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[ SF/ファンタジー ]
黄金の林檎
イルミナティⅡ
ロバート・シェイ&ロバート・A・ウィルソン 出版月: 2007年06月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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集英社
2007年06月

No.1 6点 クリスティ再読 2022/12/06 11:49
さて「イルミナティ」も2巻目。というか、このシリーズ、もともと分厚い1冊本で出たんだが、3分冊化されて、翻訳はそれぞれ別タイトル。まあだから本サイト的にはバラバラで評するしかない。章立ても「フーコーの振り子」同様、カバラの10のセフィロトで名付けられていて、10章がこの三分冊で貫いている。なので「中」の巻に相当する「黄金の林檎」は、評しづらいったらありゃしない。

ラスベガスの細菌兵器研究所から炭疽菌パイ株が流出した。FBIは唯一の保菌者であるポン引きを追うが未だ行方不明。前巻末で「黄金の潜水艦」のハグバード・セリーンが接触を試みたマフィア一味は皆殺しの目に。黒人嫌いのシカゴの黒人警官ウォーターハウスはAUMと呼ばれる「人を新しいもの好き」にする薬の影響で、アナーキスト側に密かに参加し、イルミナティの手先である検察官を射殺ののち、ドイツのインゴルシュタットで開催される「ヨーロッパのウッドストック」へ指示を受けて向かう...インゴルシュタットでは「アメリカン・メディカル・アソシエーション(AMA)」という大人気のロックバンドが出演予定だが、彼らはイルミナティの陰謀を完成させるための大虐殺を企んでいるらしい。イルミナティが求める「終末子」とは? アトランティスを破壊した「科学党」と「自由党」それから「虚無党」の抗争から端を発し、現代に至るまで人類の歴史を陰で操るイルミナティの真の姿がいよいよ?

まあこんな話には違いないんだが、「ぼく」「わたし」「おれ」に三人称がポンポン飛びまくり、「今誰が話してるの??」と推理推測しつつ読む必要もあれば、膨大な登場人物で誰が誰やら覚えきれないし...さらにアトランチス神話も占い師ママ・スートラが明かすところによれば、イルミナティが正義で「黄の印教団」(ラグクラフトのインスピレーションの元になった)による支配を打破するために活動しているそうである....何が正しいのか、全然見当もつかないし、さらにヒーローたるハグバード・セリーンだって妙に人を試すような禅の「公案」じみた話をするわけで、相互に矛盾撞着、さらに話の前後関係も不明...となかなか読むには大変。
その間にポルノとクトゥルフ神話と秘密結社とロックンロールが散りばめられ、

おしっこをしているときに口笛を吹くと、一つでも足りるのに、二つの心をもつことになる。二つの心があると、自分自身と戦うことになる。自分自身と戦うと、あっさりと外部の力に屈してしまう

とかね。まあ、この巻では「思わせぶり」でひっぱりつつ、最終巻での決着(びっくりするらしい)に期待しよう。


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ロバート・シェイ&ロバート・A・ウィルソン
2007年07月
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