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[ コージー ]
ミステリーしか読みません
イアン・ファーガソン&ウィル・ファーガソン 出版月: 2024年04月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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ハーパーコリンズ・ジャパン
2024年04月

No.1 6点 人並由真 2024/07/14 17:15
(ネタバレなし)
 空手チョップが得意な流れ者の若き美人聖職者、そんなアマチュア女性探偵を主人公にした連続テレビ番組『フラン牧師の事件簿』。一時期は同シリーズを6シーズンも続けて大ヒットさせた当時の若手スター女優ミランダ・アボットだが、番組が15年前に終了してからは人気も仕事の量も徐々に減退。40代の今では鳴かず飛ばずの半ば貧乏生活だが、あいかわらずプライドだけは高かった。そんなミランダのもとに、十数年前に別居したままの夫で元脚本家、今はオレゴン州でミステリ専門店「ミステリーしか読みません」を開いているエドガー・アボットから手紙が来て、会いたいという。ミランダは夫の協力も得て、もう一度ひと花咲かそうと考えるが、事態は彼女の予想とは別の方向に向かった。一部の熱狂的な『フラン牧師』ファンと対面しつつ、なんやかんやあって地元のアマチュア主体の劇団の公演に関わることになったミランダ。彼女はそこで、思いもかけぬ殺人事件に巻き込まれてしまう。

 2023年のカナダ作品(作品の舞台はアメリカ)。作者コンビは兄弟だそうで、これまでの文筆業の実績はテレビなどの脚本関連。長編ミステリの執筆はこれが初めてらしい?

 60~80年代辺りの海外ミステリTVドラマなどをそこそこ観ていた評者には実に楽しい設定で、演技者としてはほとんど一発屋だった(ことも多かったような)各作品の主演俳優たちが、番組終了後にどうやって生活してるんだろ? という、こちらの実に下世話な興味などもかなり満たしてくれる。その辺の業界裏話的な叙述は、さすが当該ジャンル出身の兄弟作家だけある。

 コージー作品を謳っているとおり、地方の町を舞台にした人間模様は前半いささか長めだが、キャラクターの配置が明快な上に、主人公のあれやこれやの現状の推移に起伏があるので、ほとんど退屈しない。
 それでも殺人マダー チンチンチンチン……的な気分が生じてくると、そんな読み手のバイオリズムを勘案したようなメタ的な趣向で大笑いさせてくれる。いや、なかなか達者。

 最後に明かされる意外な真相と真犯人は、手掛かりをもうちょっと出しておいてほしかった部分もないではないが、ちゃんとイロイロ考えた作りで十分以上に及第点。名探偵、一同集めてさてといい、のパターンでの謎解きでは、次のページを片手で隠しながら先に犯人の名前が目に飛び来ないように注意しつつ読み進めた。自分が自然にこれをやっているときは、その作品がなかなかフーダニットパズラーとして面白い場合だ。

 約500ページの紙幅が良くも悪くも長丁場すぎる(前述のようにそんなに退屈はしないが)こともあって、優秀作というにはちょっとアレだが、十分に佳作~秀作。評点はこの点のいちばん上の方で。

 なおシリーズの続編が本国でその後刊行されているかどうか、あるいは続くはずかどうかについては特に訳者あとがきなどで記述がないが、楽しい作品&メインキャラだったのでシリーズ化は希望。虚実の海外ドラマジャンルの話題を毎回盛り込んだ、楽しい路線に育てていってほしい。


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イアン・ファーガソン&ウィル・ファーガソン
2024年04月
ミステリーしか読みません
平均:6.00 / 書評数:1