皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格 ] 斜陽館殺人事件 アンティ・ブジュレーシリーズ |
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| P・J・フィッツシモンズ | 出版月: 2026年07月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
![]() 東京創元社 2026年07月 |
| No.2 | 6点 | kanamori | 2026/08/30 11:48 |
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| ロンドンの紳士倶楽部で余暇を過ごしていた高等遊民のアンティ・ブジュレーは、伯爵家の末裔で旧友のフィドルズから電報を受け取り、一族が暮らすサセックス州の田舎の森の中に立つ城館へとやってきた。事件は、館の一角にある塔の三階の密室状況の書斎から伯父のセバスチャンが墜落死したものだが、直前に争う声や物音があり、殺人事件と見なされていた。斜陽の途をたどる英国貴族の館で名探偵の推理がきらめく密室謎解きミステリ!
このところ英国で増えてきた感があるアマチュア探偵が登場するクラシック・ミステリ風の本格ミステリで、時代設定も1928年とまさに黄金時代まっただ中です。ただ本作のユニークな点は、”もしP.・G・ウッドハウスが不可能犯罪ミステリを書いたら?”というコンセプトにあります。 ウッドハウスと言えば執事のジーヴスですが、本作に登場する執事は貴族制度に疑問を持つリベラルで、もう一人の老従僕は102歳で、ジーヴスのような役割は務まりそうにありません。(もっとも執事が探偵役のユニーモア・ミステリは先例がありますし)、で、”遊歩者”こと、探偵役アンティが英国風のシニカルな語りで全編にわたってユーモアを醸し出しています。飄々とした風貌はミルンの「赤い館の秘密」のギリンガム君の再来を思わせます。 肝心のミステリ要素は意外としっかりしていて、カーの初期作品を思わせる密室の塔からの墜落死のトリックも面白いですし、フーダニットに関しもユーモラスな場面にその伏線を混ぜる手法が巧妙です。シリーズは既に10作以上書かれているようですが、このレベルであれば続けて翻訳出版してもらいたいですね。 |
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| No.1 | 6点 | nukkam | 2026/08/04 03:40 |
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| (ネタバレなしです) 英国出身でフランス在住しているP・J・フィッツシモンズはゴーストライターとして長年活動していたようですが自作として書く作品は「P・G・ウッドハウスのスタイルによる不可能犯罪ミステリ」を目指したそうで、それが結実したのが2020年出版の自己名義によるデビュー作である本書です。私はウッドハウスが英国では誰でも知っているユーモア小説家であることを知識としては知っていますけど著作を1冊も読んでいないので本書がウッドハウス風かどうかは判断できませんが会話にはユーモアがにじみ出ており、名探偵役のアンティ・ブジュレー(Anty Boisjoly)の饒舌で飄々としたキャラクターはドロシー・Ⅼ・セイヤーズのピーター・ウィムジー卿を連想しました。作中舞台は1928年の英国で、時代描写はそれほど濃厚ではありませんが印象的な不可能犯罪トリックは当時だからこそ成立したように思われます。容疑者たちの事件当時の位置関係の確認がメインとなる前半はやや地味な展開ですが(屋敷の見取り図は欲しかったです)、第11章で謎解きが大きく前進するあたりから一気に面白くなりました。「The Case of the Canterfell Codicil」という風変わりな英語原題も意味深で、何となくシリル・ヘアーの「英国風の殺人」(1951年)を彷彿させます。 | |||