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[ クライム/倒叙 ]
頬に哀しみを刻め
S・A・コスビー 出版月: 2023年02月 平均: 7.00点 書評数: 2件

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ハーパーコリンズ・ジャパン
2023年02月

No.2 7点 小原庄助 2025/10/22 21:37
殺人罪で服役し、今は造園業を営むアイクの息子アイザイアは、同性婚の相手デレクともども何者かに殺される。デレクの父のバディ・リーは、アイクに父親二人で犯人を捜し出し復讐をしようと持ち掛ける。
アイクは黒人の実業家で元職業的犯罪者、バディ・リーは白人で酒浸りの自堕落な貧乏人である。対照的な二人は、同性愛を理解できず、自分の愛する息子の人生を否定して絶縁し、そのことに強い後悔と自責の念を抱いている点でのみ共通する。彼らはLGBTQや異人種を含めた、これまで見ようとしていなかった世界へと徐々に和解していくのである。
アイクとバディ・リーの行動は自己満足にすぎない。取り返しがつかないことを痛烈に悔やみながら、やむにやまれぬ想いに駆られて復讐を果たさんとするのである。だからこそ、家族、父子、再生、多様性といった複数の主要テーマが哀切に心に響く。しかも劇的な展開と、小粋な会話を併せ持つ。現代的なテーマが厳粛に息づいた犯罪小説だ。

No.1 7点 HORNET 2023/11/26 17:52
 殺人罪で服役した黒人のアイク。出所後は真面目に働き、小さな会社を経営していたが、ある日息子が殺害される悲劇が起きた。ゲイである息子は、パートナーとともに顔を撃ち抜かれたのだ。生前、息子の性的志向に向き合えず、冷たく接してしまっていたアイク。身を切るような悔いを抱えたアイクは、パートナーの父親で酒浸りのバディ・リーとともに、息子たちの敵を討つために立ち上がるー。

 「息子たちを殺したのは、その黒幕は誰なのか?」を探すという意味ではミステリの体をもってはいるが、主軸は息子の性的志向を受け入れられないまま、息子を失ってしまった男たちの償いの物語。多分に暴力的で、目を背けたくなるような描写も多々ある。
 武骨で不器用な男たちの、激しく切ない生き様を読む物語として大変魅力的だった。
(しかし、本作のジャンル登録には迷った。確かに主人公たちが敵をことごとく殺していく「犯罪者」ではあるのだが…「クライム小説」というのは、計画的な犯罪の遂行の顛末を、犯人側から描くもののような気がして、ちょっと違和感が。)


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S・A・コスビー
2024年05月
すべての罪は血を流す
平均:7.00 / 書評数:1
2023年02月
頬に哀しみを刻め
平均:7.00 / 書評数:2
2022年02月
黒き荒野の果て
平均:7.00 / 書評数:1