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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 魚雷をつぶせ NATO情報部員シリーズ |
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ジョルジュ・ランジュラン | 出版月: 1965年01月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1965年01月 |
No.1 | 5点 | クリスティ再読 | 2024/12/30 18:17 |
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「ハエ男の恐怖」として映画化された、この人の「蠅」が面白かったこともあって、もう一作ある翻訳の本作をやってみよう。
このランジュランという人、名前もフランス人だしフランス語で著作するのだけど、実はイギリス人。しかも第二次大戦中はスパイ組織で活躍したという経歴があり、このスパイ小説にもしっかりその経歴が反映。NATOの情報部員として、フランス人のルイ・グルナ・ド・フォンシーヌ少佐とイギリス人のサンディ・グラント大尉がコンビを組んで活躍する。イギリス人が「蠅取り紙」として目立つ動きを見せてターゲットを牽制し、その隙をついて潜行するフランス人がキメる、役割分担のコンビである。 なのでイギリス人の方が、本作でも敵に捕まって美女スパイとしっぽり、というプレイボーイっぷりを披露。フランス人の方はイケオジ風で、敵方の使用人の少女とコンタクトして「伯父さん」として潜入。まあだからバディ物スパイ小説とは言え「ナポレオン・ソロ」のナポさんとクリヤキンのコンビみたいな味わいはないな。 でこのシリーズは、このランジュランが総監修するかたちで、他の作家にも執筆させるという企画もの。残念ながら翻訳は本作のみ。スパイ小説ブームを当て込んで企画された、エンタメ・スパイ小説シリーズということになる。それでも「経験者」のランジュランだから、リアルと言えばリアル。しかし、リアルなプロセスに踏み込んでいることで、やや地味な印象。 敵方も元ナチのシュラハト博士。東側の依頼で原子力応用で何年も潜航しっぱなしOKの潜伏型魚雷を発射する施設を管理する。ヴィランというほどの押し出しはないなあ。というわけで悪くはないが平凡なスパイ小説。期待したわけではないが、ランジュランという作家への関心で読んでみた。 |