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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 緑のマント リチャード・ハネー |
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| ジョン・バカン | 出版月: 不明 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
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![]() 東京創元社 |
| No.1 | 6点 | 人並由真 | 2026/06/11 21:29 |
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| (ネタバレなし)
1915年11月、のちに第一次世界大戦と呼ばれる大戦の前線で負傷し、英国に戻っていた「私」ことリチャード(ディック)・ハネー少佐は、知己である外務省の要職ウォルター卿に呼び出される。用件は、少し前にウォルター卿のもとに、一人の諜報員が何やら中東情勢に関連する情報をもたらして死亡した。遺された紙片には「カスレディン」「キャンサー」「V・I」と3つのキーワードが記されている。実はその諜報員とはウォルター卿の実子ハリイ・プリヴァントであり、息子のもたらした情報が重要な意味があると信じる父の思いをハネーは認めた。ウォルター卿の依頼はトルコを含むドイツ陣営に潜入し、キーワードの意味を探り、その奥に潜む謀略を断つこと。ハネーは、戦友である「サンディ」ことスコットランド人のルドウイック・アーバスノット、そしてウォルター卿に紹介された歴戦のスパイ、アメリカ人の巨漢「ジョン・S」ことジョン・スキャントルベリイ・プレキロンとともにチームを組み、それぞれ偽名とニセの立場を詐称して敵陣営に潜入するが、彼らの前には長い長い冒険と危険の旅路が待っていた。 1916年の英国作品。 『39(三十九)階段』(1915年)に続く、リチャード・ハネーシリーズの第二弾。 第一作は何しろ創元文庫でも筆頭の薄さなので割と読まれるが、こっちはいつまで経っても本サイトの誰もレビューを書かない。 という自分も、大昔に購入したはずの創元文庫が例によって家の中のどっかに行ってしまい、1~2年前に改めて筑摩の「世界ロマン文庫」版(訳者は同じ菊地光)を買い直した。それでこの数日、時間をかけて読む。 で、内容だが、何しろ現実に毎日前線で戦死者が出ている大戦下での物語なので、あまり砕けた話にはならず、前作のようなどこかすっとぼけた英国調ドライユーモアは控えめ(まったく無いわけじゃなく、最後に明かされるタイトルロールの意味「緑のマント」の含意なんか、完全にある種のサタイアだろうが)。 というわけで『39階段』パート2的なお気楽さで読むことはまったく推奨できない一冊だが、まあこれはこれで、欧州諸国を基本は単独行動、のちに仲間と合流、のハネーのロードムービー的冒険譚としては決して悪い作品ではない。 まあ第一次大戦時の連合国と同盟国の所属国家と陣営の関係性など最低限の近代史的な知識は最低限あった方がイイネ(西洋史に弱い自分は、その辺の予習を抜きに読み進めたので、いささかシンドく、そのために読了に数日かかった)。 とはいえ前半からハネーのピンチ、敵役に追われながらの逃亡行のサスペンスとスリルなど十分だし、一難去ってまた一難……の物語の起伏感も、一世紀以上前の新古典ながら、こちらにページをめくらせる求心力はなかなかのもの。一部、助かり方が甘い場面もないではないが、まあその辺はクラシックスパイ冒険小説とすれば、こんなもんでしょ、とひいき目で許せる範疇だ。 後半3分の1、くだんのキーワードにからむキーパーソンが登場するが、これがまたなかなかキャラが立った人物で、ああ、バカン、このキャラを描きたかったんだね、という感じも強い。その当該人物の周辺で、前述の「緑のマント」にちなむ意外な用法(……というべきだな?)があるのには、小説の貫録みたいなものを実感させられる。 ハネーが任務中に再会した某キャラクターの山場での活躍~逆転に至る流れもサスペンス横溢で、先に「これはのちに、その彼から聞いた話であるが……」の形式でクライマックスを語り、とにかくこの物語は(ほぼ? 完全に?)ハッピーエンドに終わるんだよと予期させながら、最終パートを盛り上げていく作劇も安定感がある。 某悪役キャラの凄絶な最期は、リアルでまだ大戦が続くなか、作者が英国の同胞の読者たちに読ませたかった一幕だろうねえ。 つーわけで、それなりに歯応え(ある種のシンドさ)はあるものの、やはりオールタイムの英国冒険小説、スパイ小説に関心のあるミステリファンなら一度は読んでおいた方がいい歴史的な作品だとは思う。 さて、ハネーものの次は大冊『三人の人質』か。こっちは読むのはいつになるのやら? |
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