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[ SF/ファンタジー ] リヴァイアサン襲来 イルミナティⅢ |
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ロバート・シェイ&ロバート・A・ウィルソン | 出版月: 2007年07月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
集英社 2007年07月 |
No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2022/12/30 19:26 |
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「イルミナティ」も最終巻。ふう、やっと読了。年内に読めてほっと安心。そのくらい難航。
炭疽菌パイ流出による世界の危機はハグバードの命を受けた刑事たちによって回避され、「ヨーロッパのウッドストック」インゴルシュタット・ロック・フェスティヴァルで企まれた、イルミナティの陰謀はハグバードたちの手によって阻止された!「黄金の潜水艦」に戻った一行は、イルミナティの背後にいるとされる大海獣リヴァイアサンと大西洋の海中で遭遇する。明らかになるアトランティス以来のイルミナティの正体とは? という話であることには間違いない。いやふつーに伝奇SFのはずなんだけどもねえ。もちろんポンポンと「誰が語っているか」が唐突に変わる叙述はそのままなんだけども、どうやらハグバードのクルーの女性3人は同一人物らしくて、その独白が「意識の流れ」みたいな文体で挿入されるし....でどうやら正体は「不和の女神エリス」の顕現?しかもカバラやタロットの解釈が理解不能で困っちゃう。最後には「わたしたちは本のなかにいるんだ」とメタ発言をする始末。 彼らのメッセージはすべて象徴的比喩的になっているが、真実が単純な断定的文章にはコード化できないからで、それは以前のコミュニケーションが文字どおりに受け止められたからだ。今回はシンボリズムが不条理なまでに用いられ、誰も額面どおりにはうけいれられないようになっている。 のだったら、オカルティズムの意味の深読みを「意識的な方法論」として採用してようなものであって、韜晦に次ぐ韜晦で「意味」のありかなんてどうでもよくなってしまう...シンボルの背後には実は何もない。ただ作者があかんべえをしているだけ。 そんな「悪質な」小説。本の内容のタガが最初から外れている。陰謀論を扱った小説としては「フーコーの振り子」がハイブロウを狙って正面から実現し、「ダ・ヴィンチ・コード」のハイブロウは見せかけでお安いのがバレまくったのに対して、「イルミナティ」はキッチュを狙って妙にハイブロウ、という困ったことになっている。奇書。 |