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[ 社会派 ]
エレガンス
石川智健 出版月: 2025年07月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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河出書房新社
2025年07月

No.1 8点 HORNET 2025/12/26 23:15
 第二次世界大戦の終局に差し掛かっていた1945年の東京。激しい空襲で日々、人が死んでいく中で、女性が花のようにスカートを広げた洋装で首を吊って死ぬ事件が4件続いて起きた。4人は皆、同じ洋裁学校に通っていた女学生で、自殺に見えるこの事件について再捜査の命が下る。捜査を命じられたのは、戦時中にただ一人、記録係としてカメラをもたされている警視庁写真室勤務の石川光陽と、内務省防犯課の吉川澄一。自殺として通常に処理されると考えていた光陽に対し、吉川は他殺説を主張する。
 捜査を進めるにつれ、激しい空襲で明日の命をも知れぬ日々でありながら、それでも「美」を追究し続けた女学生たちの生き様が浮かび上がる――


 毎日のように身近な人が爆撃で亡くなっていき、自分の命も明日どうなるか分からない。それでも日々の生活は続くし、娯楽も酒などの楽しみもあれば、笑いや恋愛もある。「戦争が日常となっている」日々のリアルが、人々の息遣いが、生々しく伝わってくる厚みのある作品である。非常に読み応えがあった。
 女学生たちが次々と不審な死を遂げる事件の真相を追うミステリであったが、それ以上に戦争当時の世情と人々の生き様が強く心に残った。事件の真相、特にその動機には、そうした世情への反駁も込められており、うまく編み上げられたストーリーだと感じた。
 面白かった。


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石川智健
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