか実に衝撃的です。その後は連続殺人の謎解きになりますが謎解きの出来栄えよりも「名探偵を困らせる三つの方法」とか「悪の栄える三つの条件」とか「名探偵を維持するための条件」とか本格派推理小説を揶揄するような議論の方が印象に残ります。作者がまじめに書いたのかふざけて書いたのかわかりませんが、「犯人を納得させられない推理」「往生際の悪い犯人」「なしくずしの結末」と探偵役に自虐させて謎解きは締め括られます。ユニークな作品とは思いますが好き嫌いも大きく分かれそうな作品です。本書を読む場合には先に「思い通りにエンドマーク」(1988年)と「思いがけないアンコール」(1989年)を読了しておくことを勧めます。

No.1 6点 メルカトル 2025/05/28 22:18
まず文章について。時折一瞬の煌きを捉えた清冽な表現力にハッとさせられました。シリーズ二作に関してはかなりの酷評を受けて、本作に至っては今まで長きに亘って誰も書評していません。既に見切られたと考えても良いでしょう。しかし、これに限っては悪くないと思いました。全体を通して名探偵の存在意義を読者に問いかけている様に感じます。その為、結果的に衝撃のエピローグが冒頭に配置されているのです。

トリック自体はショボいし、解決編があっさりし過ぎていて物足りません。斎藤肇と云う人はもっとデキる人だと思っていましたが、結局いつも裏切られて非常に残念でなりません。ただ本格ミステリ愛は十分伝わってきました。欠点ばかり目立つような物言いになってしまいましたが、決して凡作ではないと思います。目を瞠るような文章力や的確な人物造形、凝った構成に謎めいた連続殺人事件は新本格マニアにとっては注目すべき点も多いです。又最後に配された名探偵論はなかなかのものだと思いました。ちょっと洒落たオマケもついていますし、愛すべき本格ミステリと言わざるを得ません。


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斎藤肇
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