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[ サスペンス ]
終止符には早すぎる
ジャドスン・フィリップス 出版月: 2025年11月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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新潮社
2025年11月

No.1 8点 人並由真 2026/01/08 14:48
(ネタバレなし)
 その年の6月のニューヨーク。「ぼく」こと31歳の青年弁護士コーネリアス(コーニー)・ライアンは、上司のベテラン弁護士ジェイコブ(ジェイク)・クレイマーから、噂の富豪で56歳のマシュー(マット)・ヒグビーの相談に乗るよう指示を受けた。ヒグビーは競馬界のある組織の要人の立場を希望しているが、その組織の長であるリー・フーパー元将軍が、ヒグビーの旧悪を理由に反対しているらしい。ヒグビーと対面したコーニーは成り行きから、彼の恋人らしい中年の美女フランシス・テリルのアパートに赴くが、彼女は若い暴漢2人に何らかの目的で家を荒らされ、フランシスの娘で20歳代初めの美女ドーンとともども何とか危機をやり過ごした状況だった。暴漢の正体に心当たりがあるらしいヒグビーが行動に出る一方、コーニーはテリル母娘と対話するが、事態は思わぬ殺人事件へと展開していく。

 1962年のアメリカ作品。
 作者ジャドスン・フィリップスは、ヒュー・ペンティコーストの別名で、個人(評者)的には数か月前に全くたまたま読んだ、その別名義でのポケミスの旧刊『ささやく街』がエライ面白かったところなので、実にタイムリーに次の新刊(未訳の旧作の発掘翻訳)が出た! という思い。
 私は、願った希望が叶う、世界が私中心に動く、翻訳ミステリファン界の特異点。早く来てくれ、ガブリエル・ゲイル。

 閑話休題。
 そんな状況の上に、本作はあの植草甚一「フランクランテ・デリクトでがホメていた秀作だったそうで(そーだったけ? 「フランクランテ~」は大昔に読んだけど、さすがに記憶にない)、それも発掘新訳企画のブースト的に後押しになったらしい。実にいいことだ。

 ということで相応の期待を込めて読みだしたが……いや話の内容そのものは、凝縮された時間の流れのなかで相次いでイベントが生じてテンポよく、フツーに面白い。翻訳も流麗で、読みやすい。
 ただしちょっとネタバレするけど、表紙の画題や裏表紙のあらすじにある女子の飛び降り騒ぎっていうのは物語の中盤になってからのイベントで、かなり待たされる。今回の翻訳のこの売り方は、ちょっとアレというかピーキーだ。
 私ゃカーター・ブラウンの『ストリッパー』みたいに、いきなり飛び降りるかどうかの騒ぎの場面から開幕するものと思っていた。
 でさらに、後半の展開は小説、読み物、隠されていた人間関係の綾が続々と明かされる人間ドラマとしてはかなり面白いけど、ミステリとしては割り切ったくらいに推理の余地もなく、なんか、その辺はどーなの? という感じ。
 あと、あんまり言いたくないんだけど、物語の後半でその飛び降り娘を説得にくるメンツが、交代制のローテーションみたいに次々入れ替わるのが、ドリフのコントみたいでこちらもちょっとなんだかなあ、であった。
(いや、劇中の登場人物たちはひとりひとり、 本気でシリアスに行動しているんだけどね。)

 というわけで全体的には読み物、エンターテインメントとしてはなかなか良かった(後味もいいし)けれど、個人的にペンティコースト、ここまでスゴイのか! と唸らされた優秀作~傑作『ささやく街』の域にはひとつもふたつも及ばない感じです。まあ、期待値のハードルも高すぎるんだけどね。

 ただまあ、巻末のリストを見るとペンティコーストの未訳作品ってとんでもなく、冗談でなく空の星の数くらいのイメージである感じなので、まだまだオモシろいものはいっぱい眠っているでしょう。
 本書もワタシのヘボ感想なんかは別にして、Amazonでの評とかはなかなかいいみたいだし。
 今後もどんどん未訳の旧作で良さげなのを発掘翻訳願います。 

 評点は実質7点だけど<植草甚一がホメた未訳作品を出します>という版元と編集部の心意気が最高級にウレシイので、もう一点オマケ。
 同じ流れで、ブルーノ・フィッシャーの未訳長編あたりとか、4~5冊くらい出してくれませんか、新潮文庫さま。


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ジャドスン・フィリップス
2025年11月
終止符には早すぎる
平均:8.00 / 書評数:1
1963年01月
ささやく街
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