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[ パスティーシュ/パロディ/ユーモア ] 雪の中の三人男 |
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エーリヒ・ケストナー | 出版月: 1971年11月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
東京創元社 1971年11月 |
筑摩書房 1978年01月 |
No.1 | 8点 | クリスティ再読 | 2022/11/06 09:56 |
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「消え失せた密画」が面白かったからね~ケストナー・ユーモア三部作は全部やろう。主人公は百万長者なんだが...
人間てものが実際どんなもんだったか、もうちっとでおれは忘れっちゃうとこだったからねえ。おれは自分のはいっているガラス室をぶち毀してみたいんだよ。 枢密顧問官でコンツェルンの主、べらんめえが素敵なトーブラーは自分の工場主催のコピーライト懸賞に偽名のシュルツェで応募した。結果は二位入賞。一位は失業中の青年ハーゲドルン。この懸賞の賞品は「アルプスの高級リゾート十日間」。百万長者は貧乏人シュルツェに身をやつすが、トーブラーの下男(というか従僕?)のヨーハンを身代わりの「金持ち」に仕立てて同行させる。失業青年ハーゲドルンは一張羅を着込んでホテルへ....トーブラーの身を案じる娘ヒルデは、滞在先のホテルに「百万長者が身をやつして滞在する」のを知らせたが、ホテルでは失業青年ハーゲドルンが百万長者だと思い込んでしまった! という設定。本当の百万長者シュルツェはホテル側から「そぐわない客」として冷遇されるが、シュルツェの側ではそんな冷遇を「人間観察の好機!」と逆に楽しんでしまう。ハーゲドルンとはヨーハンともども親交を深めるが、ハーゲドルンに思惑から言い寄る貴婦人が、邪魔なシュルツェを排除しようと策謀する。さらに父を案じる娘ヒルデもそのホテルに泊まりに来てしまう。幾重にもこんぐらがった「偽装」の結末は? いや~実に面白い。ユーモアと言ってもそれが設定とシチュエーションから来るものだから、この設定ですでに勝っているようなもの。さらに「三人男」それぞれのキャラが「見かけ通りじゃない」ヒネリが入っていて、これが絶妙の面白さを生んでいる。「三人男」が高級スキーリゾートを堪能する開放感もあるし、最後はみんな幸せになるイイ話。もともとハリウッドから依頼された映画脚本を自分で小説化したものだそうだから、身元偽装が定番の「スクリューボール・コメディ」の典型かつ最上の出来のものじゃないのだろうか(1934年だから「或る夜の出来事」と同じ年!) 「消え失せた密画」よりも面白いけども、ミステリ味は「密画」よりも薄い。でもね、 みんなが見かけどおりの人間じゃなかったんだねえ。ぼくって大馬鹿者はそいつを全部真に受けたんだ。ぼくは探偵にならなくってしあわせだったよ! ひょっとして「反-探偵小説」かしら(苦笑)ミステリファンにこそオススメ。 |