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[ 本格/新本格 ]
彼女が探偵でなければ
私立探偵・森田(榊原)みどり
逸木裕 出版月: 2024年09月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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KADOKAWA
2024年09月

No.1 7点 パメル 2025/09/22 19:00
人の本性を暴かずにはいられない私立探偵・森田みどりが活躍する5編からなる連作短編集。
「時の子」時計店主の父を亡くした少年とみどりの交流から、親子の記憶と真実が交錯する。時計の精密なイメージを謎解きに活用したトリックが喪失感と再生の希望を結び付ける。不思議な安らぎが感じられる幕切れが印象的。
「縞馬のコード」みどりが千里眼を持つとうそぶく少年と対峙し、少年の内面に踏み込んで行く。推理により、その人物の甘さに詰め寄っている。
「陸橋の向こう側」父親殺しを計画する少年のノートを発見したみどりが、少年の心を解きほぐしていく。プロットの巧妙さに加え、加害者になり得る心の闇と救済の可能性が交錯するラストは圧巻。
「太陽は引き裂かれて」クルド人差別を題材に、落書き犯の追跡を通じて、単純な善悪では割り切れない差別の構造を描き切っている。読者に「自分ならどう行動するか」を問い掛けている作品。
「探偵の子」みどりが抱く我が子への不安が、他の人物の本性と絶妙に共鳴する。本作全体を締めくくる救いの光が射し、重たいテーマとのバランスを取っている。
謎解きを通じて、親子の絆、社会的弱者への眼差し、自己との折り合いといった普遍的なテーマを昇華させている作品集。


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逸木裕
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