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[ ハードボイルド ]
山形新幹線「つばさ」の女
警備会社調査員・五貫吾郎
峰隆一郎 出版月: 1992年11月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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青樹社
1992年11月

青樹社
1999年07月

No.1 6点 人並由真 2025/05/31 08:46
(ネタバレなし)
 その年の7月上旬。「中央警備保障KK」の調査員で33歳の五貫(いぬき)吾郎は、34歳の売れない画家・戸川圭一郎と駆け落ちした31歳の人妻・西保靖子の行方を追って、山形を訪れた。そこで吾郎は「斉木」という男に誤認され、当人が横領したらしい3億の金の返却を求められる。当座のトラブルから脱した吾郎は、その直後、またも彼を斉木と見誤っているらしい美女・樋口美奈と出会った。吾郎が美奈から情報を探り出すと、斉木は都内の不動産会社の専務で、美奈は彼の秘書兼愛人らしい。いまだ吾郎を斉木と誤認しているのかそれとも他人と了解したのか漠としたまま、美奈は吾郎と一夜をともにするが、ふたりでともに東京に戻る山形新幹線のなかで、予期せぬ殺人事件が生じた。
 
 評者が3年前に読んだ『特急「あずさ」殺人事件』(旧題・『特急「あずさ」殺人事件』)以来の、五貫吾郎シリーズ……って、実はブックオフで少し前にこの本(元版の新書の方)を手にするまで、シリーズ探偵になってるの知らなかった。いま思うと『あずさ』がシリーズ第1作目だったみたいだけど、本作がシリーズ何冊目になるのかは今のところ、知らない。

 ほとんどポルノミステリかと思えるくらい、濃厚な濡れ場が続出(主人公は本作の劇中だけで6人のヒロインとセックスだよ。たぶんワタシが読んできた新旧のミステリのなかでも最多じゃ?)。

 が、決して<エロ一辺倒>の中身ではなく、キーパーソンの斉木は結局生きてるのか? 死んでるのか? と薄口の『キドリントン』みたいな大きな謎の興味を最後まで維持するし、ホンボシと絞り込まれた相手のアリバイ崩しのネタもある(これが本書の独創のものかは知らないが)。

 で、あれやこれやの謎を絡めたフーダニット的な趣向に加え、主人公・吾郎の職業的な矜持の叙述において、必要十分な和製ハードボイルドミステリの背骨は感じさせてくれる。2時間半で読了できるリーダビリティの高さの一方で、なかなか読みごたえはあった。
 
 まあ真相が発覚すると、メインキャラクターの行動の一端に違和感を感じないでもないが、まあその辺は解釈の幅で了解できないこともない。
 最後の吾郎と某メインキャラの対峙場面は、なかなかのテンションで印象に残りそう。
 作者(&編集部)としてはサ-ビスしてるらしいセックス描写の過剰さにヘキエキしてしまう読者は全国にゴマンといそうだが、その辺のうわぁ……感をスルーできるんなら、けっこう欲張った力作じゃないかとは思う。
 この評点の上の方で。


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峰隆一郎
1992年11月
山形新幹線「つばさ」の女
平均:6.00 / 書評数:1
1991年07月
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