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[ 社会派 ]
東京ダモイ
鏑木蓮 出版月: 2006年08月 平均: 5.50点 書評数: 4件

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講談社
2006年08月

講談社
2009年08月

No.4 6点 猫サーカス 2026/04/06 17:17
元抑留者の老人がシベリア時代の思い出をうたった句集を出すことになり、自費出版会社の営業員が京都府綾部市の自宅を訪れる。そのころロシアから来日した元収容所看護婦の死体が舞鶴港で発見され、案内役の若い医師が失踪する事件が発生。それを知った老人は「遅きに失した」という言葉を残して姿を消してしまう。残された句集の原稿から、医師の祖父にあたる中尉が厳寒の収容所の屋外で、あるはずのない鋭利な凶器で首を切り落とされた事件が浮かび上がる。老人はその犯人を俳句の中で告発しているらしい。誰がなぜどんな方法で中尉を殺したのか。ロシア人女性殺しとの関連は。錯綜する謎の手掛かりを求めて、営業部胃炎と女性上司、京都府警の刑事二人が、それぞれの角度から俳句の解読に挑む。明らかに本書は基本的には暗号解読テーマのパズルストーリーである。俳句を暗号に仕立てたアイデアは斬新で、解読の過程にも一定以上の説得力がある。この作品を凡百の暗号ものから隔てているのは、なんといっても収容所の描写の圧倒的リアリティ―と、戦争の記憶を風化させてはならないという明確な社会的メッセージだろう。この二つの特徴が作品に奥行きを与え、読後の印象を深いものにしている。

No.3 5点 zuso 2022/08/01 22:13
終戦後のロシアの捕虜収容所内で起きた殺人事件が、現代の日本で解決するという作品だが、凶器トリックのみならず、現代ミステリでは難しい暗号トリックを扱っており、トリックだけが際立つといいうこともなく、無理なく自然にまとめられている。
伏線の扱いもよく、キャラクターもそこそこ描写されており、デビュー作としてはまずまず。

No.2 6点 2017/09/16 17:03
謎解き対象とされる事件は、シベリア抑留中での殺人と、その60年後に国内で起こるロシア人女性殺人の2つ。
先の戦争が背景にあり、話の大部分に、ある関係者の句集(俳句に随筆、手記を組み入れたようたもの)が開示されるから、ミステリーとしては重くて地味なものとなっている。
いわゆる社会派推理小説だから、地味なテーマに合うようサプライズもなく、トリックも期待するほどではないだろうと想像する反面、この著者の他作品「時限」からすれば、かならず何かあるだろうという期待を抱きながらの読書だった。
結果的には、中途は十分にわくわくしながら読めたが、ラストはそれほどでもなかった。
でもまちがいなく力作です。

鮎川哲也賞でもなく、『このミステリーがすごい!』大賞でもなく、メフィスト賞でもなく、なんといっても天下の江戸川乱歩賞だから、こんな優等生的力作なのも当然といえば当然。
すごいと思うのは多視点描写。公募の新人ミステリー賞でこんなにむつかしく書いて、よく賞が取れたなぁと。さすが乱歩賞。でも選考委員はいやがるだろうなw

(このサイトではあまり読まれていないので、応援するつもりで一言)ネタバレか??
俳句が鍵になっているが、面倒くさがらず、ゆっくりとじっくりと句を解釈しながら読めば(自分はやっていないが)、かならず楽しめるはず。

No.1 5点 ウィン 2010/09/25 12:11
戦後、シベリアで捕虜として過酷な労働を科せられていた日本兵をテーマにしたミステリー。
ダモイというのは帰還という意味である。

まず思ったのは、江戸川乱歩賞のレベルの高さである。中途半端なミステリー作家よりは、作品は十分面白いと思う。
ただ面白いというのと、ミステリーとしての上手さは別である。
まだまだミステリーとしての未熟さは感じた。
しかし要注目である。

足りなかったのは、読者を引き込む力・そして犯人の意外性。後、刑事と槙野の視点が交代で話が進んでいくのは少し面倒くさい。


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